エ・ランテル。
リ・エスティーゼ王国の都市で、三重の壁に囲まれた城塞都市だ。
そこを歩く漆黒の
つい昨日冒険者登録したばかりの『モモン』と『ナーベ』である。
その正体がギルド“アインズ・ウール・ゴウン”の有する本拠地ナザリック地下大墳墓が主人、アインズ・ウール・ゴウンとその配下である戦闘メイド“
彼らがここに来たのは、冒険者としてのアンダーカバーを作り情報を集めるためだ。名を売ることでより質の良い情報を得られると考えたのだ。
そんなアインズ……いやモモンであるが、昨日が登録初日、今日が冒険者としての初仕事である。
冒険者組合に着くと、好奇の視線に晒されながらもボードを眺めて依頼を選ぶ。
この世界の文字が読めないという事が判明したが、機転を利かせて何とか切り抜け………る直前で、彼らに声をかけた一団があった。
「それなら私達の仕事を手伝いません?」
「仕事というのは…やりがいがあるもの…でしょうか?」
「うーん。まぁ、あると言えばあると思いますね」
モモンの質問に答えたのはリーダーと思しき男。金髪碧眼のこの世界では一般的な見た目で、
一先ず仕事の話をするために部屋を貸してもらい、話を聞いてもらうことにした。
彼らは4人チームの銀級冒険者の『漆黒の剣』というらしい。
一通り自己紹介をした後、仕事の話に移る。
「……実のところ仕事というわけでもないんです」
リーダーのペテル・モークがそう切り出した。
モモンが訝しげな声を上げると、ペテルは続きの言葉を紡いだ。
「この街周辺に出没するモンスターを狩るのが今回の目的です」
「モンスター討伐ですか…?」
普通に仕事に思えるが、それが仕事ではないというのはどういう意味なのだろうか。
無知を曝け出すわけにはいかないモモンは、当たり障りの無い質問から答えを得ようと疑問を投げかける。
「なんというモンスターですか?」
「あ、いえ。そっちじゃなくて、モモンさんの国ではなんと言うんでしょう?モンスターを狩るとそのモンスターの強さに応じた報奨金が街から組合を通して出ますよね、それです」
なるほど…とモモンは納得する。モンスターを狩って素材なんかを得るのと同じ要領だ。
「糊口を凌ぐのに必要な仕事である」
重々しく大柄な男、
「俺達は飯の糧になる。周囲の人間は危険が減る。商人は安全に移動が出来る。国は税がしっかり取れる。損する人間は誰もいないって寸法だよな」
「今じゃ組合のある国ならどこでもやってることですけど、5年前は
中性的な顔立ちと声のこのチーム最後の一人、
この国の事を何も知らないモモンは会話に加わらず、黙って聞いておくことにする。
「『神の国』なぁ……一度で良いから行ってみてぇー」
「あそこは今でも冒険者に対する待遇が一番良いからな…」
「…神の国……ですか?」
黙って聞いておこうと思っていたが、今一番知りたいと言っても過言では無い神の国についての情報だ。なんとしても聞いておきたいと思い話に加わる。
「あれ?モモンさんは知らないですか?」
「えぇ…ここの周辺国家もあまり知らないですしね」
「あー…そういえばあの国って100年ぐらい前に突如現れたって言われてるから遠くまで情報が届いてないのかも知れませんね…」
「まぁ、眉唾だと思うけどなー」
ニニャの言葉にルクルットが返す。
モモンは頭をフル回転させる。
プレイヤーがいるかも知れない神の国の情報はなんとしても手に入れておきたい。今はこのチームが唯一のコネだからだ。
「……どんな国なんですか?」
とりあえず当たり障りの無い事を聞いておく。
「一言で言えば、すっっっっごい国ですね」
「はぁ……」
気の抜けた声が出てしまった。
すっっっっごいってどんなだよ。抽象的過ぎるだろ。
「食いもんは美味いし、宿も豪華だし、治安も良いしマジックアイテムも安い。…あの国のマジックアイテムって王国や帝国で買うと倍以上するんだぜ?いくら希少だからって商人もぼったくりすぎだよなぁ…」
「そうそう…」とチーム全員が頷いている。
これだけ聞くと、普通に良い国のようだ。
「先程突然現れたって言ってましたが……」
「あー、それな……どう考えても嘘なのに当時はみんな信じてたらしいぜ?まあ、100年も前の話だから信じる人間はみんな死んでるんだけどな」
「そうなんですか……」
