「まずはだな、今日本では提督の数が不足しているだろ?だから新しい提督を着任させる事はできない。それは知っているか?」
「もちろん知っているが…だとしたら一体誰が提督の代わりをやるんだ?」
「簡単さ、要はみんなに信頼されていて、どんな事にも真っ直ぐであり、みんなに優しくて時には厳しく、作戦を考えるのが上手い奴がここのリーダーに向いている。極端な話だがそういうもんだろ?」
最も、自分とは正反対なのだが…
「間違ってはいないが…それに該当するような人間なんて今から見つかる物なのか?」
「おいおい長門、誰も人間なんて言っていないぞ?」
吹雪が何か察したように聞いてきた。
「…司令官まさか艦娘を提督に?」
「当たりだ。だが提督というより提督代理の方が正しいかな。でも俺が戻って来るまでの間ここをまとめるんだから事実上提督という事になるな。」
「だが提督、艦娘が運営する鎮守府なんて聞いたことが無いぞ。それに、その条件に合う艦娘なんて…」
「一人じゃ難しいだろうから、何人かで分けて動いてもらおうかなと思ってる。いるだろ?さっき話した条件に合う艦娘達が」
『…あ!』
しばらくの沈黙の後二人は何か思い出したかのように顔を上げた。
「そうだ、彼女達ならそれができる。」
その日の夜、俺は早速その艦娘達を呼び出した。
(さてさて…受け入れてくれるかな…?)
今更の不安を感じていたその時、扉をノックする音が聞こえた。
「入ってくれ」
そう言うと四人の巫女装束の艦娘が執務室に入ってきた
「テートクゥ!失礼しマース!」
「司令!お呼びですか?」
「提督、失礼します」
「司令、失礼しますね」
そう、俺はこの四人、通称金剛型四姉妹に提督代理を任せる事にしたのだ。金剛はその明るい性格からほとんどの艦娘と交流があるし、比叡は真っ直ぐで真面目なとてもいい子だ。榛名は普段から艦娘を優しくも厳しく指導していて尊敬されているし、霧島はその頭脳から俺よりも優れた作戦を練ってくれている。俺はこの四人なら絶対に間違いないと思った。
「四人共よく来てくれた。今から四人に伝えなきゃいけない事があるんだが、どうか落ち着いて聞いて欲しい。いいか?」
普段とは違う真面目(?)な俺の雰囲気を察したのか、四人は黙って頷いた。
「実は昨日大本営に呼び出されて…」
俺はあと少しでここから出ていく事、長門と吹雪と明石を連れて〇〇へ異動する事、俺がいない間四人に提督代理としてこの鎮守府を支えて欲しい事など全て彼女達に伝えた。
「そんな事があったんデスネ…」
金剛達は始めは驚いた表情を見せていたものの、ちゃんと落ち着いて俺の話を聞いてくれた。
「司令!質問してもいいですか?」
「いいぞ比叡、遠慮なしに聞いてくれ」
「司令は〇〇へ行ってからいつこっちに戻って来るんですか?」
ストレートな比叡の質問に若干焦りながらも平静を保ちつつ正直に話した。
「そうだな…わからないというのが答えかな。俺自身〇〇がどんな所なのかあまりよくわかってないし、俺の役目はあくまでメンタルケアだ。時間はかなりかかるだろうね。が、〇〇の艦娘を全員もとに戻す事が出来たらまたこっちに戻ってくるよ。それだけは絶対だ。約束しよう」
「…提督、今絶対って言いましたね?」
「あぁ。男に二言はn…って榛名?」
「あ…あれ?私…何で…こんな…ひぐっ」
榛名の目は真っ赤になっていて、そこからはボロボロと大粒の涙が溢れていた。まるで少女のように泣きじゃくる榛名を前にして俺は言葉を失った。するとおもむろに金剛が近づいて来て耳打ちをして来た。
「テートク、榛名はテートクの事をとっても慕っていたネ…意外かもしれまセンが私と同じくらい…いや、もしかしたら私以上にテートクに恋心を抱いていたと思いマース…」
「そんな…」
言葉が出なかった。まさか榛名がそんな風に俺の事を思ってくれていたなんて思いもしなかった。俺はそんなみんなの気持ちも考えずに自分勝手に物事を進めていたのかと思うと急に自分に怒りが湧いた。自分でも感情がグチャグチャになっていくのがわかる。呆然と立ち尽くしていると金剛が
「これは私からのお願いデース…一回だけでいいカラ…榛名に…ハグしてあげて欲しいネ…」
「ハグ…?」
「そうデース……ハグすると相手も自分も幸せな気持ちになれるネ…だからテートク、榛名を…抱きしめてあげてくだサイ…」
