俺のサーガはセカンド・シーズンから始まるようだ   作:魔女太郎

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第四話「エピソード魔王とか、エピローグ途中とか」

「見つかりましたよミナトさん!」

「おー、そっちにあったか」

「普通にドラゴン倒すのより疲れちゃったわ、はやく帰りましょ」

 

 さて、山を吹き飛ばしてしまった俺と二人は、けれどそのまま帰るわけにも行かず。

 跡地へと、ドラゴンが退治できたのかの確認と、剣の捜索に時間を費やしていた。

 

「しかし、街中とかでなくてよかった」

 

 思い返せば宿屋でベルを投げた時も、寝ぼけていたのが幸いして力加減がセーブできていたのかもしれない。それにしたって、テーブルとイスをまとめて巻き込んでいたのだから、すごい勢いではあったのだろうけれど。謝罪が遅れて申し訳ないと伝えると「まあ、ベルは丈夫ですから大丈夫ですよ」と、痛むところもないようだ。

 

「ここらへんはいても魔物だけだから問題ないけどね、死骸がほとんど吹き飛んじゃったの残念だけど」

「あ、もしかしてそれがないとクエストのクリアにならなかったり?」

 

 不安になり聞き返すと、セレメアは一瞬止まってから、なんだか納得したような表情で返す。

 

「そうか、そこらへんも知らないのよね。それを説明する前に、そもそも、なんで魔物とかがこの世界にいるかっていう話なのだけれど。まず、大昔、世界には魔王っていうとんでもない存在がいたの。魔法を用いて世界を改変した王、魔法使いの王、だから魔王。ま、神様みたいなもんとそう変わりない存在として、古文書とかでは扱われているわ」

「魔法はなんでもできる、だっけ。確かに、それの使い手ともなれば、ましてや王ともなれば神様扱いも納得いくね」

「けれど、魔王は勇者に倒されてしまうわ。めでたし、めでたし……と、普通ならここで終わるんだけれど、魔王はとんでもない魔法を使ったの、不死の魔法、いくら勇者に斬り刻まれても、何度でも何度でも魔王は蘇ったとされているわ」

「それじゃあ勇者は負けて、魔王の配下である魔物が蔓延りました、とか?」

「いえ、それでも勇者は魔王を倒したの。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 と、ここまでヒントを貰えば分かる。なるほど、それなら確かに、魔物の死骸は重要だろう。

 

「分解して、最も小さき粒となった魔王の肉体は今でも、この世界に溢れているわ。それらが溜まり紐付き、形作られたのが魔物。彼らは最早魔王としての知性こそ無いけれど、群れを成したり、あるいはより大きな魔物(ドラゴン)に食われるのを繰り返し、いずれ元の魔王の肉体に合一することが本能に刻まれているわ。だからこそ」

「そこから死骸を掠め取って、再利用したり、分解することで、魔王の復活を阻止してるのか」

「そういうこと。だから、あんまり吹き飛ばしてどっかにやるってのはよくないのよね、知らない間に魔物が食って少しだけ復活へ近づいちゃうから」

 

 そうすると先ほどの行為は、とんでもなく迷惑をかけているじゃないか。ドラゴンがどれくらい魔王に近しい存在なのかは知らないが、かなり広範囲にその死骸は広まっているだろう。

 

「そんな顔しないでも大丈夫よ。そもそもドラゴンなんて本来の魔王の小指の爪の先にも満たない質量だし。それに山吹き飛ばしたくらいなんだから、分解されてるやつもある上、一緒に相当数な魔物も吹き飛ばしてるはずよ。なにより、しばらく魔王は復活しないわ」

「なんでだ?」

「あんたが、それに私達が倒したからに決まってるじゃない」

「え」

 

 いくら一年とはいっても、物語が進みすぎだ。

 流行りはスローライフなんだぜ、と、記憶を取り戻したらまず自分に伝えたいね。

 

