ドラゴンクエストΩ 〜アルテマこそ至高だ!〜 作:ねここねこねこ
この一年、全くといっていいほど何も浮かばずで本当に申し訳ございません。
もしよければこれからもお付き合いくださいますと幸いです。
18時にもう一話投稿します。
中級者迷宮からルイーダの酒場に戻ったアキラは受付で手続きを済ませたあと、急ぎ足で宿屋へと向かう。
宿にある自室へと戻ったアキラはベッドに腰を下ろして中級者迷宮で手に入れた物を取り出す。
「……『ライブラ』」
アキラは手に持ったものに『ライブラ』を唱えると、目の前に四角いウインドウが現れ、その項目を読んで思わず立ち上がってしまう。
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・アイテム名:まほうのカギ(劣化10/10)
・特徴:魔法の鍵。先端に魔法がかけられており、それによって異なる鍵穴の扉や宝箱でも開けられる。ただし劣化品のため回数制限あり。
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(え……ここでまほうのカギが出てくるのは驚いたけど、回数制限があるのかぁ)
アキラが手に入れたアイテムはまほうのカギ。質自体は通常品と変わらないが、劣化しているため回数制限が設けられていた。
10回という多いようで少ない回数をどのように使うか悩んでいると、夕食の時間となっていたため部屋を出て階段を降りる。
一階に食堂を併設している宿屋だったため、騒がしくなっている食堂の一角の席につき注文した品が届くのを待っていると、近くから聞き覚えのある高めの声がアキラの耳に入る。
「
「ダメですよ。大体あなたはまだランクCでしょう。知っての通り同じランクが3人以上いないと入れませんから」
「先生がいれば問題ないじゃないですかぁ! 先生はランクAなんだし」
落ち着いた声とまだ幼さが残る声のやり取りを聞いて、思わずそちらへと目をやってしまうアキラ。
そして全身赤い服に身を包んだ髪の毛にカールがかっている三十代そこそこの青年に対して、緑色を基調とした服にバンダナを付けたアキラと同い年くらいの青少年が詰め寄っている様子であった。
「私ではダメですよ。第一、あなたの修行にならないでしょ?」
「それなら先生が手伝ってくれれば──」
「……ふう。まったくあなたという人は。ねぇ、君もそう思いませんか?」
「────ッ!?」
不意に青年の顔がこちらを向き話しかけられ驚く。
しかしアキラも顔を背けるわけにもいかず、バンダナの青少年は
「え、えっと……」
「盗み聞きはいけませんねぇ。それともそんなに私達のやり取りが気になりましたか?」
「…………ごめんなさい」
下手な言い訳は印象をより悪くすると判断し、素直に頭を下げて謝ることにしたアキラ。
少し驚いた表情をした青年だったが、ニッコリと笑うと「大丈夫ですよ。ね、ポップ」と
ポップも最初は不機嫌そうな顔をしていたが、素直に頭を下げたところとアバンが許したことで溜飲が下がったのか、それ以上何かを言うことはなかった。
「それで、私達に何か用でしたか?」
「あーっと……えっと、そうです! 先程上級者迷宮の話をしていたのでつい気になって」
「上級者迷宮?」
ポップがアキラの言葉に反応する。
「あ、ごめんなさい。僕の名前はアキラといいます。僕も冒険者でランクCなんです」
「ふむ、君がアキラくんでしたか……あ、申し遅れました。私はアバンです。こちらが私の弟子のポップ」
アバンが何かを思い出したような素振りを見せるが、すぐに自己紹介をして誤魔化す。
紹介されたポップは自己紹介もそこそこにアキラへ上級者迷宮についての質問をする。
そして、アキラも同じく上級者迷宮に入りたいがパーティーを組んでいないため一人で入ることが出来ないことで困っている旨を伝えると、ポップは嬉しそうな顔をし始める。
「そうか! じゃあ俺とパーティーを組んで一緒に上級者迷宮に入ろうぜ!」
「……え?」
「こらこらポップ。アキラくんも困っているでしょう」
「なぁ良いだろ? お前が来てくれれば──」
「──あと一人は見つかっているの?」
