降り立ったのは
chapter1 また火の海
「…ウ…フォ…」
聞き覚えのある高い鳴き声が聞こえる。
「フォウ!フォーウ!」
「フォウさん!?それに立夏さん!」
更に聞き覚えのある少女の声も。
「って、フォウさん、ダメです!立夏さん避けてください!」
「フォ…ウーー!」
「ッ!」
少女の警告に体を転がして答える、すぐ横にシュタッと言う音と共に何かが降り立つ気配がする。
そこから更に転がっていると何かが脇腹に当たった。
「ヴッ…痛い…」
「だ、大丈夫ですか?」
目を開けると自分をマシュが覗き込んでいる。体を起こし自分が何にぶつかったのかを確認する。
「が、瓦礫?」
そこには自分の顔よりも大きな瓦礫が転がっている。一体どうなってるんだと辺りを見回すと。
「…なに、これ」
そこには都市部の様なものの惨状が広がっていた。
「立夏さん、今はこの場の惨状に、目を向けるよりも指示を!」
「指示って、それにマシュちゃんその格好は!?」
と、その時
《ーーーーーーー!!》
およそ、人間の声とは思えない声の様なものが響き渡った。
「な、なに!?」
声のようなものがした方を見ると、そこには
「骸…骨?」
服なのだろうか、ぼろぼろになった布切れのようなものを肩から下げている骸骨がそこに居た。
しかも4体。
燃え上がる瓦礫の街、そしてそんな街を我が物顔で跋扈する骸骨に一歩後ずさる。そんな私にマシュちゃんが声を飛ばす。
「あれは敵生体です、立夏さん!いえ、マスター!指示をお願いします!」
「指示って、どうすれば…!?」
「カルデアに来た時に行った戦闘シミュレーションを思い出してください!あの時の要領でお願いします!」
「ッー!」
(戦闘シミュレーション!確かにやったけど、それを今この場で!?本当にそれしか道は無いの?)
「ま、マシュちゃ……ッ!」
その時、気づいてしまった。彼女の鬼気迫る顔を見て、大きな盾を握る震える手を見て、あぁ、彼女も同じなんだ、自分だけが怖いわけじゃ無いんだと。
「ー!マシュ!右の骸骨をまずは叩く!その後はすぐ横の骸骨を吹っ飛ばして更に別の骸骨を巻き込んで!」
(1人にしない…。この娘と一緒に!)
「了解です!」
彼女はすぐさま行動に移る。指示通りに右の骸骨に向かい、その手に持った盾で叩き潰し、すぐさま反転、横にいる骸骨を蹴り飛ばし奥にいる骸骨にぶち当てる。そこに後ろから他の骸骨が襲いかかる。
「後ろ!防いで!」
「ッ!」
私の声に反応してか、自分で何かを感じたか盾を後ろに回す。そこに骸骨が振り下ろした剣が叩きつけられる、が、盾の方もそれを支えるマシュもビクともしない。
(あの盾もすごいけど、それを持ってあんなに動けるマシュちゃんもすごい!)
斬りつけてきた骸骨に盾のフルスイングを食らわせる。それで終わり。周りにいた骸骨は綺麗に消えていた。
「お、終わったの?」
「はい、戦闘終了です。お疲れ様でした、マスター」
彼女の掛けてくれた声で安心したのか、膝から力が抜けた。
chapter2 デミ・サーヴァント
『あぁ、やっと繋がったわ!』
骸骨との戦闘が終わり、一息ついていると、女の子の声がどこからか聞こえて来た。
『こちらカルデアの管制室よ!聞こえる!?』
どこかで聞いたことのある声がする。一体誰だったかと考え込んでいると。
(立夏さん、今話していらっしゃるのは先程説明会で、話していらっしゃったオルガマリー所長です)
と、マシュがこっそり説明してくれた。
『ちょっと?聞こえてるの!?さっき、戦闘の反応も拾ってるわ!何かあったの!?』
「すみません、聞こえています。こちらAチームメンバーマシュ・キリエライトです。同伴者は藤丸立夏一名。確かに先程、戦闘がありましたがケガ人は出ていません。現在、どこかの廃墟街と思わしき場所にいます…オルガマリー所長、ここは」
『そう、怪我人は出てないのね。ならいいわ。そこは、特異点F。貴方がファーストオーダーでレイシフトする予定だった場所よ』
「やっぱりここが…」
と、マシュとオルガマリー所長が話し込んでいる。そんな中私は。
(ダメだ…何言ってるのかさっぱりわかんない…)
こんな感じで、隅っこでフォウ君を抱いて立ち尽くしていた。
「…フォ、フォウ君も何言ってるか分からないよね?」
と、思わず獣相手に同意を求めてしまう。彼ならば私に同意してくれるはずと縋るが
「…フォ」
と、鼻で笑われたような気がした。
「そ、そんな…フォウ君はトクイテンとかが分かるっていうの?…獣に負けた」
「り、立夏さん。時間がないので詳しい説明は出来ませんが、特異点とは本来存在しない筈の過去の世界とだけ理解していただければ大丈夫です!」
そんな私を哀れに思ったのかマシュが簡単な説明をしてくれた。
「マシュちゃんー!ありがとうぅ…!」(天使だ!この娘は天使だ!)
