30秒ほど経ち、暗闇に目が慣れて来た
周りには少数の人間
とんだナイフは誰にもあたってない
焦ったが、倉田達のも当たる気配はなかった
燈(__俺だけを狙ってきた?)
少数と言っても密集してる
そんな中で特定の1人を狙うなんて、
すごい精密なコントロールが必要になる
それが出来る人間ってことは......
燈「......やべぇ。」
ましろ「え?」
燈「よく分からんが、ここには殺人のプロがいる。」
つくし「えぇ!?」
燈「しかも、狙いは完全に俺。どこから情報を仕入れたか知らないが、今日に狙いを定めてたらしい。」
いや、重要なのはなんで俺を狙ってるか
ただの不良にこんな手の込んだことは出来ない
つまり、何かデカい力が働いてる
瑠唯「......4人とも、逃げるわよ。」
ましろ「え?」
瑠唯「何かわからないけれど、狙いはその人よ。ここは安全確保のためその人を囮に逃げるべきよ。」
燈「ふん。金持ちらしい考えだな。人を蹴落とすことしか考えてない。だが、正解だ。」
俺は周りに意識を集中させた
だが、人間が多すぎて判別が出来ない
足音も呼吸音も何から何まで多すぎる
燈「ここはいずれパニックになる。今のうちに逃げろ。」
ましろ「で、でも、佐渡さんは!」
燈「俺はどうでもいい。命が惜しかったらさっさと逃げろ。」
俺はそう言って立ち上がり
意識を集中させた
燈(ライブを邪魔しないようになんとかする。)
ましろ「佐渡さん!!」
透子「し、シロ!一旦逃げるよ!」
俺はその場から走って離れ
取り合えず電気をつけに行くことにした
__________________
暗い通路を勘で走り回り
なんか、それっぽい部屋に来た
なんか、電気とか書いてある
多分、ここが正解だ
燈(これか?)
俺は適当なボタンを押した
すると、暗闇から一転、
周りは白い光で包まれた
燈(眩し__っ!!!)
ヒュン!と風を切る音が聞こえ
俺は上体を低くした
多分、投げられた刃物は俺の頭の上を過ぎていった
ジャック「__あーあ、当たったと思ったんだがな。」
燈「お前は、あの時の外国人か?」
ジャック「ハーイ!お久しぶりデース!......とか、言うと思ったか?」
燈「......」
外国人で殺しのプロ
いや、それにしても分からない事がある
なんで、今になって......
ジャック「どうやら、あいつがお前の事が邪魔らしくてな。」
燈「......気付いた、ってことか。」
ジャック「正解だ。」
燈「......ちっ。」
あれの拠点はイギリスのはず
なんで気付いた、もしくは情報が流れた
いや、今はそれは重要じゃない
ジャック「それにしても、デカくなりやがったなー。」
燈「なに?」
ジャック「あの女々しいチビガキが__」
蘭「__あの、誰かいるの?」
燈「!(美竹!?)」
蘭「あれ?佐渡と、その人はあの時の?」
燈「(やばい!)伏せろ美竹!」
蘭「え__」
俺は美竹の方に飛び
部屋の外まで押し倒した
ジャック「いけないなー。現場を見られるのは。」
燈「お前、関係ないやつまで......!」
蘭「え、どういうこと?」
ジャック「シンプル。今からそこのボーイを殺すんだよ。」
蘭「っ!?」
面倒なことになった
1人だけならどうでもよかった
だが、美竹がいるとなると話が変わる
蘭「え、ちょ、余計に分からないんだけど?」
燈「考えるな、読み込め。今、目の前にいるのはヤバいやつだと。」
だが、どうする
流石に戸山咲ほどじゃないが、
こいつは強い
かなり年季も入ってる
燈(積み重ねたもの、か。)
戸山咲のいう事がすべて正しいなら、
俺がこいつに勝てる見込みはない
だが、俺が逃げるか負けるかすれば......
燈(美竹は確実に殺される。)
関係ない人間を喧嘩に巻き込まない
これは、俺のポリシーだ
これで、美竹を死なせたら駄目だ
燈(勝つしか、ないのか。)
ジャック「おっ。」
蘭「さ、佐渡?」
腹くくるどころか、括り付けろ
俺は大きく息を吸った
”別視点”
燈「行くぞ......!」
まずは燈から仕掛けた
恐ろしく速い踏み込み
反応できなくても不思議じゃない
普通の、人間なら
ジャック「くくっ......!」
燈「くっ!!!」
ジャックは待っていたとばかりでナイフを出し
燈はナイフの刃を殴る形になった
拳には深い切り傷が付いた
ジャック「浅いねぇ、思考が。」
燈(やっぱり、単調じゃ駄目か。なら!)
