「がぶりえる王、獣人が竜王国に侵入したようです」
「お、ついに来たか」
カルロスが獣人の襲撃があったことを報告して来た。
同盟国が攻められたという大義名分が出来るまで待っていると思いの外時間が経ってしまったが、ようやく攻めてきてくれた。
これで心置きなく殲滅できる。
「兵の用意は?」
「魔導爆撃部隊、後詰の歩兵部隊と六連星、どれも用意は完了しているとのことです」
今回はこの三つの部隊を出している。
六連星は雑に戦場に送り出せるのが良いな。死んでもまた補充できるし、実力を測るのにも重宝する。
「…よし。竜王国へのアポはとれているな?」
「滞りなく」
「ここの警備は?」
「がぶりえる王に付いて行くエリカとロイヤルフォートレスの三人以外は厳戒態勢で待機しております」
「ふむ……ならこれで俺が出立しても問題無いな。他になにかあるか?」
「……念のために確認しておきますが、万が一侵入者が来た場合は即殺して問題無いですよね?」
「あぁ。問題無いぞ」
「かしこまりました」
……よし。んじゃ、行きますか。
……そんなわけで、やって来ました竜王国。
いやー!外出なんて久しぶりだからテンション上がるなー!
それに他国の町に入るのだってスレイン法国以来だし、あの時は町を見ながら歩くような余裕無かったからな~。
もちろん遊びに来た訳ではない。キチンと目的があって来たんだが……もう王城についてしまったのでまた後で。
案内されて入った部屋には女王と思しき人間が居た。
とりあえず挨拶しておけば良いだろう。挨拶は大事だからな。
「……お初にお目にかかります。神の国の王、がぶりえると申します」
「あぁ、初めまして。私は竜王国女王ドラウディロン・オーリウクルス。よくこられたなガブリエル殿、歓迎させてもらおう」
「ありがとうございます」
握手を交わす。
諜報部隊の情報では竜王国の女王は
実力を隠しているのか、本当に弱いのか、そもそも本物で無いという可能性もあるか。
まあ、見かけではや表面だけでは分からないから要警戒ってところだな。人を見た目で判断してはいけないというのはユグドラシルで散々学んだからな。
……そう。たとえ俺の手を握っているのが
なにせユグドラシルではゴブリンやスライムですらがプレイヤーを殺せる性能を持っているのだから、幼女がそれぐらいの力を持っていても何一つおかしくない。
「なにか飲み物はいるか?」
「……では、紅茶を」
「後ろの従者達は?」
「私達は結構ですのでお気になさらず」
「…そうか」
そういうと、彼女は紅茶を用意させ始めた。
どうやら、飲み物が来てから話を始めるようだ。こういうところの基本はリアルとあまり変わらないのかな?
「どうぞ」
「ありがとう」
紅茶が来たので、とりあえず一口。
うーん……悪くはない。が、エリカが淹れた紅茶の方が美味い。別に大して紅茶の味が分かるような人間ではないが、毎日飲んでいる紅茶と比べてどうかぐらいは分かる。こういう場で飲まれていることまで考えたらおそらくこの世界では上質な茶葉なんだろうが、もしかすると茶葉ですらも大きな実力差(?)があるのかもしれない。
密かに何とも言えない優越感に浸っていると、向かいに座る王女がほぉ~と口を開けているのに気が付いた。
「……なにか?」
「…いや、ためらいなく飲むんだなと思ってな」
「え?なにか問題あります?」
「普通は毒とか警戒するもんじゃないのか?」
そういわれると、確かに普通はそうだよなと思う。俺は状態異常無効を取得しているので毒殺とかを警戒する必要はないんだが、他人から見れば不用心そのものだろう。
「でも、そんなことやらないでしょう?」
「ほう……どうしてそう思う?」
「だってこれで俺が死んだらこの国、二時間で滅びますよ?」
「…はっはっはっ!冗談……というわけでもなさそうだな」
女王が俺の後ろに立つエリカ達を見ながらそう言う。
マジな話、獣人殲滅のために集まった兵士達とここにいる将軍達が本気になれば二時間で一つの国ぐらいなら落とせそうだ。
というか、この戦力で落とせない国家とかあるんだろうか。まだ未知の聖王国や評議国は知らないが、それ以外の国なら負けるビジョンが見えない。
閑話休題。
「………それでは、まず要件を先に話しますね」
「それより、話し方を崩して構わんぞ?堅苦しいのは苦手でな」
「……そうか?ならそうさせてもらおう」
そういうタイプか。中々話しやすそうで安心した。
「…じゃあ改めて、ここに来た要件を聞こうか」
「それじゃ話させてもらおう…獣人が襲撃してきたらしいな」
「…耳が早いな…その通りだ。すでに村が数ヶ所襲われていてな、困り果てているんだ」
「そうかそうか」
おけおけ。これで獣人が攻めてきたことを知らなかったらそこから説明する必要があったが杞憂に終わった。
「それについての話だ。以前使者を送った際には”有事ーーつまり獣人の侵攻ーーの際に軍を派遣すること”と決めただろう?」
