軍事国家、作ります!   作:たーなひ

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今回難産でした。
何回も書き直したりしたので誤字やら変なところがあるかもしれないので、適宜教えてくれると助かります。


戦争準備

諜報部隊の報告を眺めていて、ふと思ったことがある。

 

この国、最高だ。

 

 

なぜそう思ったのかというと、その理由は二つある。

 

 

法国などは少し違うが王国や帝国は封建制をとっており、その影響で貴族が大きな力を持っている。

そうなると当然どろどろとした権力闘争もあるし、闇の深いような関係があったりもするだろう。

これは偏見だが、上流階級の人間にろくなやつがいない。選民思想にとらわれているやつなんかはその典型だ。人は強欲で愚かだ。権力を持てば他人を蹴落としてでもその地位にいたがるし、さらに上の地位を求める。そして偶々運よく良い家に生まれただけのくせに他人を見下す。

 

その点、ウチの国はすばらしい。

まず貴族なんていない。それどころか全員平民だ。

さらに貧富の差も無いので格差だって生まれないから争いなんて起きない。

他の国であれば貴族たちの反感を買わないように精神を払わなければいけないだろうし、政略結婚やら派閥やらに頭を悩まされていただろう。

 

 

……なんとすばらしい国だろうか。

 

俺の出す意見に正当な反論以外をするようなやつがいないという事のすばらしさを実感している。

 

 

 

そして二つ目。

闇が無い事だ。どういうことかと言うと、要は裏組織や後ろ暗い事が無いということだ。

 

例えば、王国では裏組織が存在している。すでに貴族との癒着もあるようで、出来立ての国なのに早くも腐敗がうかがえる。

裏組織だけではない。貧民街や奴隷商館、薬物に汚職など国にとって後ろ暗い物は枚挙に暇がない。

それらは人が利益を得るために行われるもので、どれだけ規制をかけても無くならないのは旨味を得る人間が多いからだ。そもそも普通は国内すべてを把握しコントロールすることなんて不可能なのだ。普通ならね。

 

その点でも、ウチの国に後ろ暗いものはない。

国中の警備網に後ろ暗い物が入る隙間はなく、全国民が豊かな暮らしをしているので危険な娯楽が入る余地も無く、そして何よりギルドマスターの権限で全てのNPCを把握出来る事が大きい。そのことだってNPCとして把握しているのだから下手な事もしないし、その気になれば国内全土を監視するような体制だって作れる。

 

 

……なんとすばらしい国だろうか。(二回目)

 

おそらくだが、裏の無い国なんてここだけなんじゃないだろうかーー御庭番衆は表に出ないが例外だ。

一番クリーンな国として大々的に宣伝してみても良いかもしれないとすら思える。

 

 

 

 

だが、こんな超スーパーハイパークリーン国家である神の国にも問題はある。

 

それは軍事力。

 

これからも付きまとう永遠の課題だろう。

 

 

俺はギルドごと転移して来たが、これから転移してくるプレイヤーもそうとは限らない。六大神や八欲王のように数人のプレイヤーが転移してくる可能性もある。

特に上位ギルドの中でもトップ10に入ってくるようなギルドにはワールドチャンピオンのプレイヤーも居たりする。ワールドチャンピオン級のプレイヤーがいた場合だと、犠牲覚悟でとにかく数で押し切るしか勝ち筋がない。いや、国土内ならムサシ一人でもギリギリ抑え切れるか。

 

それに、城以上の拠点を持つギルドばかりだからNPCの合計レベルも高い。

 

上位ギルド相手にNPCでは質で劣る以上、とにかく数で勝負するしかない。幸い国土内であればギルド武器の特性で一兵あたりの質もかなり上がるから、現状でも敵の侵攻には勝てるだろう。

 

だが、“国土内での防衛戦は勝てる”ということは受け身にならざるを得ないということでもある。

個人的には、受けというのが強いとは思えない。特に平野にあるこの国は攻める側にとって有利に運ぶ。

 

 

だから、こちらからも攻められるだけの戦力を用意する必要がある。地下のダンジョンごと持っているようなギルドなら話は変わるが、城を構えているようなギルド相手には攻められるだけの兵力を揃えておきたい。

 

それに、こうしてNPCが意思を持つようになる以上は戦いの基本もプレイヤーだけでなくNPCを動員したものになるので、規模も拡大するはずだ。

 

 

 

獣人(ビーストマン)との戦争は、その予行演習みたいなものだ。

ユグドラシルでも仲間と一緒に敵対ギルドと戦った事はあったが、せいぜいプレイヤー100人の規模だ。何千何万という単位での戦争というのは初めてなので、今のうちに経験を積んでおきたい。

 

 

 

 

 

 

 

「………以上が、御庭番衆からの最終報告になります」

 

「ご苦労。それじゃ、御庭番衆はしばらく休むと良い」

 

「かしこまりました」

 

御庭番衆が獣人の国への偵察を終えて帰ってきた。

 

 

調査によるとどうやら、獣人は大陸中央の国境線に戦線を敷いているらしい。

そちらの戦線は他の亜人種との戦線で、かなり熾烈な戦いのようだ。獣人もそちらに大幅に戦力を割いており、50レベル程の戦士も数人確認出来たとのこと。

竜王国に出て来ている獣人は比較的弱い部類の部族で、戦線への食料供給が優先されるあまり弱い部族の食料事情はかなり厳しい。そこで弱い部族達が目をつけたのが竜王国という餌場で、人間を食べる事で飢えを凌いでいるとのことだ。

 