ジャック「!」
燈は一気に距離を詰め
無数の攻撃をフェイントと共にはなった
その攻撃は全て本物に見え
捌けるはずなどない
燈「なっ!!!」
ジャック「ふぁ~」
はずだった
だが、ジャックはその場から動くこともなく
その攻撃全てをさばき切った
来るものすべてが分かっているかのように
手を出した場所にドンピシャで攻撃が来るのだ
蘭(な、なんで!)
ジャック「ダメダメ。頭を使わなくちゃ。」
燈「......なんだと。」
ジャック「君の動きは理性的すぎるんだ。そこまで賢くもないのに。」
ジャックはあざ笑うような声でそう言った
燈はジャックを睨みつけた
燈「うるせぇよ!これからだっての!!」
ジャック「はぁ......ダメダメだ。」
燈「なに__ぐふっ!!!」
ジャックは燈の打つ瞬間、
一瞬早く拳を出した
その拳は顔に直撃し
仮の顔からは赤い血が流れた
燈「な、なんだと......!?」
ジャック「弱いんだよ君は。」
燈「っ!」
ジャック「昔から何も変わってない。ただ、奪われ蹂躙される弱者だ。」
蘭「佐渡が、弱者......?」
ジャックは蘭のその声に反応し
蘭の方に顔を向けた
ジャック「そうさ。彼は弱者だ。その証拠に立った一発のパンチでこの様だ。」
燈「何が、このくらい......っ!」
蘭「佐渡!」
燈は尻もちをついた状態から立ち上がろうとした
だが、立ち上がることは出来ず
燈は戸惑いを隠せないようになった
ジャック「機能障害だよ。」
燈「機能、障害?」
ジャック「ボクシングの世界ではよくある話さ。脳が揺れて一時的にってね。」
燈「......!」
ジャック「さて......」
ジャックは蘭の方を向き
そして、ナイフを出した
ジャック「折角だ、この女を殺してから君を殺すことにしよう。」
燈「っ!!!」
蘭「ひっ!!」
ジャック「女の肉は美味しいんだ。一度食べたら癖になる......!」
燈「くっ!」
蘭にジャックはゆっくりと近づく
精神を追い詰めるようにプレッシャーをかけ
ナイフをちらつかせている
燈「ま、待ちやがれこの野郎!!!」
ジャック「おっ、それは予想外。だけどー。」
燈「がっ!!!」
蘭「佐渡!......って、首が!!」
ジャックは一瞬、驚いた顔を見せた
だが、浮足立つこともなく
飛び込んできた灯りの首を切りつけた
今度は首からの出血だ
燈(やばい......!!)
ジャック「あー、これは、彼女を食べ終わるまでには死んじゃうかもね。」
蘭「佐渡!!」
ジャック「人の心配をしてる場合かい?」
蘭「っ!!!」
燈の心配をする蘭の腕をジャックは掴んだ
地面から数センチ浮き
腕力の差からか蘭は動くこともできない
ジャック「さぁ、どこから食べようか......」
蘭「は、放して......!」
蘭は足をバタバタさせて逃れようとするが
ジャックに気にする様子は無い
さっきから蘭の身体を品定めするように眺めてる
ジャック「......あの時は。」
蘭「!」
ジャック「イギリスでは腕からだったか。」
燈「イギリス、だと......?」
ジャック「そうだったそうだった!あの女!」
ジャックは嬉しそうな笑顔を燈に向け
そして、こう言った
ジャック「君の母親は腕から食べてやったなぁ!!」
蘭「!!!」
燈「は......?」
ジャック「あれは実に美味だった!!死んだ直後だから特にねぇ!!」
ジャックは高笑いをしている
その目はどこを見ているか分からず
まともな人間とは到底思えない
それほどに狂っている
ジャック「いやぁ、彼女は健気だった!死ぬ直前まで君に謝ってたよ!!ごめんねごめんねってなぁ!!!」
燈「......」
蘭「ど、どういう事?じゃあ、佐渡のお母さんは......」
蘭は全てを察した
燈の母親は死んだ、いや、殺されたのだと
そして、残酷な最期を遂げたのだと
ジャック「母親が死んだときも君は見てたなぁ!いやぁ、学習しない!今度もまた繰り返す!この女でなぁ!!」
蘭「っ!!」
ジャックはそう言って標的を蘭に向けた
そして、ナイフで衣服を切った
ジャック「さぁて、良い体だねぇ......!」
蘭「......っ!(助けて、助けて誰か......!)」
燈「......」
”燈”
目の前では美竹がナイフを突きつけられてる
もう、殺されるのも時間の問題だ
助けないといけない
燈(み、美竹......!!)