金剛の目は真剣そのものだった。きっと姉として妹の事を心の底から思っているのだろう。その目を見て俺は決心した
「わかった。いろいろごめんな、金剛」
「私は大丈夫デース。それより、榛名を頼むネ…」
「おうよ」
俺は…もう一度榛名に向き合った。榛名は霧島と比叡が慰めていたが、それでも泣き止む様子はない。俺が榛名に近寄って声をかける。
「榛名」
「………」
「お、おい?榛名?」
「…………………」
「榛名!!!」
次の瞬間、俺の体無意識に榛名を抱きしめていた。榛名はとても驚いている様子であったが、それに負けないくらい自分でも驚いている。俺は榛名抱きしめたまま俺なりの気持ちを伝えた。
「俺はまた…鎮守府のみんなに会う為に帰ってくる事を誓うよ。どんな事があっても俺は絶対に戻って来るから。それがいつになるかはわからない…それでも…待っててくれ…頼む」
その言葉に榛名の体は小さく震えながら泣いていたが、次第に落ち着いてきてやっと口を開いてくれた。
「約束ですからね…絶対…絶対ですからね…!!」
そういうと今度は榛名が俺を強く抱きしめて来た。俺は何も言わずにただ榛名を抱きしめていた。それからどれくらいの時間が経っただろうか。ゆっくりと榛名が俺から離れた。
「提督、ありがとうございました。すいません。お見苦しい所を見せてしまって。」
「むしろ謝るのは俺の方だ。俺の身勝手で榛名を…いや、ここの鎮守府のみんなを悲しませてしまって本当に申し訳ない。俺がいない時…金剛達と鎮守府の運営を任せてもいいか?」
すると榛名はとびっきりの眩しい笑顔で
「はい!榛名は大丈夫です!」
と言ってくれた。
(Oh…榛名のあんな顔見た事ないネ…)
(榛名…可愛すぎます!)
(お姉様…よかったです。本当に)
「よし、そういう事で今後の鎮守府運営は金剛型四姉妹に任せる!いいな!」
『はいっ!』
四人で元気一杯の返事を返してくれた。彼女達ならきっと困難があっても乗り越えてくれるだろう。金剛達がドアを開けて自室へと帰って行く。
「まさか提督にそんな考えがあったとはな…見直したぞ」
「そうですよ司令官!私なら思い付きもしませんでした!」
「だろー?最初から全部決めてあったっての」
咄嗟の判断だったが、どうやら上手くいったようd…?
「な、なんで二人ともそんな呆れたような目で見てくるんだ?」
「なんでもないぞ」
「そうですよ!なんでもありません!」
「………?」
(司令官はわかりやすすぎです…結果オーライといえ即興で考えたんですね…)
(提督は案外ちょろいんだな…)
その時、俺の右手が後頭部をかいていた事に俺は気がついていなかった。
「ま、今日はもう解散しようか。ゆっくりお風呂にでも入って疲れを取ってくれ」
「そうだな、では私は先に失礼するぞ。提督、また明日な」
「それでは司令官、おやすみなさい!」
「あぁ、おやすみ二人共」
二人とも自室に帰っていく。そして執務室で一人になったのを確認して
「……………クソッ」
バァン!と机を勢いよく叩いた。わかっている。悪いのは自分であると。いくら元帥に押し付けられたとはいえ反論の一つも出来ずに自分の保身の為に受け入れた上、ここの艦娘の気持ちも考えずに勝手に行動している。そう思うと自分自身に嫌気が差してくる。
「…俺はどこまでダメな提督なんだろうか」
その一言が虚しく執務室に響いた。情けなく、弱々しいその声は誰にも聞こえる事無くただただ空気の中へ消えていくだけであった。
その後、いつも通りお風呂に入って歯を磨き、布団に入った。
「明日はみんなの前で言うってのに…全然眠れないや…」
何て言ったらみんな納得してくれるだろうか…そんな事を考えていたら自然と眠りに落ちていった。
「…朝か」
そう、一日は平等にやって来る。朝のルーティンを終えたその時。館内放送が流れた。
『おはようございます。鎮守府内の全艦娘及び提督は第一ホールへと至急集まって下さい。繰り返します。鎮守府内の全艦娘及び提督は第一ホールに至急集まって下さい。』
「ついにこの時が来たか…」
俺は重い足取りで第一ホールへと向かった
さて、3話目も終わりました!次回作も妄想に任せてしっかりと書いていくので、応援よろしくお願いします!辛口でも大歓迎なので感想と評価、お願いしますー!ではまた次回でお会いしましょう!
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