提督がブラック鎮守府を変えるだけの話   作:えーぬ

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どうもですっ!22話目を書きました!頻度上げたいけど中々忙しくて上げられないのです…超不定期更新ですがこれからもよかったら見て下さいね!では22話です!どうぞ!


悪夢

北上の放った魚雷は先程と同じ様に航行するレ級へ吸い込まれるかのように白線を引いていった。

 

「ツマンナイナァ…ホントニ…」

 

レ級がそうぼそっと呟いた瞬間、大きな水柱が登った。間違いなく直撃していたはず。無傷ではいられないだろう。心の中でそんな淡い期待を抱いていたが、そんな思いは次の瞬間、完全に砕け散った。

 

「あ…あぁ……嘘…」

 

さぁっと落ちてくる水しぶきの隙間から見えたのは退屈そうな表情をしながらピンピンとしているレ級の姿だった。

 

「ハァ…オマエモモウヨウズミダ……キエロ」

 

北上は膝を震わせながらただ呆然と立ち尽くす事しかできなかった。あの時と全く同じ、何も出来ない自分が心底憎い。そんな北上の絶望を楽しむかのようにレ級はゆっくりと北上に主砲を向ける。

 

「アァ……イイヒョウジョウダネェ…タマラナイ…タマラナイナァ!アハハハハハハ!!」

 

(何か…何か何か何か何か何か何か…何か!!)

 

「ホラホラァ…ジュウ…キュウ…ハチ…」

 

(嫌だ!またあの時みたいに大井っちを見捨てるなんて…!!)

 

「ナナ…ロク…ゴ…」

 

レ級は広角を不気味につりあげながら北上にゆっくりと近づき、主砲を額に突きつけた。一方の北上は全身がガクガクと震わせていて立っているのがやっとという状態だった。

 

「ヨン…サン…二………ギャアアアァァ!!」

 

北上には一瞬何が起きたのかが分からなかった。目の前で歪んだ笑顔を浮かべていたレ級はいつの間にか左目を抑えながら酷く苦しそうにもがいていた。

 

「テメェ…ゼッタイユルサネェカラナァ!!」

 

レ級が右目でギロリと鋭く睨んだ先を追って見てみると、ボロボロになりながらも曲がった主砲を構える大井の姿があった。レ級は大井の方へと素早く近寄っていき、大井の首を右手で掴んで持ち上げた。レ級の右目には片目ながらもはっきりとした怒りが表れていた。大井は重力に従ってだらんと持ち上げられているだけだった。その時、北上の無線に途切れ途切れの弱々しい無線が入ってきた。

 

相手はまさに目の前で瀕死になっている大井だった。

 

北上は震える手を耳に当てて無線を聞いた。

 

 

『……き………て……き……たか……み…さん……』

 

 

次の瞬間レ級は大井に対してゼロ距離で砲撃を行った。大井の頭部が弾け飛び、周辺の海が一瞬で赤黒く染まる。返り血を浴びながらゲラゲラと笑うレ級は大井の胴体を軽々しくぽいっと投げ捨てて北上の方を向いた。呆然と立ち尽くす北上はもはや言葉を放つことすら出来ずに目を見開いてただ口をパクパクさせているだけだった。

 

(また……あの時と同じ様に…守れなかった……)

 

「サーテ…マタセタネェ…ダイジョウブ、スグニオマエモアイツノトコロへオクッテヤルカラサァ…」

 

レ級がニタニタした笑顔で北上の頭に主砲を突きつけた。

 

「キエロ」

 

レ級がそう言葉を発した瞬間、またあのノイズが脳内をかけ巡った。今度は酷い頭痛も伴っていた。北上はあまりの痛みに目を閉じてしまう。しばらく頭痛は続き、ぐわんぐわんと回る感覚もあった。頭痛が軽くなり恐る恐る目を開くとそこにはまた見覚えのある扉が目の前に表れた。

 

(……!?)

 

もう何が何だかわからなかった。あの時確かに額に当てられたレ級の主砲の感覚も生々しく残っている。左腕も力なく垂れ下がり、動かない。どうやってここまで戻って来たかも分からず、ただただ執務室の扉の前に立っているという事実だけが存在していた。

 

「………失礼します…」

 

頭では入ってはいけないと言っているが、体はそうもいかないようだ。手足を震わせながら重たい扉を押すと相変わらず気だるそうに書類を眺める前提督の姿があった。

 

「……戦果報告、早くしろ」

 

「あっ…え……えっと……」

 

親友の大井が轟沈したなど口が裂けても言えなかった。いや、ただその事実を認めたく無かっただけかもしれない。とにかく言葉が詰まり、口から何も出てこなかった。

 

「はっきり言え、こいつがどうなってもいいのならな」

 

(……!!それは!!)