アキラの不意の質問に言葉を詰まらせるポップ。
「ほら、だからアレだよ。それはルイーダの酒場で募集するとかすれば」
「悪くはないと思うんだけど、そう簡単にパーティー組んでないランクC以上の冒険者っているかな?」
「そりゃあそうだけどさ。アバン先生はちゃんとパーティーが集まっていないと一緒に来てくれねぇし」
二人がああだのこうだの話し合っている様子を微笑ましそうにアバンは見ていた。
(やはりポップにもこういうことは必要ですね。いつも私とばかりいるから、同世代の友人と関わる機会を減らしてしまっている気がします。……それにしてもアキラくんですか。まさかここでお会い出来るとは)
その日は遅くまで残り一人をどうするかや冒険者論についてなどを話し合ってお開きとなった。
◇
次の日からはルイーダの酒場でメンバーを募集・選定しながらも、中級者迷宮でお互いの実力を把握しつつ連携の練習をしていた。
新しいメンバーが入れば連携も変わってくるだろうが、二人で出来ることを確認して連携を取るだけでも動きが洗練されていくため、アバンの提案で行うことになっていた。
「それにしてもアキラくん。君は多彩ですね」
「本当だよな。前衛だけじゃなくて、攻撃呪文や回復呪文も使えるなんてな。職業は賢者なのか?」
「ん〜、賢者じゃないんだよね。特殊職みたいなんだけど」
「なんだよそれ、教えろよ」
「ポップ。冒険者には聞いて良いものと悪いものがありますよ。そう簡単に手の内を聞いてはいけません」
アバンに
アキラとしても特殊職に就いていることを大っぴらにしたくはないため、アバンとポップの対応には正直胸を撫で下ろしていた。
もし無理に聞いてくることがあれば、パーティーを一緒に組むこともやめようと考えるほどではあるが、その懸念が無くなったことがむしろ幸いだと思うことにしていた。
「剣術はまだまだこれからですが、呪文に関してはもう一人前と言っても良いくらいですよ。しかも私も学ばせてもらうことになるとは」
「初耳でしたよね。まさか魔力の込める度合いによって、呪文の威力が変わるなんて思わなかったです」
アバンがアキラの剣術を見て、ポップとパーティーを組んでいるだけだが指導をしてくれることになっていた。
代わりに魔力のコントロールの仕方を教えると、寝耳に水と言わんばかりにアバンとポップはすぐに訓練を開始していた。
アキラが驚いたのはアバンがすぐに習得していたということである。
(僕が多彩なら、アバンさんは多才でもあるんじゃないか……?)
原作でも武芸百般であることを自負し、使える呪文もポップから「あの人は特別」と言わしめるほどの豊富さがあることから分かっていたことではあるが、目の前で見せられるとよりその才能が顕著になっている。
ポップも天才と評されるだけの才能はあるが、習得スピードは明らかにアバンには劣っていた。
それでも今まで会った人達と同じくらいのスピードで習得出来ている時点で才能に溢れていることは誰の目にも明らかである。
そうしてパーティーメンバーを探しつつ、連携を深めること二週間。
ついに待望のメンバーが見つかる。偶然にもアバン達と出会ったアキラが今も泊まっている宿の食堂であった。
「おう、久しぶりだな」
「あ、君は……」
「んん? アキラくんのお知り合いですか?」
知り合いと言うには言い過ぎではあるが、アキラからすると一方的にどういう人物かも知っているので知り合いと言われても納得できるものだった。
アキラが答えあぐねていると、その男は軽く笑いながら口を開く。
「知り合いってほどでもないよな。前にギルドでたまたま会ったときに声を掛けただけだ」
「そうですか……っと失礼。私はアバン。アバン・デ・ジュニアールⅢ世です」
「俺はカミュだ。よろしくな、アバンさん」
以前レイドックのギルド受付で話しかけてきた逆立った青髪の青少年。
カミュが笑顔でアバンに握手を求めていた。
「それで、ちらっと聞こえたところによると上級者迷宮に行きたいがメンバーが足りないんだって?」
「……しっかり聞いてんじゃねえか」
「まあまあ、そう言うなよ。えっと……」
