ドラゴンクエストΩ 〜アルテマこそ至高だ!〜   作:ねここねこねこ

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第二十六話

 アキラがバロン達をルイーダの酒場のパプニカ支部長に預けていた頃、レオナ達はまだパプニカ城内に留まっていた。

 それはセブンの一言が気に掛かったからである。

 

「これさ、もしかしたらだけど、アキラを助けに行かないほうが良いんじゃないかな?」

「なっ! 何言ってんのよ!!」

 

 セブンの言葉にレオナが反応する。今この場にレオナ達が無事でいられるのもアキラが殿(しんがり)を引き受けてくれたからだ。

 そのアキラを助けに行かない選択肢がどうして取れようかと思っているレオナは、セブンの言葉に納得はできていなかった。

 しかし、セブンは努めて冷静にレオナに答える。

 

「だってさ、よく考えてもみなよ。今、アキラを助けに行くとして、中級者迷宮の地下五階層までまた行くことになるでしょ?

それって何時間掛かるのさ? アキラがいるならともかく、僕らだけで行くのは時間が掛かりすぎると思う」

「じゃあどうするのよ! アキラ君がもしバロン達にやられてしまってもいいっていうの!?」

 

 セブンは現実的な話をしているつもりだった。実際、地下五階層にアキラを欠いた今のメンバーで行くとして、数時間単位で消費してしまうだろう。

 しかも急いでいくとなると、モンスターとの戦いを全力で行うか、逃げ続けることになる。そうすると体力とMPの消費はかなり早くなる。

 万が一、到着するまでアキラが持ちこたえられていたとしても、レオナ達が満身創痍だった場合、ただの足手まといになりかねない。

 

 最悪なのはアキラがやられてしまっているところに遭遇することだ。そうなると、バロン達にレオナがやられてしまう可能性が高くなり、結果的にクーデターが成功する可能性を大幅に上げることにも繋がりかねない。

 では、レオナを置いてキーファ達三人で向かうと仮定した場合だが、これも考えられない。アキラがいないだけでなく、レオナもいなくなると更に戦力ダウンをしてしまうし、何よりも暗殺対象のレオナを一人残して行くことなど出来ないのである。

 そう考えると、レオナを守るために全員でパプニカ城に留まるのがベターであり、アキラには自力でなんとかしてもらうしかないのである。

 

「アキラなら大丈夫だよ……やられそうならその前に逃げるだけの頭はあるし」

「……そう……ね。私もそう思うわ。あいつなら無事だと思う」

「俺もそうだな。今はレオナがパプニカの王族として出来ることをやるのが良いと思うよ」

「そ、そんな……」

 

 セブンだけでなく、先程までアキラを助けに行こうとしていたマリベルやキーファもこの場に留まることを勧めたため、レオナはショックを受けてしまう。

 そしてキーファの()()()()()という言葉も、彼女の胸に重くのしかかってきてしまう。

 今、レオナが王族としてやらなくてはならないことは、民とともに生き残ること、そしてクーデターの阻止である。

 

(そんなこと……分かってるのよ……でも、アキラ君が……)

 

 頭では理解出来ていても、心が納得できない。

 しかし、レオナが迷っている分だけ、状況は悪化していってしまう。

 

「報告します! パプニカ城下町周辺に多数の兵士が出現! 数はおよそ二万! 指揮官はまだ不明です!」

「なんだって!? ……レオナ、どうする?」

 

 キーファが報告を聞き、レオナに指示を仰ぐ。ここはグランエスタードではないため、この場はレオナが一番偉い立場にある。

 意見は言うことは出来るが、勝手に指示を出すことも出来ないので、レオナの判断を待つしかないのだ。

 

「…………お父様は迎え撃つ準備をしているはず。兵の準備で空いている警備兵やルイーダの酒場にいる冒険者を使って民の避難をしましょう! パニックにならないように、でも出来る限り急がせて!」

「ははっ!」

 

 拳を握りしめながら俯いていたレオナは、顔を上げると報告に来た兵士に指示を出す。

 そして、キーファ達の方を見たレオナ。

 

「みんなも……手伝ってもらえないかしら……?」

「……ええ! 喜んで!」

「もちろん!」

「当たり前さ!」

 

 民を守るために、レオナは王族としての務めを優先することに決めたのであった。

 

 

 

     ◇

 

 

 

 一方、ルイーダの酒場を出たアキラはパプニカ城に向かっていた。

 向かっている最中に民衆の動きが慌ただしくなっているのに気付くアキラ。

 

(なんか……様子がおかしいな……?)

 

 周辺に二万もの軍隊が来ているなどとは思ってもいないアキラは、不安な気持ちを抱いたまま歩を進めていた。

 途中、警備兵に誘導されて避難をしている市民を見て、ある程度の予測を立てる。

 

(これは……もしかしてクーデターに関して大きな騒ぎになっているのかな?)

