なのは+『永遠の空』   作:黒影翼

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第五話・初邂逅の終わり

 

 

 

第五話・初邂逅の終わり

 

 

Side~高町速人

 

 

ばれたら問題だとか言っておきながら大事になってしまったので結局アミタと共に割り込んだ俺は、赤い刃が消えた所で刀を納めて金髪の少女と向かい合った。

 

「アミタ、そこの白い公務員は俺の妹だ。協力するなり連絡手段確保するなりしてやってくれ。その後は任せるが、一人で無茶するなよ!」

「わ、分かりました!って、速人さんは?」

 

アミタが俺の心配をしてくれる。

 

単独で突っ走るかと思ったけどさすがにそれは無いか。

ま、俺達未来の技術情報握ってたりするし、放置も出来ないよな。

 

「俺はあの娘とちょっと遊んでくる。」

「って一人でですか!?それこそ無茶ですよ!!」

「心配無用!なぜなら俺は…ヒーローだ!!」

 

立てた親指を自分に向けて大見得を切る俺を見ながら、開いた口が塞がらないと言った状態のまま浮かんでいるアミタ。

 

ちゃんと安心させたかったが、いつまでも雑談を交わしている状況でも無いので、宙に浮かぶ金髪の少女と向かい合う。

 

 

 

目の前に、巨大な爪を持った黒い手が浮かんでいた。

 

「うぉ!?」

 

間一髪バックステップでかわすと、目の前で巨大な手が閉じた後消えていった。

少女の両肩辺りにある赤い霧のようなものが魔法陣のような役割を果たしているらしく、先の黒い手はその霧から生えていた。

少女が手で握り拳を作っている所を見ると、動作はシンクロしているらしい。まぁ魔法である以上あまり信用しすぎるのもどうかとは思うが。

 

「…貴方では…駄目です。」

「へ?」

 

唐突に、悲しげな口調で呟く少女。

いきなり駄目ですとか言われても、一体何の話だ?

 

「貴方だけじゃない…私に近づけば、皆壊してしまう。だから…」

「何だお前もそんなタイプか。」

「え?」

 

伏目がちに悲しげな声を漏らす少女。

そのテンプレート的な内容に、俺は思わず呟きを漏らした。

 

「ロクでもない事ばっかりあって、それが当たり前になってるんだろ?なのは達なら気休めにしか聞こえない事を心の底から言えるんだろうが、人の寿命軽く上回ってそういう目に振り回されてきたとなると信じられないもんだよな。」

「分かったような事を…言わないで下さい。」

 

『自分は出来たから貴女もやってみよう』ってのは絶望絶頂期の方には嬉しくないかと思ったんだが、あてが外れたらしい。

 

「何処か間違ってたか?それとも、お前なんかにわかるはずが無いってノリか?…っておぉ!?」

 

再び振るわれた巨大な腕をかわす。

 

「…失礼です。」

「そりゃ悪かった。」

 

俺は少し不機嫌そうな少女に素直に謝った。

どうやら心中言い当てたらそれはそれで駄目らしい。

やっぱり女子って分からないなぁ…

 

「それに貴方では絶対に無理です…私を制御するどころか、壊すことすら出来ない。」

 

諦めているような少女の視線。

確かに彼女は、全開のなのは達だってどうにかできる相手じゃない。

それが技量的な問題であるなら俺の参戦余地は十分あるんだが、『出力差』ときている。

 

彼女の言う通り、俺の『出力』じゃ防護服に傷をつけることすら出来ないだろうな。

 

「水滴石穿。」

 

呟いた四字熟語を聞いた少女が、小さく首を傾げる。

 

「管理外世界で使われてる非日常的言葉なんて分からないか。」

 

鞘に収めていた二刀を抜く。

途中の一回はともかく、基本的に自分の意思で攻撃をしている訳では無いらしいから、ただ話し合いと言う訳には行かない。

 

「折角だから色々教えてやるよ。水が石を破壊することだってある…ってね。」

 

交戦すると決めた俺が二刀を手にそう告げると、少女は悲しげな目のままその腕を振り上げた。

 

 

 

 

Side~高町なのは

 

 

 

何をやってるのか?

どうしてこのタイミングで来れたのか?

あの規格外の力の持ち主を一人で相手にするつもりなのか?

