(と、とりあえずお米から探さないと…)
辺りをキョロキョロと見回していると、客と思われる人達がどんどんと商店街から離れていった。
「司令官…なんか私達あまり歓迎されてないようですね…」
「そうだな…っと、あそこならお米が売ってそうだ」
二人は少しの不安感を覚えながらも、米の売っている店に向かった。
「すいませーんお米を売って欲しいんですけど」
「…………」
すると店長と思われるガタイのいい男性が奥から無言で大量の米を持ってきた。
「…早く持ってけよ」
「えっあの…お代は…?」
店長は提督達から目を逸らしながら呟いた。
「どうせお前ら軍の奴らは金なんて払わねぇだろうが…」
「いや、払います!」
「そういうのいいからさ、早くどっか行ってくれねぇか?商売が出来ないんだが」
「……わかりました。吹雪、お米を運んでくれ」
「はい…」
吹雪は悲しそうな顔をしつつも、大量の米を軽々と担いだ。
「では今後ともよろしくお願いします!それじゃ!」
その瞬間提督は米の代金を置いて逃げるように走って行った。万引きではない。きちんとお金は払っている。
「なっ…」
突然の出来事すぎて店長は驚いてしまった。それは吹雪も同じの様だ。
「あ、お釣りは結構ですのでー!!」
「えっちょっ司令官!?待って下さーい!」
吹雪も急いで提督の後を追いかける。
「なんだあいつ…」
店長は昔起きた出来事をふと思い出した。
「あいつは…前の奴とは違うのかな…」
(一昔前の商店街)
「おら!さっさと食い物をよこせ!お前らが商売出来るのは俺がこの海を守ってやってるからなんだぞ!」
(ん?誰だあいつは…)
複数の艦娘を連れていきなり商店街に入って来たこの男は前任の提督である。艦娘達は皆何かに怯えているようだった。
「今日は肉が食いてぇな…おい肉屋!一番高い肉を出せ!」
「はっはい…こちらになりますが…」
「お、そうか。ありがとなー」
「こちら合計で25000円になります」
「は?金なんか払わねぇよ」
当たり前の様な顔をしてさらっと提督は言った。
「い、いえ…払って頂かないと…」
「……チッ面倒くせぇ」
その時提督は艦娘達を睨みつけて、目で合図をした。ビクッとして怯える艦娘達はやがて震えながら一斉に肉屋に主砲を向けた。
「………この意味が分かるよな?」
「ど…どうか命だけは…」
「最初からそうしてりゃいいんだよクソが」
この後提督は同じ方法で色んな店のありとあらゆる高級食材を根こそぎ奪い取っていった。勿論荷物は全部艦娘達が持っている。
「じゃあな!これは俺が美味しく頂いてやるよ!」
商店街のみんなは下品に笑いながら去っていく提督の後ろ姿をただ見つめるしかなかった。提督はそれからというもの、定期的に商店街に来ては商品を強奪するという行為を当たり前かのように行った。
「よぉ!今日も来てやったぜ!」
その日も提督は数人の艦娘を連れて商店街にやって来た。
『またか…』
商店街のみんなが高い品物の用意をしている時に、一人の老人が提督に声をかけた。
「お前さん、頼むからもうやめてくれんかの…?隣のお嬢さん達も可哀想じゃ…」
(なっ…喫茶店のじいさんじゃねぇか!何やってんだよあんなとこで!)
