ドラゴンクエストΩ 〜アルテマこそ至高だ!〜 作:ねここねこねこ
本日三話投稿しますので、良ければ御覧くださいませ!
レイドックで上級者迷宮を踏破したアキラはルイーダの酒場レイドック支店で依頼を受け、レイドックの北にあるムーンブルクにいた。
依頼の相手はムーンブルク王。アキラはまた王族と関わるのかと少し憂鬱な気分となっていたが、名指しで指名されている以上断ることは出来なかった。
それがパプニカを初めとした今まで関わった王族の推薦での依頼となれば今後の関係性を考えて受けることにしたのだ。
「よくぞ来た。冒険者アキラ殿」
アキラは黙って跪いたままである。
「お父様、アキラさんが緊張されていますからもう少し和やかに話しましょう。依頼をしたのはこちらなのですから」
「ん? おお、そうか。アキラ殿よ、立ってその顔を見せてはくれぬか?」
「……はい」
アキラは緊張しながらゆっくりと立ち上がる。
ムーンブルク王とその隣にいたのは、金髪のカールがかった長い髪を持つ美少女。
ムーンブルク王を〝お父様〟と呼ぶということは、この美少女はムーンブルク王女であることが見て分かる。
「自己紹介が遅くなりました。私はムーンブルク第一王女のプリンと申しますわ」
プリンは綺麗なカーテシーを行い、アキラへ丁寧な挨拶をする。
アキラは思わず見惚れてしまったが、ムーンブルク王の咳払いにハッとした顔をして、王へと向き直る。
プリンは小さく笑っていた。それすらも可愛らしいと思えるくらいの美少女なのだが、アキラはムーンブルク王の御前でこれ以上の不敬は出来ないと心の内に留めるのに必死であった。
「では今回の依頼なのだが、アキラ殿は昨今のこの地方の情勢は知っておるかな?」
依頼の話をする前に現状を把握しているかという質問がぶつけられる。
アキラはムーンブルク王がどのような答えを求めているかを少し考え、口を開く。
「もしかしてですが、レイドック王国側の動きと何か関係があるのでしょうか?」
「…………そうだ」
ムーンブルク王の顔が苦虫を噛み潰したような表情へと変化する。
「なぜかは分からないが、レイドック王国が演習と称して我らがムーンブルクとの国境に軍を集結させているのだ」
「私達もレイドックへと使者を送っているのですが、門前払いをされてしまい困っているところだったのです」
「そこに友好国からアキラ殿の話を聞いてな。しかもレイドックにいるというではないか。なんとも都合の良──「お父様」──ゴホン、まぁ運命的なものを感じてな。実際に来てもらったということなのだよ」
ムーンブルク王は意外とお茶目なところがあるのかもしれない。
兎にも角にも今回の依頼内容がまだ明確化していない状況ではアキラは反応に困るばかりである。
何をもって
「前置きが長くなってしまったな。それで今回の依頼なのだが、プリンと一緒に北にあるサマルトリア王国とローレシア王国へ救援要請に行って欲しいのだ。
本来であれば兵士にプリンの護衛を任せたいのだが、我々も万が一に備えて軍がいつでも動けるようにしなくてはならないのだ」
レイドックとムーンブルクが戦争に入ろうとしている。
この事実にアキラは驚きを隠せない。話を聞いていると、偵察の話ではレイドックは現時点で六万、このまま増えれば八万から十万規模の大群で攻めてくる可能性がある。
そしてムーンブルクは全兵力を出しても一万ほどということだったため、このまま行けばレイドック王国に飲まれる運命にあるのは誰でも分かることである。
「明らかにおかしいこともあってな。レイドックの南には魔族軍のムドーの居城があるのだが、そこに配置すべき軍も
「それは──」
「ええ、おそらくですが
今まで小競り合いを繰り返してきたレイドックと魔王ムドー率いる魔族軍。
それがいきなり手を組んだということ自体がおかしいのだが、理由はムーンブルク側からは何も分からない。
今分かることは、このままでは人間同士の争いになりどちらかの国が無くなってしまうということ。
そしてそのときに一番旨味があるのは魔族軍であるということである。