首を切られ、血を流し過ぎた
もう、体が言うこと聞きやしねぇ
燈(繰り返すのか、俺は......?)
奴が言ったとおり、
母親が殺されたとき、俺は外に出て行かされた
あれは、お使いに行けと言われたときだった
帰ってきた時にはもうすでに死んでた
布に包まれ運び出され、隙間からは生気のない目が見えた
燈(その先には......)
あいつが、あいつがいた
薄ら笑いを浮かべた男がいた
燈「......殺す。」
そう呟くと、一気に体が軽くなった
まるでダメージがないように
真っ白になった
燈「殺す殺す殺す殺す......!!!」
白くなった俺の精神は
赤黒い殺意に全て染められ
俺の目の前は真っ赤に染まった
”別視点”
ジャック「決めた、折角だ。合わせて腕からにしよう......!」
蘭(も、もう、ダメ......)
ジャック「さぁ、さようなら。ジャパニーズガール__ぐはっ!!!」
蘭「え......?」
ジャックが目をつむりった瞬間
ジャックは蘭の目の前から消えた
蘭は何が起きたのか理解できない
だが、一つの影が見え
全てを理解した
蘭「さ、佐渡......?」
燈「......殺す。」
ジャック「な、なに!?出血が止まってるだと__がはぁ!!!」
蘭「!?」
ジャックが喋ってる途中、
突然、首が千切れんとばかりに跳ね上がった
気づけば、燈の足が上がってる
つまり......
蘭(蹴ったって言うの......?)
蘭が驚くのも不思議じゃない
燈の蹴った足は誰にも見えてないんだから
誰も燈が攻撃したと言う認識をしていないのだ
ジャック「な、何を__ぐふっ!!!」
燈「......」
ジャック(な、なんなんだ!?)
燈「......」
ジャック「ぐ、あぁぁぁぁぁあ!!!!」
燈「......」
燈はジャックを蹴りで飛ばし
そこから一発のパンチを放った
その拳は目に当たり、眼球を砕いた
ジャック(や、奴は攻撃をしているのか!?いつ、いつだ!!何を出してきてる!?)
ジャックは何をされたのか理解していない
やはり、認識できないのだ
ジャック(わ、分からない......!なんなんだよ......!?)
咲「__野生だよ。」
ジャック「なっ!__!!!」
気づいた時にはもう遅い
突如現れた咲はジャックの首をとらえ
完全に気絶させた
そして、咲は少しため息をついた
咲「様子がおかしいから気配の方に来てみれば、気配は一つ消えるし、一つは死にかけてるし。」
蘭「あ、あの......あなたは?」
咲「あ、私は戸山咲。一応、助けようと思ったんだけど......」
燈「......」
咲「......どっちを助けるんだろ。」
咲は木刀を構えながらそう呟いた
その切っ先は間違いなく燈に向いている
蘭「あれは、一体なんなんですか......?」
咲「あれは野生だよ。」
蘭「野生?それって一体......」
咲「多分、そこの外国人は佐渡燈の格上。だけど、なんでこんな事になったか。それは簡単、一切、認識できてないからだよ。」
咲は淡々と喋りながらも
一切、警戒を解くことはない
ずっと、木刀を向けている
咲(前に分かった。佐渡燈は気配を完全に消せる。ありえないけど、今、目の前にいるのに佐渡燈がいると言う事を認識できない。)
燈「......殺す。」
咲「!」
蘭「やばい!!」
燈は咲の方に飛んだかと思うと
咲を通り過ぎ、ジャックに攻撃を始めた
その目に宿る感情は正しく、殺気だ
ただ、ジャックを殺す
その事しか頭にないのだ
咲(反応できなかった?)
