【いろはの家】
トントントントン…
グツグツ…
よし、できた。
ふむ…我ながら良い出来です!
先輩に「何食べたい?」と聞くと案の定「何でもいい」と返ってきたので、先輩が嫌いなトマトは使わないメニューをご用意しました!
ビーフシチューをソースにして煮込んだハンバーグをメインに、シーザーサラダとコーンスープ、それにお漬物で完璧な布陣です。
一応、お米もお酒も用意しています。
先輩の好みに合わせます。
これで胃袋はいただきますですっ!
「せんぱーい、できましたー」
「おぉ、運ぶの手伝うわ」
新婚さんみたい、きゃっ!
「…へぇ、凄く旨そうだな。バランスもいいし、漬物が良い存在感を出してる」
「ふふっ、ありがとうございます。これでも修行中なので、味の感想はお願いしますね」
「あぁ、だが、俺も素人だからな?…よし、米貰って良いか?」
「はい、あなたっ、茶碗」スッ
「ん、さんきゅー。いろはは?」
「あ、じゃあ私のもお願い」スッ
「ほいよ」
あれ?
完全にスルーされてる?
「あなた呼び」と「後輩からため口」ですよ!?
特別な関係にしか許されないであろう、この二つの禁じ手を使っているのにも関わらず反応なしですか!?
ぐっうぅぅぅぅ!
抵抗も拒絶もされないことに嬉しさを感じつつも、作戦がうまくいってないので素直に喜べないぃ!
…なんか、虚しくなってきたなぁ……
ここまで来たら脈なしって思っちゃいそう。
よしっ、もう今日は先輩に感謝する日として頑張ろう!それも、一興です!
「……………」
【浴室】
シャアアアアア…
だ、だめだ、この先輩
綻びを見せてこないから、足掛かりがつくれないっ!
……おかしい、今日は割りと攻めているはず。
んー?
・テニスで汗かいた後抱きつく(事故)
・家に連れ込む
・好みに合わせたご飯をつくる
・ため口を5回ほど
・あなた呼びを3回
・頬についた米を舐め取る
・ドライヤーで髪を乾かして貰う時、あすなろ抱きをさせる
・あすなろ中、上を向いて先輩に甘える(先輩の顎にささって痛かったけど…)
・後ろからハグして胸を押し付ける(それで先輩がお茶こぼしちゃった)
・こぼしたお茶を拭き取る時、際どいところを触る(私がドキドキした)
うん、おかしい。
これだけすれば、反応は出てくるはず。
ちなみに今、シャワーを浴びてる先輩がいる浴室に突撃しようと決心をつけている最中だ。
文字通り、背水の陣。いや、水場は目の前にあるんだけどさ。
逃げることもできないし、何よりお風呂に突入して反応がなかったら、流石に立ち直れないかもという不安が……
米を舐め取ったあたりで変なスイッチ入ってたんだけどねぇ…
ここで逃げるか、それとも……
……よし、私は、逃げない。
逃げても得るものは、束の間の安堵だけ!
…でも、バスタオルはいいよね?ね?
ふぅ……恋愛強者、一色いろは
恋に明け暮れ、先輩を掴むために、参ります!
ガチャ!
「…ふ、やっぱり来たか」
グイッ
「は、はえ?」
気付いたら、ドアの方に先輩がいて、え?
!?
両手も掴まれて……
「……って、冷っ」
「…あぁすまん、流石にそれはかわいそうだな」
あ、熱くしてくれてる…じゃない!
この状況!どういうことですかっ!?
両手を頭の上で拘束されて、両膝の間に先輩の膝が……って、わーわー!先輩の、センパイが……お、大きい……
って違う!これじゃ私が襲われに来た変態みたいじゃないか!
「せ、せんぱい……?これは流石に、犯罪じゃ……?」
「ふっ、声震えてるぞ?それにお前から入ってきたり、部屋に入れたのもいろはだよな?」
「あぁ、えと…そう、ですけど…」
「なら、少なくとも俺から襲ってはいないな。で、何しにきたんだ?」
「…その、すみません」
「謝らなくても、いい。何しにきたんだ
?」
何これ怖いっ!