 

大切に大切にしまっておいた大井との思い出の写真が入ったしわしわの封筒をなぜか前提督が持っていた。

 

「……なぜそれをあんたが持ってんのさ」

 

「どうでもいいだろそんな事。お前ら艦娘はただの鉄屑だろうが。こんなくっだらねぇ友情ごっこなんか必要ねぇんだよ。あ、この写真撮った青葉とかいう奴は後で解体しとかねぇとな」

 

そう言うと提督はポケットをごそごそと漁ったかと思うと、残りオイルの少ないライターを取り出した。

 

「……!!まさか!!」

 

考えるより先に体が動いていた。前提督に向かって一直線に走り出し、写真を取り返そうと走り出した。しかし、もう少しで手が届くという所で何者かに羽交い締めにされてしまった。艦娘だろうか。自分より体格は小柄だが、力は北上同様…いや、それ以上に強かった。

 

「あっ……くそっ!!離せ!!!離せよ!!!!」

 

「…そのまま抑えてろ」

 

「はい!司令官!なんなりとご命令を!」

 

必死で振り切ろうともがくが、この状況が変わる事は無かった。

 

「……いいか?お前ら艦娘はただの鉄屑だ。兵器だ。人間の見た目してるからって思い上がるなよ」

 

前提督は北上にそう吐き捨てると封筒ごとライターで火を付けて床へと放り投げた。まず最初に封筒の表面だけ全て焼け焦げ、中から少ないながらも思い出の詰まった写真が剥き出しになった。

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!」

 

北上は言葉にならない叫びを上げた。初めて二人で出撃した時の写真やいつ撮られたかわからない二人の寝顔の写真等、前提督に隠れて撮られたであろう様々な写真が次々に消し炭へと姿を変えていく。全ての写真が灰になった頃には、北上の喉は叫び続けて潰れてしまっていた。

 

「あぁ…ぐぞぉ……」

 

それでも尚、北上は前提督に対して反抗しようとしていた。

 

「……チッ…おい、そいつ早く連れていけ」

 

「……はっはい!ただいま!」

 

北上は小柄な艦娘に羽交い締めにされながら執務室の外へと引きずられそうになるが、全体重をかけて踏ん張っている為、しばらくの間しぶとく耐えていた。その様子を見た提督がうんざりした様な顔をして話しかける。

 

「はぁ…いい加減諦めろって。あの茶髪が一隻沈んだ所で何も変わんねぇだろ?消耗品だからまたいつか建造でもされるだろ。何でそこまであの茶髪に拘るんだよ」

 

 

(……あ?こいつ今何て言った?)

 

 

「……消耗品…?大井っちが…?あたしの大切な大切な親友が消耗品だって…?ふざけんなよ…」

 

北上の中で何かがプツンと切れた。

 

 

『訂正しろよ!!今の言葉あああああ!!!』

 

 

ガラガラの絞り出すかの様な声で叫んだ。しかし体力も限界に近付いているのか、北上は羽交い締めを外す事が出来ずに感情に任せた叫びだけが虚しく響くだけだった。

 

「……あーまじでうるせぇ。いいから黙れよ、ほら」

 

提督はそう言って机の中からハンカチのような布を取り出し、北上の口と鼻に被せた。むぐぐと必死の抵抗を試みるが、みるみるうちに視界が狭くなっていった。提督のニヤニヤした不快な笑みを見たのを最後に、北上の視界は真っ黒に染まった。

 

 

 

(……!!)

 

気がつくと見慣れた天井がそこにはあった。怪我をしていたはずの左腕は何事も無かったかのように動き、汗をかいているのか服からは湿気を感じた。

 

「夢……」

 

放心状態でポツリとそう呟いた時、何かが外れたかのように心の中のドス黒い物が溢れ出て来た。悲しみ、怒り、憎悪、ありとあらゆる負の感情が北上の心をえぐった。

 

「あ…あぁ……あ…」

 

北上は目を見開き、ただ震える事しかできなかった。そんな北上に話しかけるかの様にどこからか大井の声が聞こえた。

 

 

『き…て……北上…さん……』

 

 

(……あーそっか…)

 

その声を聞いた北上はむくりとベッドから起き上がり、生気の無い目でゆっくりと歩き始めた。

 

(始めから…こうすればよかったんだ…)

 

北上は何かを思いついた様な表情になり、ニヤッとしながら空気に話しかけた。

 

 

「大井っち…今からそっち行くね」

 

 

北上はドアを開け、先程と同じ生気の無い目で廊下をひたひたとゆっくり歩き、何処かへと向かい始めた。その口角は脳裏に焼き付いたレ級と同じく、つり上がっていた。

 




はい!22話目が終わりましたー!モチベにも繋がるのでよかったら感想と評価の方もよろしくお願いしますー!ではまた次回でお会いしましょう!

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