ドラゴンクエストΩ 〜アルテマこそ至高だ!〜   作:ねここねこねこ

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第二十四話

 二日目の攻略を終えてから、更に数日が経過していた。アキラ達は順調に攻略を進め、現在地下五階層の奥まで進んでいた。

 

「……ねぇ。グランエスタードの冒険者達って、こんなスピードで迷宮を攻略していくの?」

 

 レオナの質問に対し、キーファ達は苦笑いでアキラを見つめる。

 アキラと他のメンバーの実力差はほぼ同じである。むしろ一対一での対決ならば、同じ後衛職のレオナやマリベルならともかく、前衛のキーファやセブンの方が強い可能性が高い。

 彼らとアキラの一番の違いは、圧倒的な知識量の差である。これに関しては()()()()()()()というだけではない。

 RPG(ロールプレイングゲーム)を実年齢三十三歳までやり込んでいたが故に蓄積された、RPGに関する知識や経験というものもあったりする。

 

「……またアキラ(あなた)なの?」

 

 この数日でアキラの異常さ──本人(アキラ)も分かっている──に気付いたレオナはため息をつく。

 ただ、彼は毎日レオナがアキラの秘密を探ろうとしてくることに関しては辟易としていた。

 

「とりあえず、パプニカが遅れているというわけではないことが分かっただけでいいわ。どうせあなたは教えてくれないんでしょ?」

「いやぁ……あはは」

 

 アキラは後頭部を手で掻きながら、半笑いでその場を取り繕っていた。

 この数日、レオナに問い詰められるたびにこれで躱してきたのだが、そろそろ限界だろうとアキラ自身も感じていた。

 

「あ! この先が五階層の最奥みたいだね!」

「ちょ、待ちなさいよ!」

 

 アキラがレオナから逃げるようにして先に進み、その先の階段がある広い部屋に入る。そして、入ってすぐに立ち止まってしまう。レオナは何かあったのかとアキラ越しに部屋の中を覗くと。

 

「おっと。ここから先は行き止まりだぜ」

 

 そこには十人ほどの兵士の格好をした人間が、武器を構えて待っていたのであった。

 

 

 

     ◇

 

「王都からの合図があり次第、包囲を開始するぞ。」

 

 パプニカ王国の貴族であるレオドールは、王都の周辺の森などに反乱兵をバレないように配置し、テムジンからの合図を待っていた。

 合図があるのは王女の暗殺が成功したという報告があったと同時のタイミングにしており、王宮内が混乱状態になっているところを包囲し、対策を立てられる前に王都全体をそのまま掌握する計画である。

 

「レオドール殿。首尾はいかがかな?」

「おお! そなたは……!」

 

 レオドールに話し掛けてきたのは、中年太りを絵に書いたように腹が出ている体格の良い男だった。

 その男はニヤついた顔のままレオドールに近付き、反乱の準備が整ったか確認をしていた。

 

「準備は完了しておりますぞ! あとはテムジン様の合図を待つのみです!」

 

 レオドールが男へ自信満々に返事をする。

 

「そうでしたか。それはよかった。私はやることがあるので、最後はレオドール殿に全てお任せしてしまうのが心苦しいのですが……」

「それは構いませぬぞ! ここまで入念な準備が出来たのも、そなたのお陰です。あとはこのレオドールに全てお任せあれ!」

 

 レオドールは王都包囲についていくことが出来ないと申し訳なさそうに言う男に対して、気にするなと機嫌良く笑う。しかしそれは、レオドールにとっては手柄が増えるので、むしろ大変喜ばしいことであった。

 

「それでは私はこれで……。後はお任せしましたぞ!」

 

 そう言って男が森の奥地へと姿を消す。そして、レオドールや兵士が見えなくなった辺りで、男の様子が少しずつ変わっていく。

 体の色が青く変わっていき、背中には小さな羽が生える。そして耳は先が尖り、頭からはツノが二本生えるのであった。

 

「ぐふふふ。人間はなんと愚かなことか。俺様の策略にまんまと嵌まりおって。このままパプニカが制圧されれば、あの国は俺様のモノになる。これで俺様の幹部昇格も間違いないな」

 

 モンスターに姿を変えたその男は、高笑いをしながら宙へと消えていった。

 

 

 

     ◇

 

「な……! あんた達、パプニカ王国(うち)の兵士ね! 一体何のつもりよ!」

 

 レオナの言葉に対して、ニヤニヤと薄笑いを浮かべたまま何も答えない兵士達。その兵士達は何人か見覚えがあるどころではなく、バロンと一緒に()()()()()()()()()()()()()()であった。

 

(げっ……テムジンって名前を聞いたときから嫌な予感がしていたんだけど……)

 

 アキラはテムジンとバロンという名前に聞き覚えがあった。パプニカという国自体が、ドラクエを題材にした漫画に出てきた国である。そして、その二人はその物語でレオナを暗殺しようと企てた者達なのだ。

 今回も恐らくそうなのであろうと推測するが、証拠がないため実際にどうなのか分からない。それよりも目の前をどうやって乗り切るかを考えていた。

 

「あ、あんた達! パプニカの王女とグランエスタードの王子がいるのよ! こんなことしてただで済むとでも思っているの!?」

 

 マリベルが叫ぶが、兵士達は先程と同じようにニヤついたまま答えようとしない。キーファが冷や汗をかきながら、小さな声でセブンとアキラに話しかける。

 

「おい……どうする?」

「んー、これって絶体絶命ってやつだね」

「なんにしても、なんとかしないと──」

 

 アキラがキーファに返事をしていたところで、地下六階層に繋がる階段から一人の男が現れた。

 

「──おやおや、姫様。こんなところで何をなさっているのですか?」

「…………バロン!」

 

