白と七人の歌姫   作:火の車

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気配

 休日が終わるのは早いもんで、

 

 いつも通り、俺は屋上で寝転がってる

 

 今日は静かでなんか落ち着いてるな

 

こころ「__燈ー!いるわね!」

燈「......」

 

 なんて、思ってる俺が間違いだった

 

 嵐の前の静けさってやつを忘れてた

 

 うるさいやつはいつ来るか割らないんだよ

 

燈「......何の用だ。」

こころ「会いに来たのよ!」

燈「頼んでねぇ。」

 

 俺はデカい溜息をつきながら体を起こした

 

 そして、こころの方に目を向けた

 

燈「たくっ、今から寝ようと思ってたのによ。」

こころ「あら?そうなの?ごめんなさい!」

燈「謝る気ねぇな。」

こころ「それでなのだけれど!」

 

 こころは笑顔で俺の横に座ってきた

 

 こいつ、なんの躊躇もなく近づいてくる

 

 俺が気を使っちまいそうだ

 

こころ「もうすぐ夏休みよ!」

燈「俺はいつも夏休みと変わらんがな。」

こころ「それでね!」

燈(こいつ、人の話聞きやしねぇな。)

 

 薄々分かってたし、気にしてないが

 

 俺がそんな事を考えてると、

 

 こころが話を始めた

 

こころ「あたしと遊びに行きましょう!」

燈「は?」

こころ「どこでもいいわよ?」

燈「なんで行くことが確定してんだよ。」

こころ「?」

 

 こいつ、自分が断られないとでも思ってんのか

 

 なんて言うか、ポジティブだな

 

 俺とは真逆だ

 

燈「俺は行かねぇぞ。面倒だし。」

こころ「え?」

燈「外出るの好きじゃないんだよ。」

 

 俺は遠くを眺めながらそう言った

 

 すっごいこころの視線を感じる

 

こころ「どこでもいいのよ?国内でも、海外でも!」

燈「嫌だ。」

こころ「わ、私もついて行くわ!」

燈「いや、そうじゃないと何で誘うんだよ。」

こころ「な、何でダメなの......?」

燈「言ったろ?外出るの好きじゃないって。」

 

 同じ事を何回言わせるんだよ

 

 あ、たった2回だった

 

こころ「燈って、外に出るの嫌いに見えないのに。」

燈「別に嫌いじゃなかったよ。(前までは......)」

こころ「?」

 

 あんまり話すのも面倒だな

 

 後は、目をつぶって黙っとくか

 

 触らぬ神に祟りなしってな(?)

 

こころ「嫌いじゃ、なかった?」

燈「......」

こころ「なんで喋らないの?」

燈「......別に話すことでもねぇよ。」

 

 俺も成長したなぁ

 

 今までなら普通に殴ってたな

 

 咲にしばかれただけある

 

燈(いいよな、あいつらは。)

 

 香澄、美竹、彩、湊、こころ、ましろ、和奏

 

 俺が最近関わるようになった奴はみんな、

 

 誰にでも誇れるような才能を持ってる

 

 太陽の下を大腕振って歩ける

 

 そう言う才能を持ってやがる

 

 どっかのバカと違って

 

こころ「燈は何を怖がっているの?」

燈「は?」

こころ「燈の目は怖がってる。そうね......まるで犬だわ。」

燈「......ちっ、誰が犬だ。」

 

 確か、前に和奏にも言われたな

 

 改めて言われると、むかつくな

 

 全く、失礼な奴らだ

 

こころ「1人でいるのも、それが理由じゃないの?」

燈「......勘ぐりすぎだ。」

こころ「え?」

 

 俺はそう言って立ち上がり

 

 こころの目を見た

 

燈「別に怖がってるつもりはない。ただ。」

こころ「?」

燈「......才能がなかっただけだ。」

 

 俺はそう言って腰を上げ、

 

 屋上を出て行った

 

こころ(燈......?)

__________________

 

 気分が悪い

 

 溝川に溺れた時みたいだ

 

 最近、異常にツイてないわ、

 

 詮索してくる奴はいるわ

 

燈「......付けまわしてくる奴はいるわ、と。」

 

 俺は軽く近くにある小石を蹴飛ばした

 

 その石は狙った方へ綺麗に飛んでいった

 

 勿論、それは何にもあたる事はなく、

 

 壁に当たった音だけが校舎裏に響いた

 

燈「......ちっ、逃げたか。」

 

 最近、ちょこちょこ感じるあの気配

 

 そろそろ、見逃すのも無理になってきた

 

 鬱陶しいことこの上ない

 

燈(このままじゃ、気になって咲との訓練にしか集中できん。)

 

 大人風に言うと、美味い酒が飲めんってな

 

 はぁ、ほんとにツイてない

 

 ほんとに生まれ持ってのものってやつがない

 

燈「......さっさと仕掛けて来いよ。ネズミ。」

 

 俺は地面を蹴り、

 

 誰もいない校舎裏でそう呟いた

__________________

 

 時間が経ち、俺は学校を出た

 

 今日も咲の攻撃をよけ続けて、

 

 マジで死ぬかと思った......

 

友希那「__あら、佐渡君?」

燈「ん?湊?」

 

 家の近くまで帰ってくると、

 

 湊が家の方向から歩いてきた

 

 なんだ、また様子を見に来たのか

 

燈「何か用か?」

友希那「さっき、あなたの家に行ったのだけれど。」

燈「あー、悪いな。空いてなかっただろ__」

友希那「電気がついてたのに、いなかったのよ。」

燈「......あ?」

友希那「?」

 

 今、湊はなんて言った?

 

 電気がついてた?俺の家に?

