ドラゴンクエストΩ 〜アルテマこそ至高だ!〜   作:ねここねこねこ

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更新がすごい遅くなって申し訳ございません!
実は結構先まで作っていたのですが、話の内容が気に入らなくなってしまい、第二十二話以降の書き溜め分は全て削除して書き直しました。
最低でも自分が面白いと思えない作品は作りたくないので、どうかご容赦頂けますと幸いです。

お詫びも込めて、本日は9,000字弱と少し長めです。

よろしくお願いいたします。



第二十二話

 〝王族の洗礼〟の日。

 朝早くからキーファ達はルイーダの酒場の前で待っていた。

 〝王族の洗礼〟で向かう中級者ダンジョンは冒険者が向かう場所と同じであり、その際に冒険者達よりも王族が優遇されることはない。

 

「待ち合わせ時間って……合ってるよね?」

「そうだな」

「それにしちゃ遅くない?」

 

 朝早くからキーファ達はルイーダの酒場の前で待っていた。

 そう、待っていたのだ。しかし予定時刻よりも二時間ほど過ぎてもレオナが現れることはなかった。

 彼女が現れたのは、そこから更に一時間後。通常の冒険者なら依頼を受けたり、迷宮攻略を開始している時間である。

 豪華な馬車から薄手のドレスに身を纏った少女が出てくる。

 迷宮攻略ではなく、貴族の茶会の方が場に適しているであろう服装で現れた少女だったが、雰囲気は王族のそれであった。

 そして、キーファが一国の王女に相応しい美しさを兼ね備えているということが理解できるくらいの美少女だったため、セブンとアキラは思わず見とれてしまっていた。

 

「おはようございます……レオナ王女」

「ふああ……」

 

 キーファが挨拶をするも、意に介さずあくびをするだけで返事をしない美少女(レオナ)

 その様子を見て、レオナを慌てて諌める者がいた。

 

「ひ、姫様! キーファ王子がご挨拶くださっていますのに、その態度はなんですか!」

「……うるさいわねぇ、アポロは。分かっているわよ! キーファ王子、おはよう」

 

 パプニカの賢者の一人であるアポロの諫言(かんげん)にようやく反応したレオナに対して、キーファは苦笑いを浮かべるだけしか出来なかった。

 そして、後ろにいるアキラ達など気にせず、レオナは話を進める。

 

「それで、今日からここの中級者迷宮をするのよね?」

「ええ。私と……ご挨拶が遅れましたが、今回の護衛になった者達です」

 

 キーファはレオナにセブン達の紹介をする。

 

「セブンです」

「マリベルです」

「……アキラ、です」

「えっ……」

 

 レオナがセブン達を見るなり、明らかに不機嫌そうな顔つきとなる。

 何か粗相をしてしまったのかとキーファ含めて四人は不安になったのだが、レオナの口から出てきたのは、驚くべき内容だった。

 

「ちょっと……こんなに弱そうな人達で大丈夫ー? 途中で死んじゃうとかシャレにならないからやめてよね!」

 

 絶句。この場にいる()()()()が、その言葉に相応しい表情をしていた。

 アポロがレオナを再度(いさ)めようと口を開くが、別の者によってその行動を止められる。

 

「まぁ所詮は冒険者。姫様の護衛には物足りないでしょうが、これも王族の務めゆえ。上に立つ者として、下々を導くのも必要なことかと」

「……それもそうね。なんとかなるかしら」

「バロン殿!! それは──」

「大丈夫ですよ、アポロ殿。姫様には私が教えた『ヒャド』があります。魔物だけではなく、この者達も守ることすら容易でしょう」

 

 アポロは的外れなことを話すバロンと、その言葉に頷くレオナに対して頭を抱えていた。

 キーファに対してだけでなく、グランエスタード王国が選んだ冒険者に対して下に見るような発言、更に貴族階級ではない者に対しての発言。

 その内容は国際問題に発展してもおかしくないものである。そして、パプニカの王族のレベルの低さを露呈してしまっていることに対してもアポロの頭を悩ませてしまった要因の一つであった。

