魔法少女リリカルなのはStrikerS protect one wish. 作:イツキ
「♪~~♪~~」
ミッドチルダ首都クラナガン中央に建つ時空管理局のミッドチルダ地上本部――そこから市街地へと続く大通りの一つを少年が一人、ゆっくりとした足取りで歩いていた。
その少年の顔は大きめのパーカーのフードを深めに被っているために見えにくくなっていたが、小さくだが周囲にも聞こえる鼻歌と、左手に持つ銀色の淡い光を放つ小さな球体2つをその手の中で手際よく回している様子からは、何かしら良いことがあったかのように感じられた。
時折すれ違う人からの視線を受けながらも市街地に向けて歩いていた少年だったが、ポケットに入れていた通信用の小型端末が振動を始めたことに気がつくと歌うのをやめて右手でそれを取り出だす。
「いつっ……」
ポケットから手を抜いたタイミングで少年の口から短く痛みを訴える言葉が漏れると、小型端末は少年の手からこぼれ落ちて地面へと転がる。
少年は一度視線を自らの右手に向けて何回か軽く拳を握り直すような動作を行った後、端末を拾いそれのボタンを押してそれの振動を止めた後に耳へとあてて話し始める。
「はい、面談は先程問題なく終えてきました。これで状況の把握はしてもらえた筈……まだ万事問題なくとまでは言えなくても、経過は問題ない……」
その後も少年は端末越しにやり取りを続けるが、その途中でふと何かに気がついたようなそぶりを見せると、端末を再度ボタンを押した後にすぐに大通りから人気の少ない横道へと入っていった。
「少し気がつくのが遅れた? それとも偶然……まぁ何にしてもここは……」
少年は端末をしまうと、先程まで左手で回していた球体の一つを取り出し躊躇なく握りしめる。そして少ししてその足元が銀色に光った次には少年の姿はそこから消えていた。
――――――――――
「ちょっとスバル、一体どうしちゃったのよ?」
「あっ、ごめんティア。つい映像に集中しちゃって……」
一度映像を停止させて再度声をかけるティアナに対して、スバルは今度はその声に気がつきしっかりと反応を返す。
「うっ……まぁそういう意味では映像見始めた矢先に話しかけたったのもあるし、別にいいわ」
申し訳なさそうな表情を見せる相方の様子に、逆に自分も申し訳なさそうな表情になったティアナだったが、気持ちを切り替えるように軽く咳払いをした後に視線をモニター群の方へと戻す。
「教材用って言ってたけど、サブモニターの方に試験対象者についての情報も載せてあるのね。えっと、こっちの背の高い方の名前はブルズ・アルフィード……って、あれ? アルフィードって姓、前にどこかで……」
背の高い少年の名前を確認したティアナが見覚えのある姓に首をかしげているのを横目にスバルはもう一人の少年の情報へと目を向けた。
「えっと、名前はコルト・リバティ。私達と同じように陸士部隊で災害担当として活動実績もあるんだ」
「確かあれは……っと、陸士部隊でってのはこっちも同じみたいね。やっぱりこの二人も私達と同じくペア組んで活動してるんでしょうね。訓練学校出てから同世代の人の動きを見る機会もなかったし、アルクさんには感謝しないとね」
「だね」
簡単に二人の情報を確認し終えたことで、ティアナが一時停止させていた映像の再生を再開し、それに伴って今回の試験内容が追加で表示される。
ランク試験は幾つか存在する試験内容から毎回ランダムに選別される為、今回使用されるのはスバル達が行ったそれとは似てはいたが詳細が異なっていた。
「制限時間内での指定ポイントへの到着。条件自体は私達の一回目の試験と同じみたいだけど……」
「こっちの条件だと固定の中間ポイントがあるのと、小粒のターゲットの破壊義務がない代わりにルートの難解さと攻撃の密度が濃い場所があるって感じみたいだね」
「私達だと防御呪文系に長けている訳じゃないからちょっとキツイかもしれないわね。幻術を使おうにも、コース見てみると結構開けた場所を通る必要もあるみたいだし」
