ドラゴンクエストΩ 〜アルテマこそ至高だ!〜   作:ねここねこねこ

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本日三話目です!
四十話と四十一話を先に投稿しておりますので、まだの方はそちらを先に御覧くださいませ!


第四十二話

 それぞれの軍がペルポイ平原に到着した翌日の早朝。

 張り詰めた空気の中、両中央軍同士の間にムーンブルク王とレイドック王が対峙していた。

 今回の連合軍の総大将はムーンブルク王のため、中央軍の指揮も取っていた。

 

「……レイドック王よ、一体なぜこのようなことを……?」

「すまない……我々にはこれ以外の手はもう残されていないのだ」

「ターニアという義理の娘は無事なのか?」

「──!? な、なぜそれを!?」

「分からないとでも思っていたのか? だが、自身の大切なものを守りたいという気持ちは我々も変わらないのだ」

「…………ああ、それは私達も同じだ」

 

 少し会話を交わした二人は、これ以上必要無いと踵を返す。

 ムーンブルク王からすると元凶が分かっただけでもこの短い話し合いには価値があったと思っている。

 しかしながら両軍は決して交わることはない。お互いに守るべきものがあるからだ。

 

 自軍に戻ったムーンブルク王は中央軍の前で馬に乗ったまま、大きく息を吸う。

 そして全体に聞こえるように鼓舞の声を上げる。

 

「我々は! 生きるための戦いをするためにここに来た!」

 

 特殊な呪文を使うことで、右軍と左軍にも届く音量である。

 

「魔族軍と手を組んだレイドック王国は! この世界に住むすべての人間族の敵である!」

「おおおおお!!!!!」

「決して揺らぐな! お前達には伝説の勇者ロトの末裔がいる!」

「おおおおおおおお!!!!!」

「我ら、ロトの名に賭けて! 必ず生き残り、魔族軍を倒すぞ!!」

「ロトの名に賭けて!!」

「全軍! 進めぇぇぇぇ!!!!!」

「おおおおおお!!!!!!」

 

 ムーンブルク王の号令で全軍が突撃を開始する。

 いや、正確には右軍と中央軍がやや前に出ており、サマルトリア王国の左軍は少し前進が遅くなっていた。

 しかし戦争が始まってしまっているので、これに気付くことが出来るのはす(・)べ(・)て(・)を(・)知(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)者(・)だ(・)け(・)だった。

 

「出来る限り時間を稼いでくれ。なるべく早く戻るから頼んだよ、ク(・)ッ(・)キ(・)ー(・)」

 

 

     ◇

 

 

 両軍がぶつかり合ってから数時間が経った。

 現状は右軍が数的不利ではあったが、ローレシア王が後方で指揮を取りながらロランが現場で上手く立ち回ることで、大した損害を出すこともなく時間を稼ぐことが出来ている。

 サマルトリア率いる左軍がレイドック軍を蹴散らして援軍として来るのを待っていた。

 

(今のところは上手くいっているが、右軍(こちら)にはト(・)ム(・)兵(・)士(・)長(・)がいるから油断はできないな……)

 

 レイドック軍歩兵連隊長トム。騎馬連隊長のソルディと共にレイドック屈指の戦士である。

 自身の強さはもちろんだが、指揮能力もずば抜けており、歩兵連隊長という肩書きながら騎馬連隊の指揮も問題なく取ることが出来る。

 今は彼にそこまで動きがないため右軍にはほとんど被害が出ていなかった。

 

(しかし不気味だな……ここまで動きがないとなると、まさか何かを待っているのか?)

 

 ロラン、クッキー、プリンは親世代よりもロトの血がより濃いと言われている。

 そもそもの能力が高いというのもあるが、それぞれに勇者ロトが持っていたとされる能力が個別に発現していた。

 ロランに与えられた能力は〝直感力〟である。

 

 呪文が使えない代わりに近接戦闘力が非常に高いロランにとって、この〝直感力〟には昔から助けられていた。

 大切な判断をするときもだが、危険が迫ったときなどにも同じように〝直感力〟が働く。

 そしてこの〝直感〟を信じて進むことで間違ったことがないため、ロランは重宝していた。

 

 ロランには今回の戦争で二つほど疑問に感じていたことがある。

 一つ目がレ(・)イ(・)ド(・)ッ(・)ク(・)軍(・)の(・)戦(・)力(・)配(・)置(・)、二つ目がト(・)ム(・)兵(・)士(・)長(・)が(・)動(・)か(・)な(・)い(・)ことである。

 考えれば考えるほど胸の中のもやもやが広がっていく。そしてそこに彼の〝直感力〟が働いた。

 

(──まさか!?)

