魔法少女リリカルなのはStrikerS protect one wish.   作:イツキ

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第二話 合格発表と二人の少年

「ソウル。毎回でごめんだけど、チェックお願いできるかな?」

 

『Roger that.--There are no problem.』

 

 

 雲一つない青空の下。バリアジャケット姿でビルの屋上からまだ顔つきに僅かに幼さが残る栗毛の少年が周囲を見渡していた。そして少年の頼み事を受け、その両腕に装着されている籠手の右腕側からインテリジェントデバイス特有の機械音声が発せられた後、少年の視線の高さに対して幾つかの空間モニターが表示される。

 

少年はその表示されたモニターの情報に目を通し始め、必要としていた幾つかの情報に問題がないことを確認すると満足そうにうなずいた。

 

 

「うん、これなら問題なくいけそうだね」

 

「いやコルト、そうじゃないと困るっての」

 

「ブルズ? もう用意はできたの?」

 

 

 自らの呟きに対して自分にとっては聞きなれた声から返事を返された少年――コルト・リバティが振り返ると、そこには金髪を短めにまとめた少年――ブルズ・アルフィードがコルトと同じデザインのバリアジャケットを身にまとった状態でで歩み寄ってきていた。ブルズはコルトの問いかけに頷くことで回答を返すと、自らのアームドデバイスであるバックラーを付けた側の腕を軽く回しながらコルトの隣に立ち、先のコルトが見ていた方向を同じように軽く見渡しながら言葉を続けた。

 

 

「なんせ今日は大事な本番だからな俺とお前のペアなら落ちることはそうそうないと思うけどよ、やる事には常に万全の状況で最大の結果を出さないとな」

 

「……だね。半年に一回のチャンス、しっかりと決めていこう」

 

「おう、勿論だ」

 

『おはようございます。お二人が今回陸戦ランクB昇格試験を受けるお二人ですね?』

 

「「はいっ! 今日はよろしくお願いします!」」

 

 二人が互いの拳を軽くぶつけあった直後、空中に大型の空間モニターが表示されて時空管理局の制服姿の女性の姿が表示される。それを見てすぐ表情を引き締めた後、二人はそろって返事を返した。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

「うん、確かに合格したこと確認したよ。スバル、ティアナ。陸戦Bランク試験、改めて合格おめでとうな」

 

「はい、ありがとうございます!」

 

「これも八神二佐や皆さんに再試験の場を用意していただいたおかげです。本当にありがとうございます」

 

 

 目の前に提示された二種類の電子書類にそれぞれ記された合格印を見て嬉しそうに祝福の言葉を述べる女性――八神はやてに対して、対面の椅子に座っていた青髪の少女――スバル・ナカジマと、橙髪をツインテールにまとめた少女――ティアナ・ランスターは頭を下げながら感謝の言葉を口にした。

 

数日前に実施した陸戦ランクBへの昇格試験において、自身達の安全を考慮せずに目的達成を優先したことを指摘されてしまい一度は不合格となってしまった二人だったが、その試験にて自身の設立する部隊へスカウトを行うかの最後の見極めをしていたはやてや、試験官補佐としてモニタリングを行っていた高町なのは教導官の推薦により特別教習を受けた上での再試験を認められていた。

 

そして、時空管理局本局の武装隊で四日間の教習を受けた後に受けることができた再試験において見事二人は合格を果たし、再びその結果を確認するため足を運んでくれていたはやての下に合格したことを報告するため足を運んでいた。

 

 

「やっぱり私やなのはちゃんの目に間違いはなかったみたいやね……それでや」

 

 

 はやての雰囲気が先程までの優しいものから引き締まった真剣なものと切り替わるのを感じ、顔を上げたスバルとティアナは再度姿勢を直してじっとはやての方をみつめる。

 

 

「ここに真っ先に来てくれたってことはスカウトに対する答えをしてくれるって思ってるけど、その認識で間違いないかな? ティアナ・ランスター二等陸士、同じくスバル・ナカジマ二等陸士」

 

「もちろんそのつもりでした。私達二名、共に機動六課への異動をお受けしたいと思います」

 

「まだまだ半人前かもしれませんが、八神二佐の期待に応えられるよう頑張ります!」

 

「その言葉、機動六課部隊長として確かに聞き受け取りました。これから宜しくお願いな?」

 

「「はいっ!」」

 

「……それじゃあ真面目な話はここで一区切りや。頑張った二人には色々とお祝いしてあげんとね」

 

 

 それぞれの口からしっかりとした返事を聞いたうえで少しの間を置いた後に再度はやての物が優しいものへと切り替わり、一度仕切り直しとするかのようにポンと軽く手をたたく。その動作を受けて対面の二人も張っていた気を緩めて机に置かれていたお茶へと手をのばしはじめた。

 

 

「えっと、こういう時は……」

 

「もしもーし?」

 

「ひゃうっ!?」

 

 

 空間モニタを使用して今いる場所の近くにある施設情報を調べていたはやてに対して、いつの間にか背後に立っていた眼鏡をかけている黒髪の男性が耳元に顔を近づけるとそっと耳元で声を発する。それに対して突然の刺激にはやては思わず驚きの声を発してしまった。

 

 

「なっ、なっ……いきなり何するん!? 驚いて変な声出してしもうたやん!」

 

 

 意図せぬ大声を発してしまった恥ずかしさからか顔を僅かに赤くしたはやてが椅子から立ち上がり、件の男性の服の袖をつかみ強めの言葉で対応するが、男性の方はそんな羞恥心からか軽く体を震わせているはやてに対して特に悪びれたり動揺することもなくはやての手を袖から外すと、引っ張られたことでずれた修道服の襟を直した後に再度口を開いた。

 

 

