「何故だ、何故父を裏切る、和也!」
忘れ去られたかのように古び、廃れた遊園地。かつては多くの人々で賑わっていたであろうそこは、見る影も無く荒れ果てている。日が沈んでいる事もあってか、この廃遊園地の不気味さに拍車を掛けていた。
そんな薄暗い中、動かず沈黙しているメリーゴーランドの前で、二つの人影が相対していた。
片や黄色く輝くラインが闇夜に映える、仮面の戦士。その右手に携えられた黄色い槍も、その存在を示すように輝いている。仮面の戦士が吼える度に、槍の鋒が地面に突き立てられた。
片や闇夜に溶けてしまいそうな、灰色の異形。鷹のような鋭い目に大きな翼を持った、猛禽を彷彿とさせる異形の怪物だ。異形の左手には銀色のケースが携えられている。
仮面の戦士が、再び絶叫する。
「何故解らない!? 何故お前はこちら側に来ない!? どうしてだ!?」
「解る筈無いよな、親父」
対照的に、灰色の怪物は静かに答えながら、その姿を変える。灰色の光に包まれた後のその姿には、先程の異形の面影などは無く、若い青年の悲痛な面もちだけがそこにあった。
ゆっくりと、口を開く。
「力に溺れて、本能の赴くままに動いて……変わっちまった親父に、今の俺なんか解りゃしねーよ」
「……そうか、残念だ」
『Trident Mode』
一変して恐ろしい程に落ち着いた声で呟いた仮面の戦士は、いつの間にか三叉槍へと形状の変化した槍の鋒を青年に向け、再び感情の抜けきった声で言った。
「なら俺は、お前を裏切り者として処分する他に無い。さよならだ、和也」
「……良いよ。俺も、アンタを親父だと思わない。俺の、敵だ」
言葉を詰まらせながらも、青年も意を決したように宣言し、左手に持っていたケースから取り出したベルトを、腰に巻き付けた。次いで右手に収まっていた赤い小型タブレット端末――いわゆるスマートフォンと呼ばれるモノだ――を、唐突に操作し始める。
あからさまに、仮面の戦士の様子が変わった。
「お前、まさかソレは……」
『Standing by――』
端末から甲高い警告音が響き渡る。仮面の戦士に意を介する事も無く、青年は端末をベルトのコネクタに接続、左に倒した。
「変身」
『――Complete』
闇夜に、赤い閃光が走る。
古びた遊園地が、赤に染まる。
覚醒の時。始まりの時。
この力が、絶望的な運命を変えられるのかは、誰も知る由も無い。
遠くない未来、ある国の物語。
世界の大半は、人類の進化形“オルフェノク”に支配されていた。