「ま、正確に言えば魔王そのものではなくて、その自我を取り戻すほど集合した状態だけれどね。倒すのには苦労したわ」

「ええ、ベルもあのときは絶体絶命だと思いました」

「それって、ちなみにどれくらい前なんだ」

「一ヶ月くらいよね」

「ええ、皆さんで一通りお祭り騒ぎが終わって。脅威が過ぎ去ったし一旦故郷に帰るとか、やり残したことがあるから片付けたいとかで、しばらくのお別れをしたんですよね。で、ミナトさんにセレメアさんが真っ赤になりながら『わわわわわたわた私のかかか通ってたががががが学園に』」

「そこまでにはなってないわよ! ……多分。ともかく、あんたと一緒に学園へ行く途中で、ついでにドラゴン狩ろうとしたら、と、そんな感じね」

 

 記臆を失うのはそりゃ唐突なんだろうけれど、何もそんなエピローグの最中で……間が悪いな俺は。

 

「って、こんな状況じゃ学園どころじゃないわね。ひとまず怪我や病気が原因じゃないか調べたいんだけど……」

「ありがたいけれど、セレメアはそれでいいのか?」

「こ、恋人の方を優先するのは、あああ、当たり前じゃない! それに、元々冒険したくて休学届けは長い期間で出してあるし、邪魔されないように学園へ連れて行きたかっただけで今更特に学ぶことも……」

 

 ぼそぼそと徐々に聴き取れなくなっていくが、彼女の本来の予定をねじ曲げてしまったことに変わりはない。

 一刻も早く、記臆を取り戻さなければ。

 

「じゃあ、病院に行くとか?」

「いえ、もっと確実なのがいいわ。幸い、医療に関しては頂天とってる奴がいるわけだし」

「知り合いなのか?」

「知り合いというか、もっと深い関係よ。あんたにとっても」

「俺にとっても……ってことは」

「ベルわかっちゃいました! クルクスさんですね!」

 

 聞き覚えがある、それはたしか、記臆を失なう前の仲間だという人物。

 

「そう、私達の仲間。前の街で別れたばっかりだから、多分すぐ会えると思うけど……ねえ、ミナト、一つだけ注意して欲しいことがあるの」

 

 出会ってからはじめて見る真剣な表情に、思わずこちらも真剣になる。

 俺は記臆を失っている。対人関係において、齟齬は、綻びは必ず生まれてしまうだろう。事前に、触れるべきではないこと、守らなければならないことを教えてくれるのかもしれない。

 もしくは、そもそも仲間とはいえ、ここまで献身的な二人の方が、特殊ということだってあり得る。魔王……正確には違うと言っていたが、それを倒すためだけに臨時で募ったということもあり得る。心意気が知れずとも、目標が同じだからこそ仲間でいたが、今となっては……ということだろうか。

 あるいは、特別俺とそのクルクスさんが仲違いしていた、もしくはするような何かが有ったか。

 

「あのね、絶対によ、絶対に」

 

 ごくり、と唾を飲み込む。

 

「ぜぇーったいに! 惚れちゃ駄目よ! 綺麗とか思っても! 恋人は私なんだから! 骨抜きにされてたら、泣くんだからね!」

 

 がばりと勢いよくこちらの肩をとる涙目のセレメア。

 

「そりゃ、もちろん俺はセレメアの恋人だから、目移りなんてしないよ」

 

 これほど愛されているとは、我が事ながらすごいな「ミナト」は。

 

「あの、セレメアさん、多分みなさん今のセレメアさんに同じようなこと言いたいこと思いますよ」

「う、わわ分かってるわよ! ちょっとだけ! ちょっとだけ甘い夢見させてよ!」

 

 何やら二人だけの会話をしているのを見つつ。

 

「まさか記憶を失なう前に、二股とかしてないよな……」

 

 俺は俺で、心配事が増えてしまった。 

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