お待たせして申し訳ないです!!待ってて下さった方、どうぞ!24話目です!
「なっ……」
提督が言葉を発すると、北上の睨みがより一層強くなったような気がした。目の前にいるこの男が不快で仕方がない。目は口ほどに物を言うとはこの事だろう。
「死なせてよ…何で止めるのさ……」
北上は睨んでる鋭い目線とは対象的に弱々しい声を発した。心なしか声色は震えている様に感じる。
「もう嫌なんだって……大井っちのいないこの世界なんか…何もない……空っぽなんだよ……」
「……………」
提督はただ北上の話を聞く事しか出来なかった。
「私が死んでも誰も傷つかない……気にも留めない…大井っちだって待ってるから……そして何より目の前で沈んでいく大井っちに何も出来なかったあたしが嫌になったんだよ…」
その様な言葉を延々と並べる北上に対して提督は一度深呼吸をし、その口を開いた。
「…北上」
低く重々しい声で北上の名を呼んだ。続けて提督は同じ様な口調で話し出す。
「大井…艦娘の名か…?ふむ…俺にはその子の事はわからないが、今の北上の様子を見たら彼女は一体どう思うんだろうな」
「は?何?説教?うざいんですけどそういうの」
北上の顔には嫌悪の色がハッキリと浮かんでいた。それでも提督は話を止めない。
「俺が大井の立場だったら間違い無く後悔に押しつぶされるだろう。自分のせいであの子を苦しめている…とな。そう思わないか」
「……黙って」
「大切な人との決別は辛い…それはよくわかる…だから前を向い……うおっ!?」
次の瞬間、北上が提督の胸ぐらを掴んで、怒鳴った。
『あんたが知ったような口聞くなよ!!!』
少し弱ってはいるものの、艦娘の力を一切の容赦もなく使われた提督は、足が地面から離れるくらいまで軽々と引き上げられた。
『あんたに何がわかるんだよ!!後ろの安全な場所で指示だけだしているあんたが!!あたしと大井っちの何が分かるってんだよ!!』
目には殺意の色が浮かび、呼吸が徐々に激しくなっていく。
『あんたなんかにわかるわけないでしょ!!ずっと側にいてくれた大切な人を失った絶望感を!孤独を!虚無感を!胸が張り裂けるような悲しみを!分かりもしない癖に知ったような口聞くなよ!!』
ビリビリと辺りの空気が震えるかのようなお腹の底からの叫びだった。一方的に興奮している北上だったが次の瞬間、胸ぐらを掴んでる手が緩んだ。
「えぇ…ちょ……何で泣いてんの?」
北上は激しく動揺していた。提督の目は潤み、とても悲しそうな表情をしている。この時の北上にはその表情の意味がさっぱりわからなかった。
「え……あぁ…ちょっと昔の事をな……」
そう言うと提督は顔を一旦北上から背け、袖でぐしぐしと目元を拭った。それからまた真剣な顔つきで、それとどこか優しさのある眼差しで北上に向き直った。
「……北上の気持ちがわかるなんて軽々しく言ってすまなかった。さっきの発言は北上に対してあまりにも配慮に欠けていた」
そう言うと提督はペコリと頭を下げた。少しの時間の後、提督は頭を上げ、海の方を見ながらボソッと呟いた。
「俺も…職業柄北上と似たような経験があるからさ…」
そう言う提督の顔はどこか寂しげな、まるで思い出を振り返っているかの様などこかさっぱりとしたような表情だった。
「…ただ後ろであたし達を指示するだけなのに?」
「…だからこそだよ」
「……………………」
そこから二人の会話は止まり、なんとも言えない空気が流れていた。長い沈黙の後、空気を先に破ったのは提督だった。
「なぁ北上……その…よかったらなんだが……何があったかとか聞かせてくれないかな…?」
「……………」
提督の問いに無言で答える北上。やっぱり無理かと提督が諦めかけたその時、北上が口を開いた。
「…あんたが先なら」
「へ?」
質問意味がわからず、困惑していると更に北上が言葉を続けた。
「あんたが先に話して。さっきの目…あんたも何かあったんでしょ…?」
まるで心の内を見透かされているかの様な発言に驚きつつも提督はため息をつき、覚悟を決めたかのような表情になった。
「……長くなるぞ。立ち話もなんだし…こっちで話そうか」