 

色々聞く事はあったのに、一緒に現れた女性と少し言葉を交わしたお兄ちゃんは、すぐに金髪の少女へと向かっていった。

念話をかけることも考えたけど、技量勝負のお兄ちゃんが他に意識を裂くような真似は避けたほうがいいと判断した私は、とりあえず…

 

「えぇと…貴女は?」

 

お兄ちゃんと共に現れた見知らぬ女性の素性を聞く事を優先する事にした。

当然細かい話は後になるだろうけど、最低限聞いておきたい事はある。

 

「アミティエ=フローリアンと言います。アミタと呼んで下さい。」

「うん。」

 

明るくて真っ直ぐな目をしてるアミタ。

お兄ちゃんが連れて来た時点で大体察してはいたけど、悪い人じゃないみたいだ。

 

後聞くべきなのは…

 

ディアーチェちゃんを手伝っている、アミタと『全く同じデザインの』色違いの服を着ている女性との関係位か。

 

「…それで、追ってきてどうする気?お姉ちゃん。」

「『どうする気?』じゃありません!こんな大騒ぎ起こして迷惑かけて!」

「迷惑かけたのはお姉ちゃんの方でしょ。あんなか弱い人間一人を『砕け得ぬ闇』と戦わせるなんて正気?」

「それはそうですが…正体もよく分からないまま彼女を起動させた貴女にだけは言われたくありません!」

「言われちゃったわね、残念。」

 

けれど気になった二人の関係も、当人達の口論ですぐに判明した。

 

「後にしてアミタ。」

「後にしろ桃色。」

 

そのままじゃ話が進まないと思ってアミタをとめるのと殆ど同じタイミングで、ディアーチェちゃんも妹さんを止める。

 

「消耗した塵芥と桃色の姉、我一人ですらどうにでもなりそうな相手だが…」

 

言いながら、私をじっと見つめるディアーチェちゃん。

暫くそうしていたかと思うと、肩を竦めて息を吐いた。

 

「…まぁよい。愚かにもその程度の力で我等を庇おうとした貴様の度胸に免じて今回は見逃してやろう。」

 

いつも通りというべきなのか、物凄い上から目線で告げられた言葉に苦笑する。

 

「見逃せないのはこっちなんだけど…逮捕とは言わないから話を聞かせてくれないかな?」

「ふん、そこまでする義理は無いわ。」

 

問いかけてみたものの、一蹴された。

義理って言うか、それだと見過ごす訳にも行かないんだけど…

 

でも、ディアーチェちゃんが素直に答えてくれると言うのも想像できない光景だった。

 

「お姉ちゃんも、動かないほうがいいわよ?あたし一人に勝てないんだから、お隣さん守りながらじゃ二人相手に出来ないでしょ?」

「キリエ…っ!」

 

妹さんの…キリエの軽口に、困ったようにしているアミタ。

さすがに守って貰わなくても大丈夫だけど、今の力でディアーチェちゃんと互角に戦うのには難があった。

 

戦う気の無い二人。

火に油を注いでも返り討ちにのは明らかで、動くに動けなかった。

 

「それじゃあ何でここに残ってるか聞いてもいいかな?」

 

戦えないならそれはそれで、少しでも情報を集められないかと思って話を持ちかけてみた。

こっちの増援が来る可能性だって考えているだろうし、二人が残っているのは少し不自然でもある。

 

「敵だと言うのにやかましい奴だ…様子見に決まっておろうが。」

 

言いつつ少女とお兄ちゃんの戦う方向に顔を向けるディアーチェちゃん。

 

詳しくは分からないけど、元々はあの少女を手に入れようとして起動させたんだ。気がかりなのは分かる。

彼女を助けに行かないのは、速人お兄ちゃん一人が相手ならその必要も無いからだろう。

 

二人を放置するのも気が引けるけど、私もお兄ちゃんの援護に回るべきかな?

