白と七人の歌姫   作:火の車

18 / 76
休憩

 長距離走というやつを走り終え

 

 俺は自分の席で休憩をしてる

 

有咲「__おい、止まったか?」

燈「あぁ、止まった。」

 

 さっきまで出てた鼻血も止まって

 

 俺は花に詰めてたティッシュを取った

 

有咲「たくっ、あの人と喧嘩すんなよな。」

燈「仕方ねぇだろ。面白そうだったんだから。」

有咲「あの人はお前でも手に負えねぇっての。」

 

 市ヶ谷は呆れたような口調でそう言った

 

 俺が手に負えないってどういう事だ?

 

 確かに、今まででは断トツの一番、上物だ

 

 でも、負けるような雰囲気は感じなかった

 

有咲「お前はあの人の本当の姿を見てない。」

燈「本当の姿?」

有咲「気になるなら香澄に聞け。」

香澄「え?」

有咲「あの人、こいつの従姉妹だから。」

燈「なに?」

 

 確かに、どこか似てる感じはする

 

 あの髪の感じとか、目の感じとか

 

香澄「咲ちゃんは剣道をしてるよ!」

燈「剣道?」

香澄「うん!小さい時からずっと剣道ばっかりしてるよ!」

燈「ふむ。」

 

 剣道って事は武器を使ってくるのか

 

 つまり、あの強さからさらに伸びるって事か

 

 そりゃあ、普通の人間じゃ勝てるわけないよな

 

香澄「何回も大会で優勝してるし、佐渡君も喧嘩しない方がいいかも?」

燈「へぇ。」

有咲「おい、悪そうな顔でにやけるな。」

燈「いやいや、いつもこんな顔だろ?」

有咲「それだったら気持ちわりぃよ!」

 

 やべぇ、すっごい興奮してきた

 

 さっさと次のチャンス来ねぇかなー

 

有咲(絶対こいつ喧嘩吹っ掛ける気だな。)

香澄(佐渡君、楽しそうだなー!)

燈「市ヶ谷、俺の出番はいつだ?」

有咲「えーと、まだ結構先だ。」

燈「じゃあ、トイレ行ってくるー。」

有咲「そんな事報告するんじゃねぇ!」

燈「へいへい。」

香澄「行ってらっしゃーい!」

 

 俺は席から立ち上がり

 

 戸山と市ヶ谷から離れていった

__________________

 

 トイレに行くと言って少し歩き

 

 俺は競技場の立ち入り禁止と書かれた物置で足を止めた

 

燈「__俺のこと見すぎじゃないか?最強女。」

咲「......君、香澄と話してたね。」

燈「ん?あぁ、そうだな。」

 

 最強女は姿を見せたと思えば

 

 突然、そんな事を言い出した

 

 少し怒ってるようにも見える

 

咲「......君みたいな人間に近づいてほしくないんだけど。」

燈「ひどい言われようだな。」

咲「身内が不良といて気分いいわけないでしょ?」

燈「ごもっともで。」

 

 別に戸山に何かする気もないけど

 

 この女からすれば気に食わないらしい

 

 だが、これはチャンスなんじゃないか?

 

 上手くやれば、こいつと......

 

咲「君は強い人間と戦いたいみたいだね。」

燈「!」

 

 っと、まさか、あっちから振ってきてくれた

 

 これはありがてぇ

 

燈「あぁ、求めてる。飢えつくしてるぞ。」

咲「......そう。」

 

 最強女は少し首を振って

 

 俺の方を指さし、こう言った

 

咲「この後の競技の一つ、なんでも借り物競争。」

燈「?」

咲「そこで、私の本気を見せる。」

 

 最強女はそれだけ言って

 

 俺に背中を向けた

 

咲「負けても泣かないでね、うざいから。」

燈「言ってろ。」

咲「......」

 

 奴は無言でどこかへ歩いて行った

 

 俺はこぶしを握り締めた

 

燈「......?」

 

 その時、何か違和感を感じた

 

 俺の手が震えてるんだ

 

 携帯のバイブレーションみたいに

 

 何かを伝えるように震え続けてる

 

燈(なんだこれ?)