蘭「と、止めないと!!」
咲「え?」
蘭はそう叫び、咲が呆気に取られてるうちに
燈の方に駆け寄って行った
”蘭”
佐渡を止めないといけない
あたしはそれだけを思って走った
蘭「佐渡!やめて!!」
燈「......」
蘭「もう、その人は動けない!このままじゃ本当に死んじゃうって!!」
燈「......殺すっ。」
蘭「っ!!」
あたしの力じゃ、佐渡を抑えられない
まるで波に飲まれるみたいに体が持っていかれる
なんて、力......!」
蘭「やめて!!今、佐渡が人を殺したら、本当に人間に戻れなくなる!!!」
燈「......っ」
蘭「正気に戻って!佐渡!!!」
”燈”
「__ど__て」
なんだか、声が聞こえる、何の声だ
まるで水の中にいるみたいに
声が聞こえずらい
ここは、どこだ......?
燈(だ、誰だ......?)
蘭「佐渡が人を殺したら、本当に人間に戻れなくなる!!!」
燈(なんだ、俺は今、どうなってる?__って、なんだ!?)
目の前にはさっきの外国人がいる
なんでこいつ、死にかけてるんだ?
え?誰がやったんだ?
燈(え?俺?)
蘭「正気に戻って!佐渡!!!」
燈「っ!!!」
美竹の声が今、はっきりと聞こえた
俺は水の中から出るような感覚を感じ
意識がはっきりした
”蘭”
蘭「戻って、佐渡__って、あれ?」
必死で声を出してると
佐渡の身体の力が抜けていた
あたしは顔をあげて佐渡の顔を見た
燈「な、なんだこれ?」
蘭「あんたがやったんだって!」
燈「俺が!?」
蘭「そうだって!」
佐渡は本気で驚いた顔をしてる
まるで、さっきまでの記憶がないみたい
咲「意識を赤く染めたね。」
燈「戸山咲......?」
咲「まるで血に飢えた獣。流石に驚いたよ。」
戸山さんは木刀を腰に据え
戦闘態勢を解いて近づいて来た
その表情は相変わらず無だ
燈「ど、どういう事だ?」
咲「やっぱり、完全に無意識なんだね。」
戸山さんは淡々と喋ってる
機械的、とまでいかないけど
本当に一定のテンションだ
咲「言っておくけど、私にも分からない。あの現象は君自身にしか分からない。」
燈「??」
咲「私から今言える事はない。」
燈「なんなんだ。」
咲「だって、今は邪魔になっちゃうから。」
燈「なんだ__って、うわっ!!」
蘭「......」
”燈”
戸山咲と話してる途中、
美竹が俺に抱き着いてきた
普通にびっくりして変な声出た
咲「お邪魔虫は失礼。(そこの外国人も)」
燈「あ、あいつ消えやがった!って、何してるんだ美竹?」
蘭「......良かった。」
燈「あ?」
美竹は小さな声でそう言った
そして、抱きしめる力を強めて来た
蘭「無事で、よかった......!」
燈「!」
蘭「ありがとう、助けてくれて......!」
燈「......別に。美竹は元は関係ないやつだし。」
蘭「痛かったよね。あんな殴られ方して。」
燈「おい、べたべた触るな!」
な、なんなんだこいつ?
急に抱き着くは顔触るは意味わからんこと言うわ
恐怖で頭がおかしくなったか?
蘭「良かった、人間で留まってくれて......」
燈「それは......美竹の声のお陰、でもある。」
蘭「ありがとうね、佐渡......!」
燈「撫でてんじゃねぇ!」
蘭「あ、ごめんつい。」
美竹は落ち着いたのか
俺から離れてゆっくり立ち上がった
すると、どっと体に疲れが来た
燈「っ!」
蘭「佐渡!?」
目の前が揺れまくってる
そう言えば、血が出まくってるんだった
てか、あれ、傷は?
燈(あれ?血が完全に止まってる?)
蘭「大丈夫!?」
燈「多少は揺れてるが。大丈夫。」
蘭「ちょ、ヤバいじゃん!あたしにつかまって!」
燈「俺より背低いのに何言ってんだ......」
俺は呆れた声でそう言った
でも、やっぱ、多少キツイ
トマトジュース飲めば治るか?
蘭「いいから!控室でもいいから休みなって!」
燈「お、おい。」
蘭「ほら、行くよ!」
美竹は俺の手を掴んで引っ張ってきた
こいつ、こんなスキンシップ激しい奴だっけ
燈「体くっつけすぎだ。」
蘭「......わざと。///」
燈「あ?」
蘭「な、なんでもない!///」
燈「おま、引っ張んな!バランスが取りずらくなってるんだ!」
蘭「あ、そうだった。」
こうして、なんとかピンチを脱した
だが、疑問に残るのは
この美竹の態度と
あの、戸山咲の言ってた意識を赤く染めた
という言葉だ