なのは+『永遠の空』   作:黒影翼

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第四話・動き出す闇と風

 

 

 

第四話・動き出す闇と風

 

 

 

Side~シュテル

 

 

 

逃げるように次元移動を行った私は、力尽きて砂地に座りこんだ。

 

「く…ディアーチェ…なんて無茶を…」

 

偽者達を前に膨大な魔力を消費する大技を放ったディアーチェは、辛うじて実体は残していたものの完全に意識を失っていた。

レヴィの高速移動で攻撃圏内からは離脱できたが、当のレヴィもそれで意識を失ってしまう。

私一人で地球まで転移しなければならないが、その私もレヴィの偽者の一撃にて負傷している。

 

地球へもミッドへも、自力でいけるけれどかなり遠い距離だ。

消耗したこの身に三人移動するだけの力は…

 

「結構大変そうだね。」

「え?」

 

唐突に聞こえて来た声。

聞き慣れたその声のした方を向くと、そこにはリライヴが立っていた。

 

「ちょっと問題があってね。フレイアから胸騒ぎがするって聞いて、合流しようと思って飛んできたんだ。まさかたまたま途中の世界で会えるとは思ってなかったけど。」

 

何でも無いことのように告げるリライヴ。

けれど、彼女は魔力を大きく封じられている身だ、単独での次元移動すらそう軽い行為ではないはず。

 

「…無理をしますね。」

「速人の仲間なら普通じゃない?」

 

何でもない事のようにそう告げるリライヴ。

マスターには悪い話だが納得してしまった私は、リライヴと顔を見合わせて小さく笑った。

 

「話もあるけど、とりあえず回復するから楽にして。いくよ、イノセント。」

『カートリッジロード。』

 

薬莢がはじき出されるのを見た私は、少し驚いた。

彼女のカートリッジは、魔力限定をかけられる前の大魔法を使う為に使用する前提に作られている。そのため、一般のミッド式、ベルカ式等と性能、規格共に大きく異なるのだ。

 

何より、一つを精製するのに今のリライヴでは全快から全魔力を使用する事になるので、余程の大事でなければ使う機会も無い筈…

 

 

 

そこまで考えて、私は小さく頭を振った。

 

 

 

私達の偽者まで出現しているのだ、どう考えても大事でしかない。

 

「ふぅ…これでいいかな。」

 

私達三人を包みこむサイズの魔法陣が展開され、ゆっくりと癒されていく。

 

「それじゃ、回復しながらで悪いけど情報交換と行こうか。あんまりノンビリもしてられないみたいなんだ。」

「はい。」

 

弱った魔力での大魔法の発動で疲れたのか、リライヴもその場に座り込む。

此方もそれなりに伝える事はあるので、リライヴの提案に素直に頷いた。

 

 

 

Side~ヴィータ

 

 

 

周辺世界を捜査中、砂漠の空に浮かぶ人影を見つけたあたしはその人影に近づき…驚いた。

 

「見つかりましたか。」

「シュテル!?お前何…で…」

 

たたずむシュテル。炎を身に纏っているシュテル。

 

 

 

おかしい。

 

 

 

炎もそうだけど、何かがおかしい。

そう、まるで…

 

「夜天の守護騎士ですか。この身に宿った焼却の力、試すには相応しい相手ですね。」

 

戦乱の時の闇の書の騎士であった自分達を思い起こさせる、壊し殺す事しか選択しない頃の瞳と瓜二つ。

冷静で感情が見えないのはシュテルの特徴と一致するが、何処か本人とは思えなかった。

 

「お前…誰だ?」

「シュテル=ザ=デストラクターですよ。…本物の。」

「何?」

 

あたしが疑問を口にする前に、シュテルは手にしたデバイスを構える。

魔力が紅蓮の炎となってシュテルの周囲を熱していた。

 

コイツ…やる気かよ…

 

「法的に先制攻撃出来ない…というのであれば、遠慮なく先制を取らせて貰います。」

「はっ…妙な気回さなくても結構だよ!!」

 

距離を取ろうとするシュテルに対して、あたしはアイゼンを振り上げ接近した。

 

 

 

Side~フェイト=T=ハラオウン

 

 

 

ヴィータと別れて周辺世界の捜索を行っていた私の前に、レヴィが現れた。

 

「あ、オリジナルだ。結構大きくなってるね。」

「え?」

 

オリジナル。

確かにレヴィは私を元に生まれたけれど、そんな妙な呼ばれ方はされない。

 

