あの兵器にも平穏を!   作:七色イロハ

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2話

第2話

 

 

  建物から出た俺は周りを見て「やっぱりか。」と言葉をこぼした。出口に向かうにつれて苔が生えていたり所々壊れているのを見て、薄々感じてはいたがやはりこの建物はすでに廃墟となっていた。

 

この規模からして相当立派なものが建っていたのではなかろうか。かなりボロボロではあるが、見た感じ施設というよりはむしろ神殿という方がしっくりくる風貌をしていた。

 

 

 

 「どうすっかな。近くに村か何かあればいいんだが…。」

 

 

 

 しばらく周辺の探索をしていたがめぼしいものはなかったため、そう言って俺は集落を探すことにした。とは言っても近くに高所はないため、適当にぶらぶら歩いて探すことになった。

 

周りは森で囲まれているのでどうしても視野が狭くなってしまう。それに化け物とばったり遭遇しそうで怖いな。

 

 うだうだしてても始まらないので俺は適当に決めた方向にまっすぐ進んだ。

 

 

 

 

 どれくらい進んだだろうか。もうすでにあの建物は見えなくなっていて日も落ちかけているというのに、疲労や空腹感を感じることがないのだ。俺はあの建物にあった日記の内容を思い出していた。

 

 

  ≪魔王に対抗できるモノ≫

 

 

 それは、なにも物である必要はないのだろう。自分が直接操作しなくても自身で考えることができ、敵を圧倒する戦闘力を持った生物兵器。

 

だが、彼には自立思考する兵器を造ることができなかった。だから彼は、他所から魂をひっぱってきて兵器とくっつけようとした。そうしてできたのが今の俺でありこの身体・・・・・・ってとこかな。

 

ではこの仮説が正しければ俺はかなり高い戦闘力を持っているんじゃないだろうか?だったらビームも出せちゃったりするんだろうか。そう思った俺は、天に手を掲げ大声で叫んだ。

 

 

 

 「バ――ストォッ!!!」

 

 

 

 次の瞬間、俺の手から眩い光が辺りを照らし、激しい轟音ともに重い衝撃がのしかかり、予想外の衝撃に俺は腕をおろしてしまった。

 

幸いにも衝撃はすぐにおさまったが、腕をおろした方向の森は一直線に根元からごっそりと禿げ上がっていた。

 

 軽はずみな行動で森をこんなにしてしまったことにちょっと罪悪感を覚えなくもないが、どこか夢のように感じていてパニックになることはなかった。

 

 

 

 

 禿げた向きが進む方向と同じだったので、丁度いい道ができたと思いながらその道を進んでいると、どこからか子供ののすすり泣くような声が聞こえてきた。

 

声がする方に歩いていくと質素な服装の、傷だらけの少女が居た。

 

 

 

 「こんな所でどうしたの?お腹すいたの?」

 

 

 「キノコを探していたら転んじゃって、痛くて歩けないの。」

 

 

 

 俺が声をかけると少女はそう泣きながらそう言った。

 

 

 

 「君はこの近くに住んでるの?」

 

 

 「うん。」

 

 

 

 この近くに村があるんだろうか。でも、何でこんなに怪我してるんだろう?というか一番最初に聞かなきゃだろうに。

 

 

 

 「その怪我は?」

 

 

 「・・・・・・ちょっと転んじゃって。」

 

 

 

 彼女は全身傷だらけで所々に包帯を巻いてあるが、どれも傷んでいるのかいまにもちぎれそうだ。

 

 

 

 「その包帯の所とかは?」

 

 

 「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 何か言えない事情でもあるのだろうか。虐待とかじゃなければ良いけど。

 

 

 

 「お姉さんが君を家まで送ってあげようか?」

 

 

 「ぃや、えっと・・・・・・その・・・。」

 

 

 

 俺が家まで送ろうとすると、彼女はそれを拒んだ。何か帰れない事情があるのだろうか。しかし、ここは森の中で熊だったり猪だったりが出てきてしまったら、この子はきっと逃げ切れないだろう。

 

 

 

 「君、名前は何て言うの?」

 

 

 「・・・・・・・・・」

 

 

 

 彼女は答えない。

 

 

 俺は無理やり彼女を村まで連れて行こうと決め、彼女の体に手を伸ばして気付いた。彼女の体は人間のものでは無かった。皮膚はまるで植物の蔓のようで、傷だと思っていたソレは木が破れたかのようになっていて、それを隠そうと服や包帯のように偽装していたのだ。

 

 

 その事に気づいた瞬間、まるで抜け落ちた記憶が戻ってきたかのような、忘れていた記憶を思い出した様な感覚に襲われ、俺は気分が悪くなりその場に倒れた。

 

 

 

 

 