そう言うと提督は無言で堤防に座り、北上もその隣に座った。
「さて…どこから話したものかな…」
そう言ってぐいーっと伸びをした後、夜空に輝く星を見上げながら提督は語り始めた。
「……あれは俺が提督になったばかりの頃でな…」
(ここが今日から俺が配属される鎮守府……)
提督の目に映ったのは写真やテレビで見たような大規模な鎮守府とはかけ離れている小さなものだった。それはかつて通っていた地元の小学校といい勝負なのではないかという大きさだった。
「……まさかあんたが司令官?」
まじまじと鎮守府を見ているとふいに横から声が聞こえた。声質からして子供だろうかと思いながら声のする方向へ首を向けると案の定一人の子供が腰に手を当ててこちらを見ていた。中学生くらいだろうか。何やら睨まれているようだった。
(え…えぇ……何この子…怖いんですけど…)
上から下まで一通りジッと見られた後、その子はスッと右手を差し出してきた。
「ま、いいわ。霞よ。よろしく」
「あ、えっと…よろしく」
反射的に提督も右手を差し出し、二人は軽く握手を交した。その手はとても小さく、温かった。それから二人は話をしながら鎮守府へと歩き始める。
「霞ちゃんって本当に艦娘なんだよね?」
「そうよ。事前に説明受けてたでしょ?まさか聞いてなかったとか?」
「……いや、あんまり人間と変わらないなって」
その言葉を聞いた霞はピタッと歩みを止めて深刻そうな顔つきになって改めて話し始めた。
「…司令官、悪い事は言わないわ。私達を人間と同じなんて思わない方がいい」
「え…どうして…」
「簡単な事よ。ここは戦場。そして私達は作戦に従順な人型の兵器。情でも移されたら深海棲艦の様な化け物との戦争なんかできっこないのよ」
確かにそうだ。これから自分がしていく事は深海棲艦からの防衛という戦争であり、時には犠牲を覚悟しなければいけないという事も大いに分かる。それはこれから上に立つものとして当然の事である。霞の言い分は正しい。だが提督の心の中では何かが引っかかっていた。
「……わかってる」
「口だと何とでも言えるものよ。ま、徐々に慣れていくと思うわ」
さらりと言ってのける霞に対して提督は心の中で呟く。
(この子は…俺よりもずっと強いんだろうな)
その後も提督は霞と話を続けた。霞の毅然とした態度に少し怯みつつあったが、ふとある事に気づく。
「ところで、さっきから霞ちゃん以外の艦娘が一人も見当たらないのだが…??」
「ここには私と明石さんの二人しかいないから当然じゃない」
「……えっ?」
「えっ?」
あまりにも間抜けな声が出てしまった。霞も信じられないという目でこちらを見てくる。
「あんたほんとに司令官?自覚無さすぎじゃないの?」
「いやいや!新設だけどある程度の戦力として艦娘が複数人いるって説明をだな…」
「言い訳しない!普通は調べておくものでしょ!?」
「……はい。すいませんでした」
「まったく…」
やれやれと言わんばかりに深くため息をつく霞に提督はどこかデジャヴを感じていた。
(この子には敵わないな…性格が母さんそっくりだ……あれ?俺立場的に上のはずなんだが…?)
しみじみと実家を思い出していると霞の声が再び耳に入り、現実に戻された。
「何ぼさっとしてるのよ。ほら、こっちが執務室よ」
3階の一際大きなドアを開くと威厳のある執務机が提督達を迎え………る事は無かった。実際提督達を迎えたのは部屋に置いてある沢山のダンボールだけだった。
「……ダンボール?」
「ダンボールね」
「……中は全部空なんだが?」
「書類がぎっしり入ってたわ」
「……みかんと書いてあるんだが?」
「美味しそうね」
「最近食べてないな………ってええ!?これだけ!?家具は!?食料は!?着替えは!?確かに発送したはずだぞ!?」
「騒ぐんじゃないわよ…臨機応変に動きなさいな」
「いや明らかにおかしいだろこれ!?」
『落ち着きなさいったら!!』
その瞬間、霞が怒鳴った。
モチベとリアルが絶望的だったのであまり書けませんでした…言い訳ですはい。また次話も書いていく予定ですのでよかったら感想と評価もお願いします!ではまた次回でお会いしましょー!
続き
-
見たい
-
別にいい