香澄「__ねぇ、佐渡君!」
朝、教室に来ると戸山が話しかけて来た
何かわからないがいつも以上にうるさい
それにちょっと飛び跳ねてる
燈「なんだ?」
香澄「もう少しで体育祭だよ!体育祭!」
燈「体育祭ってなんだ?」
香澄「え?」
俺が尋ねると
戸山は不思議そうな顔をした
そりゃ知るわけないだろ
学校にこんなに来てたことないからな
香澄「体育祭はね、キラキラドキドキするものだよ!」
燈「はぁ?」
有咲「__まーた、訳わかんねぇ説明してるなー。」
燈、香澄「あ、市ヶ谷(有咲!)」
有咲「おはよ。それで、お前は体育祭も分かんねぇのか?」
燈「あぁ。」
俺は深くうなずいた
すると、市ヶ谷は大きくため息をつき
俺の方を見た
有咲「体育祭ってのはまぁ、スポーツで競い合う行事だ。」
燈「ふむ。」
有咲「しかも、今回はただの体育祭じゃねぇ。」
燈「??」
香澄「3年に一度の大合同体育祭だよ!」
燈「へぇ。」
そんなのもあるんだなぁ
そりゃ、楽しそうだなぁ
まぁ、関係ないけど
有咲「実施は日曜。お前も参加すんだぞ?」
燈「嫌だ。」
香澄「えー!?」
有咲「まぁ、そう言うと思った。」
燈「俺は行かないぞ。面倒くさいし。」
人がしてるのはいいけど
自分がするのは勘弁だ勘弁
日曜に外出るのも絶対に嫌だし
有咲「だから、今回はこんな話を持ってきた。」
燈「ん?」
有咲「お前が体育祭に出れば、溜まってるお前への課題をチャラにする。」
燈「なに?」
有咲(やっぱ食いついた。)
課題をチャラにするだと
あの山のように積まれてる課題を?
いや待て、これには何か裏がある
市ヶ谷は頭がいい
俺を騙すことなんかいくらでも出来る
燈「......何が目的だ?」
有咲「なんだ、気付きやがったのか。」
燈「お前が体育祭とやらに出るだけでそこまでするとは考えずらい。何かあるんだろう。」
有咲「今回、最下位になった学校は振り替え休日が無くなる。」
香澄「そうなの?」
有咲「あぁ。私としてもそれは嫌だ。」
市ヶ谷は深刻そうな顔でそう言った
そして、俺を指さして来た
有咲「そこで、佐渡、お前の力が必要だ。」
燈「ふむ(?)」
有咲「お前の身体能力は大きな戦力だ。お前がいれば勢力図はひっくり返る。」
燈「なるほど。」
有咲「3年にもすごい人いるけど、相手には月ノ森もいる。お前の力も絶対に必要になる。」
燈「......」
有咲「どうする、出るか?」
市ヶ谷は神妙な顔でそう聞いてきた
正直、こんな神妙な顔でする話じゃない
だが、これで課題がチャラにできるなら
願ってもない、簡単すぎる条件だ
だったら、俺の取る行動は一つ
燈「いいだろう。出てやるよ。」
香澄「!」
有咲「よし。じゃあ、頼んだぞ。」
燈「あぁ。(マジな顔してやがる。)」
香澄「佐渡君も来るんだね!楽しみだなー!」
こうして俺は課題をチャラにするという条件の元
体育祭とやらに参加することになった
俺はそれから、市ヶ谷に種目を聞き
キッチリ準備しておくようにと言われたりした
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一週間ほど経ったか
俺は渡された体操服に着替え
なんかデカい建物に来いと言われ
燈「__どこだ?」
迷子になった
全くここがどこなのか分からない
地図にはこの辺って書いてあるのにな
そんな事を考えてると、
市ヶ谷から電話がかかってきた
有咲『おい佐渡!何してんだ!』
燈「迷子になった。」
有咲『はぁ!?今どこいんだよ!』
燈「なんか、広い公園の噴水にいる。」
地図によると
この公園がもう到着地点になってる
有咲『もう着いてるよ!』
燈「なに?」
有咲『その噴水から北に進め!』
燈「北?分かった。」
俺は電話を切り
少し目をつぶった