「そうだな」
「今回の襲撃がその”獣人の侵攻”に含まれるのかどうかは一先ず置いておくとして、これから先使うかどうかも定かではない所に戦力を回すのもナンセンスだろう?」
ようはリソースの問題で、限りあるリソースを無駄なことに割きたくない…という話だ。
「ふむ………」
そう言うと少し考えこんだ。
「つまり『今回の襲撃に軍を動かしたから、これから先は軍を貸す必要は無くなった。約束は果たした』と言いたいわけか?」
「いやいや違う違う。そういう話じゃない」
「……と、言うと?」
いや、最終的に軍を派遣する必要を無くすことに違いは無いんだけどね。
「要は、獣人が攻めて来れなければいいんだろう?」
「まぁ、そうだな」
「砦を作るんだよ」
「……ほう?」
「竜王国と獣人の国の間に砦を立てて獣人の侵入を防げば侵攻に怯える必要は無くなるだろう?」
「いや、それでも何匹かは抜けてくるし、そもそも獣人相手に砦を守り切れるのか?」
砦って言っても万里の長城みたいなのを想像してたんだが………伝わらないか。
「うーん、砦って言い方が悪いのか…もっと正確言うなら壁だな」
「壁?」
「そう。獣人でも越えられないほどの高い壁を建てるんだよ」
「………言ってる意味は分かるが……」
「完全に侵入を阻めるのなら軍を常駐させておく必要も無いだろう?」
要は『ウォールマリアを作ろう』って話だ。
「…なら聞こう。どうやってそんな壁を建てるつもりだ?石だろうが容易く砕いてくるぞ
「材質は企業秘密。建築方法も企業秘密。ただ壊されないということは保証できる」
めちゃくちゃ胡散臭いが、他にどんな言い方があるんだろうか。材質はアダマンタイトクラスの硬度で造るつもりだが細かい材質なんて知らないし、建築方法だってちょちょいと弄るだけなんだからどうやって建てるのかもよく分からない。
そもそも魔法で塩やら香辛料を生み出せるのだから、物を生み出す仕組みなんてもう知ったこっちゃないだろう。科学が息してないんだよなぁ。
「………それを信じると思うのか?」
ですよねー。
「…いや、思わない。まぁ、それは完成してみればわかることだ」
「ふん…ほんとに完成すればの話だがな」
あ、こいつ信じてないな?まあいいや。
「そこで、だ。
「費用?」
「まぁ、金だな」
「ふっ…良いぞ良いぞ。本当にそれが出来たらいくらでも払ってやる」
小馬鹿にしたように女王は言った。
…ん?今『いくらでも』って言ったよね?
「よし。言質は取ったな」
「へ?」
「エリカ、今の録れたか?」
「はい!ばっちりです!」
エリカがボタンを押すと、女王の声が再生される。
『ふっ…良いぞ良いぞ。本当にそれが出来たらいくらでも払ってやる』
………やったぜ。
これで金についてはかなり余裕が出来た。
いや、もちろん偶々だ。多少ぼったくる予定ではあったが、まさかこんなことを言ってくるとは思わなんだ。
『なんでもやる』系はフラグって教わらなかったのか?
「え?ど、どういう…」
「ま!
「そ、そう…だな。完成すれば…だからな!」
「そうそう!アッハッハッハ!」
「は………はは………………」
しばらくの間、俺の勝ち誇った笑い声と女王の乾いた笑い声が響いていた。
「と、ところでなんだが………」
話題を転換する。
さっきの話はあくまで仮定………そう、仮定だ。まさか本当に獣人の国と竜王国の間に壁を建てれる筈も無い。そう、ありえない。ただの石の壁ならともかく、獣人が壊せないともなるとオリハルコンクラスの硬度が必要になってくる。それも獣人が乗り越えられないほどの高さが必要なのだから、膨大な量の金属が必要だ。
………もしそれで本当に出来たとして、その場合はどれだけの金額を要求されるのだろうか。
あぁ………どうして私は『いくらでも』なんて言ってしまったんだ………。
い、いや、そもそもだ。
「壁を建てるのは分かったが、その内側にいる獣人はどうするんだ?まさか放置するなんてことはないよな?」
「もちろんだ。きちっと殲滅してから作業に移るから安心してくれ」
「そうか…」
少し安心した。獣人が内側に入ったまま壁が出来て民が食い殺されるということもなさそうだ。
「そういえば、今回来た目的はさっきの話をすることだけだったのか?」
「…あぁ、すっかり忘れていた。今回の襲撃が国交を結んで初めてだったからな。初陣を見届けようと思って来たんだよ」
「なるほどな………。ところで其方の軍とやらには期待しても良いのか?」
随分自信満々だが、獣人は強い。
一般人と10倍は能力に差があると言われているほどには。
「もちろんだ。それどころか面白いものも見れるかもしれんぞ?」
「面白いもの?」
「そうだ。
絨毯爆撃って知ってるか?」
いっつも自分で線打ってた(_____←コレ)けど、ついに線が引ける機能を知りました。やったぜ。