「アキラ殿はパプニカ防衛戦で一騎当千の活躍をしたと聞いておる。ぜひアキラ殿にプリンの護衛を依頼したいのだが……どうかな?」
ムーンブルク王は和やかに話しているが、この状況が有無を言わせないのである。
アキラは頭を下げて一言口を開くしか出来なかった。
「…………喜んでお受けいたします」
◇
「アキラさん、本当に申し訳ございませんでしたわ」
「……何のことでしょうか?」
「そんなに身構えなくても大丈夫ですわ。お父様のことです。あの状況で断るなんて出来ないのに、アキラさんが自分から引き受けたという風になってしまっていたので」
アキラが依頼を引き受けた次の日には早速サマルトリア王国へ向けて二人は出発していた。
なるべく早く移動するために馬での移動、しかも護衛はアキラだけという不用心と言われても仕方がない状況。
だが、アキラの強さは各国と冒険者ギルドからお墨付きであり、実際に道すがら出てきたモンスターは一刀のもと斬り伏せられている。
先程の会話はその日の夜の野宿中にプリンが発した言葉であった。
「……大丈夫ですよ。僕としても流石にムーンブルク王国の国民が滅ぼされる状況は避けないといけないと思っているので」
「…………ありがとう、ございます」
「それよりも早く寝ましょう。周囲に聖水を撒いているのでモンスターは近寄ってはきませんが、念の為私が不寝番をします」
「私も──」
「いえ、王女はこれから各国に交渉をしなくてはならないのです。疲れを残さないようにしっかりとお休みください」
「…………はい……」
プリンは少し寂しそうに、そして悲しそうな顔をして横になる。
友人から聞いていたアキラとは雰囲気が違っており、いつも周りが自身に接してくるような態度であることに寂しさを覚える。
(彼女は……レオナ王女はアキラさんが仲間だと思って接してくれることをとても喜んでいたわ。あのレオナ王女があそこまで変わるきっかけになった人であれば、私にも一人の女性として同世代の仲間と思える人が出来るのかなと期待をしていたのですが、やはり私は一国の王女としてしか見られないのでしょうか……?)
これからムーンブルク王の代理として大きな仕事がある状況で、いち個人の我儘を通すわけにはいかないのは分かっている。
だが、国に属している者と初めて離れた状態で過ごしているのもあるので、その開放感からそのように思ってしまうのも仕方ない部分であろう。
一国の王女とはいえ、まだ十五歳の少女なのだから。
数日後、サマルトリアに到着したプリン達は身を綺麗にし、サマルトリア王への謁見を申し込んだ。
同盟国であるムーンブルクの王女からの緊急の謁見とのことだったのですぐに申請は通り、謁見の間へ通されるプリンとアキラ。
最初、アキラはそこまで行くつもりはなかったのだが、プリンよりお願いされ謁見の間まで付き添うこととなっていた。
(どんどん色んな国の王族と知り合いになっていくね……)
少し複雑な気持ちになっているのだが、サマルトリア王子に会える可能性があるという高揚感があったのは事実なのでどうしても嫌であるわけでもなく、求められるままにプリンにアキラは同行していた。
「プリン王女よ、久しいな」
「はい、陛下。お久しゅうございます」
「して、今回は火急の用だと聞いておるが、もしかしてレイドック王国の件か?」
「……はい、陛下。仰るとおりです」
通常であれば、王女から内容を話すのが礼儀なのであるが、サマルトリアとムーンブルクは血の繋がりから親戚といっても良いのと百年近い同盟国であるので、少しの通例無視はもはや暗黙の了解で許されていた。
プリンも急いでいたのもあり、レイドックが軍を集めていることやほぼ確実に戦争に入ろうとしていること、援軍をお願いしに来たことを伝える。
サマルトリア王は一瞬悩むような仕草を見せたが、すぐに口を開く。
「相分かった! サマルトリアからは二万の援軍を出そうぞ! ローレシアにはもう行ったのか?」
「あ、ありがとうございます! ローレシア王国にはこれから向かおうと思っています」
「そうか、ではここにいるクッキーも連れて行くが良い。クッキーよ、プリン王女と一緒にローレシアへ行くのだ」
