「あ!司令官!待ってましたよ!」
車に着くと吹雪が車の窓から笑顔で手を振っていた。
「おう吹雪!見張りありがと!悪いけど後ろのトランク開けてくれないか?」
「はい!もちろんです!」
みんながそれぞれ持っていた荷物を全部積み終わり、車体が若干後ろに傾いた車を発進させた。
「提督、帰りに冷たいアイスでもどうだ?」
「あ!いいですね!私もまた司令官のおごりで食べたいです!」
「また…?おごり……だと?」
「ばっか吹雪…」
吹雪はしまったと言わんばかりに口を手で塞いだ。長門は圧のある笑顔で提督に話しかける。
「提督?もちろんこの長門にもおごってもらえるんだろうな?まさか吹雪だけなんて言わないよな?」
「えっえーっと…あ!ほら!もうすぐ晩御飯だから!ね!そうですよね!鳳翔さん!」
「ふふふっ私はいちごのでお願いしますね」
「ほ、鳳翔さーん!」
結局提督は三人分のアイスを買って鎮守府に戻るのであった。
(○○鎮守府食堂)
「お!きたきた!まってたぜ!」
食堂に戻るとそこには既に天龍と龍田がいた。
「洗い物も全部済ませておいたわよ〜なんだかんだみんな全部食べてくれてたわ〜ほら見て、鍋も空っぽよ〜」
洗い終わった鍋を見た鳳翔はにっこりと心底嬉しそうな笑みを浮かべた。
「ふふっなら晩御飯は更に美味しく作らないといけませんね。皆さん、また私に協力してくださいませんか?」
鳳翔の問いに全員で互いに目配せをし、小さく頷いてから同時に返事をする。
『もちろん(です)!』
「みなさん…ありがとうございます!それじゃ私はお魚を捌きますから吹雪ちゃんは…」
鳳翔はそれぞれに料理の的確な指示を出していった。吹雪、龍田、長門、そして次は提督と天龍の番だが…
「提督と天龍さんは……」
鳳翔は少し考える素振りを見せてから提督と天龍に内容を伝えた。
「提督は今日買ったこのピーラーでお野菜の皮むきとお皿の用意をお願いします」
「分かりました!」
「天龍さんは部屋にいるみんなを呼んで来て下さい。嫌がるようでしたらまたみんなでお粥を運びましょう」
「お、おう!任せとけって!」
「それじゃあ行動開始!」
『おー!』
提督の掛け声に元気よく返事をする艦娘達。それぞれが与えられた作業を順調にこなしていき、あっという間にお粥が完成した。完成したのは人参やネギなどの野菜に白身魚も入ったとても具だくさんなお粥だった。今回のお粥は体によさそうだし、何よりとっても美味しそうだ。そんな事を考えていた時、天龍が複数の艦娘を連れて食堂まで戻ってきた。
「戻ったぜ!っておお!いい匂いだなーおい!」
「本当ね!お腹ぺこぺこだわ!」
「雷、もう少し落ち着くんだ」
「二人ともちょっと待ってよぉ」
天龍を先頭に三人の小学生くらいの女の子が入ってきた。
「ん?君たちは…?」
三人の女の子と提督の目が合った。
「私は雷よ!かみなりじゃないわ!あなたが司令官ね!よろしく頼むわ!」
「響だよ。その活躍から不死鳥の通り名もあるよ」
「暁よ!一人前のレディーとして扱ってよね!」
「雷ちゃんに響ちゃんに暁ちゃんか、三人共よろしくね」
『よろしく(ね!)』
三人共一見明るく振る舞っている様に見えたが、提督は三人の弱々しく握られた拳が震えている事と若干潤んでいた瞳を見逃さなかった。今はまだ軽い挨拶程度でいい。この調子で慣れてくれればいいと提督は判断した。
「それとあと…」
天龍が入り口の方を振り向いた時、丁度二人の女の子が入ってきた。
「早く!北上さん!」
「もーなんなのさー…」
ぱぁっとした笑顔で入ってくる雪風に手を引かれてきたのは中学生くらいのおさげの少女だった。どこかのんびりとした雰囲気がある彼女は、提督を見て若干顔を歪めた。そんな北上の様子に気がつかずに雪風が更に話しかける。
「北上さん!一緒に食べましょうよ!」
「あ、あー…ごめんゆっきー。ちょっとね…」
北上は食堂に入りかけたその足を止めた。その後俯いたかと思うと、回れ右をして食堂から無言で出ていこうとした。雪風が掴んでいた北上の左手を引く。