 

「……もういいじゃないの。早く行きましょ」

 

 レオナはこの場にいることすら退屈になったのか、さっさと行くように求める。

 キーファはそれでも王族としてなんとか表情を崩さず、「そ、それでは行きましょう」と言ってレオナとセブン達と共にルイーダの酒場に入っていくのであった。

 

 

 

     ◇

 

 

 

 パプニカ王国中級者迷宮。

 そこは初級者迷宮とは違った造りをしていた。初心者迷宮は床や壁が石で出来ており、それがきちんと整地されていた。

 しかし、中級者迷宮はまるで火山洞窟の地下のようであり、床も壁もデコボコしているため、かなり歩きづらい場所であった。

 何よりもマグマが出ていたりもするため、かなりの気温の高さである。

 

「暑いわねぇ……」

「ええ。パプニカ王国の中級者迷宮は気温の高さにかなり苦労するとのことでしたからね」

 

 レオナの言葉にキーファが丁寧に答える。初級者迷宮と中級者迷宮の違いはモンスターの強さだけではなく、こういった()()()()の厳しさもあった。

 パプニカのような火山洞窟の地下のようなところもあれば、真冬の山のような吹雪のところもある。

 こういった環境の変化にも適応できる者が次のステップへと進むことが出来るが、ここである程度の人間が脱落してしまうのだ。

 

「さっさと行くわよ」

「ちょっ、レオナ王女お待ちください!」

 

 キーファがレオナを呼び止める。

 

「なによ?」

「一人で行くと危ないです! 罠もあるので私達が前に──」

「うるさいわね。先に行くわよ」

 

 キーファの制止も聞かず、レオナはどんどん先に進んでいく。それをキーファ達は走って追いかけるのだった。

 幸いにも罠に掛かることもなく五分ほど進んでいると、目の前からゴーストが一体現れる。

 

「ゴーストね。この程度なら……『メラ』!」

 

 メラの炎がゴーストに襲いかかる。そしてゴーストを吹き飛ばすが、その一撃ではやられずにゆっくりと起き上がる。

 すぐにレオナがヒャドを唱え、氷の塊がゴーストを貫くとそのまま消えていった。

 

「ふう。楽勝だったわね」

「レオナ王女! 大丈夫ですか!?」

 

 キーファ達が後ろから遅れて来るが、レオナは冷めた目でキーファ達に振り返る。

 

「もう終わったわよ。あなた達なんていなくても大丈夫じゃないの?」

「ですが一人では──」

「だからうるさいわね! 一人で大丈夫だって言ってるで……えっ!?」

 

 レオナが話している途中でアキラが剣を抜き、レオナに向かって突撃してくる。

 突然アキラから攻撃されるとは思っていなかったレオナは、反応出来ず目を瞑ってしまう。しかし、少し経っても痛みを感じないため、おそるおそる目を開くと、アキラの顔が目の前にあった。

 

「……油断大敵ですね」

 

 アキラの言葉にレオナが後ろを振り返ると、そこにはアキラによって顔を貫かれたアンデッドマンの姿があった。

 アンデッドマンとは青系統の盾と剣、そして鎧と兜を身に着けた()()()が特徴のがいこつのモンスターである。

 後ろから気配を殺してレオナを襲おうとしていたところにアキラが気付いて、アンデッドマンを倒していたのであった。

 

「よ、余計なことしないでよね!」

「……え、あ、はい」

 

 男性の顔が目の前にあった経験がないレオナは、少し顔を赤らめながらもアキラに対し辛辣な言葉を投げかける。

 アキラが返事をしつつ苦笑いで返すと、レオナは休むことなくそのまま先に進んでいった。

 

「ちょっと、なにあれ?」

 

 マリベルは眉間にシワを寄せて、セブンに小さな声で話しかける。

 

「噂に聞いていた以上に大変そうだね……」

 

 セブンも苦笑いで返すと、マリベルと一緒に肩をすくめながらレオナ達の後を追っていく。

 そしてついにキーファの心配していたことが起こる。ある程度進んだところで、警報アラームと思われる大きな音がけたたましく鳴り響いたのだ。

 