 

 ロランが気付き、周りを見たあとに右軍全体に指示を出す。

 

「全軍下がれ! なるべく被害を出さないように下がるんだ! それと中央軍に伝令を!」

 

 いきなり慌てるように指示を出し始めたロランに右軍は一瞬だけ混乱するが、鍛え上げられたローレシア軍がメインで動いているのもあり右軍は徐々に下がっていく。

 急に連合軍の右軍が下がったことで、思惑に気付かれたと分かったトム兵士長はこのまま軍を進めるか留めるかを悩んでいた。

 

(ロラン王子……やはりレック王子と比肩するだけの器を持っていたか! レック王子からの指示はな(・)る(・)べ(・)く(・)被(・)害(・)を(・)出(・)す(・)な(・)ということだが……)

 

 トム兵士長は天幕内で目を瞑りながら腕を組む。

 彼はレイドック王から全てを聞いていた。ペルポイ平原の道中で入ったレイドック王子のレックがまだ知らない情報も。

 レイドック王とレックには魔族側からの監視が付いているため、大胆な行動を取ろうものならターニアの命がどうなるか分からない。

 

 だからこそレイドック王は表向きムーンブルクを滅ぼすために動くしか出来ないし、裏で大きなことは出来ない。

 トムとソルディは二人から貰った情報から二(・)人(・)な(・)ら(・)ど(・)の(・)よ(・)う(・)に(・)動(・)く(・)か(・)を自分達で考えるしかない。

 優秀な二人だからこそ悩み、魔族側もレイドック王国を信用はしていないため、別(・)の(・)手(・)を(・)打(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)。

 

(そろそろ動くはずだ……)

 

「報告! サマルトリア軍が反旗を翻し、連合軍の中央を左より攻撃し始めました!」

「そうか……分かった」

 

 ローレシア軍が下がって二時間が経った頃に、伝令兵がサマルトリア軍の裏切りを報告しに来る。

 曖昧な返事をして伝令兵が下がったあと、トム兵士長が苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

(くそっ! 魔族軍(やつら)め、ここまでするのか……!)

 

 アレフガルド戦役初日。レイドック軍とサマルトリア軍計十万に挟まれる形となったムーンブルク・ローレシア軍五万は、初日にして最大の危機に見舞われる。

 そしてその日を境に、ロ(・)ラ(・)ン(・)と(・)プ(・)リ(・)ン(・)の(・)消(・)息(・)が(・)不(・)明(・)と(・)な(・)る(・)のだった。

 

 

     ◇

 

 

 

 

 

 時は少しだけ遡り、アレフガルド戦役が始まってから数時間ほどが経過した頃。

 アキラは戦争には参加せず、サマルトリア王国の西側にある二本のタワーの前にいた。

 

(ここが話に聞いた〝デモンズタワー〟か……)

 

 デモンズタワー。ドラゴンクエストⅤの世界にあった全十階の構造で、東西の塔が隣り合いながらそびえ立っている。

 原作では主人公の妻がここに攫われ、助けに来た主人公と一緒に石にされてしまう場所である。

 

(ここに……あの子が、テ(・)ィ(・)ア(・)がいるんだな)

 

 意を決してデモンズタワーの入口の扉を開けるアキラ。

 その先の部屋には彼がいた。レイドック上級者迷宮《試練の洞窟》を共に踏破した仲間。

 主人公を導く者として、良き相棒として支え続けた逆立った青髪の青少年。

 

「なんで君がここに……」

「仕方ないんだ……俺には守らなくてはならない人がいる……!」

 

 アキラは彼が武器を構えて行く手を阻んでいる理由を理解した。

 それでも彼にも譲れない理由がある。

 

「今、ここらの国がどうなっているか分かっているんだよね?」

「……ああ」

「それでも通してくれないということか」

「……」

 

 アキラの言葉に答えるつもりがない男はうつむきながらも覚悟を決めた目をする。

 

「……行くぞ、アキラ!」

 

 カミュは短剣を両手に持ち、アキラへと迫ってくる。

 アキラははじゃのレイピアでその攻撃を捌こうとするが、カミュの攻撃スピードは試練の洞窟にいたときから分かっているので徐々に捌ききれなくなると予測していた。

 案の定、カミュの回し蹴りがアキラの腹に当たり、そのまま壁へと吹き飛ばされる。

 

「かはっ!」

 

 アキラは一瞬だけ呼吸困難に陥るも、すぐに『ケアル』をお腹辺りに重点的に掛けていく。

 カミュはその様子をじっと見つめているだけだった。

 

「随分と……余裕、だね……」

「……お前は俺には勝てないさ」

 