「待って下さい北上さん!」
「だから無理なんだって…私は部屋に…」
「何を言ってるんですかっ…行きますよっ…」
少しの間北上と雪風の引っ張り合いが続いたあと、北上が雪風に冷たく言い放つ。
「…放して」
「北上さん…」
バッと雪風を振り払い、長い廊下の先へ歩み始めた時、雪風が北上に向かってぼそっとつぶやく。
「そうやって…また自分から逃げるんですか」
その言葉を聞いてグッと下唇を噛む北上の表情を見る者はいなかった。震える右拳を握りしめながら北上は廊下の先へと消えていった。
「雪風…北上は…?」
天龍の問いに何も言わず雪風は首を横に振る。その表情はとても複雑で、言葉にし難い感情が現れていた。
「そっか…」
「だ、大丈夫です!雪風が北上さんの部屋に運びますから!」
雪風はいつも通りにぱっと笑うが、その笑顔にはどこか違和感がある。龍田の時の様な不気味な笑顔ではなく、何かを抑圧しているような無理をしている笑い方だった。
『作り笑顔だ』
あの時の笑顔とは明らかに雰囲気が違うと提督達は思った。そんな雪風を見かねた雷が雪風に話しかける。
「雪風ちゃん、私達と一緒に食べない?」
「えっでも…響ちゃんと暁ちゃんはそれでいいんですか?」
突然の事に困惑している雪風の問いに響と暁は考える事も無く答える。
「私はいいよ。みんなで食べる方が楽しいからね」
「もちろんいいわよ!さっ早く行きましょ!」
四人は一斉に鳳翔の所へ向かい、わいわいとお粥を盛り付けて貰った。その様子を見ていると、長門が耳打ちをしてきた。
「提督、雪風に北上の事を掘り下げないのか?」
「それはしない。いや、正確には”無理には”しないだな。おそらくだが雪風ちゃんはまだ俺達に話してくれない何かがある。まだ信頼関係もあまり築けていない今、掘り下げたら逆に雪風ちゃんを追い込む事になってしまうかもしれない。今はまだ向こうから話してくれるのを待つ事しか俺達には出来ない」
「なるほど…確かにその通りだが…」
そんな話し合いをしていた時、吹雪がお盆にお粥を乗せて近付いて来た。
「長門さん!一緒にお粥食べましょう!司令官もどうですか?」
そうだな…そう言おうとした時入り口からまた元気のいい声が聞こえてきた。
「わぁー!いい匂いですねー!お腹空いてきましたよ!」
「すげぇな明石…タイミングピッタリだぞ…」
若干引き気味の提督に明石はドヤ顔で答えた。
「ふっふーん、私のご飯センサーにビビッときましたからねー!」
「明石さん…凄すぎますよ…」
(さっき俺が呼びに行ったんだけどな…)
龍田と一緒にお粥を持って席につく天龍は苦笑いをしつつ心の中でそう呟いていた。提督と明石と長門と吹雪の四人は一つのテーブルを囲み、わいわいとお粥を食べ始めた。…提督ただ一人を除いて
「うーんやっぱり鳳翔さんのお料理は美味しいですね!司令官!」
「え?あ、あーうんそうだな」
曖昧な返事をする提督に吹雪は少しムッとした表情になった。
「……司令官、今私が聞いた事をそのまま言ってみて下さい」
「…すまん、考え事してて聞いてなかった」
「もう、ちゃんと聞いてて下さい!」
「珍しいですね…何かあったんですか?」
もぐもぐとお粥を頬張っている事情を知らない明石がキョトンとした顔で聞いてきた。
「何、ちょっと悩み事があってな…大丈夫、一人でもなんとかするさ」
はにかみながらスプーンを持つ手と逆の手で後頭部をポリポリとかく提督。その仕草が何を意味しているか、提督以外の三人は分かりきっていた。
(提督…)
長門が心の中で提督に問いかける。
(追い込まれているのは…提督も同じなのだろう?)
はい!18話目が終わりました!モチベにも繋がるので感想と評価の方もよろしくお願いします!ではまた次回、19話で会いましょう!
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