 パプニカ王国の賢者にして、レオナに魔法の指導をしていた男。バロンが兵士側から現れたことに、状況を理解した全員は更に警戒をする。

 

「あなたも……なの?」

「おやおや、よくお気付きで。愚鈍な姫にも理解する頭はあったということですか」

 

 バロンはレオナを馬鹿にしたような口調で話す。

 

「くっ……なぜこんなことをするのよ!」

 

 レオナはバロンに目的を聞く。バロンは目を見開いた後、真面目な表情を崩し、いやらしい笑みを浮かべながら口を開く。

 

「……まぁ姫はどうせここで死ぬ運命。少し位は話してもいいでしょう。私達の目的は国家転覆(クーデター)ですよ」

国家(クー)……転覆(デター)……!?」

 

 バロンの目的を聞き、理解が出来ないのか言葉を復唱するレオナ。

 

「ええ。ここで間抜けなレオナ姫を暗殺し、そしてその騒ぎに乗じて王都を包囲し、制圧するのですよ!」

 

 バロンは嬉々として自分の計画を語っていく。その計画を聞いたアキラ以外の全員が驚きの顔をし、その顔を見たバロンは満足そうに笑った。

 

「というわけで、姫様にはここで死んでもらいますよ。あ、そうそう。万が一もないように、この人数差の他に私もいますからね。反抗をしようなどとは思わないようにしたほうが良いかと思いますよ。死ぬまでの痛みが増すだけですからねぇ!」

 

 レオナは動揺して、どうすればよいか分からずおろおろとしているだけだった。そこにキーファが前に出ながら剣を抜き、切っ先をバロンに向ける。

 

「……言いたいことはそれだけか?」

「なんだと?」

「そんなこと俺達がさせるわけがないだろう! レオナの暗殺も! パプニカへのクーデターも!」

 

 キーファの言葉に、武器を構えて前に出てきたマリベルとセブンが同意する。

 

「そうよ! そんなことさせないわ!」

「まぁ……これも依頼だしね」

「キーファ王子……マリベル……セブン君……」

 

 レオナは泣きそうになりながら三人を見つめる。

 

「威勢がいいのは結構。しかし、この人数差はどう埋めるつもりだ? いくらお前達が強くても──」

「ぐわっ!!」

 

 バロンが数の利を説いていると、彼の横にいた兵士の一人が炎の魔法によって吹き飛ばされる。キーファやレオナ達の間から抜けてきたその攻撃に、全員が振り返ると、アキラがバロン達に右手を向けていたのであった。

 

「き……貴様ぁぁぁ!!」

 

 バロンが怒りの表情になり、アキラを睨む。腕を下ろしたアキラは、キーファ達に話しかける。

 

「キーファ、レオナ……四人は今すぐ『リレミト』で脱出してくれ。ここは僕に任せて、王様にこの事態を伝えるんだ」

「でもアキラ一人じゃ……!」

 

 キーファがアキラのことを心配して、その提案を却下しようとする。

 

「……大丈夫。このレベルなら、()だけでも問題ない」

 

 口調が急に変わったアキラに気付いたキーファは、その雰囲気に押されて黙ってしまう。

 

「任せて……良いのか?」

「ああ」

 

 キーファの問いかけに一言だけアキラが答えると、「分かった」とだけ返事をしたキーファが、マリベルに『リレミト』を使うように言う。

 しかし、マリベルはそれで良いのか分からずにおろおろしていた。

 

「アキラなら大丈夫。俺達に出来るのは、この場を脱出して緊急事態を陛下に伝えることだけだ」

「……でも──」

「マリベル、私からもお願い。アキラ君の意思を尊重してあげてほしいの」

 

 キーファの言葉に反論をしようとしたマリベルを、レオナが真剣な目で見つめて自身の考えを伝える。それでマリベルもようやく決心がついたのか、呪文の詠唱を始める。

 

「何を言っている! ここから逃がすわけがないだろう! 全員で止めるんだ!」

「はっ!」

 

 バロンの指示で兵士達がキーファ達に突撃するが、すぐに身体が思うように動かないことに気付く。実は既にアキラによって、『スロウ』の弱体魔法(デバフ)が掛けられており、進行速度がゆっくりになっていた。

 

「まだまだあるよ……『エアロ』」

 

 アキラの『エアロ』によって、兵士達が向かい風に押し返されながらも少しずつ切り刻まれていく。バロンがレオナ達に逃げられそうだと気付き、呪文の詠唱を始めるが、既に遅かった。

 

「アキラ君……絶対に死んじゃだめよ……」

「……あとは任せてください」

 

 レオナの言葉にYESと答えないアキラ。その瞬間、マリベルの『リレミト』によって、アキラを除く四人はその場から消えていった。

 

「……クソがぁぁ! 貴様のせいでレオナ姫を逃してしまったではないかぁぁ! 下等な平民の分際で俺様に逆らうとは……ただで済むと思うなよぉ!!」

 

 バロンはレオナに逃げられたことをアキラのせいにし、怒りを(あらわ)にする。

 

「ふふっ……」

「な、何が可笑しい!?」

 

 アキラが急に笑い出すのを不審に思ったバロンが、動揺を隠さずにアキラに問いかける。

 

「いやぁ……俺もこの場で死ぬつもりなんてないからね。全力でやらせてもらうよ。あなたも()()()()()で攻めてきたほうがいいじゃないの? ……ねぇ、裏切り者のバロンさん?」

 

 肩をすくめながら、アキラはバロンを挑発する。その言葉にバロンは青筋を立てながら、アキラに向かって叫ぶ。

 

「……いい度胸だ。俺様がパプニカ王国の賢者である実力を見せてやろうではないか!!」

 こうしてバロン達とアキラの戦いが始まるのであった。

 




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