魔法少女リリカルなのはStrikerS protect one wish. 作:イツキ
アンケート結果を元に書いた、スバル達の見た記録の本人視点となります。
アンケートに答えていただいた方にはこの場でお礼申し上げます。
しかし久しぶりの戦闘描写……やはり難しいですね。
「以上で今回の試験についての説明を終了したいと思いますが、何か確認しておきたいことはありますか?」
「えっと……」
試験官さんからの最終確認に対して今回の試験内容についてもう一度思い出してみる。
今回僕とブルズが受ける陸戦ランクB昇格試験は基本複数の試験内容が用意されていて、その中の一つがランダムに選ばれる。
そして今回はその中から制限時間内での指定ポイントへの到着が条件となる試験が選ばれていて、その道中に用意されている妨害要素を突破しつつ中間ポイントを通過することと、それ以降は指定された一定の区域をつうかして最終ポイントへと向かうことが必要条件となっていた。
またこういった試験の時に気になる周囲への被害への考慮については今回の試験については特に大きな減点にはならないということも事前の説明に含まれていたため、特に改めての確認は必要なさそうだった。
「はい、僕は問題ありません」
「同じく、問題ないっす。ここまで説明ありがとうございました」
僕に続く形で、隣に立つブルズからも質問についての答えが返る。そんな僕達の回答に試験官さんは満足そうにうなずいてから表情を引き締めた。
「はい、それではこの通信が切れると同時にカウントダウンが始まります。お二人とも、無理のない範囲で頑張ってくださいね」
「「はいっ!」」
返事を合図とするかのように、試験官さんを映していた空間モニターの表示がスタートシグナルへと変わった。
それに合わせて次の合図に素早く反応できるよう身構え、気持ちを落ち着かせるために一度大きく息をはく。
「3……2……1……」
「「GO!」」
1つずつ消えていった3つのシグナルが赤から緑へと色を変えて再度表示されたのを確認して、ブルズとそろって走り出す。
今回の試験のスタート位置はビルの屋上だけど、中間ポイントへ向かうには一度ビルから降りてかつてはこの廃棄都市地区でも大通りと言えただろう場所を進んでいく必要がある。
そのため、本来なら一度ビルの中へと入って階段を下りていくことになるけど、それでは開始早々時間をロスする形となってしまう。
だから僕達が進むのは入り口がある背後じゃなくてそのまま柵がある正面。
「コルト、当初の手筈通り正面に行く……落ちるなよ?」
「了解っ!」
ブルズが手に持ったバックラー型のデバイスを柵の向こう側へと投げると、その形を短距離移動用の大型ボード形態へとその形状を変化させる。それをしっかりと確認した後に僕達も屋上からそのボードへと飛び降り、そのままバランス制御はブルズに任せて最初のルートを空中から風を切って進んでいく。
ブルズのデバイスは一部技術協力を受けてはいるけど基本は自作のもので、陸士として苦手としている空中移動をバックラーをこのボード形態へと切り替える事で短時間だけなら最大二人乗りの状態でおこなえるようにしている。
そのため、このまま中間ポイントまで直接飛んでいくことも選択肢としてはあったけど、事前の相談でこういった移動系の試験となった際には飛行用の魔力を後半に温存するために最低限のものにしておくことを決めてあって、その高度はゆっくりとだけど下がってきていた。
ここから中間ポイントまでの道筋は、ここが廃棄地区となっているのと今回のような試験に使うようになっているためか、舗装されていた道路は所々大きな穴が開いていたり瓦礫が積まれた状態になっていて、素直に走るだけでは最短距離を進むことは出来ないのが分かる。だけど--
「ブルズ、降りてからまずは僕が先に行くよ。進むルートは……」
「最短距離を真っすぐ正面突破だな。これくらいなら問題ない!」
ボードが地面へと着地する直前でボードから降りてブルズに対して先行する形でルートを進み始める。
途中で大きな瓦礫を乗り越える必要が出来た際にはブルズをリフトして先に登ってもらい、僕は上から引き揚げてもらう形で進む。
こういった地形を進んでいくことは、普段の訓練や現場で経験していることもあってそこまで苦に感じることもなく、障害物のないストレートに入ったタイミングでモニターを表示させて残り時間を確認するが、目立ったロスをしてないこともあってそれなりのタイムで進めていた。
「まもなく中間ポイントだ。ここまでは特に妨害とかはなかったが……」
「ここからがオートスフィアからの妨害ポイント。気を引き締めないとね」
『
右腕側の籠手に埋め込まれる形となっている結晶部分を点滅させながら