 はっきりと「勝てない」と言われたこと。それ自体は普段であれば気にはならなかった。

 しかしアキラが勝てなければティアは救えない。そしてそれは連合軍やレイドックの民すらも巻き込んだ大惨事になることを理解している。

 その焦りからカミュの見下したような挑発にアキラは怒りの表情を見せる。

 

「……ふーん、そういうこと言っちゃうんだね。……『プロテス』、『ヘイスト』、『シェル』、『スロウ』、『デプロテ』」

「──!? おい! 何をした!?」

「上級者迷宮を一緒に潜ったくらいで僕の強さの底を決めつけないでもらいたい……ね!」

 

 アキラは『ルイン』を放つと、『ものまね』を繰り返し発動して弾幕のように撃ち続ける。

 カミュは全て避けようとするも、身体が重く、思ったように動かないことに驚いていた。

 

「ちょ、アキラ! なん! で! 身体が重いんだ! よ!」

「…………」

 

 アキラは黙って撃ち続ける。

 カミュはついに避け切れなくなり、『ルイン』の嵐がカミュへと突き刺さっていく。

 

「ぐっ! こ、このぉ!!!!」

 

 カミュは止まない『ルイン』にこのままだと完封されてしまうと感じ、強引に突破を図る。

 アキラへと突っ込んでいくカミュに対し、『ヘイスト』が掛かっているアキラは同じ速度で下がり、今度は『エアロ』でカミュを切り刻み始める。

 一分後にはボロボロ状態になったカミュと、無傷状態で立っているアキラという構図になっていた。

 

「…………先に行っていいよ」

 

 いきなりアキラがそう口を開く。

 カミュは余裕がないのか、アキラが何を言っているのか理解出来ていなかった。

 

「────気付いていたんだ?」

「さすがアキラですね」

 

 陰から現れたのはロ(・)ラ(・)ン(・)と(・)プ(・)リ(・)ン(・)。

 プリンのロトの血筋としての能力の一つ──『リリルーラ』。

 主にダンジョンなどで仲間とはぐれた時に仲間と合流する時に使う呪文ではあるが、人を登録してあればすぐに合流することが出来る優れた呪文である。

 

 ペルポイ平原でコソコソと動いていたアキラを不審に思い、何かをするつもりではないかと念の為登録をしていたのだ。

 もちろん不審に思っていたが、悪いことをするということではなく危ないことに首を突っ込むのではないかと心配してのことである。

 これは友人であるレオナからも聞いていたことでもあるので、この念の為の行動が上手くハマって心の中で喜んでいた。

 

「……サマルトリア王国が裏切ったんだ」

「うん、知っているよ」

「この先に行けばいいのか?」

「そう、ティアがいるからなるべく早く救ってあげてくれ。僕もすぐに後を追う」

 

 ロランとプリンは事情を分かっていなかった。

 分かっているのはサ(・)マ(・)ル(・)ト(・)リ(・)ア(・)王(・)国(・)が(・)裏(・)切(・)っ(・)た(・)。ただそれだけ。

 だが、アキラの一言で全てを理解できた。

 

 ロランとプリンは蹲っているカミュの横を通り、その先へと走っていく。

 中途半端に動ける状態にしていたらカミュは必ず二人の足止めも行う。

 それだけ覚悟が決まった顔をしていた。だからアキラも全力でカミュを完封した。

 

「……何か聞かないのか?」

「何か言いたいの?」

 

 質問に質問で返すアキラ。

 顔をゆっくりと上げたカミュはアキラの目を見てゾッとする。

 いつもよりも冷たい表情をしているのは魔族軍の卑怯さに完全に頭にきていたからだ。

 

「…………妹を、マ(・)ヤ(・)を人質に取られた。俺には、あの子しかいないんだ……だから……」

「だ(・)か(・)ら(・)他(・)の(・)人(・)の(・)妹(・)は(・)ど(・)う(・)で(・)も(・)い(・)い(・)って?」

「──! ち、ちがっ」

 

 アキラの言葉にカミュは慌てるように反論しようとする。

 その様子を見てアキラは深く呼吸をすると、カミュへ手を差し伸べる。

 

「……アキラ」

「誰にだって大切な人がいる。僕からすれば……カミュ、君だって大切な仲間だ」

 

 その言葉を聞いたカミュは俯き、目元を拭うとアキラの差し伸ばした手を取る。

 

「…………すまない」

「いいさ。さぁ、取り戻しに行こう! クッキーの妹のティアも、君の妹のマヤも」

 

 傷の手当てをしたカミュとアキラは〝デモンズタワー〟の最上階を目指して進んでいくのだった。

 




本日の投稿は以上です!
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