「そこは私のウイングロードで行けばいいんじゃないかな?あとビルとかもある程度あるから、ティアのアンカーガンでの移動も……」
実際に試験が始まるまでの時間を利用してティアナとスバルは自分達が実際に試験を受けた場合の対応方法について話し合う。そしてそうしている間に画面側の準備も完了したようで、先程までは試験官を映し出していた空間モニターの表示が試験開始へのスタートシグナルへと変わった後に二人の少年が屋上を走り出した。
「まずは屋上を降りてから中間ポイントへの移動……」
「高低差を効率よく移動できる方法が無いとこの時点でタイムロスすることになるけど……問題ないみたいね」
映像ではブルズが屋上の柵の外へと左腕に着けていた円形の
「あのブルズって方のデバイス、あそこまで形を変えれるなんてハンドメイドだとしても結構な技術使ってそうね。だけどてっきりなのまま波乗りみたいに行くと思ったけど、そのまま降りたってことはあの形状での推進力はそこまでなのか、またはある程度の使用限度があって節約の為か……」
「次は砲台型が複数設置されてる中間ポイントの通過だね。ここは一体どうするんだろう?」
道中のフィールドアスレチック要素のある道を協力して進んでいった二人に対して、試験用砲台型オートスフィアの射程距離に入ったのか、中間ポイントが設定されているビルの方からの魔力弾による射撃が開始される。
それに対してブルズが前の方に出ると再度腕のバックラーを前面へと構える。するとそれを合図とするかのようにビルへと走っていく二人の前に四角形の魔法壁が展開されると、そのまま二人を先導するかのように飛んでくる魔力弾を弾きながら同じ速度で前進を始めた。
「うわぁ……デバイスを盾にしているから防御魔法は得意なのかなって思ったけど、思った以上に固いね」
「あれだけの防御魔法が使えるなら、中間ポイントは問題なく通過できそうね」
程なくして防御壁によって守られていた二人はそのままビル内へと入っていき、直後に防御魔法を解除したかと思うとそれぞれ盾と籠手から拳を被うように展開されたナックルガード越しに砲台型オートスフィアを殴り壊していった。
そして周囲からの妨害がなくなったのを確認した後に中間地点通過を示す旗を模した端末を確保し、試験の合格条件の半分を達成した。
「これで後は私達と同じ、大型狙撃スフィアの攻略だね」
「先の砲台型の攻撃を受けてた防御魔法でもあの狙撃型の攻撃を受け続けるのは難しそうだし、接近できても防御フィールドを突破できる攻撃方法があるのか……そこは相方のコルトって方の見せ場なのかもね」
試験映像の二人も最後を前に再度の打ち合わせをしているのか、小型のモニタを表示した上で何やらやり取りを繰り返す。そして流れを決めたのか互いに頷いた後にビルの階層を登り始めた。
「ビルを登り始めた……あの時の私達程じゃないとしても、もうそこまで時間に余裕がない中で一体何を?」
「上から攻撃しようにもこれを見る限りオートスフィアは立体駐車場の屋上の一つ下だから、そう簡単にはいかない筈だよね?」
少ししてある程度の高さまで登った後に狙撃型オートスフィアと直線上となるガラス張りの廊下に到着したところで再度ブルズがバックラーを腕から外し、ボード状態へと形を変えたのを確認してその上へと乗る。
そして魔力によってそのボードがある程度の高さまで浮かんだ後、今度は共に上へ乗っていなかったコルトが後方からそのボードを両手でつかむと、ボードを押すように走り出してそのままガラスを突き破った。
更に外へと飛び出した後にボードと籠手からそれぞれカートリッジが排出されたかと思うと、ボードが加速してコルトが掴まっている状態のままオートスフィアが配置された立体駐車場の方へと飛んで行く。
「位置の高さを利用したボードでの突撃をするつもり? だけど今のままだと狙撃されちゃうよ!」
