あと今日二話目です。
見てない方は先にそっち見てくださいね。あれね、エルフの国に行く奴ね。
一先ず陽動は成功だろう。
この攻撃の鋭さは、今までの雑兵とは次元が違う。
「なんだ、女ではないのか…」
ムサシと相対する両手に剣を持ったエルフの男は残念そうに口を開いた。
「む?なんだ、男だと問題があるのか?」
ムサシは少し好感を覚えた。
戦場に立つものとしては女だからと手を抜くなど有り得ないが、女子供だろうが容赦なく叩き斬るような人間よりも多少の悲しみや哀れみを覚える人間の方が好感が持てる。
こんなことを言うと、某メイド騎士には酷く怒られるだろうが…。
そんなつもりで言っているのならば、非常に好感が持てる戦士だ。
「いや、問題は無い。…時に、貴様の母親は生きているのか?」
「母…?」
妙な質問だが、そう言われてムサシはふと考える。
ムサシにとっては、親と言うのは間違い無く創造主を指す。それはどのシモベだろうと同じだろう。
だが、『母』と限定されると非常に返答に困る。至高の方々の中に女性の方も存在したが、父と母で分けられるものかと言われると少し答えづらい。自分を作ったのは『親』ではあるが、二人の関係は『親子』ではなく『主従』の関係なのだ。
それに、生きているのか…という問いに対する答えは、生憎持ち合わせていない。がぶりえる王であれば知っているのかも知れないが、誰一人としてそれを聞くものは居なかった。
至高の方が亡くなられるとは考えられないが、自分如きが至高の方々の生死を勝手に想像するなど無礼極まり無い。
となると、的確な答えとしては「知らない」が妥当だろう。
「………………知らないな」
「………そうか」
……何が聞きたいのだろうか。女で無いことに落胆したかと思えば、今度は母親の安否を気にしていた。
何が知りたいのか全く分からない。
「……まあいい。俺はムサシ。そちらも…」
名乗ると良い…と続けようとしたが、一直線に飛びかかって来た。
「おほっ」
「チッ」
刀で受け止めると、エルフの男が舌打ちをする。
すぐさま膝蹴りをしてくるが、それを片手で受け止める。
刀を回して相手の剣を弾き刀を振るったが、相手のもう一方の剣で止められた。
刀を戻して“突き”でもしようかと考えたが、刀を戻したのを見てエルフの男はすぐさま間合いを取った。
「ふむ………」
ギュッギュッとムサシは膝を受け止めた掌の調子を確かめる。
いささか重さが足りないが、防御しなければダメージを与えられる程度の攻撃ではある。
レベルとしては90程度か…と、ムサシは結論づける。
「名乗りもせずに攻撃とは、無礼ではないか?」
「……………………………」
ふむ……と、ムサシは考える。
こちらとしては倒す必要は無い。むしろ出来れば倒すなという指示を頂いている。救出までの時間が稼げれば充分なのだから、このままお喋りをしていても良いかも知れない。
「足癖も悪いようだし……さしづめ野蛮な浮浪児と言ったところか」
そんな訳が無いことは分かっている。身に付けている服は見てわかるほどの高級品だからだ。
それでもこんなことを言ったのは挑発のためだ。これだけの高級品を身に付けているなら、間違いなく王族だろう。ならばこの挑発に乗って攻撃して来てくれるだろうと考えた。
「貴様………」
しかし、エルフの男が発した声に怒りは感じられない。
挑発には失敗したということなのだろうか。
「……本当に母親が生きているかどうか知らないのか?」
またしてもその質問だ。全く持って意味が分からない。
自分が貶されたことよりもそんな事の方が大事なのだろうか。
「なぜそんな事を聞く?」
「ふむ……知りたいか?」
「教えてくれるのか?」
「…ならば教えてやろう」
まあ…良い。時間が稼げるのなら戦わなくともお喋りしていれば良い。出来れば戦いたかったんだが……。
「子を作るんだよ」
「………は?」
「この俺と貴様ほど強い人間の親で子を作れば、強い子供が出来上がるとは思わないか?」
「………ふむ」
言っていることの理解は出来る。
強い遺伝子が濃ければ濃いほど強い子が生まれると考えるのはおかしいことではない。
「つまり、子を作るために俺の母親を探していると?」