燈(北は......こっちか。)
俺は北の方向に向け
走り始めた
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”競技場”
競技場では地域の学校の数名の生徒がスタートラインに立っている
これは、プログラム1番の長距離走だ
一斉にスタートラインに立つ生徒たちは
まるで一匹の生物のようだ
香澄「__わー!すっごーい!」
りみ「すごい人......」
おたえ「色んな人いるー。あそこにレイもいる。」
沙綾「マッスーもいたよ!」
香澄「あれ?佐渡君は?」
香澄は周りをキョロキョロしながらそう言った
有咲「あいつは、迷子だってよ......」
香澄「えぇ!?」
有咲「もう近くまで来てるっぽいし、大丈夫だろ。」
沙綾「有咲、その男子のこと秘密兵器って言ってなかった?」
たえ「いなくて大丈夫なの?」
有咲「大丈夫じゃねぇよ......」
有咲は頭を抱えながらそう言った
この競技の点数は上位にいる各校の生徒の人数
一位から10位までは点数に差が付く
出られる人数は各校で30人ずつだ
りみ「だ、大丈夫?」
有咲「まさか、あそこまでバカだったとは......」
香澄「あ、もうスタートするみたいだよ!」
沙綾「ほんとだ!」
有咲「あー!もう!」
有咲はいら着いたような声を挙げながら
全生徒と一斉にスタートした
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”燈”
本気で走ったら競技場に着いた
なんか、大量の人間が出て行くのが見えた
もう何か始まったのか?
有咲「__あ!佐渡!」
燈「お、市ヶ谷!」
有咲「さっさとスタートの所行け!」
燈「え?あ、分かった。」
俺は市ヶ谷に言われ
スタート地点に向かった
そこには水色とか色々な奴がいた
紗夜「__やっと来たのですか。」
燈「相変わらず不機嫌そうだな。」
紗夜「そんな事は良いです。それより、あなたは行くんですか?」
燈「市ヶ谷が行けって。」
燐子「もう、先頭グループとは差が開いてますが......」
燈「よゆーよゆー。」
俺はそう言ってスタートラインに立った
そして、水色たちの方を見た
燈「全員抜いて、1位になればいいんだろ?」
紗夜、燐子「え?」
燈「じゃあ、行ってくるわー。」
俺はそれだけを言って
スタートを切った
”紗夜と燐子”
紗夜「あの、白金さん?」
燐子「は、はい......」
紗夜「今、彼は何と言いましたか?」
燐子「一位なればいいんだろ、と......」
紗夜「......ですよね。」
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スタートして何となく標識?に従ってきた
結構な人数抜いたが、これでどのくらいだろう
実況『__ただいまのトップは花咲川、戸山咲さん。続いて月ノ森、八潮瑠唯さん。羽丘、宇田川巴さん(以下略)あとは(以下略)となっております。』
そんな実況が聞こえた
先頭グループに呼ばれないって事は
ここはまだまだ下の方って事か
この調子じゃ月ノ森?が勝つな
燈(もうちょっと急がねぇとなー。)
晃「__さ、佐渡さん......」
燈「あ?」
晃「き、来てたんすね......」
燈「......」
誰だっけ、こいつ
なんか知ってるけど思い出したくない
つまり、思い出さなくていいって事だな
燈「無視でいいや。」
晃「ちょ、佐渡さーん!!」
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”先頭グループ”
先頭グループは膠着状態になっていた
このままゴールすれば勝ちの月ノ森
順位を上げるのを狙う羽丘
それと......