「丁度良かった。知らない相手よりオリジナル相手の方が楽しいもんね。さぁ見てみろ!生まれ変わったこのアクアブルーの魔力光!ボクにぴったりだろ!?」

「あ、うん。そうだね。」

 

よく分からないままレヴィのペースに飲まれる。

でも、レヴィが言う通り、彼女の魔力光は私を模した物じゃなく水色の輝きを放っていた。

 

「それじゃやるぞ!今度こそ君達をぶった切ってぶっ壊して闇の空に返り咲いてやる!」

「っ…」

 

物騒な台詞。

そこまで聞いて、違和感がより鮮明なものになっていく。

 

少し鋭くぎらぎらとした目。

何処かあのグリフを思い起こさせるような、まるで殺す事や壊す事を楽しんでいるような瞳。

それは、速人に救われて無邪気にヒーローや必殺技に惹かれていたあのレヴィとは似ても似つかない物で…

 

「さぁ!この太刀を恐れぬのならば正々堂々かかってこーいっ!!」

 

似つかないはずなんだけど…やっぱりレヴィはレヴィのような気もした。

ともあれ、戦うと言うのであれば止めて話を聞くしかない。

 

私はバルディッシュを構えて楽しそうなレヴィと向き合った。

 

 

 

Side~高町なのは

 

 

 

ヴィータちゃんとフェイトちゃんがそれぞれ交戦中。しかも相手がシュテルちゃんとレヴィちゃんだという。

少し様子がおかしいと言う事だから、闇の欠片の可能性もあるけど…結界も発生してないし、意識も割としっかりしているらしい。

援護に行きたい所だけど、ディアーチェちゃんが出てくる可能性も考えると私が離れる訳には行かない。

フォワードの皆は周辺で発生した闇の欠片に向かってくれている。となれば今他に事が起これば私しか動けない。

 

もし今何処かで騒動が起きたなら…

 

『なのはちゃん!海上にディアーチェと正体不明の女の子が出現!向かってくれる!?』

「はい!」

 

予想通りというか、エイミィさんからすぐに指示が入る。

それを聞いた私は、すぐさま屋敷を飛び出した。

 

とは言っても二人…か。

リミッターがかかった状態で二人を相手に戦えるかは半信半疑だけど、それでもやるしかない。

 

 

いざとなったら全力で…

 

『ヴィヴィオも待たせてるし、無茶はしないから。約束する。』

 

シャマルさんの見立てでは数年単位の休養が必要らしい今の身で全力を使えば、どうなるかなんて分からない。

それでも…今は私が行くしか無い。

約束を守るのも難しいな…

 

 

 

 

現地に着いた私を待っていたのは、キーを叩いている桃色の女性と、その女性の傍らで腕を組んで、海上に現れた黒い球体を眺めているディアーチェちゃんの姿だった。

 

「ん?どうやら邪魔者が来たようだな。」

 

私に視線を向けたディアーチェちゃんは、気だるそうに杖を振り上げる。

 

「アロンダイト!」

「っ!?」

 

話をする間も無く放たれた砲撃に対して、私はどうにかショートバスターを合わせる。

けど相殺しきる事は出来ずに、起こった魔力爆発が私の姿を飲み込んだ。

 

「くっ…」

「ほぉ…」

 

砲撃が衝突した間を使って防御魔法を構築、発動させて凌いだ私の姿を見て、ディアーチェちゃんの瞳が僅かに大きく開かれた。

 

「大した魔力ではないからつまらんと思ったが…思った以上に腕はいいようだな。」

 

組んでいた腕を大きく広げたディアーチェちゃんは、頬を吊り上げて…

 

「少し遊んでやろう小娘、ありがたく思うがいい。」

 

狂気を孕んだ笑みのままそう言った。

 

「遊ぶつもりは無いんだけど…事情は聞かせてもらうよ。」

「やれるものならやってみるがいい!!」

 

幸い作業をしている女性は参戦するつもりは無いようだから、ディアーチェちゃんだけに集中できる。

私は静かにディアーチェちゃんと対峙した。

 

 

 

Side~ヴィータ

 

 

「パイロシューター。」

「っち!!」

 

迫ってくる火炎誘導弾をアイゼンで叩き潰す。

なのはが元になっただけあってとにかくバカスカと撃ってくるからうっとおしい事この上ねぇ。

 

「ブラストファイアー!」

「くぁ…っ!」

 

最後の誘導弾を消した、アイゼンを振りぬいたそのタイミングに砲撃を合わせられる。

あたしは墜落する勢いで下降する事でどうにかその砲撃を避けた。

 

