「がぶりえる王、八神とムサシが帰還致しました」
カルロスが使者の帰還を報告してきた。
「おぉ、そうか。で、結果は?」
「両国ともに成功したようです」
ホッ…。そうかそうか。まあ法国が認めている中で断ってくるとは思っていなかったが、成功したようで安心した。
これで周辺国家との顔合わせは済んだ。
後は他国との貿易についての問題だが…
ーーやべぇ、笑いがとまらねぇ…。
王の執務室で部屋の主は、顔がにやけるのを抑えられずにいた。
その原因は、その手に握られた一枚の紙にある。
その紙には報告書と書かれており、貿易による損益を示したものだ。
ユグドラシルのアイテムーーアイテムだけではないがーーは、この世界では超高額で取引される。それはガチャの外れアイテムや雑魚アイテムであっても例外ではない。
今、神の国はマジックアイテムを輸出している。材料に使ったのは無限にも思えるほど溜まっていた使い道のない素材ばかりだ。試算によれば、このまま素材を湯水のように使っても、使い切るのに最低でも130年はかかるとのことだ。
さらにみんなから譲ってもらった大量の外れガチャアイテムもあるので、しばらくはこのままマジックアイテムを輸出していける。
そしてそのマジックアイテムでぼったくってーーこの世界の人間からすれば妥当ーー、大量の通貨を得ている。
要はボロ儲けなのだ。ついにやけてしまうほどには。
最初はユグドラシルの金貨を使い果たしてしまったのでどうなることかと思ったが、ここまでボロ儲け出来るならばもはや何の問題も無い。
これからは、国交を結ぶことに成功した王国と帝国もアイテムを購入してくれるだろうからさらに貿易が振興していくことだろう。
さて、これでやりたいことは大体終了した。
軍事力を示すことが出来るかどうかは獣人が攻めてくるかどうかにかかってくるが、まあほぼ確実だろう。
新たにやりたいこととしては、情報収集だ。
御庭番衆の諜報活動では周辺国家で危険度のあるような人物は見つからなかった。
バレる心配が無いなら、特殊部隊のうちの一つである諜報部隊を潜入させてもいいかもしれない。レベルは50ぐらいしかないので戦闘面ではすこし不安だが、ドッペルゲンガーなので潜入捜査官としては信頼がおける。
本当は俺自身が適当に色んな国を回って自分の目で情報を集めたいんだが、さすがにすこし不安がある。
プレイヤーとしてみれば、俺は贔屓目に見ても下の中だ。もしプレイヤーに襲撃されたときに仲間がいなければ絶対に負ける。さすがに逃げに徹すれば逃げ切るぐらいは出来るとは思うが、転移阻害なんかを展開されると厳しくなる。
指揮官系スキルを極めた弊害として単体で見れば非常に弱いのだ。
『神の国』として見れば負ける気はしないが、プレイヤー『がぶりえる』としてはこれっぽっちも自信が無い。
とりあえず御庭番衆には帰還してもらって、
そして御庭番衆と交代する形で諜報部隊を送る。
ただ法国はまだ少し得体のしれない感じがあるから、諜報部隊はおくらないでおく。万が一にもスパイがバレて法国と敵対するようなことは避けたい。
「御庭番衆、諜報部隊がいらっしゃいました」
「あぁ、通してくれ」
エリカが来客を知らせてくれたので、通すように言う。
御庭番衆を呼び戻し、諜報部隊を呼び出したのは先程のことを命令するためだ。
「まずは御庭番衆、諜報活動ご苦労だった」
「はっ」
「それで新たに仕事を任せたいんだが……問題ないか?」
「問題などあろうはずがございません。がぶりえる王のためにこの身を尽くすことこそが至上の喜びにございます」
んー…でもさすがに酷使しすぎな気がするんだよなぁ。ずっと働かせてばっかりだからどこかで休ませたいのは山々なんだが、あまりにこいつらの使い勝手が良さすぎるというのが問題だ。
…………獣人の偵察が終わったら休ませれば良いか。
「………そうか。それで、だ。お前たちには獣人の国に行ってもらいたい」
「獣人の国……と言いますと、竜王国と隣接しているところですか?」
「その通りだ。目的は戦争に備えて、相手方の戦力を把握することだ。ただし、誰か一人でも、一度でも発見されたら念のために帰還しろ。あ、別に一人処理すればなかった事になるなら処理しても問題ないぞ」
「了解いたしました」
「後は………100レベルと思われるほどの実力者を発見したらその時は迷わず撤退しろ。念のためにな。………それと獣人は感覚が鋭いから充分注意すること匂いを消す手段は持っているな?」
「はい。完全不可知化を使えば問題ございません」
あ、そうか。こいつら完全不可知化が使えるから問題無いのか。