二人が接近してきていることは勿論オートスフィアからも感知できたようで、その動作を始めて砲口から高出力の魔力弾を打ち出し、駐車場の柱の間を縫うような軌道で飛翔するボードを打ち落とそうとする。
「「危ないっ!」」
その光景に思わずティアナ達がそろって声を上げてしまうが、直撃すると思った次の瞬間、ボードの軌道が一気に上向きに変わったかと思うとその攻撃を回避し、一気に駐車場のはるか上空までその高度を上げていくと、ちょうど真上まで到達したところでコルトがボードから手をはなした。
その後、コルトは今度は真下への降下を始めると同時に目の前で組んだ両手を立体駐車場の方へと向けて魔力を集中させる。
「あの体制……まさかっ!?」
「壁抜き!?」
その光景に安堵する暇もなく今からコルトが行おうとしていることに一つの仮定が頭に浮かんだ二人が見逃さないように画面を注視する中、コルトの前面で組まれている両手の前に集中された魔力で大型の杭が形作られる。
そしてコルトが勢いよく打ち出す動作をするとその杭はそれに合わせて立体駐車場の屋上へと突き刺さり、そのままコンクリートを貫通してオートスフィアの防御フィールドと衝突した。
「やったっ!?」
「いえ、まだフィールドを抜けてない」
その様子にスバルはオートスフィアの撃破を確信したが、直後に行われたティアナの指摘通りオートスフィアはその巨体を大きく揺らすが撃破には至っていなかった。しかし攻撃をしかけた当のコルトもそれは承知の上だったのか、杭の射出で崩れた体制を整えながら今度はその勢いを利用した上空からの拳の一撃をオートスフィアの頭部へと叩き込む。
だがその攻撃もオートスフィアの防御フィールドによって頭部に届く直前で受け止められてしまい、次はこちらの番と主張するかのようにオートスフィアの頭部の小型発射口がコルトの方へと向けられるが、直後コルトの右腕側のナックルガードが左右に割れると同時にその形状を僅かに変えたかと思うとオートスフィア本体を含めて防御フィールドが一度大きく波打つかのように振動する。
そしてそれを確認したコルトが拳を引いて距離を取ると、全体をボロボロにしたオートスフィアは数回火花を散らした後に爆散し、直後コルトは上空から遅れて降下してきたブルズと合流してそのまま指定ポイントへと向かっていった。
「ここまで正直目立ったことしてなかったけど、相方が防御に長けてた分攻撃力に長けてたってことね……」
「そうだね……しかも最後のって私と同じ……」
「すいません、大変お待たせしてしまいました。思った以上に通信が長引いてしまって……」
最後に行われた攻防について話していたティアナとスバルのいる席に向けて、申し訳なさそうな表情のアルクが歩み寄ってくる。その言葉にティアナが時計で時間を確認してみると、アルクの言う通りそれなりの時間がたっていた。
「あっいえ、大丈夫ですよ。こちらこそ展開いただけた試験映像、大変参考になりました」
「はい、本当にすごくて時間が経つのも忘れて集中しちゃってました」
「それならよかったです。それでは改めて移動の方を。先程八神二佐からショートメールで連絡があって、無事お祝いをしてあげることができそうとのですので、楽しみにしていてください」
「「あ、ありがとうございます!」」
アルクの言葉に感謝の言葉を返しながらスバルとティアナの二人は立ち上がり敬礼のポーズをとった。
そしてその後車へ向かう途中、実は観戦中のやり取りが周囲に聞こえてしまっていたことを説明されると今度はそろって恥ずかしさから顔を赤くしていた。
話の展開上、戦闘描写を第三者視点且つ当人たちの台詞なしで書くことになりましたが……思った以上に難産でした。
今回の話について、テストを兼ねてアンケートを用意したので良ければ回答をお願いしたく思います。
今回のランクB試験について、描写の補完を兼ねた参加者当人の一人称版読んでみたいですか?
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