そう思って戦っている速人お兄ちゃんのほうに視線を移した。

 

 

 

Side~高町速人

 

 

 

下方から飛び出してくる巨大な棘のようなものを横っ飛びでかわす。

あまり回避行動でばたばたしたく無いんだけど、攻撃範囲そのものがバカでかいと紙一重で避けても大きく動く事になる。そのせいで中々近付き辛い物があった。

 

しかも両肩の赤い霧のようなものからは何が出てきてもおかしくない。原理もよく分からない位だし。

 

「風翔斬『ウィンドスラッシャー』!」

 

発生から着弾までの速度が最速の風の刃。

見てから対処する事がほぼ出来ないその刃を眼前の少女は棒立ちで受け…

 

 

 

刃が涼風のように消えた。

 

 

 

うわぁ…ダメージが通らないとか言うレベルじゃないぞ。防御もしてないのに攻撃届いてないし。

少女は俺を見ながら静かに諦めたような呟きを漏らす。

 

「だから…貴方では無理だと言ったんです。」

「なるほど、これなら普通そう思うな。」

 

まるで近づけず回避で手一杯。距離を置いて攻撃しても牽制の役割すら果たさない。

一般人なら手詰まりと嘆く所だろう。

 

「…どうして、笑えるんですか?」

 

この状況で俺が笑顔なのを疑問に思ったのか、静かに問いかけを漏らす少女。

 

「まぁ、手はあるし。」

 

アッサリと言ったからか余計に怒らせてしまったようで、霧から巨大な手を出して振り上げる少女。

当たれば間違いなく一撃で死ねるそれは、俺に向かって振り下ろされ…

 

 

 

俺はその手の『爪と爪』の間を跳躍して抜けた。

 

 

 

「っ!?」

 

跳躍の勢いをそのままに旋回して、すれ違いざまに少女の肩に一閃を叩き込む。

迫力はあるが、恐らく訓練もなにもなく力を振るってるだけだろう攻撃なんて簡単に避けられる。

 

いつも通り空中で『着地』した俺は…

 

「もしかしたらとは思ったけど…実際にこうなるとさすがに驚くな。」

 

罅だらけになっている自分のデバイス、ナギハを見つめて息を吐いた。

どうやら彼女は俺の攻撃を『常時防御』系統だけで耐え凌ぐらしい。

 

「白兵戦プログラムでの迎撃は困難…範囲攻撃に切り替え。」

「げ…」

 

すれ違ったまま振り返る事もなく告げられた嫌な言葉の直後、俺は海中に沈んでいった。

 

 

 

Side~高町なのは

 

 

「っ…」

 

 

私が視線を移すと同時に、お兄ちゃんは吹き飛ばされ海中に沈んでいった。

 

 

 

単純魔力の放出による魔力波の直撃。

普通はそよ風のような物なんだろうけど、オーバーSにもなるとそれだけで高威力攻撃になってしまう。

まして、あの少女の力じゃ…

 

「お待たせしました。」

「ただいま王様。」

 

唐突に聞こえた声に再び視線を戻すと、ディアーチェちゃんの傍らにシュテルちゃんとレヴィちゃんがいた。

 

燃え盛る魔力を纏ったシュテルちゃんと、水色の魔力を纏ったレヴィちゃん。明らかに『違う』二人。

でも、この二人がここに来たって事はフェイトちゃんとヴィータちゃんもついて来るはず。

 

 

無事…なら。

 

 

嫌な想像を断ち切り、集中する。

現れてすぐに臨戦態勢に入る二人を、ディアーチェちゃんが手で制した。

 

「引くぞ。」

「え?何で?起動したんじゃないの?」

 

レヴィちゃんが金髪の少女を指差して不思議そうな声を漏らす。

シュテルちゃんも同じく少女に視線を向けた後、何か納得するように小さく頷いた。

 

「やはり、このままでは駄目なのですね。」

「我も問答無用で排除しようとしてきた、今のままでは制御もままならんだろう。あやつが狂う前に全てを済ませねばならぬ。桃色、貴様はどうする?」

「エグザミアが少しでも手に入ればいいんだけど…王様が制御した後あの娘に頼んでくれるなら無理はしないわ。危なそうだし。」

「ちょ、キリエ!待ちなさ…っ!?」

 

呑気に会話を交わす彼女達を止めようとしたのか、アミタが少し近づいたその瞬間、私とアミタの身体を、朱色のバインドが取り巻いていた。

このバインド…シュテルちゃんのだ。

 

「ふん…騒がしい塵芥共め。貴様等の相手はいずれしてやろう。」

「それまでにちゃんと全力出せるようにしておきなよ?つまんないから!」

「それでは、ごきげんよう…」

「またねぇん!」

 

動けない私達にそれぞれコメントを残して四人が消える。

いつの間にか金髪の少女も姿を消していた。

 

「キリエっ!…あの娘はもう!」

 

アミタが憤りを見せる中、私は静かな海を眺めていた。

フェイトちゃんたちはまだ来ない。

スバル達だって、欠片とは言え私達の偽者相手じゃ簡単に勝つことは出来ないだろう。

 

早くしないと…お兄ちゃんが海にいるのに…っ!