やはり、自分達と同じようにギルドごと転移して来たという可能性が一番高いか……。
「……話が逸れてしまいましたね。仕事の話に戻りましょうか」
「…………そうですね」
まだまだ情報を集めたいが、彼らにしてみれば仕事の話以上に神の国の話を優先するのは怪しまれるので一旦話を終わらせる。
まだまだ移動中なんかにも話す時間はあるのだし、焦る必要は無い。
彼らによると、スレイン法国国境の森林から出たモンスターを狩るのがメインらしい。
仕事を受ける事に決めて、質問を受け付けた時にルクルットがナーベに告白してあえなく玉砕(毒舌罵倒)したというハプニングはあったがそれ以外に特に問題は無かったので、準備を始めようと部屋を出る。
受付まで戻ってくると何やら妙な雰囲気になっており、一人の金髪の少年に視線が集まっている。
その金髪の少年と話していた受付嬢がこちらの姿を見とめると、立ち上がり向かって来ると口を開いた。
「ご指名の依頼が入っております」
その受付嬢の視線の先にいるのは漆黒の剣のメンバーではない。つい昨日登録したばかりの新人であるモモンだった。
モモンはナーベが戦闘態勢に入りかけたのをおそろしく速い
「一体、どなたが?」
「はい。ンフィーレア・バレアレさんです」
「初めまして。僕が依頼させていただきました」
ンフィーレア・バレアレ。
エ・ランテルで名の知れた薬師、リイジー・バレアレの孫で、彼の持つタレントである、“ありとあらゆるマジックアイテムが使用可能”はかなり有名だそうだ。
いくつか不審な点はあるが、この場でそれを話すのは得策では無いと結論付ける。
モモンは先に受けた依頼があるので断ろうとしたが、ペテルは一歩引いたような姿勢を見せる。名声を持つ指名の依頼と自分達の依頼では明らかに価値が違うと考えているのだろう。
そう判断したモモンは、とりあえずンフィーレアの依頼の内容を聞いてから判断しようと提案して、また先ほどの部屋に戻って話をする事となった。
依頼の内容は、ンフィーレアの薬草採集の警護とその手伝い。
警護や採集というのはモモンもナーベも不得手ではあるので、漆黒の剣の面々にも同行してもらう事になった。
カルネ村まで赴いたら、そこに潜在拠点を設けて森に向かうという予定とのこと。
漆黒の剣の面々がンフィーレアに準備について色々と聞いたりしている中で、モモンもンフィーレアに最初から持っていた疑問を投げかける。
「なぜ、私なのでしょう?つい最近、私はこの街に馬車に乗ってやってきました。ですのでこの街に親しい友人もおりませんし、知名度だってありません。にも関わらずなぜ、私を?」
そう。名指しをされる謂れが全く無いのに自分に依頼してきたというのが疑問だった。
「…実はですね、うちのお店に来た方から宿屋の件を聞いたんです」
「宿屋の件?」
「はい。あっという間に一つ上のランクの冒険者を吹っ飛ばしたって」
「なるほど……」
宿屋の件…というのは、登録を済ませた昨日の事だ。
宿屋で部屋を借りた時に上の冒険者がちょっかいをかけてきたので、吹っ飛ばしたという出来事があった。嫌がらせの側面もあるが、駆け出し冒険者の洗礼的な意味もあったのだろう。
その時に投げ飛ばした先にいた冒険者のポーションを割ってしまい、自分の持っていたユグドラシルポーションで弁償したのだった。
「それに、銅のプレートの方でしたらお安いでしょ?長くお付き合いが出来ればなと思いまして」
「はは、確かに」
若干不安が残っているが、理由としては十分に納得出来た。
その後もいくつか質問が飛び交った後、質問が出尽くしたとみなしたンフィーレアが声を上げて、出発と相成った。
エ・ランテルでも有名である巨大墓地を歩く女性の影。
漆黒のフード付きマントを被っており、その隙間からは短めの金髪が見える。
やがて一つの霊廟の前にたどり着くと、フードを外す。
20歳前後の瑞々しい若さで、顔立ちは整っているが可愛いらしくもどこか獰猛そうな雰囲気を醸し出している。
霊廟の石扉を開けると死体を安置するための石の台座が目に入るが、そこには何も載っていない。
どこか場違いな鼻歌を歌いながら台座にある細かな彫刻の一つを押し込むと、ガチンという何かが噛み合うような音がした後ゴリゴリと音を立てながらゆっくりと台座が動き出し、地下へと続く階段が姿を見せた。隠し扉である。
「はいるよー」
