キュートでチャーミングなクレマンティーヌちゃんは、モモンとかゆうアンデッドに殺されちゃったゾ!でもがぶりえる様が生き返らせてくれたんだ!
……そして抱き合う二人、縮まる距離。横たわるクレマンティーヌ。そこに襲いかかるがぶりえる。あまりの激しさに眠りに落ちたクレマンティーヌ。
そして明くる日、目を覚ますと…………。
「おはよう」
「……………………」
これほど寝覚めの悪い日は無かった。
前日の醜態によって誇りやプライドがズタズタにされたこともそうだが、その張本人がこうして起き抜けに挨拶をしてくることに吐き気を覚えてしまう。
「…なんだ、そんなに睨んで」
「……自分の胸に聞いてみたらー?」
あんな事をしておいて、普通に話が出来るとは思わないで欲しい。はっきり言って印象は最悪だ。
「へぇ…俺にそんな態度が取れるのか…」
そう言って、私の方に手を伸ばしてくる。
ーもうあの時のような醜態は晒さない。
あの手が近づいてくる。
ー大丈夫だ、怖くない。
私をぐちゃぐちゃに潰した、あの手が近づいてくる。
ーだい…じょうぶ、こ、怖く……な……い。
あの手が私に触れる。
ーやだ、怖い……いや、怖くない。こわく……ない……。
手が回される。
ーや、やだ……怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!!
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」
「ゆるして……ゆるして………ゆるして……」
歯はガチガチと震え、涙が溢れる。
「……『許して下さい』だろ?」
「ゆるしてくださいゆるしてくださいゆるしてくださいくださいゆるしてください………」
「俺の質問に偽りなく答えれば許してやろう」
「答えるからぁ!放して!放して!お願いだからぁ!!」
「……ふむ」
抱き上げられていたのを無造作に下ろされる。
少しずつ落ち着いてきた。
「大丈夫か?」
お前のせいだろうが…と、口には出さないが睨み付ける。
「…随分と反骨精神旺盛だが……。まぁいい、何があったのか聞かせてもらおうか」
「…は?」
「だから、何をどうしてああやってくたばったのか教えろって言ったんだよ」
「………………負けたんだよ」
「そんぐらい知ってるわバーカ。モモンとどう戦ってどう負けたのか聞いてんだよ」
バカと言われてカチンときたが、殴って黙らせる事が出来ないのだから口で言い返すしかない。
「……………あんたさぁ、調子乗らない方が良いんじゃない?」
「あ?」
「あんたもそこそこ強いみたいだけど、あんたでもあの化け物には敵わない。あんまり調子乗らない方が良いんじゃないのー?」
「ふむ……それはあれか?どちらとも拳を交えたから分かるってやつか?」
「ま、そんな感じだねー」
確かに、強い。どちらも。拳を交えたから分かるなんて嘘だ。実力があまりにも離れ過ぎていて、まっっったくもって天井なんて見えない。
だが、アレは魔法詠唱者なのだ。あれだけの力を持っておきながら魔法詠唱者なんてバカげてる。不得手なはずの肉体能力があれだけあるのなら、魔法詠唱者としての実力はどの程度なのか想像もつかない。
「……となると、やはりプレイヤーなのか?しかしそうなると吸血鬼の依頼を受けた不用意さが気になるな。……そこまで言うなら、モモンがどれだけ強いのか俺に教えてくれよ」
「別に良いけど、ちびらないようにねー」
あれだけの強さがありながら魔法詠唱者だったなんて知れば、コイツも度肝抜かれるに違いない。
「魔法詠唱者でアンデッドか……」
「そうだよ?どう?あんたにあの化け物を倒せるのー?」
「コイツの話だと
「ちょっとーぶつぶつ言ってないで答えてよー」
「ん?おぉ、無視してスマンな。何の話だったか……あぁ、俺がモモンに勝てるのかって話だったか?そうだな……俺は勝てないかも知れないな、うん」