僕達は咄嗟にその攻撃を回避したけど、今まで妨害がなかった分と言うかのように断続的にこちらへと魔力弾が発射されてくる。
「コルト、前衛交代だ。ここは壁役の出番っ!」
何回か攻撃を回避した後に並びをブルズが前に出る形へと変える。そして前に出たブルズは正面にバックラーを構えると、そこを起点に前方へと魔力壁を展開した。
フォースシールド――ブルズが得意としている防御魔法のバリエーションの一つで、バックラーを始点として前方に攻撃を弾くことに特化した魔力壁を展開することでオートスフィアからの攻撃を弾くことが出来るのを確認した上で僕達はその壁から身体を出さないようにしながらビルへの道を走り続ける。
「中間ポイント付近のスキャン完了した。砲台型が中間ポイントから見て左右と手前に各1つずつ!」
ビルへ向かう足を止めずにブルズから送られてきたビル内部のスキャン結果をデバイスで展開可能な小型モニタに映し出す。
それによるとビルの一階は入り口からは広めのホールになっていて、その中央にある中間ポイントを示すために旗を表示している端末の周囲を三台の砲台型オートスフィアで固めているようだった。
「この配置なら下手に守り固めていくより、勢い任せて突っ込んだ方がいい筈だ。コルト、なんとか俺で左やるから、残り二ヶ所は任せた!」
「了解! だけどブルズ、無茶はダメだからね!」
ビルの中へと飛び込んだタイミングでブルズが魔力壁の展開を止めて左側のオートスフィアの方に進路を変えるのに合わせて僕も右側に配置されたオートスフィアへと進路を変える。
「まずは一つ!」
『Knuckle guard installed.』
僕の声に反応するようにの、両手に装着している籠手の装甲の一部が駆動して拳の前にナックルガードを形成される。
そしてそのまま正面のオートスフィアめがけて左手を振り被り、走る勢いのままその砲口を正面から殴りつけると、オートスフィアに共通して展開されている防御フィールドによって一瞬抵抗を感じたけど、そのまま破壊することに成功する。
『
「カートリッジ!」
『
踏み込んだ足をそのまま軸足としてこちらを狙ってきている奥のオートスフィアの方へと体を向けると同時に、デバイス内に装填されている魔力ブーストを目的とした圧縮魔力が込められているカートリッジを一つロードする。
それによって瞬間的に体内を駆けめぐった魔力に対して、僕は即座に右腕と脚にそれぞれ流し込むように流れをイメージする。
『Boost Dash!』
相棒の補助詠唱で発動した魔力循環と放出による身体強化と短距離移動効果を持つ補助魔法の助けを受けた結果、一回の踏み込みでこちらへと攻撃しようとしていたオートスフィアの面前まで一気に距離を詰め、今度は右手の拳でオートスフィアを捉える。
ブーストされた一撃はさっきよりも簡単にオートスフィアの防御フィールドを貫通したようで、その衝撃でオートスフィアは爆発前に中間ポイントの旗を掠めるように吹き飛んだ後に壁へと衝突していた。
「オートスフィア、二基無力化に成功……ブルズの方はーー「こんのぉっ!」
残り一基のオートスフィアの方に視線を向けると、その射撃を振り上げるような形でバックラーで弾いたブルズがそのバックラーを思いっきり振り下ろしてスクラップへと変えていた。
「っつ~っ!」
ただし、その衝撃に手が痺れてしまったのか、バックラーを元の場所に装着しなおすとその痺れを払うように右手をブンフンと振った。
「だ、大丈夫?」
「お、おう。大丈夫だ……まぁとりあえずこれで無事中間ポイントに到着だ。幸い時間にはまだ余裕がある、一度情報整理するぞ」
「だね」
中間ポイントの端末を拾い上げた後にブルズの表示するモニターを見るために側へと近寄る。そのモニターには周辺の地図と試験の進路を重ねたものが表示されていて、更にその道中に大きな魔力反応を示す円形の反応が点滅していた。
「ここの大型反応はおそらく、悪い意味で有名な陸戦B級試験名物の大型狙撃スフィアだ。この複合地図で見る限り、このビルの先にある立体駐車場に陣取ってるみたいだな」
「本当は射程外を通るルートで迂回したほうが確実なんだろうけど……確か今回の試験では、中間ポイントを通過した後のルートには一定範囲外に出ちゃいけないルールがあるんだよね?」
出発前の試験官さんの説明を思い出しながら確認の言葉を口にすると、ブルズは頷いて再度モニタの操作を行る。すると表示されていた地図に新たに色違いの区域が表示され、それはこのビルから立体駐車場の周辺を通り、最終ポイントまで繋がっていた。
「これが中間ポイント以降の移動指定区域だ。これ見る限り、スフィアからは射程範囲外には絶対逃がさないぞって意思を感じる……全くいやらしい設定だ」
