息抜きに考えた作品ですので更新は不規則です。
駄文ですが、どうかよろしくお願いします。
―水音が聞こえた。
おそらく昨日降った雨の水滴が地面に落ちた音であろう。
街中などであれば、全く気にならない音―
下手したら聞こえすらしない小さな音でも、この暗く静かな場所では気味が悪い程に響き渡る。
その場所には畳3・4畳分の広さにベッド・机・和式トイレが設置されている。
だが、その場所に入るための扉はない。
あるのは、まるで世界から隔離されたようにその場を隔てる鉄製の柵。
誰もがこの場所を見ていい顔はしないだろう。
何故ならここは罪を犯した者を閉じ込めるためのものなのだから。
だが、そんな場所に異物が紛れ込んだ。
異物が纏う雰囲気は牢屋とはまるで似合わない。
・・・いや。異物と呼んだが、世間から見ればここに閉じ込められている者こそが異物なのであろう。
彼女を異物と呼ぶのは間違っている。
ウェーブのかかった金髪をツインテールにした学生服にヒラヒラやフリルを飾り付けた、もはや学生服と呼んでいいか分からないモノを着ている彼女。
歳は15・6だろうか。
身長は低いが、服の上からでも胸の膨らみがはっきりと分かる彼女は文句なしの美少女と断言していいだろう。
そんな彼女が目の前で両手を拘束された男に皮肉げな口調で話しかける。
「ふっふっふー、会いたかったよー。牢獄暮らしはどう?快適?」
「悪くないよ。食事は三食出るし、狭いが個室。なんならここで一生を遂げるのもいいかもしれない」
「あはっ、何言ってんの?116年も投獄されるんだから終身刑と同じ。どーしようと一生分はここで過ごすんだよー?」
「なら、長生きしないと」
だが男は大して気にした様子なく、肩をすくめて答えた。
当然だ。男にとってこの状況は煩わしいものであっても、絶望するものではないのだから。
「「・・・・・」」
薄暗い部屋のせいで男の顔は輪郭ぐらいしか確認出来ないが、闇の中でも輝きを失わない金色の髪は、女性で、なおかつ同じ髪色である彼女ですら羨ましく思うほとだ。
「それで?用もなく君が俺に会いに来るとは思えないんだが?」
「えー!理子は用がなくたって、会いにぐらいは来るよ!」
「それは失礼」
「まっ、でも今回は用があって来たんだけどね」
そう言って彼女は目を細めてクスッと笑う。
昔から変わらず食えない女だ、と男は思う。
会いたかったと言いつつ、自分が投獄されてから、今までただの一度たりとも会いに来たことがないというのに。
だが、それは当然の事かもしれない。
立場が逆なら間違いなく自分もこんな場所まで誰かに会いに来たりはしないだろうから。
「今日はお先真っ暗でバッドエンド一直線な可哀想な子に理子が救済フラグを持ってきてあげました!」
「救済?」
その言葉に食い付いたのか、先程まで牢の奥で座っていた男が檻の前―
少女の前まで近づいてきた。
先程まで暗闇で見ることが叶わなかった男の顔がようやく拝めた。
所々薄汚れてはいるが、陶磁器のように白い肌。
端正に整われた顔に、サファイヤを宿したかのような瞳。
あまりにも出来過ぎたその容姿は誰かが作ったのではないかと疑わせるほどだ。
「ねえ、キッド」
キッドと呼ばれた男は息を呑む。
今から彼女が話す内容は己にとっての人生の分岐点と察したからだ。
「ふふ・・」
そんなキッドの反応に満足したのか、理子と名乗った少女は牢の中にいる男の頬に手を伸ばす。
まるで陶磁器でも扱うように優しく、ゆっくりと頬を下から上へと撫でる理子。彼の引き込まれるような碧い瞳に見つめられ、身体の芯から火照っていくような感覚に酔いそうになるが、その気持ちを抑えキッドの耳元に口を近づけ、こう囁いた。
―外に出たくない?
最初なのでまだ短めです。
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