 

 自分が戻ってくるまでに少なくない時間が経っているため、早くレオナ達に合流したいと考えている。

 事態を把握しないとどうやって動けば良いのかが分からないため、騒然として増えてきた民衆の波をかき分けて進んでいく。

 城門まで差し掛かったとき、アキラは一人の男に話し掛けられる。

 

「アキラ殿! 戻られましたか! 城内でレオナ姫がお待ちです!」

「あ……アポロさん!」

 

 パプニカ賢者の一人であるアポロであった。彼はレオナからアキラが殿(しんがり)を務めて彼女達を逃したことを聞いていた。

 そして魔法師団への指示を行っている際に偶然戻ってきたアキラを見かけて話し掛けていたのであった。

 アポロは現状の、アキラはバロンの件をお互いに情報共有する。するとアポロは一転、苦々しい顔をしてアキラに謝罪をする。

 

「アキラ殿、今回は誠に申し訳ございませんでした。まさかこんな暴挙に出るとは……」

「いえ、なんとかなったので大丈夫です。……それよりもレオナ姫とテムジン大臣はどこに?」

「レオナ姫は城内で民衆の避難に対して指示を行っています。テムジン大臣は陛下と一緒に作戦会議室にいらっしゃるかと……?」

 

 レオナのことはともかく、なぜテムジンのことを聞くのか不思議に思っているアポロ。

 しかしその説明をしている余裕はないため、少し焦りながらもアポロにお願いをする。

 

「アポロさん! 今すぐその作戦会議室に案内してください!」

「え……一体どういうこ──」

「──説明は後でします! 陛下の命も危ないかもしれないんです!」

「わ、分かりました」

 

 アキラの剣幕に押され、アポロはアキラを作戦会議室に案内する。

 道すがらアキラは予測ではあるが、アポロにテムジンのことについて説明する。

 

「テムジン大臣が……な、なんということだ……」

 

 初めは半信半疑のまま聞いていたのだが、アポロはテムジンとバロンがいつも一緒にいるのを知っていた。

 そして二人の考え方なども似通っているため、アキラの話を聞いているとテムジンが今回の首謀者のようだと思えてくるのであった。

 

「……ですが、すぐに捕まえるということは出来ないと思います。だからここは──」

 

 アキラはアポロにパプニカ国王の命を守りつつ、テムジンを捕まえる方法を伝えるのであった。

 

 

 

     ◇

 

 

 

「────以上です。」

「分かったわ。お年寄りや女性と子供、病人は優先して城内へ避難させて。男性は家に鍵を掛けて待機。ただし、家族と一緒にいたいという希望があればそこは柔軟に対応してあげて」

「かしこまりました」

 

 レオナはアキラが戻ってきているのも知らず、避難指示を継続していた。

 キーファ、マリベル、セブンはレオナの護衛をしている。もちろんキーファも王子なので、レオナの(そば)にいて極力セブンとマリベルで対応できるような布陣にしていた。

 キーファは初めその対応に不服そうであったが、レオナから「王族として考えなさい」と先ほどとは逆に諭されてしまい、文句を言いながらも渋々納得せざるを得なかった。

 

「それにしても二万の軍勢か……今ここにはどれくらいの軍がいるんだっけ?」

「えっと、すぐに動けるのは大体八千くらいよ」

「攻めてきている数の半分以下か……なかなか厳しいな」

 

 キーファは苦々しい顔をしながら、兵力の差を実感していた。

 この世界では呪文という力もあるため、一概にそれで勝負がつくわけでも無いが、数の暴力は大きい。

 通常城攻めには三倍の兵力差が必要と言われているが、敵側が精鋭の魔法使いを揃えていた場合、攻城戦といえども三倍の兵力差がなくても良いのだ。

 

「……今回は綿密な計画を立ててクーデターを起こしているな」

「綿密な計画?」

 

 兵力差を二倍以上揃えているのに、それを悟らせなかった点。そしてレオナを暗殺し、パプニカ国王を動揺させようとしていた点。

 パプニカ国王を暗殺しても良かったのだが、国王は護衛が誰よりも厳しいため、その際は捨て身の方法を取らざるを得ない。

 それであれば比較的暗殺しやすいターゲット(レオナ)を、暗殺しやすいタイミング(王族の試練)で行うほうが難易度はかなり下がる。

 

 そして溺愛している一人娘が暗殺されたときの動揺は計り知れなく、それだけでパプニカ国王にわずかでも隙を作ることが出来るのだ。

 その隙が今回のクーデターが成功する決め手となってもおかしくない。

 

「────というわけさ。ま、バロンが地下五階層でレオナを暗殺できなかったのはかなり大きいからな。あとは国王とレオナ(王族)を守りつつ、二万の兵力を跳ね返すだけ…………だと思うんだけど……」

 

 キーファは意気揚々と自分の考えを述べる。その説明はほとんど間違ってはいないのであろう。

 しかし、心のどこかで何かがおかしいと感じ、それが最後の言葉の尻窄み(しりすぼみ)に繋がっていた。

 

「え、なによその微妙に自信なさそうな言い方!」

「いや、その……何か妙な違和感があって……」

「妙な違和感ってなによ?」

「え、あ、いや……」

 

 マリベルがキーファにツッコミを入れるが、キーファとしても感覚としてのことなので、明確な理由を話すことが出来なかった。

 

「まぁ今の僕らに出来ることは、レオナを守っておくことだけだってことだね」

「……そ、そうだな!」

 

(アキラ君……生きていてよね……)

 

 レオナはルイーダの酒場がある方向に目線をやりながら、アキラの無事を祈っていた。

 




次回投稿は少し空くと思います。
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