過去に一度、同型のスフィアが使用された試験映像を見た際の記憶を掘り返して思い出してみる限り、あの高威力の砲撃はブルズでも防御するのは困難な筈。
だけど、モニターを見ながら説明するブルズの表情からはその攻略方法に悩んでいるような様子は見えず、僕にはむしろ絶対の自信があるように見えた。
「そんなこと言ってるけどさ、多分ブルズってこのスフィアの攻略法について案あるんだよね? 顔に出てるよ?」
「まぁな。幸い、区域指定については高度について指定はされていなかった。だから……」
ブルズの説明する大型狙撃スフィアの攻略方法を聞いていくと、その内容につい笑みが浮かんでしまう。最も、その笑みは面白いからじゃなくて、思っていたより単純かつ力押しな内容に清々しさから来たものだった。
「ブルズ、地味にそれ僕に苦労しろって言ってるよね? 何気にひどくない?」
「安心しろ。俺はあくまでお前ならできるって分かってるからこの提案をしたんだ。ちと危ない橋を渡ることになるが、やれるよな?」
「もう。そう言われちゃったらやるしかないよね。いざという時のフォローは頼んだよ?」
「うっし、決定だ。それじゃあ改めて……」
「「Go!」」
再度声をそろえて再スタートの言葉を口にした後に、再び僕達は走り始め、先の作戦の為の行動を始める。今度僕達が目指すのはこのビルの階段――幸い見えやすい場所にあったそれを僕達二人は急ぎ足で駆け上がっていく。
そして少し離れたところに建っている立体駐車場の屋上から少し上の階まで上がってきたところで階段を離れ、その駐車場から直線位置上となる広めの廊下まで来たところで一度足を止める。
「それじゃあ手筈通り、スタートダッシュから頼むからな」
写真の構図を決めるように指で形作ったフレームからガラス張りの先から見える立体駐車場を覗き込んだ後にブルズが再度装着していたバックラーを腕から取り外してボード形態へと形を変える。
そしてそれにブルズが飛び乗り、ゆっくりと高度を上げて僕の胸元あたりまで浮かび上がったところで僕がその後ろ部分を板を掴むようにして保持すると、一度深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
「行くよ、ブルズ!」
「おう、保護は俺に任せてドンと行け!」
ブルズの返事を合図に僕はブルズの乗ったボードを押しながら走り始め、そのまま廊下の先に張られたガラスを突き破ってビルの外へと飛び出していく。
ガラスを突き破った瞬間、大きな破裂音と共に僕らの周りに大量のガラスの破片が飛び散っていくが、それらは全てブルズの防御魔法によって僕達には突き刺さることなく重力に引かれて地面へと落下していく。
「「カートリッジ・ロード!」」
それに対して僕達二人は同時にデバイスにカートリッジをロードするとブルズはそれをボードの下方からボードへの浮力へと変換し、更に僕は腕からボードに向けて流すことでボードの後ろに僕がぶら下がる形になりながらもあまり高度を落とすことなく先にある立体駐車場に向けて飛行を始める。
『|High energy reaction. Estimated timing is 8 seconds later.《高エネルギー反応。推定タイミングは8秒後。》』
「来るぞコルト! 下手なことならないよう、力込めとけよ!」
「分かってる! ブルズもタイミング宜しくね!」
立体駐車場への飛行を続けて警告通り8秒が経とうとしたタイミングで、立体駐車場の方から曲線を描きながら先の砲台型のと比べて明らかに高火力だとわかる魔力弾が僕達の方へと飛んでくる。その射撃は僕が想像していたよりもずっと早く、一気に迫ってくるように感じた。
「ブ、ブルズ!?」
「上がれええぇぇぇぇっ!」
あと少しで命中しそうなタイミングでブルズがボードのノーズへと右手をかけると、再度のカートリッジロードと同時に一気にボードの軌道を上へと向けて一気にその高度を上げることでギリギリのタイミングで魔力弾を回避することに成功する。
こうなる事は予め分かっていたことだけど、ボードの後ろにぶら下がっている僕からすると上昇する瞬間に急制動の衝撃に手を外しかけたり、本当に間一髪での回避となった事に胸の鼓動が激しくなったのを感じた。
「あ、危なかった……」
「悪い、思ってたより弾速が早かったから少し強引になった……そんな調子で悪いけど、そろそろ最後の仕上げだ」
ブルズの言葉に視線を下へと向けると、既にボードは先の話し合いで目標地点としていた立体駐車場の直上へと到着していた。
大型狙撃スフィアの対策としてあの型のスフィアはその巨体故に主兵装を真上へと向けることが出来ず、それ故に真上から防御壁を抜ける攻撃を仕掛けることが出来ればさほど抵抗されることなく撃破できるということだった。