下に向かって気楽そうな声をかけ、女は階段をおりていく。
降りた先には広い空洞が広がっている。だが、そこは墓場の一部では無い。
「ちわー、カジッちゃんに会いに来たんだけどいるー?」
そう暗闇に声を掛けると、一人の男が現れた。
目は落ち窪み、顔色は土気色で髪の毛などの体毛は見当たらないその様はアンデッドさながらだ。
「その挨拶は止めないか。誇りあるズーラーノーンの名が泣くわ」
ズーラーノーン。
強大な力を持つことで名の知れた盟主を頭に抱く、死を隣人とする魔法詠唱者達からなる邪悪な秘密結社で、幾つもの悲劇を生み出して来た結社であるので周辺国家は敵とみなしている。
「そおー?」
「……それで?おぬしがここに来たのは一体どんな理由があってのことだ?ここで儂が死の宝珠に力を注いでいることは知っておろう。荒らしに来たのならばそれなりの対処はさせてもらうぞ」
「いやだなーカジッちゃん。これ持って来たあげたんだよー」
女はマントの下でごそごそと手を動かし、目当ての物を見つけると手を出した。
その手に握られているのはサークレットだ。
蜘蛛の糸のような金属糸の所々に細やかな無数の宝石がつけられており、蜘蛛の巣のように繊細な作りをしている。
「それは!巫女姫の証、叡者の額冠!スレイン法国の最秘法の一つではないか!」
男は大きく目を見開き、サークレットの正体を言い当てた。
「そうだよー、可愛い女の子がこんな変なものしてたからさぁ。似合わないから奪ってあげたんだよねー。そしたらこれがびっくり!発狂しちゃったんだよねー。糞尿たらしまくりー」
女はケラケラと笑う。
叡者の額冠を奪えば着用者ーースレイン法国での魔法的儀式の中心である巫女姫がどうなるかを、かつて漆黒聖典に所属していたこの女が知らないはずがない。
「ふん。漆黒聖典を裏切ってまで手に入れたのがそんなガラクタとはな」
「ガラクタとはひどいなー」
「ガラクタで間違いなかろう?そのアイテムに適合する女の確率は100万人に1人という割合だ。スレイン法国のような国家でなければ、使用者を探すことすら出来んだろうよ」
スレイン法国は住民台帳を作成している唯一の国である。だからこそそのアイテムの使用者ーー生贄を見つける事ができる。
「……でさぁ、カジット・デイル・バダンテール。同じ十二幹部として協力しない?」
突然、女の口調が変わる。
「ほう。素顔を見せたな?クインティアの片割れ。しかしデイルは止せ。既に捨てた洗礼名だ」
「……こっちもクインティアの片割れはやめてくれないかな?クレマンティーヌって呼んでよ」
「……クレマンティーヌ。それで協力とは?」
「この街には素晴らしいタレントを持つ人物がいるんでしょ?そいつならこのアイテムも使えるんじゃないかなー」
「……なるほど。噂に聞くあれか。しかし人一人攫うくらいおぬしだけで片がつくだろう」
「うん。その通りだねー。ただ、行きがけの駄賃にでっかいイベントを起こしたいんだよねー」
「そのどさくさに紛れて逃げるということか……。なるほど……」
逃げる…というのは、漆黒聖典を裏切ったクレマンティーヌを追って来ている六色聖典のうちの一つである風火聖典の者達から逃げるということを指している。風火聖典は追跡などを得意とした部隊だ。
「それめカジットの儀式に協力すると言ったらどうー?悪くないんじゃないー?」
男ーーカジットの目が鋭くなり、邪悪極まり無い笑みを浮かべた。
「素晴らしいな、クレマンティーヌ。それであれば死の祭典を前倒しで行えよう。良いとも、この儂の全力をもって協力させてもらうぞ。…………ところで、逃げると言っても何処は逃げる気だ?王国や帝国にも法国の手のものがいるだろう?」
「んー、神の国かなー」
「……あの国は法国が建てた国だと思っていたが?」
というのも、裏の世界の人間であれば法国の
「あー、なんかそーゆー噂あるけど全然違うよ、それ。むしろ上の方は潜在的な敵対国家としてるらしいよ?」
「ほう、そうだったのか」
「警戒して全然手を出してないみたいだしね。私にとっては好都合ってわけ」
「なるほどな……土産を期待しているぞ?あの国のマジックアイテムは上質だからな」
「はいはーい」
ホントはもう一個話入れたかったけどちょっと多くなっちゃったから次に入れますわ。
ポケモンしてたらちょっと投稿遅くなっちゃってごめんね。