魔法少女リリカルなのはStrikerS protect one wish. 作:イツキ
何とか設定がまとまったので恥ずかしながら戻ってまいりました。
「ギ……姉ぇ……助け……」
本来なら周囲の物が炎に包み込まれて燃えていく音や、燃えたことによってその形を維持することが出来ずに崩れ落ちていく物がたてる音。普通ならそれらの音ににかき消されそうな筈のとても小さく、弱々しくも助けを求める女の子の声。その声を認識した瞬間、一人の少年は反射的にその声が聞こえてきた方向へと走り出していた。
少し前までは沢山の人で賑わっていた空港のロビーも何回かの爆音が鳴り響き、直後の衝撃で様々なものがひび割れ崩れ落ちた今では見える範囲で人の姿を見つけることができない場所となっていた。だけどそんな中で聞こえてきた小さな声を、確かに少年の耳は拾っていた。
--今の僕になにができるの?
--今からだと間に合わないかもしれないのに、向かうのには意味があるの?
--もう何も気にしないんじゃなかったの?
周囲の炎の熱を受けてか身体のあちこちからヒリヒリとした痛みを感じつつも、少年は数多くの障害物を避けながら走り続けた。その一方で頭の中ではその行動を止めようとするかのように何度も問いかけの言葉が浮かび上がる。
だけどそんな問いかけが自身の中で繰り返されながらも、少年ははその足を止めることなく、先ほど声が聞こえてきた方向へと急ぐことをやめなかった。
正直どうしてそうしているのか、その少年自身にも分からないでいた。問いかけの言葉に対する答えも用意することが出来ず、仮にその場へとたどり着くことが出来たとして、実際何をすることが出来るのか具体的に思いつくこともできないでいた。
それであっても少年は先ほど僅かにだが聞こえてきた声を、誰かに助けを求める声を発した女の子の元へと行かないといけないと思うその気持ちに身を任せてその場へと足を急がせていた。
「見つけたっ!」
少しして少年が視界の先に見つけたのは、少し開けた場所に座り込んでいる一人の女の子の姿だった。その女の子を見つけたことで少年は一瞬安堵の表情を見せたが、その直後それを打ち砕くかのように鈍く何かが崩れる音が周りへと響いた。
「えっ……」
その音の発信源は女の子の側に立っていた太く大きな柱の根元だった。既に天井との繋がりを失っていた上に、音と共に根元が大きく崩れた柱はそのままバランスを失い、ゆっくりと女の子の方へと倒れ始める。
女の子も柱が倒れこもうとしようとしている事には気がついているようで一度立ち上がろうとしていたが、それまでに疲れきってしまっていたのか、立ち上がって歩こうとする前に力が抜けたように倒れてしまった。
--このまま見殺しにするの?
「っ、そんな事はしないっ!」
再度頭に浮かんだ問いかけに対して、少年は明確に否定の言葉を口にした。そして自分の身体に対して今出来る限りの
「だったらこれでっ!」
柱から逃げることが出来ないのであれば、その柱を何とかするしかない。少年はその答えが浮かぶと同時に走る勢いのまま、右手を振りかぶり迫ってくる柱を力の限り殴りつけた。最も、渾身の
「ぐああああああぁっ!」
その痛みの強さに少年は一瞬意識が途切れそうになりながらも何とか踏み止まり、そのまま柱に密着する拳を介して今まで身体全体へと込めていた力を柱へと一気に流し込んだ。その結果柱は一瞬波打ったように見えた後、音もたてずに粉微塵に砕け散る。
「な、何とかやれた……」
「……助けて、くれたの?」
少年が振り返ると、身体を起こした女の子が両目に涙を浮かべながら僕のことをじっと見つめていた。その姿は周囲で燃え続ける炎の煤や先の柱の粉とかで汚れてしまっていたが、幸いにも見える範囲での怪我はしていないようだった。
「……良かった、間に合った……」
「えっ!?」
女の子が無事だったことを認識して安心してしまったのか、今度は少年の方が先程の女の子のようにその場に倒れこんでしまう。倒れこんだ少年は先程の行動で痛めてしまったのか右腕を抑えながら苦しそうな表情を見せていると、少年の側まで歩み寄っていた女の子がその少年をゆっくりと抱き起した。
「だ、大丈夫?」
「一応はね……ごめんね、本当ならここから助けられたら思っていたのに、こんな中途半端で」
過程はどうあれ、助ける側と助けられる側が入れ替わってしまっている状況に罪悪感を感じてしまった少年は申し訳なさで表情を暗くする。だが女の子はその謝罪の言葉に対して首を横に振った。
「そ、そんなことないよ。もしさっき来てくれなかったら私……ごほっごほっ」
倒れてくる柱という脅威は取り除かれたがまだ周囲の火災が収まったわけではないため、煙を吸い込んでしまったのか女の子が息苦しそうにせき込む。それを見た少年は一度目を閉じた後に何かを決めたような表情で話しかけた。
「ちょっと待ってて、すぐに楽にしてあげるから」
少年はまだ鈍い痛みを発し続ける右手の代わりに左手を一度服のポケットに入れる。そしてそこから少年の瞳の色に似た淡い銀色光を発する何かが入った透明な球体を取り出すとそれを強く握りしめた。
すると少しして少年と女の子の周囲を先程の球体が発していたものと同じ色の光が包みこむと、状況の変化に女の子が気がついた。
「えっ、息苦しく……なくなった?」
「保護結界だよ。これで少しの間は大丈夫なはずだから……とりあえず今はお休み」
「お休みって……あれ……」
光に包み込まれたことで驚いた様子を見せていた女の子だったが、一変して眠たげな表情へと変わると間もなくして瞼を閉じた。
その後、大きな魔力反応をもとにその場へ一人の魔導士が駆けつけると、そこには銀色の光に包みこまれながら安全を確保された場所で眠る女の子の姿だけがあった。
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