ほら見ろ。あんな化け物に勝てる筈がないんだ。
「その話は置いておくとして、だ。モモンにはナーベってパートナーがいるはずだが、そいつについては?」
「知らないよ。魔法詠唱者みたいだし、
口ではそう言うが、実際のところは全く違うと思っている。
何せあんな化け物の仲間なのだ。あれがアダマンタイト級の戦士だったとしても驚きはしない。
「そうか……。なら、そっちはもう一人から聞き出すしかないな。それで?他に何か言ってたりしなかったか?変な事でも気になったことでも何でも良い」
元々アンデッドなんて変なヤツなんだから言ってること全部変なんじゃないの…と思ったが、口には出さない。
別に答える義理は無いのだが、答えるために真剣に考える。
そう、答える義理は無い。別に、またアレをされるのが嫌で頭を振り絞り記憶を掘り返しているわけではない。
「………あ、そういえば、変なこと言ってた」
「ほう?どんなことだ?」
「なんだったかなー。『ナーベラル・ガンマよ、ナザリックが威を示せ』……だったかな?」
そう言うと、途端にガブリエルの顔が引き締まる。
「………ナザリック?ナザリックと言ったのか?」
「うん、そうだよー」
それがどうしたと言うのだろうか。
「…………………きた」
「え?」
「来たぞ!キタキタキタキタ!!」
「え、な、なに?」
「良くやったぞクレマンティーヌ!!」
凄い勢いで肩を掴んで揺さぶられる。
コイツに触れられた事で多少トラウマが蘇ってしまうが、それを何とか振り払う。
…というか、力強!
「え、ど、どうも…?」
「よしよしよしよしよし!!」
今度は頭をワシャワシャと撫でられる。
「ちょ、やめてよ!」
「ホンッッットにナイスだぞクレマンティーヌ!!よく覚えていた!!素晴らしい!まさかこんな早く線が繋がるとは!!」
…何の話をしているのか全く分からないが、どうやら今の私の言葉が相当に有益な情報だったということは分かる。
「……ふぅー」
一通り落ち着いたようだ。何をこんなに喜んでいたのかはついぞわからなかったが。
「えー、ゴホン。クレマンティーヌよ、俺は今非常に、非常に、ヒッジョーーーに気分が良い。よって、君に三つ選択肢を与えよう」
わざとらしい咳払いをしてから私にそう告げた。
「選択肢?」
「そう。まず一つ目は俺の糧となること……まぁ、平たく言えば人体実験の材料だな。元漆黒聖典なんてレアな被験体を手に入れたのは初めてだから、元々はこうするつもりだったんだぞ?」
そう言われて、背筋が凍った。
ある程度得体の知れない国だとは思っていたが、こんなに軽々しく人体実験をしようとするような国だとは思わなかった。表面に見える民達の平和な暮らしの裏にはこんな闇の部分が隠されていたなんて……。
「……『元々は』ってことは?」
「そうだ。それから逃れる選択肢が生まれた。二つ目、死ぬ」
「…………は?」
耳を疑った。
一つ目に人体実験。そこから逃れる選択肢が生まれるというのだから、好待遇とまではいかなくとも生かされる選択肢かと思っていたのだが、まさかの『死』である。
「も、もう一回言ってくれない?」
念のために、聞き間違いでないかを確認する。
「だから、死ぬ」
どうやら聞き間違いでは無かったようだ。
「人体実験に比べればマシだろう?死にたいと言うのなら今この場で楽に殺してやる」
「な、なんで………」
「言っただろう?俺は気分が良いと。非常に有益な、それこそ現状で最も欲しかった情報をくれたお前を不憫に思ってな。『あぁ、せっかく良い情報をくれたのに人体実験コースか…』と」
「ーーそこでだ。俺はお前にヒッジョーーーに感謝している。そのお前に慈悲を、選択権を与えてやっているのは不自然なことではないだろう?」