「ならいい………あとは、定期連絡を忘れない事ぐらいか」
「かしこまりました!」
よし。これで御庭番衆はオーケーだな。
「…次に諜報部隊だが、お前たちには王国、帝国、竜王国に潜入してもらう。潜入のしかたはお前たちに任せるが、目立たないこと、力を隠すこと、自分に危険が迫った時以外は全力で戦うなということ。これから潜入してもらうのは人間の国だ。この世界の人間は脆弱であることを忘れるなよ。それと………あぁ、人間は年々年老いていくからな、ずっと老いなければ不信がられるということも覚えておけ」
「はっ」
「集める情報は色々だ。歴史だったり国内の財政だったり、町の様子など、昼と夜の定時連絡で全て報告してもらう。重要度の高そうなものは毎週レポートに纏めて提出してくれ。中枢に潜入出来るのが一番だが…まぁそれは可能だったらで構わない」
「はっ。期間はどの程度でしょうか」
「あぁ、そうだった。御庭番衆の方は偵察が終了し次第、諜報部隊の方だが………今のところは100年を予定している」
そういうと、この場にいた者全てが驚いた。
「100年……でございますか?」
「あぁ、もちろん命令があった場合や定期的には帰還してもらう。だからずっとほったらかしってわけではないぞ?」
「そ、それはそうなのですが………」
「ん?不満か?」
「いえ、そのようなことはございません!ただ、100年という長い時間にどういう意図があるのかと思いまして………」
「…そういうことか。何、単純な話だ。法国から聞いた話が本当なら100年後にもプレイヤーが転移してくるわけだろう?その時に色々な国の内部に情報網があれば見つけやすいと考えたんだ」
「おぉ…なるほど…」
「一番良いのは王の秘書や護衛の兵士や側近だな。国の動向が丸わかりになるし情報も集めやすいだろう」
「かしこまりました」
「あ、出来れば100年後にその地位についているのが望ましいと伝えておこう。もちろんそこ以上に情報が集まりやすい場所があればそこでもかまわないぞ」
「はっ!!」
ふぅ……よし。こんなもんか。あ。
「そうそう、御庭番衆から留意点などがあれば伝えておいてやってくれ」
「はっ」
上手く種が撒けるかどうかはこいつらの働き次第だが……まあ、ダメだった時はまた考えよう。
「…それでは行動を開始せよ」
「「はっ!!!」」
「あの…がぶりえる様…」
「ん?どうしたエリカ」
彼らが退出していったあと、エリカが声をかけてきた。
「がぶりえる様はいつも100年も先まで考えておられるのですか!?」
……め、目がキラキラしてる……。
「………いや、そういうわけではない。種撒きをしただけだし、成功するかどうかもわからんからな…要はただの保険だよ」
「でも凄いです!あんな作戦、私では思いつきません!」
「お、おう……」
な、なんかエリカの中で俺がものすごい謀略家にされてる気がする。
いや、確かにバカではないがそんな天才ってわけじゃないぞ?
は、はやくその認識を正さないと……
「さすが私の創造主様です!」
頬を紅潮させ、眩しい笑顔を見せる彼女を見て、俺はこう思った。
『……可愛いし、まあいいや』と。
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スレイン法国最奥部。
「なに!!??」
神官長のもとに届いたのは信じられない話だった。
「あの女が捕らえられただと!?」
「はい……エルフの王が出て来まして……どうすることも出来なかったそうです」
”あの女”とは、法国の切り札だ。『ぷれいやー』の血を引く神人で、普通の人間とは比べ物にならないほどの戦闘能力を持っている。
神の国が来る少し前からエルフとの戦争に出ていたのだが……。
「なんということだ……」
信じられない事実にがっくりとうなだれる神官長。
「……どういたしますか?」
「………どうもこうも、奪還する他あるまい」
「し、しかし!あのエルフの王は漆黒聖典でも歯が立ちません!」
「ならばどうする!そのまま放っておくというのか!!」
「……」
エルフの王は強い。神人として覚醒していようとも、ねじ伏せられるほどに。
そんな次元の違う強者には、漆黒聖典が誇る英雄級の実力者たちでも歯が立たないだろう。
「一体……どうすればいいのだ……」
神官長の言葉に応えられる者は誰もいなかった。
うーん。誰が法国の切り札助けるんでしょうねぇ(すっとぼけ)
ただ、番外席次とエルフの王様のパワーバランスが分からないんですよね。
なんとなく 番外>エルフ>>超えられない壁>>番外母 ってイメージなんですけどどうでしょう?