 目を開けると、そこは今いた場所では無かった。またかよ。周りは闇に覆われ、唯一自分が居る場所を照らしていた。目の前には椅子があり、取り敢えず座ってみるが何も起こらない。

 

 しばらく待っているとコツコツと人の歩く音が聞こえてきた。その方向に振り向くと光に照らされた美しい女性がこっちへ向かって来ている所だった。女性は俺の横を通り過ぎ、俺の座っている椅子とは違う椅子に座った。

 

 

 

 「ーーーさん、あなたは死にました。」

 

 

 

 彼女はそう告げた。

 

 

 

 「あの、死んだってどういう事ですか?」

 

 「ごめんなさい、言葉が足りませんでしたね。死んだのは、あなたが男性としてのあなたの事です。今さっきまでいた、女性としてのあなたはまだ生きています。私は女神エリス、一応この世界の神です。普通は、亡くなったらあちらの女神と会ってから此方へ転生するのですが、イレギュラーがありまして亡くなったあなたの魂がそのまま此方へ来てしまったのです。」

 

 「お、おう。とりあえず俺は生きてるんだな?」

 

 「はい。此方でのあなたは現在気絶しています。」

 

 「俺の、日本だった頃の俺の死因って何なんだ?」

 

 「圧死です。向こうで大きな地震が起きてしまい、あなたの住んでいた家が倒壊してそのまま・・・・。」

 

 

 

 どうやら俺は運がなかったらしい。まぁ、起きてる時に潰されるよりかはマシだからいいか。と言うかイレギュラーってアレだよな。佐田さんがこっちに呼び寄せた事だよな。

 

 

 

 「それで、普通は此方に来る時に能力を授かるのですが、あなたはそのまま来たので与えられていないのでその補填をしようかと思っているのですが・・・・。」

 

 

 「補填?」

 

 

 「はい、この本の中にある能力をどれか一つあなたに授けようかと。」

 

 

 

 いつの間に取り出したのだろうか、彼女の手には図鑑のような大きさの本があった。本を受け取った俺はとりあえずパラパラとめくってみた。

魔法の才能や剣の才能、魔剣に聖剣。他にもチート級の能力がたくさんあったが、いくつかのページには『済』というハンコが押されていた。

 

 

 「この済ってのは選べないやつってことでいいのか?」

 

 「はい、済が押されているのはすでに他の転生者が持っていっちゃったものです。」

 

 

 パラパラとめくっていく中であるものが目に入った。

 

 

 ≪万物を生成する能力≫

 

 

 これは佐田さんが持ってた能力だろう。しかし、そのページにはハンコが押されていなかった。

 

 

 「あの、これを持って行った人って居ないんですか?」

 

 「居ますよ、前回持って行った人はもうなくなったのでハンコが消えたんです。」

 

 「そうですか。」

 

 

 あの人もう亡くなっていたのか・・・・。

 

 

 「じゃあ、これにします。」

 

 

 悩んだ結果、選んだのは佐田さんと同じ能力にした。特に理由はないが、これがあると色々便利そうだなと思っただけだ。

 

 

 「それでは、魔法陣の外へ出ないようじっとしててください。」

 

 「あ、あの!」

 

 

 俺は転送の準備をしている彼女を呼び止めた。これだけは聞かないといけない。

 

 

 「はい?どうかしましたか?」

 

 「俺の今の身体ってどうなってるんだ?」

 

 「あなたの今の身体は、かつてあなたが選んだ能力の前の所持者が創り出した兵器です。あなたが予想した通りで概ね合ってます。あなたの魂をあの身体に埋め込もうとした際に、膨大な時間がかかると予想した彼はあなたを置いて王都へと向かって行きました。ただ・・・」

 

 「ただ?」

 

 「あなたの身体、兵器なので普通の人間とはちょっと変わってきます。まずあなたは他の生物と比べても大幅に戦闘力が高いです。そして食事や睡眠を必要としません。その他にも色々機能が有りますが、それはあの日記に書いてあるので省きます。心配しないでください、向こうに送る際に言語が使えるようにしておくので。」

 

 「分かりました。」

 

 「あ、言い忘れてたのですが・・・・」

 

 「どうかしましたか?」

 

 

 これは色々覚える事がありそうだなと思いながら転送される気満々だった俺だが、彼女が何か言いづらそうに此方を見てきた。

 

 

 「あの、向こうには魔王が居まして、あなたには魔王を倒していただきたいのですが・・・」

 

 「・・・・ちょっと簡単にハイとは言えないんですけど、できる範囲で良いですか?」

 

 「ッはい!それでも良いです!正直断られるかと思いました。それと、近くの村までの簡単な地図を渡しておくのでその村に着いたら『アクセル』と言う街へ向かってください。それでは、あなたに祝福を。」

 

 

 さっきから光っていた足元の光が一段と強くなって俺は反射的に目を閉じた。

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