視界がぼやけている。体中が痛い。耳がキーンとする。何が起こっているのか、把握できない…
俺たちは、迫っていた政府軍の小隊を殲滅し、帰還する途中の車内だったはずだが…
しばらくすると、顔をバラクラバで覆った男が俺の腕を引っ張っている様子が、薄ぼんやりと目に入った。
「…輩!し…ぎ先…!」
何を言っているのかよく聞こえない…
「しっか…て下さ…!…ん輩!」
何だ…何を、
「しっかりして下さい!白城先輩!」
やっとクリアになった視界に入ったのは、後輩の小山だった。俺を起こそうと、必死に腕を引っ張っている。
俺は腕に力を入れてしっかりと立ち上がった。あたりからひっきりなしに銃声がする。
「そこら中敵だらけです!辺り四方から敵が来ます!カービン銃を拾って応戦して下さい!」
「わかったが、俺が倒れてる間の指揮は誰が!?」
「三上先輩です!」
「死傷者は!?」
「伊神先輩が死亡!大山が大腿部に銃創を負ってます!運転手も死亡してます!」
どうやら、俺たち分隊の乗っていた車が砲撃されたらしい。
「了解!残りの人員で四方を固めてくれ!防衛陣形をとるんだ!これ以上死傷者を出さないことに専念しろ!こっちは兵が少ない!」
「了解!三上先輩にも伝えておきます!」
「頼んだ!」
俺はそれだけ言ってすぐに足元辺りにあった俺のカービン銃を拾って敵の迫ってくる方へと銃撃を始めた。
俺達分隊のいる場所は市街。辺りには廃ビルが立ち並び、人通りは少ない区域だ。その、ビルの間という間から政府軍の兵がどんどん攻めてくる。
俺はその出てくる敵兵を片っ端から撃ち伏せるが、一向に減る気配はない。
俺たちの戦力は現在総勢5名、銃弾を防ぐ遮蔽物が豊富にあるとはいえ、このままでは全滅は逃れられない。
「ぐあっ!」
「小山!高山先輩が被弾した!」
「止血剤で応急手当をしろ!クソっ!本部!本部!こちら2-5-3分隊!現在多数の敵と交戦中!増援か、脱出機をよこしてくれ!このままじゃ全滅するぞ!」
無線機に向かってそう叫んだのは小山だ。
『了解、こちら本部。脱出地点A、800m先の交差点に脱出機を10分後に向かわせる。それまでに脱出地点を掃除しといてくれ』
「了解した!よし!皆聞いたな!脱出地点Aだ!交差点に向かいましょう先輩!」
「わかった!負傷者は運べるか!?」
「大山宗治、なんとか歩けます!」
「よし、行くぞ!」
「行け行け行け!突っ切れ!脱出地点まで800m!10分後だ!」
こうして俺たちは、800m先の脱出地点へと向かって走り出した。
そうやって、走っている間にも敵の銃撃は止まず、むしろ追撃が激しくなってくる。
「大山が被弾、繰り返します、大山が被弾!」
「くそっ!人員が減るばかりだ、脱出地点まであと500m…全員もつか…」
「無駄口叩くな!撃て!走れ!」
一人、また一人と被弾していく状況に、全員が動揺し、上手く脱出地点に近づけずにいた。
もうすぐ、脱出地点に脱出機が到着する頃だ。
「おい!もう脱出機が到着するぞ!急げ、急げ!!!」
俺がそう叫ぶと、皆は更に急いで走り出した。
脱出地点まで、100m地点。もう着陸間近の脱出機が見える。
「脱出機だ!助かるぞ!脱出機まで一気に走り抜けろ!」
小山がそう叫んで、いち早く脱出機へと走り出した。
俺たちも負けるものかと、助かるという希望の光を見出したことにより安堵を覚えながら走り出した。
その時。
カラン、と鈍い、金属がコンクリートに当たって跳ね返る音がしたので7mほど先を見てみると手榴弾が転がっていた。
「皆後ろに跳…
俺がそう言って後ろに少し跳んだところで、手榴弾は爆発した。
ドゴォォォォォォォォォ!と、轟音が辺りに響いて、視界がフェードアウトしていった。