「な、なに!?」

「モンスター呼び寄せの罠だ! すぐにモンスターがやってくるぞ!」

 

 マリベルが動揺するが、近くにいたキーファはすぐに罠だと言い、レオナの向かった方に走りつつ、周囲の警戒をする。

 アキラとセブンは十mほど先にいたレオナに走って追いつき、周囲を固める。

 

「ウガァァァ!」

「キイャァァァァ!」

 

 周りからはくさった死体、ゴースト、マドハンド、がいこつ、アンデッドマンといった地下一階層に出現する全種類モンスターが──合計で十体以上──集まってくるのであった。

 

「ちょっと……こ、これはキツいんじゃないか?」

 

 レオナ達に合流したキーファが呟く。

 

「けど……それでもなんとかしないとだよね。レオナ王女とマリベルを囲むように……って、レオナ王女?」

 

 セブンが返事をしたところで、レオナが顔を青くして震えながら座り込んでいた。

 

「わ、私は悪くないわよ……わ、私じゃ……」

「……レオナ王女は今戦力に入れないほうがいい。とりあえず強化魔法(バフ)を掛けるから、マリベルはレオナ王女を守りつつ余裕があったら魔法で援護お願いできる?」

「分かったわ」

 

 アキラはマリベルにレオナを守るように指示を出すと、『ヘイスト』と『プロテス』を全員に唱える。

 

「よし、じゃあ一旦はこれで大丈夫だけど、〝マドハンド〟だけは仲間を呼ぶから先になんとかしよう!」

「よっしゃ! じゃあ俺が──」

「キーファ! ストップ!」

 

 キーファがマドハンドに突撃しそうになったので、アキラはそれを止める。

 

「どうしたんだよ!? 仲間呼ばれちまうぞ!」

「キーファがいなくなったら、モンスターの攻勢をセブン一人で受けないといけないでしょ! こういうときは僕に任せて!」

 

 アキラがそう言うと、詠唱を始める。

 

「……『スリプル』。よし、今のでマドハンド達が全員寝た! 今のうちに他のモンスターを倒すよ!」

「うん!」

「おっしゃああ!」

 

 アキラのスリプルで三体いたマドハンドが全員寝ると、そこから徐々にモンスターを減らしていく。

 その中で一番弱いゴーストは、ハロウィンみたいな紫の三角帽子を被り、明るい場所でも平気で現れる幽霊型のモンスターである。

 キーファ達が他のモンスターを抑えているうちに、アキラが弱点の炎属性(ファイア)で数体のゴーストを燃やし尽くす。

 

 次に狙ったのはがいこつである。アンデッドマンと同じ左利きのモンスターだが、違いとしては鎧装備ではなく通常の服を着ているので分かりやすい。

 同じく炎属性に弱いので、先程使った『ファイア』を『ものまね』することで詠唱なしで連発して二体のがいこつを倒した。

 

「次は!?」

 

 アキラがキーファとセブンの受け持っているモンスターのどちらを優先して倒そうかと両方を見ると、キーファがくさった死体の攻撃を盾で受けながら返事をする。

 

「こっちは大丈夫だから、セブンのとこのモンスターを倒してくれ!」

「分かった!」

 

 アキラはすぐにセブンが戦っているアンデッドマン達目がけて『ファイア』──もちろん『ものまね』を使っている──を放つと、剣を握り締めたまま突撃していく。

 『ファイア』でよろめいていたアンデッドマン達の一体にセブンが剣を突き刺し、その衝撃で落ちたアンデッドマンの顔を思い切り蹴り飛ばす。

 壁に当たり、その衝撃で粉砕されたアンデッドマンの顔。その攻撃が致命傷となり、そのまま消えていく。

 なんとか体勢を立て直したもう一体のアンデッドマンが、セブンに向かって斬りかかろうとしたところにアキラが割って入り、その攻撃を剣でなんとか受け止める。

 

「……ぐっ! セブン!」

「任せて! おりゃぁぁ!」

 