咲「......」
なんとなく一位で走ってる花咲川の生徒
瑠唯(......追いつけないわね。)
全力で走ってる様子も息を切らす様子もない
ただ淡々と機械のように運動を続けてる
その様子には恐怖すら感じる
巴(な、何だこの人!?)
瑠唯(この人を抜かないと月ノ森のプライドもないわ。)
巴「!」
瑠唯が急激にペースを上げた
こんな余力があるだなんて誰も思わない
もうゴールまで1キロもない
この後半に勝負をかけたのだ
咲「......悪くない。けど。」
瑠唯「っ!」
だが、それすら無力な差がある
咲はさらに走るペースを上げた
表情は変わらない
だが、スピードははるかに上昇した
咲「......やるからには私だけでも勝つ。それがモットー。」
瑠唯(くっ......!)
巴(や、やべぇ!)
咲に反応するように先頭グループがペースを上げた
だが、体力の限界か思うほど伸びはしない
順位はこの膠着状態で終る、
誰もがそう思った
『うわぁぁぁぁ!!!』
咲、瑠唯、巴「!」
先頭グループが競技場に戻った時、
会場にひときわ大きな歓声が響いた
ゴールはもう目の前、
この展開でこんな歓声が起こるのは考えずらい
咲(......何か来てる?)
燈「__ははは!甘いぞそこの奴らぁ!!」
巴「なっ!?」
瑠唯「っ!?」
咲「......?」
その他(先頭)「!?」
突如現れたその声に
先頭グループは全員、目を丸くした
燈「これで、ごぼう抜きだぁ!!」
その白髪は雷光のように全員を抜き去り
嵐の風の様に荒々しく、
ゴールテープを切り裂いた
一瞬の出来事だった
誰もその存在を認識する前にレースが終わった
燈「いやー、良い運動になったー!」
巴「な、何だお前!?」
燈「ん?」
瑠唯「あなたはスタート時点でいなかったわね。」
巴と瑠唯はゴールした後、
燈の方に歩み寄った
燈「いやー、迷子になっててな。遅れてスタートした。」
巴「遅れて!?」
瑠唯(......ありえないわ。)
遅れてスタートした人物に抜かれるペースで走ってない
だが、目の前の人物は自分たちよりも先にゴールした
信じられない、そんな顔をしてる
ただ、一人を除いて
咲「......なんだ、キミみたいのいたんだね。」
燈「お前、中々速かったな。しかも、まだ余力ありそうだし。」
咲「......年上には敬語使いなよ。」
咲は燈を睨みつけながらそう言った
燈は首を傾げながら先の事を見た
燈「見た感じ、お前があの学校のトップだな。」
咲「......何のこと。」
燈「とぼけんな。分かるんだよ、強いやつの気配。」
咲「......」
巴、瑠唯「っ!!」
燈はまるでおもちゃを見つけた子供のようで
どこか狂気を含んだ笑みを浮かべた
そして、楽しそうな声音でこう言った
燈「引導を渡してやるよ、最強女。」
咲「......調子に乗った後輩だね。」
燈「おっ。」
咲は少し怒りの表情を浮かべながら
燈に蹴りを放った
燈は上体をそらし、蹴りをかわした
咲「へし折ってあげるよ、その天狗の鼻。」
燈「っ!」
巴「お、おい!大丈夫か!?」
燈(......かわしたと思ったんだが。)
燈の鼻から赤い鮮血がしたたり落ちた
咲の蹴りはわずかに燈の鼻をかすめたのだ
一瞬の出来事、近くにいた巴と瑠唯も反応できていない
燈「くくっ、はははは......!」
巴「!?」
燈(おもしれぇ、おもしれぇ......!)
瑠唯(......この男、確か。)
咲(これで五分。)
それから、燈たちは各自席に戻って行った
燈は先とのやり取りを有咲に見られ、
こっぴどく怒られた
こうして、大合同体育祭は幕を開けた