軍事国家、作ります!   作:たーなひ

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キリが良いので短めです


サムラァイ1

執務室で雑務をしていると、ノックが響いた。

 

「法国の使者がいらっしゃっております。早急にお目通りをしたいとのことです」

 

「……法国?」

 

どうしたんだろうか。貿易では取り立てて問題は無いはずなんだが…。

 

 

「通してくれ」

 

執務室では外の人間とは会わないので、翼を隠して玉座の間で待つ。

 

 

 

「お会い出来て光栄です。がぶりえる王」

 

「御託はいい。急ぎなのだろう?用件を聞こう」

 

“早急に”と言っていたからな。

 

「はい。それでは…………」

 

 

 

 

 

 

「………という事であります」

 

「ふむ………」

 

 

話を纏めると……

法国はエルフの国と戦争をしている。

その中で、『法国の切り札』が捕われてしまい不味い状況になった。

彼女を助けたいが、法国の力だけで取り返すのは難しい。

そこで強大な力を持つ『プレイヤー』である俺の国に助力を請いに来た……と。

 

 

まず気になるのは、法国の切り札とやらだ。御庭番衆の潜入では報告されていない人物のはずだ。大したことがないのか、はたまた強者故に気配を隠されて発見出来なかったのか、あの時法国に居なかったのかわからないが、ここで恩を売って関わりを作られるのは別に悪い事ではない。

 

 

だが、問題なのは相手方の戦力だ。

スレイン法国という国の軍事力は、人間諸国の中では最高峰を誇っている。それが劣勢という時点でかなりの戦力を持っているという事がわかる。

 

さらに、頼って来たのが『俺』というのも気になる。

普通に考えれば、未だ得体の知れない神の国よりかは王国、もしくは帝国に要請した方が良いはずだ。なのに神の国を頼って来たという事はつまり、彼ら普通の人間では対処出来ないレベルということだ。

プレイヤーがいないと対処出来ないレベルの強者、戦力ということなのだろうか。

 

…何の考えもなしにプレイヤーレベルの戦力とぶつかるのは少しリスキー過ぎる。もしワールドチャンピオンクラスだと本当に全兵力を注ぎ込む必要があるからだ。

 

とりあえず、交渉次第だな。

 

「…こちらが兵を出す対価として何を出せる?」

 

「相応の金銭をお支払い致します」

 

金か……欲しくない訳ではないんだが、貿易でボロ儲け出来る以上それほど旨味があるようには感じない。

 

「他には?」

 

「…………出来る限り望む物をご用意させて頂きます」

 

「…抽象的だな」

 

望む物…というのは流石に抽象的過ぎるんじゃないか?

要は「助けて下さいなんでもしますから!(なんでもするとは言ってない)」ということだろう。

これでもし国土全部くれ…とか無理な事言ったらどうするんだろうか。

 

……………いや、言わない確信があるのか。

神の国は友好的な関係を構築している。その旗頭とも言える法国に対して無理なお願いをすれば、友好関係の構築にヒビが入ることになる……といった感じか。多分。知らんけど。

 

 

しかし、望む物か………。今、一番欲しいものは情報だ。

情報を望みたいところなんだが、「情報が欲しい」と言うのは弱みを見せる事になる。これからの関係を考えれば、情報が不足している事を知られるのは非常にディスアドバンテージだ。

だから、シンプルに情報をくれ…と頼む事は出来ないが、情報を直接知らされなくても内部に潜り込ませる事ができれば問題無い。内部に潜り込ませる事を合法的にして貰えるのが一番か。………いや、手段が無い。スパイを潜り込ませる事を認めさせられる訳がない。

 

考えるべきなのは、スパイがバレた際の被害の最小化じゃないだろうか。スパイを潜り込ませてバレたとしてもそれを国際問題にさせないような事が必要だ。

となると……………モロにスパイの合法化をさせるような法律は作れない……それを上手いこと隠した法律を作る必要がある………………領事裁判権はどうだろうか。

スパイがバレたとしてもこちらの国が罰を決められるのだから殺される事もないし、法律にのっとって罰を下せばあちらは文句が言えない。

ま!!ウチの国に法律なんて存在してないんですけどねぇ!

 

 

「領事裁判権を認めてもらおう」

 

「りょ、りょうじさいばんけん…ですか?」

 

「ふむ……知らないか。例えば、ウチの国の者がそちらの国で犯罪を犯した場合、その者の罰を決めるのはそちらの法律ではなくウチの法律になる…ということだ」

 

このままだとこれから悪い事をするみたいに思われてしまうか。

 

「ウチの国民も非常に困惑していてね。法国の法律を知らぬ間に破って罰を受けさせるのも可哀想だろう?」

 

…どうだろうか。

 

 

 

「……………………………それを呑めば、彼女を助けてくれるのでしょうか?」

 

「あぁ。もちろんだ」

 

「…………………分かりました。呑みましょう」

 

「ここで決めてしまっても良いのかな?」

 

「はい。私は今回に関しては全権を貰っておりますので…」

 

「いや、なら良いんだ」

 

ふぅぅ……これで安心して法国にスパイを送れるようになったな。もしバレても問題無いからな。

 

 

「…じゃあ、詳しい話を聞かせてくれ」

 

 

 

 

 

________________________

 

 