「はい、分かりました」
サマルトリア王の横にずっと控えていた金髪翠眼の美男子。
クッキーと呼ばれたサマルトリア王子はサマルトリア王の言葉に頭を下げ、プリン達へと向き直る。
「プリン王女、久しぶりだね。短い間だけどよろしくね」
「ええ、こちらこそよろしくね」
二人の間には親戚特有の親密さがあり、普段は出ないような口調で話していた。
クッキーはふとアキラの方に目をやる。
「一緒に来ている人はプリンの護衛かい?」
「ええ、冒険者なんだけどアキラという名前よ」
「……アキラと申します」
頭を下げたまま、名前だけ伝えるアキラ。
その名前を聞いたサマルトリア王とクッキーは軽く目を見開く。
「お主がアキラか。パプニカ防衛戦の噂はこの国にも来ておるぞ」
「アキラ殿が護衛についていたのであれば安心だね」
アキラが護衛についていることが分かり、サマルトリアからは護衛は出さずにクッキーだけが同行することになった。
彼としては「そんなに信頼されても何かあったら責任は取れない」と声を大にして言いたいのだが、そんなことは口が裂けても言えないので内心で苦笑いをするしか出来ない。
サマルトリアとしても護衛は付けたいのだが、レイドックとの戦争にリソースを割きたいのでローレシアまでの道のりであれば問題ないという判断を出していた。
謁見の間を三人で出て、クッキーの部屋に通されたプリン達はクッキーの準備が終わるまで一息ついていた。
── 一息つこうとしていたところで乱入者が現れる
「お兄ちゃん、聞いたわよ! あたしも連れてってよぉ!」
クッキーのことを〝お兄ちゃん〟と話していることからサマルトリア王女であると推察できるが、突然のことにプリンもアキラも驚いていた。
唯一驚いていないのはクッキー本人である。
「ダメだよ、お前は。僕達は大事なお仕事をしなくちゃいけないんだ」
「ええ……だってお兄ちゃんばっかりズルいもん! あたしもお外に出たいもん!」
言い合っている二人を見て、ようやく落ち着いたプリンが口を開く
「ティアちゃん、久しぶりね」
「あ、プリンお姉ちゃんだ! 久しぶり! 元気してた?」
「ええ、元気よ。ティアちゃんも元気そうね」
ティアと呼ばれたサマルトリア王女とプリンは和気藹々と話を続ける。
そして、思い出したかのようにプリンにも同行させて欲しいと我儘を言い始める。
「ねえ、プリンお姉ちゃん?」
「どうしたの?」
「私も連れて行──」
「だからお前はダメだって言っているだろ」
我儘を言い切る前にクッキーが話を遮る。
「お兄ちゃんには聞いてないもん! プリンお姉ちゃん、良いでしょ?」
「プリン、無視していいよ。さて準備も終わったし、早速行こうか」
これでいいのかといった様子のプリンとアキラなのだが、クッキーからしたらいつものことのようで相手にした時点で負けだと思っている。
だから無視して城を出ようとして、一緒についてこようとしていたティアは入口のところで城の兵士に止められる。
「え、ちょっと! なんであたしだけなの!?」
「……いつもすまないな。あとのことは頼んだ」
「はっ! 殿下もご武運を!」
「ちょっと無視しないでよ! もうー!」
ティアは兵士を押しのける力は無く、それ以上進むことが出来ない。
これで不貞腐れて、後で帰ってきたクッキーがお土産を持参して機嫌を取るところまでがいつもの流れである。
「もう! 今回こそ面白いことが起きるかと思っていたのに!」
「ティア様、申し訳ございません」
「もういいわよ! 別の方法を考えるわ!」
諦めるというのは頭の中にないのかと兵士が苦笑いしたところで、急な眠気に襲われる。
「くっ……これは、ラ、リ……」
そのまま倒れ込んでしまう兵士。
そのすぐそばで同じように倒れ込んでいるティア。
「……これでサマルトリアは援軍を出せませんねぇ。いや、
その場に
そしてティアを連れてそのまま消えてしまう。
交代に来た兵士に起こされ、目を覚ました兵士がティアがいないことに気付いて城内が騒がしくなるのはその一時間後であった。
次は一時間後に投稿します!