 

 これは、よくわからんな

 

 何に反応してるんだろう

 

燈「......まぁ、いいや。」

 

 俺は震えてる手をポケットに突っ込み

 

 市ヶ谷たちの所へ戻ることにした

__________________

 

レイ「__あれ、佐渡君?」

 

 競技場の通路を歩いてると

 

 聞いたことのある声がした

 

燈「お、和奏だ。」

レイ「この辺りの学校だったんだね。その服って事は花咲川?」

燈「おう、よく分かったな。」

レイ「まぁ、服が分かれてるからね。」

 

 和奏は苦笑いでそう言った

 

 そして、こう尋ねて来た

 

レイ「何してるの?こんな所で。」

燈「トイレ行ってた。」

レイ「そうなんだ。」

燈「和奏はなにか出たか?」

レイ「最初の長距離走に出たよ。佐渡君は速かったね。」

燈「ふっ、足にはそこそこ自信あるんだよ。」

レイ「早そうだもんね。(子供みたい。)」

 

 それから俺と和奏は少しその場で話した

 

 まぁ、ただの雑談だったが

 

レイ「じゃあ、私は行くよ。頑張ろうね。」

燈「まぁ、ほどほどにな。」

 

 俺と和奏はそう言って別れ

 

 俺は今度こそ市ヶ谷の所へ向かった

__________________

 

 競技場に戻って来ると

 

 席に市ヶ谷と戸山はいなかった

 

 俺は周りを見渡した

 

燈(あれは?)

香澄「あ、佐渡君戻ってきたよ!」

ましろ「え?佐渡って......え!?」

燈「倉田?」

 

 戸山達と一緒にいたのは倉田だった

 

 こいつら知り合いだったのか

 

 バンドしてる同士だし、不思議でもないか(多分)

 

ましろ「こ、こんにちは......!」

燈「おう、久し振り。」

有咲「知り合いなのか?」

燈「まぁ、そうだな。」

ましろ「前にストーカーから助けていただいたんです。」

有咲「え!佐渡が!?」

燈「失礼だな。」

 

 市ヶ谷は信じられないようなものを見る目で見て来た

 

 まるで俺が人助けしないみたいじゃないか(その通り)

 

香澄「佐渡君、そういう事もしてるんだね!」

燈「まぁ、通りかかっただけなんだがな。」

ましろ「え、えっと、その......///」

燈「?」

 

 戸山、市ヶ谷と話してると

 

 倉田が俺の服の裾を掴んできた

 

 俺はそれに反応して倉田の方を見た

 

燈「なんだ?」

ましろ「さっきの長距離走、すごくカッコよかったです......///」

燈「そうか(?)」

ましろ「はい......///」

有咲(......あれ?)

 

 倉田はモジモジしながらそんな事を言ってきた

 

 何かよくわからないし、何となく頷いた

 

ましろ「その、頑張ってくださいね......?///」

燈「まぁ、ほどほどにな。」

瑠唯「__何をしてるの、倉田さん?」

ましろ「あ、るいさん。」

瑠唯「広町さんたちが探していたわよ。」

ましろ「え?本当に?す、すいません、失礼します。」

香澄「うん!またね!」

有咲「怪我するなよ。」

燈「じゃあな。」

 

 倉田は小走りでどこかへ走って行った

 

 だが......

 

瑠唯「......」

燈(なんだ?)

 

 残った奴にすごい睨まれてる

 

 こいつ確か、さっきのでいたよな

 

 あれか、俺が一番になったの根に持ってるのか

 

瑠唯「......失礼します。」

燈「?」

 

 奴は俺に軽く頭を下げ

 

 倉田と同じ方向に歩いて行った

 

燈(なんだ、あいつ?)

 

 マジで根に持たれてるんじゃないか?

 

 いや、あれは市ヶ谷が勝てって言うからだし

 

 俺は悪くない

 

有咲「あ、佐渡、この後は配点の高いなんでも借り物競争だ。」

燈「......そうか。」

香澄「佐渡君?」

燈「なんでもないぞ、なんでもない。」

有咲「じゃあ、準備しとけよ。」

燈「あぁ。」

 

 楽しみな競技が近くなり

 

 俺は少し口角が上がった

 

 そして、謎の震えも再発してた

 

 この震えは何だ......?

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。