つまり竜王国に出て来ているのは食料不足を凌ぐため。

その食料不足の原因にあるのが大陸中心側の国境付近の大規模戦線への食料供給である……と。

 

 

……これは、一見するとチャンスのように思える。

 

こちらから侵攻して攻め立てれば獣人は戦線を二つ作らなくてはならなくなるので、戦力が分散する。戦力が分散すれば中央側の戦線も維持できなくなり、死者も増える。

こちら側からも侵攻して挟み撃ちをすれば、簡単に獣人の国を落とせるのだ。

 

 

だが、そう出来ない理由がある。

 

まず領土運営だ。

そもそもウチは土地を欲していない。兵力は欲しいが、土地を持っていても使い道なんて無いのだ。

適当に町を作っても構わないが、態々亜人の大国に近い超危険都市に移住するような物好きもいないだろう。

 

そして、何よりも敵を増やしてしまう事だ。

大陸の中心では亜人種達が覇権を奪い合っている。そのうちの一つである獣人の国を奪い取れば、その覇権争いに参加せざるを得なくなる。人間を餌としか見てない亜人種にとっては格好の的だからだ。国を作ってもすぐに攻められるだろう。

そうなると此方としては不味い。プレイヤーが来ることまで考えれば、態々兵力を浪費するようなことは避けたいし、何より国が広くなるということは警備も薄くなるということだ。現状で満足しているのだから、下手に国を広くしようとする必要は無い。

 

ある程度まで押し込めば、後は防衛線だけ築いておけば問題無いだろう。ただ押し込み過ぎると獣人達を刺激して、戦力を投入してくるかもしれない。別にそれぐらいなら問題無いが、問題なのは中央側の戦力が減ることだ。

中央側の戦力が減って、万が一獣人の国が落とされると、次は人間側に侵攻してくるだろう。獣人ぐらいなら何とかなるが、戦闘に特化したような妖巨人(トロール)が攻めてくると中々に厳しい。

 

 

だから、獣人を刺激しないが防衛線として充分という絶妙なラインまで押し込む必要がある。

 

よし。戦争の目標は決めた。

後は戦後処理だ。

 

 

防衛線……砦と壁で塞げは良いか?

獣人からの侵攻を完全に防げるように防衛線を張れれば良いんだが、費用がかかり過ぎる。竜王国から費用を出してもらったとしても、完成するのに何十年とかかるだろう。その間に獣人は待ってくれないだろうし、長い間こちらのリソースをそこに割くのはごめんだ。

そうなると……そこを領土にしてしまえば良いんでは無いだろうか。占領するという意味だけではなくて、ギルドとしての領地とするという意味でだ。そうすれば、資材さえ用意すればちょちょっと弄って作る事が出来る。その資材を竜王国に出してもらえば此方に損はない。

………いいじゃないか。

 

 

線だけ決めてそこまでの獣人を全て殲滅して、そこを領土にする。

そんで竜王国に資材は出してもらって砦を築いて完全な防衛設備を整える…と。

 

 

 

よし。なら後は殲滅の方法だな。

 

例えば絨毯爆撃はどうだろうか。

 

まず、この世界の戦争は兵士や民兵などの歩兵による地上戦が基本だ。

調べた歴史の中でも銃火器などの兵器があったり、魔法詠唱者(マジックキャスター)が固定砲台としてガンガン魔法を打ったりするような事はなかったようだ。〈飛行(フライ)〉を駆使した空中戦なんかも無いようだし、科学技術が発展していないこともあってリアルに比べれば些か原始的に思える。まあ、この世界はこの世界で違う方向に発展はしているようだが。

 

 

だから絨毯爆撃の経験がないのだ。少なくとも人間の生活圏では。

 

〈飛行〉を使って飛んでいればユグドラシルでは一瞬で打ち落とされたが、この世界では打ち落とせるような魔法を使える人間は少ない。

絨毯爆撃爆撃なんて経験がなければ防ぎようも無いし、空を飛び回る人間に地上から魔法を当てるなんて不可能に近い。

 

獣人がどの程度魔法を使えるのかは知らないが、爆撃で端から焼き尽くしていけばいずれ殲滅出来るだろう。

 

 

となるとどの部隊に爆撃させるかだが、適任がいないように思える。

 

というのも、前線で爆撃しようとすると真っ先に落とされるのでユグドラシルでは何の役にも立たないからそういう用途で使える部隊を作っていないのだ。

 

 

 

そんな訳で新たに作ったのが80レベルほどのNPCを20人。機動性と殲滅力が特に高く設定されているNPCだ。通称『魔導爆撃部隊』だ。既に魔導砲撃部隊は存在するが、差別化点としては後衛からの援護射撃が砲撃部隊、爆撃で戦線を掻き乱すのが爆撃部隊だ。

 

貿易で出た利益が殆ど吹き飛んだが後悔はしていない。

下手に歩兵を増やすよりも有意義な使い方のはずだ……多分。

 

それに、80レベルもあればこの世界で死ぬことはまぁない。プレイヤーが相手だと心許ないが、なんとか頑張ってもらうしかない。とはいえ国内であれば100レベルプレイヤーと渡り合えるぐらいにはなるだろうが……。

 

……そういえば、この世界でレベルは上がるのだろうか。

ユグドラシルでは100レベルが限界だったが、この世界でも変わらないのかというのも気になる。

現状経験値を効率的に稼ぐ手段が無いから試しようが無いが、もしあるようならNPC達に試させてみたいなぁ。




次回は獣人との戦争です。
獣人にどれだけ強いやつがいるのか分からないから、強者全員戦争に行ってるってことにしとけば良いかなって。
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