「お言葉ですが八神二等陸佐。貴女はこの後聖王協会本部で行われる会議に参加する予定をお忘れですか? もっと言ってしまえば、会議自体も元々はすでに始めている予定だったのを都合がつかないからと開始時間を遅らせていることにもっと自覚を……」

 

「えっ、そうだったんですか?」

 

「もしかしてそれって私達のせいじゃ……」

 

「おっと、この件についてはお二人の責任じゃないから変に重たく考えなくて大丈夫ですからね。極論悪いのはこの直感で動いた二佐本人の責任なので」

 

「うぅ、ほんまのことだけどそこまで言わんでもええやん……」

 

 

 急に目の前で行われることになったやり取りに口をはさむこともできずに見守るしかなかったスバルとティアナだったが、男性から明かされた内容に自分達が再試験となった事で迷惑をかけてしまったのではないかと表情を暗くする。だがそれはその様子にすぐに気がついた男性によって否定され、その言葉に逆にやはての表情に曇りが見えた。

 

 

「愚痴なら後でしっかりと聞いてあげますから、とりあえず今は教会へ。そろそろ表にシャッハが車で迎えに来ている筈です。残りは私が説明しますので、しっかりと二人のお祝いしてあげたいなら会議終わらせてちゃんと憂いを取り除いてからの方がいいでしょう?」

 

 

「確かにそうやね。それじゃあ二人とも、お祝いについては終わり次第また連絡するからすまんけどいったんここで……あとはよろしゅうね」

 

 

 男性の言葉に少し考えるようなしぐさを見せた後にはやてはスバルとティアナに軽く手を振るとその場を後にする。その姿を少しの間見届けた後に再度男性は二人の方へと視線を向けて話し始める。

 

 

「それじゃあ改めて自分の方から今後についてのお話を……っとここまで騒がせてしまいましたがまだ自己紹介していませんでしたね。自分は聖王教会所属のアルク・チェイサーと申します。普段は教会で指導官みたいなことをしていまして、今日は元々八神二佐の代理でお二人からの回答やこの後の説明を任されていたのですが……結果あわただしくなってしまって申し訳ございません」

 

「いえ、こちらこそお手数をおかけしてすいませんでした」

 

「お忙しいところありがとうございます!」

 

「とりあえずお二人にはこちらで用意させてもらった宿泊施設で今日は身体を休めてもらいたいと思ってます。この事にはちゃんと陸士部隊の隊長さんには許可を取ってるので気にしなくて大丈夫ですからね」

 

「良かった。正直ここから帰るとなるとちょっと遅くなっちゃうもんね」

 

 

 スバル達二人が所属する部隊はミッドチルダの中でも南部に位置する場所が担当地域となっているため、

試験場所からそれなりに遠い場所となってしまっており、この後少なからず疲れた身体で帰らないといけないと考えていた二人は顔を見合わせて笑みを見せる。

 

 

「その代わりと言ってはなんですが、明日からはすぐに異動の為の処理とかをお願いしてもらうことになるので大変かもしれませんがよろしくお願いいたしますね。後は……」

 

 

 元々予定していたこともあってか、アルクは順序立ててスバル達に今後についての予定と必要となる手続きについて空間モニターを扱いながら丁寧かつテンポよく説明を行っていく。そして最後に疑問点についての確認を行い、二人からの質問がなくなった時点で先のはやてと同じように手をうった。

 

 

「それじゃあ説明も一通り終わったので施設の方へ移動を……っと」

 

 

 突然アルクの方からアラーム音のようなものが聞こえてきたかと思うと小さめの空間モニタが表示されて何かしらの表示が行われる。それを見たアルクは一瞬表情を引き締めたがすぐに元の表情へと戻ると席を立ちあがった。

 

 

「すいません、ちょっと至急の連絡が必要になってしまったので少し待っていてください。あと少し時間がかかるかもしれないので良ければ後学の為にこんなのでも」

 

 

 そういうとアルクはポケットに手を入れ、一般的な一つの小型端末を取り出すと机の上へと置く。

 

 

「えっと……これは?」

 

「資料用にいただいた、とある陸戦ランクB昇格試験の映像記録です。お二人は既にランクBに合格しているので試験対策にとかにはならないですが、自分とは違うタイプの人の動きを見ることも自身の動きの見直しになったりして、結構有効なんですよ。もちろん本人含めた関係者の許可を得ているので、これを見る事での問題はないので安心してください。それではすいませんが少し失礼します」

 

 

 そう言い残すとアルクは一度頭を下げた後に出口の方へと歩いていく。少しの間その後姿を見ていたスバルとティアナだったが、一度顔を見合わせた後に今度はアルクの置いていった端末へと視線を移す。

 

 

「と言われた訳だけど……どうしようか、ティア」

 

「確かにアルクさんの言う通り、勉強になるかもしれないし折角だから見てみましょうか」

 

 

 スバルの問いかけに答えたティアナは小型端末を手元に持ってくるとそれを操作して幾つかのモニターを表示させる。

 

少しして表示された中でも一番大きいモニターには、ビルの屋上で空中に表示されたモニターを見上げる二人の少年の姿が映し出された。

 

 

「この映像、撮影対象は私達みたいに二人で受けたやつみたいね。正確には分からないけどたぶん年代的にも同じくらいでしかも二人とも一般デバイスじゃなくて自前のデバイスを使って……スバル、どうかしたの?」

 

 

 現状音声がなく、試験官の説明を受けているところなのかあまり動きのない状態の映像を見ながらティアナは映し出された二人の少年についてできる範囲の考察をしていたが、ふと隣のスバルがただ静かに映像を見ていることに違和感を覚えて声をかける。

 

 

「…………」

 

 

 だがスバルはその声にこたえる事なく、じっと二人の少年の内背が低い栗毛の少年のことをじっと見つめていた。

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