「そういうことだ。どうだ?教えてくれる気になったか?」
教えるも何も無い。母親でも父親でも無いのだから。
そういえば……。
「……そう言えば拐われたという人間も女だったな」
「…なんだ、知らずに来ていたのか?……まあいい。お前の想像通りだ。切り札とか言われていたから、捕らえて犯してやったらどうやら孕んだようでな。生まれてくる子供が楽しみだ」
嬉々として語るエルフの男に、申し訳なさなどは一切ない。本当に生まれてくる子供をただただ楽しみにしているようだ。
「……下らんな」
ムサシの底冷えするような声が響いた。
「…何?」
「貴様の考えを否定する気はないが……俺の創造主ーー親と子を生したいだと?……身の程を知れッ!」
言い終えた瞬間、一瞬で間合いを詰めて刀を振り下ろす。
「っ!」
エルフの男は咄嗟に飛び退くがさっきまでいた場所が地面ごと真っ二つになっており、身震いした。
「ふむ……躱されたか」
「…貴様のような人間が法国にいたのか…?…いや、そもそも貴様………本当に人間か?」
「……俺は法国の人間では無いし……」
その先を続けようとした時、上空に赤い煙弾が打ち上がった。
合図だ。
「む………時間か……」
「…何?時間?どういうことだ?」
「法国の精鋭部隊とやらが捕まった人間を救出したようだな」
「精鋭部隊…?……漆黒聖典か!」
「……これで俺の任務は達成だ。帰らせてもらうぞ」
刀をしまい、戦闘の意思が無いことを示す。
「待て!貴様!」
「…なんだ」
「まだ何者か聞いていなかったな」
捕われた女を救出したということは、恐らく王都の中心まで侵入したということのはすだ。
国家のピンチであるというのに、それよりも俺の事なんかの方が大事なのだろうか。……まぁ良い。
「……神の国」
「……何?」
「後は自分で調べよ。ほれ、さっさと行かんと家が燃えてしまうぞ」
「…………チッ!」
少し逡巡した後、舌打ちを残して去って行った。
「ご苦労だったな、ムサシ」
「はっ」
神の国に帰還したムサシは、がぶりえるに報告を行なっていた。
「法国によれば、無事切り札とやらは救出。お腹の子は……どうするかは不明らしい」
「左様でしたか…」
そこに特に思うところはない。
強いて言えば、敵国の王との子供なのだから、その子にはろくな運命が待っていないだろう…と憐む程度だ。
「それで、どうだった?」
「はっ。雑兵は取るに足らない者ばかりでしたが、エルフの王と思しき男は中々でした。推測ですが、レベル90程度かと思います」
「ふむ………90というのは自信を持って断言出来るものか?」
「いえ、一度だけ掌で攻撃を受けたのでそれで判断したまでです」
「なるほど……」
そう言うと、何かを少し考えているようだ。
考えているのを邪魔するのもどうかと思うが、どうしても気になってしまったことがあったので質問する。
「…質問をしてもよろしいでしょうか」
「ん?あぁ、構わんぞ」
「今回のポイントはどのようになっているのでしょうか…?」
「…?あ、あぁ!ポイントだな。うん。も、勿論キッチリつけておるぞ」
安心した。別にポイントの為に尽くしているわけでは無いが、どうしても確認しておきたかった。
「左様でしたか……因みに、どの程度か教えて頂くことはできますでしょうか?」
「ぅぇ!?あ、あーー…悪いが、それは教えられない。何故なら………ぇーー…そ、そう!ポイントが分かるようになると将軍達の中で軋轢が生まれる可能性があるだろう?無論俺がキチッとポイントを付けているから心配することはないぞ!うん」
どうやら、ポイントを教えてくださらないのは考えあってのことだったようだ。
「了解致しました。質問に答えて頂き、感謝申し上げます」
「う、うむ」
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……っっぶねーー!!!!
マージで危なかった!
すっかりポイントの事なんて忘れてた。
かなり狼狽えてしまったが大丈夫だろうか……?
これで ムサシ>エルフ王 ってなっちゃったんですけど、これでエルフの王が番外とかよりも強かったらどうしたら良いんや……。