 アキラは攻撃を受け止めるので精一杯だったため、セブンが隙をついてアンデッドマンの後ろに回り込んで『ぶんまわし』を行い、左の肋骨から真横にアンデッドマンを断ち切る。

 バラバラと地面に崩れていったアンデッドマンの上半身から頭だけを狙って剣を突き刺し、アキラが止めを刺したのであった。

 

「……ふう。キーファは!?」

 

 一息つきながらアキラがキーファを見ると、くさった死体をちょうど倒しきっていたところであった。

 そして横から大きな爆発音が鳴り響く。驚いて音の方を見ると、マリベルのイオによってマドハンドが吹き飛ばされていた。

 

「よっし! これで終わりね!」

 

 マリベルはマドハンドが消えるのを確認した後、笑顔で全員に笑いかける。

 キーファ達は剣を仕舞って、マリベルのところに戻っていった。

 

 

 

     ◇

 

「……レオナ王女は大丈夫?」

 

 アキラがマリベルに様子を聞くと、一斉にレオナの方を向く。

 そこには先程まで震えていたレオナがまだ少しだけ顔を青くさせていた。

 

「僕見てたんだけど……レオナ王女が罠を踏んじゃったみたいだね」

「……!」

 

 セブンはレオナがモンスター呼び寄せの罠を踏んだのを見たと言うと、レオナはびくっと身体を震わせる。

 その様子で確信したマリベルは腰に手を当てつつも、呆れて何も言わずにいた。キーファも肩をすくめるだけで何も言うことはなかった。

 

「わ、私は……」

 

 大勢のモンスターに囲まれた経験がなかったのであろうレオナは、まだ恐怖状態に陥っているのか上手く言葉を話せないようであった。

 それを見てこれからどうしようかという雰囲気になっていると、アキラがレオナの目の前に座り話しかける。

 

「……今日はもう帰りましょうか」

「え……?」

 

 責められると思っていたレオナはアキラの言葉に驚き、彼の方を見る。そこには怒りも呆れもない、優しい笑顔だけがあった。

 

(まあ仕方ないよね。そりゃあパーティーが全滅しかねない罠を踏んだり、これだけ大勢のモンスターに囲まれることなんてお姫様ならないだろうし)

 

 アキラとしてはそこまで負の感情をレオナに対して持ってはいなかった。それは彼が実年齢三十歳以上ということもあり、若いときは男の子でも女の子でもそういうミスをするものだという認識を持っていたためだった。

 

「とりあえずこれでレオナ王女も罠が危険だと分かってくれたと思います。どうせなら皆で攻略出来るといいですね」

 

 優しくアキラがレオナに向かって話す。

 

「う、うん……」

 

 レオナはアキラの言葉を聞いて、目を逸らして頷くしか出来なかった。

 

「というわけで、皆も今日のところは帰っても大丈夫?」

 

 アキラがキーファ達に聞くと、全員が了承したため、マリベルの『リレミト』で迷宮から脱出するのであった。

 

 

 

     ◇

 

 ルイーダの酒場に戻ると、レオナはそそくさと迎えに来ていた兵士達──朝からずっと待っていたとも言う──の馬車に乗って先に帰ってしまう。

 

 その帰るスピードがあまりにも速かったので、残った四人は呆気にとられていた。

「姫様、本日はいかがでしたか?」

 

 兵士と同じく朝から残っていたアポロが、レオナに本日の結果について聞く。

 

「う、うん……き、今日は地下一階層の半分くらいは行ったんじゃないかな……?」

「おお! それは素晴らしい!」

「…………」

 

 アポロは速い攻略スピードのレオナを褒め称えたのだが、反応が悪いため不思議に思う。

 

「……どうされたのですか? も、もしかして迷宮内で何かされたとか……!?」

「え……そ、そうじゃないの! 実はね……」

 

 レオナがアポロに迷宮内で起こったことを正直に話す。一人で勝手に先に進んでいったこと、初めは調子が良かったのだが、途中で罠を踏んでしまい大量のモンスターに囲まれて死ぬような思いをしていたこと。