「ふむ……ここが此度の戦場か……」

 

エルフと法国との戦線に一人派遣されたムサシは、戦場を見て一息漏らす。

 

 

法国の話では、ゲリラ戦自体に手間取ってはいるものの戦力的には有利であるらしい。だがエルフの王が出て来れば話が変わってくる。

エルフの王を足止めしてくれればその隙に精鋭部隊が切り札とやらを助け出すので、その間エルフの王の相手をしてほしい……との事だった。

 

当て馬として使われる事に多少思う所はあったが、法国に対して恩も売れるし法国に対する牽制にもなるので引き受けた。

軍隊を派遣して蹂躙するのが手っ取り早いが、ゲリラ戦を主体とするエルフとは相性が悪い。

 

そこで白羽の矢が立ったのがムサシだ。

味方が居なければ戦闘力が上昇するスキルを持っているおかげで、ステータスだけで見ればワールドチャンピオンにも匹敵する。

 

 

「心が踊るのぉ…」

 

 

…因みに戦闘狂だ。

 

 

 

 

 

与えられた命令は、精鋭部隊が女を救出する時間を稼ぐことだ。ただし、万が一の場合には即座に撤退することが命じられている。

 

強者がいるとのことなので、テンションが上がっていたんだが……

 

 

「むぅ……手応えが無いなぁ…」

 

「ギャァ!!」

 

飛びかかって来たエルフの男を両断して、失望の声を漏らす。

主人が「強者がいる」というのだから、かなりの強者のはずだ。それが率いている軍であるならば、一兵卒だろうと多少手応えがあると思っていたのだが……。

 

 

 

「い、一斉にかかれ!」

 

全方向から飛びかかって来たエルフ達。

逃げ場はない。エルフがもつ短刀で切り裂かれるかに思われた。

 

 

「遅いのぉ。もそっと早くても構わんぞ?」

 

 

次に響いた緊張感の無い声は、失望の色を強く匂わせる。

 

しかし、その声が聞こえたエルフは誰一人としていなかった。

 

 

 

「ヒッ!ヒィィィ!!に、逃げろ!!逃げろ!!」

 

「戦場で敵に背を向けるとは……」

 

 

次の瞬間、視界が反転した。

 

「え?」

 

「ほぉ…頭を失っても走り続けるとは………見上げた根性だ」

 

逃げ出そうとした彼が最期に見た景色は、頭の無い体が走っている様だった。

 

 

 

 

「ぎゃぁ!」

 

「ンー……つまらんなぁ……」

 

「ヒッ!」

 

一人を切り捨て、次の標的を捉える。

 

「ご、ごめんなさいごめんなさい!殺さないで下さい殺さないで下さい……」

 

武器を捨て、頭を地面に擦り付けるエルフの女。

その声は、恐怖で鳴らす嗚咽のせいで途切れ途切れで震えている。

 

「……顔を上げよ」

 

その声に、エルフの女は顔を上げた。

 

しかし、目の前に立つ男は刀を振り上げている。

 

「戦場で命乞いとは……恥を知れ」

 

「ぁ」

 

刀が振られ、そのエルフの女は意識を手放した。

 

 

「む?気を失ったか……」

 

刀を首筋でピタリと止めたムサシは、気を失ったエルフの女を見て刀を離す。

 

 

「はぁー…」

 

その女を一瞥し、止めを刺すことなく背を向けた。

 

「つまらん……」

 

 

 

__________________

 

 

「お、王よ!」

 

「なんだ騒々しい…」

 

『王』と呼ばれた男は不快そうに答えた。

 

王と呼ばれた男は、国に対してなんの感情も持っていない。ただ強い子供が欲しいだけなのだ。

 

 

「も、もの凄く強い人間がこちらに向かっております!」

 

「ほう…?」

 

王と呼ばれた男は暁光だと思った。

ついこの前捕らえた法国の切り札という女に続いて、もう一人仕込める可能性がある。

だが、その前に一つ確認せねばいけない事がある。

 

「女か?」

 

女であればどうしても捕らえて孕ませたいので自ら行っても良いが、男ならば話は別だ。

 

 

「も、申し訳ありません。遠目に確認しただけですので………」

 

「チッ!使えない…」

 

「申し訳ありません!」

 

ガタガタと震え謝罪をする女エルフを見て、エルフの王である男は溜息を溢した。

 

 

ならば行く必要も…と思ったが、いや、と考え直す。

 

それがもし女ならば孕ませれば良いし、男だったとしてもその親がいるはずだ。可能ならその母親を孕ませてやっても良いかも知れない。

 

そう考えたエルフの王は、すぐさま飛び出して行った。

 

 

________________________

 

 

ムサシは森を歩く。

足取りは遅く落胆の気持ちが感じられるが、油断は無い。

 

 

「む!」

 

ギィン!と金属音が鳴る。

刀が攻撃を防いだのだ。

 

 

「ほう!防いだか!」

 

一瞬で間合いまで入り、今日初めての防御をさせたのはエルフの男だ。

 

 

「……ようやく出て来たか!待っていたぞ!!」

 

ムサシは待ちわびた強者と思しき存在の登場に、凶悪な笑みを浮かべた。




ムサシを刃牙に出てくるムサシっぽくしたいけどあんなチートにすると誰も勝てなさそう。
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