いや、そういうことが聞きたいんじゃなくて、なんでそんなに選択肢が絶望的なのかを聞きたかったんだけど……。
「最後に三つ目」
ヤバイ、終わった。
人体実験、死と来て、最後の選択肢が希望に満ち溢れているわけがない。
だが……そう。当初の懸念のようにあのアンデッドに捕まっていなくて良かった。
あのアンデッドに捕まっていれば、こんな風に物事を考えることすら出来なかったかもしれない。もっと精神を痛みつけられていたかもしれない。
それに、さっきコイツが言った通り問答無用で人体実験に回されないだけマシかも知れない。こんな化け物が支配する国だし、人体実験も楽なモンじゃないだろう。
死のう。死にたいわけではないが、どうせ死ぬなら楽に…そう楽に死にたい。
「三つ目は、ウチの軍門に降るという選択肢だ」
「…………え?」
また、耳を疑った。
「も、もう一回言ってくれない?」
「ウチの軍門に降るという選択肢だ」
これも聞き間違いでは無いようだ。
「……どういうこと?」
「もちろん、監視はつくし制限もあるだろうが、個室付きで三食食えて毎日風呂にも入れる。それにきっと今よりも強くなれるぞ?」
それは魅力的だ。特に風呂に毎日入れるというのは素晴らしい……。
いや、そうじゃなくて。
「……どういうつもり?」
「実は国外の英雄級の人物を手に入れるのは初めてでな。そこそこレベルは高いみたいだし、どのぐらい強くなれるのか試してみるのも良いだろう?」
「……私を強くしてくれるってこと?」
「まぁ、結果的にはそうなるだろうな」
強くなれる………勝てるようになるのか?あの化け物に……?
「……あの糞ったれなアンデッドに勝てるようになれるの?」
「……努力次第だな。だが、不可能では無い。とにかくレベリングをしまくれば100レベルまでいける可能性は十分にある」
100レベルというのが何かは分からないが、高い次元の話をしているということは分かる。
「…なんだお前、あのモモンに勝ちたいのか?」
「…………………悪い?」
そう言うと、少し驚いた様子を見せた後ニヒルな笑みを浮かべて言った。
「それなら、地獄のような訓練になるかも知れないぞ?法国や今まで潜り抜けた修羅場なんか目じゃ無いほどの」
何を今更。
絶望して、二度も死ぬ思いをして……というか実際一度死んで、トラウマを植え付けられて……これ以上何が辛いというのだろうか。
「…………それでアンタより私の方が強くなっちゃったらどーすんの?」
「愚問だな。その為のトラウマだ」
そう言って抱き寄せるような仕草をして見せる。
「チッ……クソ野郎が……」
「口だけは達者だな」
……絶対復讐してやる。
絶対に地べたに這いつくばらせてやる!目にもの見せてやる!!
「あ、そうそう、死んでも生き返らせてやるから安心して死ぬまでやれ」
「………へ?」
「ほら、連れてけ」
パンパンと手を二度鳴らすと、何処からともなく3人の人影が現れ、私を捕らえた。
気がつくと、私は見知らぬ場所に立っていた。
下は石畳のようだが、それ以上の硬さがあるようにも感じる。
周りを見渡せばどこか闘技場のような作りになっているが、観客は誰一人いない。
居るのは、目の前に立つ全身黒一色の服を着た青年だけだ。
「がぶりえる様の命令により、お前を半殺しにするように言われたブラックだ。お前の武器は後ろの方に置いてあるからそれを使え。
……………じゃあ、始めるぞ」
え、何を?と問う間もなく、正面の扉が開いた。
そして見たこともないようなアンデッド。
刺々しくもおぞましく、その肌は黒い。重厚な盾と波打つフランベルジュはその巨大な体躯に似合うほど大きい。
「初めはデスナイトからだが……どんどん強くしていくから頑張れよ」
ー拝啓ー
おとおさん。おかあさん。わたしはもうダメかもしれません。
話が自然に進んでるかどうかちょっと不安。無理矢理感あったら教えてね。