「あ?何だジジイ。目障りだからどけよ」
「わしはどかん…もう一度言う。もうやめてくれ…」
「あーうぜぇ」
提督はみるみるうちに不機嫌になっていく。その日は特に機嫌が悪かったのか、提督は最悪の命令を出した。
「……やれ。やらなかったら解体だ」
その一言で艦娘達は自分達に何をさせようとしているのかが一瞬でわかった。ガタガタと震える手で一斉に主砲を老人に向ける。だが構えただけで引き金を引こうとする者は誰一人としていなかった。引けなかったのだ。
「おい、何してんだ。さっさとやれ。提督命令だ」
「………………できません」
一人の艦娘が今にも消えてしまいそうな声で言った。
「あ?てめぇ何言ってんだ?優しい俺はラストチャンスをやろう。さっさと撃て」
「……できません!」
その艦娘は振り絞るかのような大声で叫んだ。と、その瞬間商店街に物凄く鈍い音が響いた。提督が逆らった艦娘の腹部に強烈な膝蹴りを入れたのだ。
「カハッ…ゴエェ……ゲホッゲホッ…」
提督はその後倒れ込み、必死でお腹を抑えながら痙攣する艦娘の髪を掴み、引きずりながら車の中に投げるように放り込んだ。商店街の子供達が泣き叫ぶ。そんな子供達に対して「大丈夫だから」と優しく微笑みかける艦娘の髪をも掴んで車に放り込んだ。
「この無能共は全員解体だ。また新しい奴を連れて来るから次までにもっと高い物を用意しとけよ」
そう言い残して去っていく提督の姿は商店街のみんなの脳裏にしっかりと焼き付けられてしまった。しかし、この日以来提督と思われる人物は一切来なくなった。理由は分からなかったが、特に気にする様子もなく、商店街の人達は商売を始めた。それからしばらくしてみんなが事件を忘れかけていた頃、また軍服を着た青年がセーラー服を着た艦娘と一緒にやって来た。商店街がざわざわと騒がしくなる。
(なっ…また新しい奴が来たのか…どうせ隣の艦娘に脅されるんだろ…わかってるよ…)
商店街のみんながそう思ったが、実際は違った。新しい提督は代金よりもお釣りのが多いんじゃないかという額のお金を置いて逃げていくし、それを追いかける艦娘の表情もどこか楽しそうだった。
(あいつは…前の奴とは違うのかな…艦娘の嬢ちゃんも幸せそうだったし…もしかしたら悪い奴じゃねぇのかもな…)
「……もし次ここに来たら少しは歓迎してやるか」
店長はそう決めてまた普段の営業に戻った。
「ハァ…ハァ…俺…めっちゃ運動不足だな…」
「し…司令官…急に…走り出さないで下さいよ…」
提督と吹雪は息を切らしながら車の前まで戻って来た。
「わりーわりー…お金は払うべきだし…あそこでちゃんと渡しても…返されるだけだって…」
「確かに…そうですね…」
「あ、吹雪…お米…ここに積んでくれ…」
「はい…よいしょっと…積み終わりましたー…」
「よっしゃ…じゃあ…帰るか…」
提督が車を走らせる。
「司令官!帰りにアイス買って下さい!」
「しゃーねーな…内緒だぞ?」
「やった!約束ですよ!」
「はいはい」
(俺もまじで運動しないとな…長門におすすめの筋トレ方法でも教えてもらうか…)
そんな事を考えながら二人は鎮守府に戻った。
(〇〇鎮守府工廠)
「んーっと…それらしき建物は…っとあれかな?」
明石は大量の妖精を連れて鎮守府の敷地内をグルッと回っていた。広い敷地内を半分くらい進んだ所でぽつんと一軒だけ立つ古びた小屋を見つけた。
「お、おじゃましまーす…」
明石はそっと扉を開けた。
「んー?もっとほこりまみれかと思いましたが結構きれいなもんですね…」
工廠の中は長い間放置されているにしてはそこそこ綺麗だった。そこで明石はある物を見つける。
「おっとこれは…少し用心したほうがいいかもしれませんね……妖精さんもリュックに戻って」
妖精達は一斉に明石のリュックの中に入った。
(床に若干積もってるほこりが足跡型に途切れていますね…しかも結構新しいです…)
それはまぎれもなく誰かが近いうちに出入りしていた事を示していた。それから明石は工廠の奥の方の作業スペースらしき場所にたどり着いた。そこにはいろんなノートやメモなどが大量に散乱していた。
「工廠施設としては何とか運用出来そうですが…片付けだけで今日は終わってしまいそうですね」
明石が苦笑しながら整理を始めたその時、後ろから何者かに声をかけられた。
「……君は誰だい?」
明石が振り返るとそこには小学生程の銀髪の少女が立っていた。態度こそ毅然としている物の、彼女の目はまるで何かに怯える子犬のようにうっすらと涙を浮かべていた。
はい!という事で八話目も終わりましたー!応援して下さっている方、いつもありがとうございます!重ねてになりますが、感想と評価の方もモチベが上がるのでぜひお願いします!ではまた九話で会いましょう!
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