「んのヤロー…調子にのるんじゃねえぇぇぇっ!!」

 

カートリッジをロード。

ラケーテンフォルムにて、旋回突撃を行う。

遠心力を伴ったブースターの噴出によるの一撃は、綺麗にシュテルを捕らえ…

 

 

 

 

片手で張った障壁に止められた。

 

 

「っのおぉぉぉ!!」

「無駄です。貴女がそれを一番理解しているのではないのですか?」

「な…うわ!」

 

痛い指摘に動揺した一瞬。

その瞬間に、シュテルは障壁を維持したままあたしの一撃の勢いに身を任せて後退した。

 

勢いづいた回転を止めた所で、砲撃態勢に入っているシュテルの姿が映り…

 

 

 

炎熱砲撃があたしに着弾した。

 

 

 

「ぐ…っ…」

「…仕留めきれませんか、さすがですね。」

 

咄嗟に防いだものの、ノーダメージと言う訳には行かなかった。

炎熱変換は勿論、何故か全体的にステータスが高いシュテル相手にリミッターがかかったままと言うのはさすがに辛い。

 

本気でやるしかねぇか?

 

そう思い始めたその時、シュテルはデバイスを降ろした。

 

「何のつもりだ?」

「このまま結果が出るまで戦うのも良いのですが、生憎此方も目的がありますので。」

「なっ!?」

 

一瞬、本当に一瞬でバインドがかけられていた。

リミッターを外せば無理に破れないことも無いが、シュテルは転移準備に入っていた。

 

「それでは後程…」

「ま、待ちやがれ!くそっ…」

 

もしかしたら撃墜が間に合う『かもしれない』。

その程度の可能性では全力を出す事もままならない局員って身分が少し歯がゆかったが、だからと言って好き放題やっては犯罪者と変わらない。

とりあえずさっさとバインドを解いて追いかけるしかねぇか…

 

 

 

Side~フェイト=T=ハラオウン

 

 

 

「はっ!」

「うわ!っと…」

 

接近してバルディッシュを振るうも、届かずに空を切る。

 

「なんかシュテるんみたいだね。ボクの方が絶対速いのに追いつかれてるや。『先読み』って言うんだっけ?」

「まぁ、そんな感じかな。」

 

やろうとしている事は危ないはずなのに、レヴィと話しているとどうも調子が狂う。

 

「でも、読んでも追いつけなきゃ意味無いよね。それなら…こうだ!スプライトフォーム!」

「なっ…」

 

宣言するなり、レヴィの姿が変わる。

それは、私の昔のソニックフォームにそっくりだった。

 

まずいな、速いのもそうだけど攻撃力もかなり高い。

ソニックフォームなんて使われたらリミッターかかったままじゃ…

 

「…ってあれ?嘘、もう終わり?」

「え?」

 

どう対処するべきか考えている間に、レヴィはデバイスを降ろして妙な仕草を見せた。

念話か何かで呼ばれたような、そんな反応。

 

「しょうがないな…オリジナル!今は帰るけど、次はちゃんとやってよね!」

「って、それで返す訳にも行かないんだ。」

 

無防備に指を突きつけてくるレヴィ相手に気は進まなかったけど、バインドで拘束する。

とりあえず色々と情報が欲しい所だから逃がす訳には行かない。

 

「む…とうっ!!」

 

自身を拘束するバインドに一瞬顔を顰めたレヴィは、掛け声と共にアッサリとバインドを引きちぎってしまった。

かかってたのに…凄い力だな。

 

「こんなんじゃ全然駄目だってば!またね!」

 

止める間もなく飛んでいってしまったレヴィ。

今の私にソニックフォームに追いつくだけの速度なんて出せる訳もなく、去っていくレヴィを見送るしかなかった。

 

 

 

Side~高町なのは

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

「怪我に封印、本調子にはほど遠い力で良くここまで戦った。だが…もう終わりだ。」

 

見抜かれてる…

 

普段の言動だけ聞いてると慢心だらけに見えなくも無いけれど、速人お兄ちゃんが言っていたように、王として努めるべき部分はちゃんとやっているんだ。

大言は油断や慢心じゃなくて、大物として言ったままの自分であろうとするから生まれる物なんだろう。

 

けど…まだだ。

まだ私は戦える。

 

「貴様の気迫の問題ではない、もう済んだのだ。」

「え…っ!?」

 