文句を言ったポップを宥めようとしたところでまだ名前を聞いていなかったとカミュが口を再度開こうとしたところで、「……ポップだよ」と先にポップが自己紹介をする。
続けてアキラも自身の名前を告げ、カミュは何回か名前を繰り返して覚えようとしていた。
「ポップに……アキラ、ね。よし、覚えた! それでお前達なら三人いるし、アバンさんも見た感じC級以上なんだから上級者迷宮には入れるんじゃないのか?」
カミュは当然の質問をして、ポップも予想していたのかアキラに教えたときと同じことを伝える。
そうするとカミュは顎に手を当てて考える素振りをしたあと、「そうか……」と呟く。
「じゃああと一人Cランクの冒険者がいれば良いということだな?」
「ああ、だからそう言ってんじゃねえか」
「それならちょうど良かったな」
カミュはポップの悪態に微塵も嫌な顔をせずに少し胸を張りながら親指で自身を指す。
「ここに
アキラとポップはその言葉を聞いて顔を見合わせると、二人とも同じ位驚いた顔をしていた。
「お、おいカミュ。お前は本当にCランクの冒険者なんだな?」
「だからそう言ってるだろ。ほれ」
ポップ達にCランクと自身の名前が書かれた冒険者証を見せたカミュ。
待ちに待ったCランク冒険者が現れたポップは嬉しそうな顔をしてアバンを見る。
「せ、先生……!」
「……仕方ありませんね。ですが最初は中級者迷宮で連携などをきちんと確認してからですよ?」
「やったぁぁーーー!! これでようやく上級者迷宮に入れるぜ!」
ポップは周りのことなど気にせず喜びのあまり飛び上がっていた。
アバンはそれを半分呆れながら、半分微笑ましく眺めていた。
次の日から彼らは早速連携を確かめるために中級者迷宮に足を運んでいた。
Cランク冒険者が三人もいれば──正確にはこの三人だからこそではあるが──中級者迷宮レベルは連携を確かめるのに最適な場所となっていた。
「……とまぁ、こんなもんかな」
カミュは短剣をしまうと、後ろを振り向いてポップ達に話しかける。
(おいおい、なんだよこの速さは……?)
アキラはカミュのスピードに目を奪われていた。
攻撃力自体は高くないのだが、持ち前のスピードでモンスターに近づくと短剣を使って急所を一撃し、そのあとすぐに離れてブーメランで追撃。
モンスター側が攻撃を仕掛けてきても軽く躱し、短剣でとどめを刺す。
自らの
「す、すっげぇぇぇな! 職業の盗賊ってそんなに速く動けるもんなのか!?」
「……さてな。まぁ俺よりすごいやつは山ほどいるさ」
「それでもすごいよ。目で追いかけるので必死だった」
ポップもアキラもカミュに最大の賛辞を送ると、返すようにカミュも二人のことを褒め始めた。
「ポップもまさかCランクでメラゾーマが使えると思っていなかった。アバンさんに弟子入りするとそんなに強くなれるのか?」
「おうよ!アバン先生は特訓厳しいけど、めちゃくちゃ強くなれるぜ。だってただの武器屋の息子がCランク冒険者になれるようになるんだからな」
カミュは胸を張っているポップを横目にちらりとアバンを見るが、アバンは肩をすくめているだけだった。
そして今度はアキラの方を向く。
「アキラは賢者じゃないんだよな?」
「あ、うん。そうだね」
「じゃあなんで攻撃呪文と回復呪文が両方使えるんだよ……お前らも十分規格外だからな」
褒め合いながらも中級者迷宮での連携確認をしているとそれぞれの役割がはっきりとしてきた。
カミュが索敵兼避けタンク。ポップが後衛での遠距離アタッカー。アキラがポップを護衛しつつ、中距離からカミュを援護して回復もこなすサポートヒーラー兼アタッカー。
この役割と連携をある程度のレベルになるまで中級者迷宮を潜って、帰ったら反省会を繰り返す。
アバンはポップが
ポップと出会ってから二年、アバンとつきっきりで修行はしていたものの同世代の友人と呼べる子達とは出会えていなかった。
思春期の真っ只中のポップには修行だけでなく同世代の友人と目の前にあるような光景を経験してほしいと思っていた。
(ポップ、良い出会いが出来ましたね……)
明日から始まる上級者迷宮攻略に備えて早く寝るように言付けて、アバンは自室へと戻っていくのであった。