目が覚めるとそこは真っ白な部屋で、俺は祭壇の上に寝かされていた。
俺の部屋はこんなに殺風景ではないし、少なくともこんな部屋は見た記憶がない。とりあえず体を起こした俺は違和感を感じた。
視線を下に向けると、男にはないであろう二つの山がこんにちはをしていて、横から真っ白な絹糸が視線に映り込んできた。
「…おいおい。」
あまりの出来事に呆然とした俺から聞いた事のない声がこぼれた。
マジかよ、寝て起きたら知らない場所で姿はおろか性別まで変わっているとかどんな悪夢だよ。
「誰か居ませんか~?」
とりあえず人を呼んでみるが誰も来ない。いや、本当に来て裸を見られても困るんだが。あたりを見渡してみるが、とびら以外には何もない。
「とりあえず出るか……っ!?」
ずっとここにいても仕方がないので扉を開けると目の前は壁だった。というか壁しかなかった。スイッチなどが無いか探そうと壁に触れようとした俺の右手はまるで壁など無かったかのように壁の向こうに消えていった。
「もしかして、これ隠し部屋的なやつか?」
何故隠す必要があるのだろうか。あの部屋が儀式的なナニカをする空間だったとして、隠していると言うことは何か後ろめたいことでもあるんだろうか。どう考えても生贄みたいな感じだったしな。
いや、生贄なら何か特別な衣装とかあっただろう。なら、実験体的な? モルモットやネズミ的な役割だったんだろうか。いや、なら祭壇なんて必要なかっただろう。というか何故監視とかしないんだ?目が覚めたら何かしらのアクションを起こしてきそうなものだが…。
もしかしたら今も実験が続いている?
様々な考えが浮かんでは消えていくが取り敢えず置いといて、壁だと思っていた場所から顔を少し出してみると、謎の液体が入っているビーカーや本がたくさんある、まるでそこは研究室だと言わんばかりの部屋だった。
しかし、一番目を引いたのはこれ見よがしに置いてある、ページ半ばで開いたまま置いてある古びた一冊の本である。それを見ると、どうやら日記のようだ。
裏表紙には『佐田 竜二』と書いてあったのでここは日本なんだろうかと思いながらページを巡った。
―異世界生活一日目―
この日私は女神に頼まれ、この世界に降り立った。魔王を倒し、この世界を救うため。道は困難を極めるだろうが、俺の決意に揺らぎはない。
―異世界生活から七日目―
女神さまから貰った力を試してみた。それは色々と制約はあるものの、自らが望むものを創り出すという、恐るべき能力だった。
これがあれば世界を征服することすらもできるのではないだろうか。だが、私の望みはただ一つ。魔王を倒し、この世界の人々を救うこと。
―異世界生活百十三日目―
魔王に対抗できるモノを創り出そうとするも難航している。というのも、能力についてくる制約が問題なのだ。ものづくりの際には強い想いを必要とする。創り出すものに、どれだけ強い想いを抱けるか。私の魔王を倒そうという想いはこの程度のものなのだろうか…。疑問が続く。
日記には、深く苦悶する様子が綴られている。それを境に、少しずつ日本語の部分が減っていき、代わりに謎の文字が増えていったため、読むことができなくなった。日を跨ぐごとに狂気に侵されていったんだろうか。…の割には、この文字にはちゃんと意味があるように思えるな。ということは、この人は本当に異世界へ行って、その言語を勉強していたのか?それに、実は今いるここが異世界で、俺はこの人に召喚的なことをされたのか?あいにくと俺の周りには行方不明になった人や亡くなった人は居なかったしな。それに向こうから呼び出したんなら、何で傍にいないんだ?もしかして何らかの理由で亡くなったんだろうか。
日記を読み終え色々考えていた俺は、一旦考えるのをやめてここから出ることにした。
この日記以外の本はすべて謎の言語(異世界語と呼称しておく)で書かれており、読めなかったので、この日記と適当に一冊持っていくことにし出口へ向かっていたが、途中でたくさんものが入るびっくり麻袋が手に入ったので引き返したりして結果的にこの建物を出るころには、途中で拾った剣にだぼだぼの服とズボン、フードと小さな麻袋の中に入っているその他諸々になり、だぼだぼの服とズボンを縛ったり引き裂いたりしながら動きやすい格好になってから俺は外へ歩き出した。