ディアーチェちゃんがそう言って私に背を向け…黒い球体から感じられる力が増していく。

 

「ふふふ…ははははは!さぁ時は満ちた!!『砕け得ぬ闇』よ目覚めるがよい!!!」

「しま…った…」

 

強大な力。

とても今の力でどうにか出来るとは思えない。

だんだんと闇が晴れていく。

 

 

 

 

 

「ユニット起動…無限連関機構、動作開始。システム『アンブレイカブル=ダーク』正常作動。」

 

 

 

 

 

闇の中には、金髪の少女の姿があった。

誰かの姿を模した訳ではなさそうな、見た目普通の女の子。

 

けど、彼女の力は絶望的な程に大きかった。

リライヴちゃんと違って、一回り、二回りほど強いとか、そういう次元じゃない。

闇の書の闇、その全部の力を丸々全部保有しているかのような…人型。

 

 

大きな物が強いのは、質量や筋量等、とにかく『総量』が多いからだ。

そして、その『総量』が同じ場合は…『密度』が高いほうが強い。

私の砲撃と同等程度の魔力を凝縮させたリライヴちゃんの魔力刃が、常軌を逸するほどの威力を持っていたのはその『密度』のお陰だ。

 

もし彼女が闇の書の闇と同じだけの力を『人型サイズ』と言う密度で持っていると言うのなら…

 

「ちょっと王様?システムU―Dが人型してるなんて聞いて無いんですケドッ!?」

「え、ええい!やかましい!元々我も名前しか思い出せなんだのは貴様も知っておろうが!第一我等も元々は人の姿ではない!」

「どうしましょ?ちょっと分けてもらうって言っても、あれじゃあ…」

「分けっ…き、貴様アレを見てまだバラす気でいるのか!それでも人の子か!?」

「だぁってぇ…」

 

この状況で呑気に場違いな会話を続ける二人。

多分自分達で呼び出したから制御できていると思ってるんだろう。

 

だから…

 

 

 

「状況不安定…躯体の安全確保の為、周辺の危険因子を…排除します。」

 

 

 

システムU―Dと呼ばれた彼女が、こう呟いたのを聞いてもまるで反応していなかった。

 

 

「くっ!」

 

 

私は口喧嘩をしている二人とシステムU―Dの間に割って入り、攻撃に備えてレイジングハートを構え…

 

 

 

 

 

 

風が吹いた。

 

 

 

 

 

鋏のように私達を両断するように閉じてきた刃。

それを、二人の影が受け止めていた。

 

一人は見知らぬ女性。もう一人は…

 

 

 

「真打登場ってね!なのは、後は俺に任せとけ!」

「お、お兄ちゃん…」

 

 

 

真紅のマントをたなびかせ、黒い服を着て二刀を手にしたその姿は、どう見ても…

 

 

兄、高町速人その人だった。

 

 

絶望的な戦力差、それも、速人お兄ちゃんはリミッター付きの私より低い位の出力しかない。

それでも、私は肩の力が抜けるのを感じていた。

 

 

 

SIDE OUT

 

 




トーマ「トーマ=アヴェニールと」
リリィ「リリィ=シュトロゼックの」
ト&リ「前作解説コーナー!」

『グリフ』
トーマ「殺人技術を幼い頃から徹底的に鍛えられてきた暗殺者で、地球の近接戦闘技術に興味を持ったナンバーズのトーレさんが仲間に引き入れたんだ。技量、力で速人さんを上回っていて、速人さんを含めて何人も殺されかけてるんだ。…リリィ?説明を。」
リリィ「あ…ごめんトーマ。えっと…昔からずっと殺す為の技術だけを磨いてきたからか、近接…特に対等に戦える剣士との殺し合いを好んでいる人で、激戦の末逮捕できたんだ。」
トーマ「速人さんの見立てでは、未だに技量ではおいつけてないって言う師匠の恭也さんと互角かも知れないって凄い剣士なんだ。戦闘では主に長剣一本を使うけど、暗器のナイフなんかも仕込んでいるんだ。」

トーマ「リリィ、どうしたの?」
リリィ「殺す事しかしてなくて…それが当たり前だと思ってて…フッケバインの人達もそんな風になっちゃったのかなって…」
トーマ「…『すぐに慣れる』って言ってたからね。」
リリィ「トーマ…」
トーマ「俺はならないし、慣れるつもりも無いよ。だから、一緒に頑張ろう。」
リリィ「…うんっ。」



リライヴのカートリッジは魔力制限受けた為搭載した機能です。
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