もちろんそれは設置する管理局の試験官も知っていることで、大体の試験では今回のように厚い壁や天井でその欠点をフォローしていることから下級……特に陸戦魔導士には突破が難しいとされている。だけどこの条件下でなら――
「ここからはお前の独壇場だ。一発キツイところかましてやれ!」
「了解! 行ってくる!」
ブルズが僕の方に向けてサムズアップしている事への返事と一度大きくうなずく。その後、まだ上昇を続けるボードから両手を離したことで僕の身体は今までとは逆に、立体駐車場へ向けて降下を始める。
『|Attitude control is in progress. Maintain the status quo and continue the descent.《姿勢制御を実施中。現状を維持し、降下を継続》』
「いくよ、中距離攻撃バリエーションの一つ!」
『Cartridge load!』
一度空中で一回転した後、両手を体の前で組み合わせて立体駐車場の屋上――正しくはその先にいる筈の大型狙撃スフィアへと向ける。
それに合わせるように籠手から魔力を解放したカートリッジが排出されると、少しの間の後に僕の両手の周りに明るい緑色に輝く魔力が集まり始め。そしてその魔力は大きな杭を形成しドリルのように回転を始めた。
「いっけぇっ! ハウリング・スマッシャーッ!」
詠唱と同時に撃ち出した杭は勢いよく屋上へと突き刺さり、そのまま周囲にコンクリートの粉砕音を響かせながら下の階へと貫通し、その先に座していた大型スフィアへと命中した。その衝撃で大型スフィアはその名に違わない大きな球体のボディを激しく揺らしていたが……
《油断するなコルト! まだソイツは倒れてない!》
ブルズからの念話に降下を続けながらスフィアのことを注視すると、ブルズの言う通り僕の攻撃が命中した部分については大きな凹みを確認できたけど、想定以上の衝撃を防御フィールドに阻まれたのかまだ撃破には至らず頭部のセンサーが点滅しているのが確認できた。
「それならこれで!」
すぐに体勢を可能な限り整えつつ右手を振り被り、その点滅を続ける頭部に向けて右の拳を降下の勢いを乗せるように振り下ろす。
だがそれに対して大型スフィアは再度防御フィールドを展開したのか、僕の拳はスフィアの頭部へと届く直前で見えない壁のようなものに受け止められてしまった。しかも先の攻撃の衝撃から立ち直ってきているのか、意味ありげにセンサーを何度か点滅させた後に小型の銃口を僕の方へと向けてくる。
――ここまで来て負ける訳にはいかない!
「ソウル、ナックルガード展開!」
『Break mode!』
再度籠手の装甲が駆動し、先程までナックルガードとなっていた装甲が左右に展開して拳の正面から横を覆う形へと形を変える。
『Vibration crushing!』
「砕けろぉっ!」
再度右手の拳に魔力を集中させた上で残っていたカートリッジからも上乗せとして魔力を流し込むと、直後に大きな衝撃音と同時に目の前の巨体が大きくボディを振動させる。
そしてほぼゼロ距離からの衝撃はさすがに耐えきることができなかったようで、その全身にできた無数のひび割れから回路を覗かせる様になった大型スフィアの頭部のセンサーから光が消える。
『
拳を引き、一度地面へと着地した後に距離をとると、大型スフィアは僕の引いた側とは逆の方に半回転程転がった後に全身から火花を散らして爆散した。
「な、何とかなった……ふぅ」
周囲から敵意がなくなったことを確認したことで緊張の糸が途切れてしまい、全身からにじみ出てきた疲労感からつい大きく息をはいてその場へと座り込んでしまう。
そして視線を上空へと向けると、視線の先にこちらへと降りてくるボードが見えた。
「やったなコルト。後はゴールまで向かうだけだ」
「っと、そうだった。気を抜くのはまだ早い、休むのはゴールして試験をゴールしてからじゃないとね」
『
まだ休んでいたいと主張を続ける身体に再度活を入れるよう、ふっと短く息をはいた後に立ち上がる。
そして僕に合わせる為か駐車場へと降りてきたブルズと共にゴール地点への道を急いだ。
「はい、制限時間内での指定ポイントへの到着を確認しました。これから試験の詳細を確認したうえで結果を発表しますが、きっと良い結果をお伝えできると思いますよ」
結果、僕達は無事制限時間内に指定ポイントへと到着することに成功し、いつの間にか試験会場に来ていた試験官さんに笑顔で出迎えられた。
その様子に試験結果に対して好感触を抱きながら試験結果の発表を待つことになった僕達だったけど、その後試験官さんと共に現れたとある人物からのスカウトに試験合格の喜び以上の驚きを受けることになった。
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