その時、不意に通信機から大きな声が発せられる。
『立夏ちゃん!無事だったのかい!?本当に良かった!あの後どうなったかと思って心配してて!それに戦闘に巻き込まれた…ってマシュ!?何だいその格好!?ハレンチすぎるぞ!ボクはそんな子に育てた憶えは『うるさいわよロマ二!』すみません!』
「あ、あはは…心配してくれてありがとうございます、Dr.ロマン。私はこの通りピンピンしてますよ!」
『うん、そのようだね。それに、コフィン無しでのレイシフトだったにも関わらずよく意味消失にも耐えてくれた、本当に良かったよ』
(意味消失って…なにその恐ろしい雰囲気の単語…)
と、なんとなしに発せられた単語に恐怖を覚える。
『そうね、ロマ二の言う通り、よく意味消失に耐えてくれました。よくやったわ。そして、マシュ…ロマ二じゃないけどその格好は一体?』
「そうだ!私も聴きたかったんだ!さっきの戦いでもスゴかったよね!大きな盾をブンブン振り回してさ!」
「これは、変身したのです。カルデアの制服では立夏さんを守れなかったので」
所長の質問にマシュが答える。その答えはあまりにもぶっ飛んでいて。
(変、身…?マシュちゃんって不思議ちゃんだったのか)
『変身って貴方、こんな時にふざけてるんじゃないでしょうね?』
少し苛立った声が通信機から聞こえてくる。
『い、いや、もしかしたら頭を打ったのかもそれともやっぱりさっきの戦闘で…!』
「ー二人とも少し黙って下さい。私の状態をチェックして下さい。それで状況を理解していただけると思います」
『君の身体状況?……お、おおおお!?』
『ちょっと、どうしたのよ』
『身体能力、魔術回路全て向上している!この数値、人間というよりー』
「はい、サーヴァントそのものです」
「マシュちゃんってサーヴァントだった!?」
サーヴァント、と言えばカルデアの入り口で受けた模擬戦闘の中で切った張ったを演じ最後には極太ビームを剣から出していた彼女らと同類。
「いえ、そういう訳では…。あの時、管制室で爆発に巻き込まれた私は経緯は覚えていませんがサーヴァントと融合したことで命を取り留めたようです」
『英霊との融合…デミ・サーヴァント。カルデアの六つ目の実験だ。ようやく成功したのか』
『じゃあ、あなたの中に英霊の意識があるの?』
「いえ、彼は私に力を託すと消滅してしまいました。最後まで真名を告げずに消滅してしまったため、この武器がどのような宝具なのか現時点ではまるで…」
と、少し申し訳なさそうに彼女は目を伏せる。
「で、でも!マシュちゃんがデミサーヴァント?だっけ?になってなかったら、あそこで私達やられちゃってたよ!」
『…そうね、宝具の真名が分からないのは痛いけど、だからって戦闘能力まで使えない訳じゃ無いわね。それに、召喚した英霊が協力的とは限らなかったし、マシュなら全面的に信頼出来るわ』
そして、そこから引き継いだ様にDr.が、口を開く。
『立夏ちゃん、そちらにレイシフト出来たのは君だけの様なんだ。何も事情を説明しないままこんなことになってしまった…分からないことだらけ『ちょっと待って』え?』
『事情を何も分からないことはないと思うけど…居眠り…というか寝言まで言いながら寝てたけどとはいえ少しは説明会で話聞いてたわよね?』
と、Dr.の話を遮り所長が尋ねてくる。
その声を聞いた瞬間まるで高校生の時代、先生に何かしでかした時に声をかけられた時の様に固まる。
「い、いやその…ま、全く覚えてません…はい」
『な!?』
「いやその、わざとしてたとかじゃなくてですね!?」
どう言い訳しようか考えていると、マシュから残り数十秒で通信が切れると伝えられた。
『あーもう!二人共、2キロほど移動した所に霊脈の強いポイントがあるわ、何とかそこまで辿り着いて。そうすれば通信も安定します、いいわね!』
「は、はい!」
「了解しました」
通信越しのイラついた様子に圧されながらも声が裏返らない様に返事をする。
『二人共!くれぐれも無茶な行動は控える様にね!?こっちも出来るだけ早く動力をーーー』
此方を気遣うDr.の声は通信が切れた事で途中で途切れてしまった。
「…えっと。じゃあ言われた通りその霊脈の強いポイント?って所を目指そうか」
「はい、途中でまた敵生体が出てきた時は指示をお願いしますね」
「うん、任せてマシュ!…あ」
「ふふ、私そっちで呼ばれる方が好きです。これからは呼び捨てでお願いしても良いですか?」
「…!うん、もちろん!」
「ありがとうございます!それでは、急ぎましょうか」
「そうだね、行こう!」
そして私達は指定されたポイントを目指し始めた。
「所長…もしかして立夏ちゃんは秋冬君のこと…」
場所は変わって、カルデアの司令室。そこでは先程に比べれば落ち着きを取り戻したが、それでもまだ職員が慌ただしくしている。
その一角にオルガマリーとロマ二が居る。
「知らないでしょうね。説明会での様子じゃあ周りを気にしていなかったでしょうし、マシュもきっと言ってないでしょうね…」
「そうか…これは彼女が戻ってきた時に言った方が良いだろうね…」
「当たり前よ。あの状況で肉親があの爆発事故に巻き込まれて、しかも死にかけてるなんて…伝えれば平静を保っていられるわけがない」
「所長は…いや、なんでもない。この事を伝えるのはボクが引き受ける。勿論その後のメンタルケアもね。それでいいですね?」
「えぇ、任せたわ」
そういうとオルガは踵を返し自身の席に戻る。
「所長!」
「…なに?」
「貴方もいつでも来てください…これから忙しくなるでしょうけど、時間があれば是非」
「……そうね、時間があれば行くわ」
「はい…待ってます」
その背中を見た時思わず声を掛ける。その声に返って来た言葉は想像していた拒絶ではなく同意。
それが、親しい友人と少なからず想いを寄せていた人を失い、それだけ彼女が弱っているという証拠の様だった。
やっとこ冬木にレイシフト出来ましたね。
秋冬君の活躍の場はそろそろ来る…筈。
戦闘の描写もっと頑張らなきゃな…