 だが、キーファ達は難なくモンスターの群れを撃退する。さらに勝手な行動を取ったレオナに対し、その中の一人の冒険者(アキラ)はレオナを責めるどころか心配をして、本当ならまだ先に進めるのに今日は帰ろうと言ってくれたことなど。

 話は纏まりがなかったが、アポロは辛抱強くレオナの話を聞いていた。

 

「そういうことでしたか。それで姫様はどうお考えなのですか?」

「えっ?」

 

 アポロの質問に対して、良い返答が浮かばず言葉に詰まる。

 

「そこで姫様がどう思ったかが大切だと思うのですが、どうお感じになって、どう考えたのでしょうか?」

「……まず、バロンが言っていた()()()()()というのは本当なの? と疑問に思ったわ。あと、なんであんなに冷たくしていたのに、あのアキラとかいう冒険者は怒らずに私のことを気遣ったのかが分からないの……」

 

 レオナはその時に思った言葉をそのまま話す。

 

「そうですね……彼らが弱いというのはないでしょう。彼らは一週間前に陛下に謁見した際に、パプニカ(うち)の兵士との模擬戦で圧勝していますからね」

「そ、そうなの!? そんなことテムジンもバロンも教えてくれなかったわ!」

「……なぜお二人が姫様にお伝えしなかったかは分かりませんが、それは事実です。そして、アキラ殿が怒らなかったのは、彼が単純に()()なのでしょうね」

 

 アポロは驚くレオナに正しく情報を伝える。アキラのことに対しても推測ではあるが、可能性が一番高い理由を話していた。

 

「大人……?」

「はい。誰でも失敗はするものです。ですがそれを許せる人間は、人として成長している証だと私は思っています。まぁなんでもかんでも許すのはまた違ってくると思いますけれど」

 

 アポロは優しく笑いながらレオナに諭すように話す。

 

「で、でも彼は私と同じくらいの年齢よ!」

「生きている年月は関係ないのでしょう。大切なのは()()()()()()()()です」

「どう……生きて、きたか」

 

 レオナは俯いて考え出す。

 

「はい。もし、気になるのでしたらアキラ殿に直接聞いてみるのもいいかもしれません」

 アポロにアキラに直接聞くのも良いと言われた途端、顔を上げて驚きの表情をする。

 

「ちょ、直接!?」

「もし姫様が悪いと思っている気持ちがあるのであれば、そのときに謝罪をするのも悪くないと思います」

 

 アポロはレオナの顔が若干赤らんでいることにも気付かず、久しぶりに話を聞いてくれるレオナに気分を良くして、そこから城に戻るまでずっと話し続けるのであった。

 

「…………直接かぁ」

 

 

 

     ◇

 

 パプニカ城。夕食も終わり、深夜になりかけの時間帯。アキラ達は各自に用意された部屋で思い思いの時間を過ごしていた。

 アキラはベッドで横になりながら、今日の迷宮探索について考えていた。

 

(今日は大変だったなぁ。明日って探索出来るのかな? ……って誰だ、こんな時間に?)

 

 急にアキラの部屋のドアがノックされる。こんな時間に訪問してくる人間はあまりいないので、やや警戒しつつもドアの前で返事をする。

 

「はい。」

「あの……私」

 

 小声で〝私〟と言われても誰だか分からないのだがとアキラは思いつつ、彼はその声の主に心当たりがあった。

 

「もしかして……レオナ王女ですか?」

「そ、そうよ! 早く開けて!」

 

 扉を早く開けるように急かされたため、鍵を外して扉を開けるとレオナがアキラの目の前にいた。

 

「……聞きたいことがあるんだけど。入ってもいい?」

「え、あ、は──」

 

 アキラの返事を待たずにレオナは部屋の中に入る。アキラはバレないようにため息をついて扉を閉じると、レオナに立たせたままなのはまずいと思い、椅子に座るように促す。

 

「どうぞ、こちらにお座りください」

「…………」

 レオナは黙って座り、アキラもテーブルを挟んで椅子に座る。

「…………」

「…………」

 