 

意識を失ってしまっていたら、どんな人間だって海中に沈んで生きていられる訳が無い。

でも、今の力じゃバインドを解く事すらままならなくて…

 

 

唐突に、背後からバインドが切断された。

 

 

フェイトちゃん達がきてくれたのかと後ろを振り返る。

 

 

 

「何か慌ててるな、探し物か?手伝うぜ。」

 

 

 

背後では、全身びしょ濡れになった速人お兄ちゃんがまるで何事もなかったかのようにたたずんでいた。

 

「あ、速人さん!無事だったんですね!」

「爪があたらなくて勘に触ったのかな?あの娘怒って単純魔力波全方位放出なんて真似してきてさ…」

 

笑いながらアミタと会話するお兄ちゃん。

私はそんなお兄ちゃんに向かって握り締めたレイジングハートを振りぬいた。

 

「うぉ!いきなり何だ!?」

「分かってて言ってるでしょ!?こんな時にまでふざけないでよもう!!」

 

海中から出てきた人に背後を取られて、それが誰かも気付かないなんて事はまずありえない。

つまり、悪戯気分で気配を隠して近づいてきたんだ。

割と本気で怒っている私から目を逸らしてバツが悪そうな顔をするお兄ちゃんを見る限り、私の予想は当たっているんだろう。全く…

 

「とにかく話は聞かせてもらうからね?アミタはともかくお兄ちゃんの方は」

『それなんやけどちょっと面倒な事になっとるんよ。』

 

言いかけていると唐突に通信が開く。はやてちゃんからのものだった。

背景に写るすずかちゃんの家の中の映像は、はやてちゃんが地球に来ていることを示していて、傍らには交替部隊の関係もあって残っているはずのシグナムさんも一緒に立っていた。

 

『そんなわけで皆には直接戻ってきてもらう事になったから、なのはちゃんも戻ってきてな。速人君も、逃げんと顔出してな?クロノ君からちゃんと話聞いとるから。』

「OK、分かってる。それじゃ行こうぜなのは、アミタ。」

「え、あ、うん。」

 

はやてちゃんもお兄ちゃんも大体状況が分かっているみたいで、私だけ困惑しながら帰り道を飛ぶ事になった。

 

当たり前のように、今回も事件の傍にいる速人お兄ちゃん。

本当ならいちゃいけない…頼っちゃいけないのに。

 

結局頼らなきゃいけない現状が、少し悔しかった。

 

 

 

SIDE OUT

 

 




トーマ「トーマ=アヴェニールと」
リリィ「リリィ=シュトロゼックの」
ト&リ「前作解説コーナー!」

『風翔斬『ウィンドスラッシャー』』
トーマ「風の刃を飛ばす魔法…って言っていいのかな?」
リリィ「魔力の風を使ってる以外、魔法としては殆ど制御してないから、変換した魔力を振るってるだけに近いと思うよ。フェイトさんの雷とかと同じで。」
トーマ「斬撃に乗せて刃を放つんだけど、速人さんは抜刀で使う事が多いんだ。本人も言ってた通り、発生してからだと真人間じゃ防御も回避も間に合わない程速い。」
リリィ「フェイトさんでも駄目なのかな?」
トーマ「移動速度が速いのと、人間の反応の限界とは全く別物だって聞いたから、厳しいんじゃないのかな?分かってれば全方位防御張ってるだけで防げる程度の威力しか無いみたいだけど…」

トーマ「うーん…」
リリィ「どうしたの?トーマ。」
トーマ「何か速人さんに近いものを感じるんだよな…何処が近いのかは分からないんだけど…」
リリィ「戦闘スタイルが主役っぽく見えないところじゃないかな?速人さんは元々暗殺者だったし、トーマは黒騎士の格好が…ってトーマ!?放心しないでトーマ!!」


普通の力じゃ防御崩す事すらままならないU―D相手だと速人でも厳しいものがあります。
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