せ、先輩が先輩じゃないみたい!
先輩のセンパイも普段とイメージ違うし…
考えがまとまらない。
「……ぁ…………ぅ………」ブルブル…
「…ん?答えられないのか?」
「…ちが……す……」
息が、上がる。
呼吸が、乱れる。
荒い呼吸しかしない私に痺れをきらしたのか、拘束してる手に力が込められる。
…ちょっと、痛い。
っていうか、先輩、顔、ちかづけてきーー!?
「さっきまでの気合いはどうしたんだ?俺をその気にさせたかったんじゃないのか?」ボソッ
ガクッ
「おっと!…なんだ?図星か?」
み、耳元で囁かれたのか…私…
めっちゃエロい声だったから、膝に力が入らなくなっちゃった。
本当にこういうことってあるんだ……
今、先輩めっちゃ楽しそうだなぁ。
全部バレてたし、ほんとやらしい。
ちらっと、顔を見たいから視線をあげると、目の前にセンパイが…
「……ひゅ……」ガクリ
「…ん、と、流石にのぼせたか?ったく、しゃーねーな」ヒョイ
「んっうぅ……」
「…これくらいは、してもいいか。我慢してるんだし」モミモミ
「………ふっ……」ピクッ…
「…癖になるな」
という夢を見たのさっ!
って言えたらどれだけ良かったか!
はっきり覚えちゃってますっ!センパイの大きさとか、その、太さ………ああぁぁぁぁ!
違います!私は変態じゃないんですっ!
ただ……先輩に振り向いてほしくて…
あの変態っ!鈍感!ド鬼畜先輩!
……何て、心のなかで毒づいても私の横で眠る先輩には届かなくて……
……何で、腕のなかに私を抱いて眠る先輩のことも分からない。
本当に私じゃなかったら蹴り飛ばされてますよ?起きたら先輩のくせ毛が目に入りそうで怖かったし。
しかも今、何気にピンチなんですよねぇ…
お手洗い行きたいんですよ。それが先輩の腕にすっぽり全身抱かれているので、顔と足しか動かせそうにないんですよね。
足は動かすと、センパイに触れてしまいそうだから最終手段。私も起きたいけど、センパイを起こすわけにはいかない。
だったら、顔?キスで目覚めさせる?
それが出来たら苦労してません!
んー
もう、いいや。色々失ってるし。
寝相うつふりしてセンパイにダイレクトアタック!
「……あっ…」
か、固っ……え!?
どうなってるの!?
ちょ、この体勢から出せる私の力じゃ、センパイに刺激与えれてない気がする。
というか端から見たら、ただこすって楽しんでるだけに見えなくもない。
無理だ。センパイには勝てない……
なら、ここは顔を使う、しか……ないんだけど、この言い方だと美人であることを自覚して使ってる感じがして嫌だ!
んー…耳を咥えよう。
「ぁむっ!」パクッ
「………」
「……んむんむ、んぁ、ちゅぱ」
「…………」
「うぇろ、ちゅる、じゅじゅじゅ……」
私が興奮してきた。
やばい、先輩に抱かれながら耳舐めるの、超楽しいかも…
「んちゅ♪………ぇぅあ!?」ピク
「起きたら耳が冷たいんだが……悪い子は、お前か?」
「っ……えへ?」
「よし、んー」
「……ぁ、ふっ……」
な、舐め返してきたぁ………
しかも丁寧に頭に手を添えて、逃さないようにしてる。
ん?手で私の片耳を塞いできた?
何す……
「チュ」
「ひゅああぁ!?」ビクンッ
あ、これ、まずい
反響して、脳が痺れる
「んーーーーー、ちゅ」
「ぁっ……………はっ………んっ……………ふぅ……」
もう私の頭の中がぐちゃぐちゃです!
先輩のモノが抜けないっ!
あ、いっー……
そう、いえば……
あれ、何て言うんだっけ?
そうだ、三十六計……逃げるに如かず
ふふっ
ガクリ………
「まだまだ甘いな、いろは」ナデナデ
「……っ……………へ…ふ…………」ピクン…ピクン…