 そこからは用事があるはずのレオナが話をしないため、気まずい空気だけが流れていく。

 一分か二分、それ以上にも感じる時間に我慢できずにアキラが話しかける。

 

「えっと、何かありましたか?」

 

 しかし、レオナは俯いたまま何も言わない。正確には何かを言おうとしては口を閉ざして俯くを繰り返していた。

 それにアキラは困ってしまい、後頭部を掻いていると。

 

「どうして……」

「……え?」

「どうして、今日は私のことを責めなかったの?」

「どうしてって……今日の罠のことですかね?」

 

 レオナは黙って頷く。

 

「あー、えっとですね。まぁ誰にでも過ちというか、失敗ってあるものじゃないですか? 僕らはパーティーなので、それをフォローし合うのが当然だと思うんです。だから別に一回や二回の失敗で責めても仕方ないし、他のみんなでフォロー出来たから良かったのかなって思いまして」

 

「で、でも私はその前から自分勝手に動いていたじゃない! あなた達のことを弱いって決めつけたり……」

 

 アキラの言葉にレオナは反論する。しかしアキラは言葉を選びつつも柔らかい口調でレオナに話しかける。

 

「まぁそのことをレオナ王女が自覚されたのであれば、次から気を付ければいいのだと思います。僕らのことを弱いって思うのも、きっと誰かに話を聞いたのでしょうけれど、次からは()()()()()()()を信頼して判断するというのも大切だと学んでいただければと」

「自分で見たもの……」

 

 レオナはアキラの言葉を繰り返す。

 

「ええ。誰でもあることだと思うのですが、人って周りからの言葉を鵜呑みにしてしまうことが多いんですよ。だから僕は、例えば初対面で人と会うときに周りの言葉を参考にはしたとしても、実際の判断はその人を直接見たり、直接話したりしてから決めるようにしていますね」

「…………」

 

 アキラの言葉を聞いたレオナは、俯いてまた黙ってしまう。しかし今度はそう長くはなかった。

 

「レ、レオナ王女……?」

 

 レオナの目から涙が溢れているのがアキラにはすぐに分かった。そして、その雫はレオナの膝の上に置かれたこぶしに落ちていく。

 アキラが慌てて立ち上がると、レオナが小さな声で謝罪を口にする。

 

「……ご……さい」

「……え?」

「……ごめん……なさい……。ぐすっ……私、あのとき……死んでしまうかと……」

 

 アキラは嗚咽混じりで話すレオナの言葉を黙って聞く。

 

「モンスター……を、倒した後は……みんなに、責められるって思って……」

 

 レオナは彼女なりに勇気を振り絞ってアキラの部屋に来ていた。反抗していた部分もあったが、それはどうしても納得がしたかったから、そしてアキラの考えを聞きたかったからだ。

 アキラもそのことに気付くとレオナのところまで歩いていき、しゃがんでレオナの握りしめられた手に自分の手を乗せる。

 

「そうでしたか。よく勇気出してくださいましたね。ありがとうございます」

「……ぐすっ……うぅ……」

「それなら次からは気を付けてもいいかもしれないですね。あと、よかったら()()()()()()()()()()()()()()()()()()です」

「……うん……でもキー、ファ王子に、他の、二人は……」

「キーファ王子達なら大丈夫ですよ。彼らはとても優しいので、反省しているならきっと許してくれます」

 

 アキラは収納の指輪からハンカチを取り出してレオナに渡すと、彼女が泣き止むまで付き添い、部屋の入り口で待機していたアポロ──なんとなくいる気がしていた──にレオナを預けて明日に備えて寝ることにした。

 ベッドで横になるアキラには、先程までの明日への不安は一切なかったのであった。

 




書き直ししてるとき、めちゃくちゃ悩みました。
書いては消して、書いては消してを繰り返して、途中でもう書くのをやめてしまおうかと何回悩んだことか。
何かを書くって本当に難しいですね。

そういえば先週の土曜日にやったダイ大のアニメを録画していたので見たのですが、感動シーンのあとにアバン先生=爆弾岩説の記事がネットで話題になっていて吹きました(笑)

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