 

 俺はいつも、基本的に電気をつけない

 

 勿論、外にいる間付けることもない

 

燈「マズい......!!」

友希那「え、佐渡君!?」

 

 俺は背筋に寒気を感じ、

 

 家に向けて全力で走った

 

 当たってないに越したことはない

 

 でも、嫌な予感がする

 

 俺はとにかく、足を急がせた

__________________

 

 家に帰ってきた

 

 確かに、俺の部屋に電気がついてる

 

 さらに、寒気が強くなった

 

燈(鍵が、開いてる......!?)

 

 汗が滲む手でドアノブを掴み

 

 俺は慌ててドアを開け、

 

 部屋の中に駆け込んだ......

__________________

 

燈「__は......?」

友希那「さ、佐渡君__って、え......?」

燈「お、おい、う、嘘だろ......?」

 

 部屋に入って、まず目に入ったもの

 

 それは、受け入れがたい

 

 地獄のような、現実

 

燈「こ、ココ......?」

 

 ココの貼り付けの死体

 

 それは確かにそこに存在して

 

 揺るがない事実として

 

 俺の脳裏に叩きつけてくる

 

友希那「な、なんで......!」

燈「......」

 

 何が何かわからない

 

 世界が歪んで、頬が生ぬるい

 

 なんだ、なんだよこれ

 

 なんで、なんでなんだよ......

 

燈(な、ナキはレナはルルは......!)

ナキ「にゃー!」

燈「!」

レナ、ルル「にゃ~!」

燈「お、お前ら!」

 

 少しすると俺達に気付いたのか、

 

 屋根裏からナキ、レナ、ルルが出て来た

 

 ココが逃がしてたのか......

 

燈「お、お前ら、何が......?」

ナキ「にゃ......」

ルル「にゃ~......」

レナ「にゃにゃ......」

 

 ナキ達が何かを語りかけてきてる

 

 俺は集中して、それを聞き取った

 

燈「白衣の、男だって......?」

 

 3匹は今、確かに

 

 白衣の男が入ってきて、ココを殺したと言った

 

 俺の想像通り、やっぱり直前にココが逃がしてた

 

燈「......そうか。」

友希那「さ、佐渡君、これは__ひっ!!!」

 

 それを聞いた瞬間、

 

 俺の意識が段々と白に帰って行った

 

 そして、また、赤に染まった......

 

燈「......殺してやる。」

友希那「っ!!!」

燈「殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!」

 

 ”友希那”

 

 怖い、ただ、怖い

 

 目の前にいるのは、佐渡君

 

 初めて会った時から、

 

 彼を怖いと思った事はなかった

 

 むしろ、優しい人物とおもっていた

 

 でも......

 

燈「どいつだ、どこのどいつだ......!!!」

友希那「お、落ち着いて......」

燈「......あ?」

友希那「っ!!!」

 

 彼は、私を睨んだ

 

 まるで、氷のようなその瞳は

 

 形容するとしたら......

 

友希那(お、狼......?)

燈「湊......?」

友希那「っ!」

燈「これは、誰がやった?」

 

 狼の牙は私に向いた

 

 壁に押し付けられて、身動きが出来ない

 

 そして、彼の目はさらに、温度を失った

 

 その目をみて、私の背筋は寒くなった

 

燈「誰だ、誰なんだ??」

友希那「わ、わからないわ......」

燈「......そうか。」

 

 小さくそう答えると、

 

 彼は私から離れ、ココちゃんの方に行った

 

 その表情はあまりにひどくて読み取れない

 

 泣いてるのか、怒っているのか

 

 悲しんでいるのか、分からない

 

燈「......ごめん。」

友希那「!」

燈「ごめん、ごめん、ごめん......」

友希那「っ!!!」

 

 彼はココちゃんの前で蹲り謝り始めた

 

 その姿を見て、胸が痛くなった

 

 ココちゃんが死んじゃったこともだけど、

 

 彼が優しい事を知っているからこそ、

 

 こんなになってるのが、悲しく感じる

 

友希那「さ、佐渡君......!」

燈「......?」

友希那(私は、何を......?)

 

 気づいたら、私は彼に抱き着いていた

 

 いや、正確には止めに入った

 

 そうしないと、今にも何かになりそうだから

 

友希那「落ち着いて!」

燈「......何をしてる。」

友希那「落ち着いて......」

燈「落ち着け、だと......?」

友希那「!」

 

 彼は私を睨んできた

 

 そして、胸倉を掴んできた

 

燈「これで落ち着けるか!!お前は__っ!!」

友希那「......悲しくないわけ、ないじゃない......!」

燈「み、湊......」

 

 私だって、あの子の面倒を見て来た

 

 見つけたあの日から、たくさん触れ合って

 

 かなりの時間一緒にいた

 

友希那「こんなひどい事、絶対に許されないわ......!」

燈「......!」

友希那「出来る事なら、私が見つけて殺したい......!!」

 

 歌に影響するから、こんな声は出さない

 

 でも、出さずにはいられない

 

 憎い、誰か分からないけど、憎い

 

 どうしたらいいか、私も分からない

 

友希那「でも、いま暴れたってどうしようもないわ......」

燈「!!」

友希那「何か、何かないの!?手がかりは!」

燈(手がかり?......ある、あるぞ。あの時の屋上、ココ達の異常な反応、そして、時折感じるあの気配......)

友希那「!」

 

 私のその言葉と同時に

 

 彼から出る何かが強くなった

 

 そして、その何かは関係ない私も蝕む

 

 それほどに大きな、何か

 

燈「あ、ははは!分かった、分かったぞ......!」

友希那(なんなの、これ......?)

 

 私は恐怖にも似た感情を抱きながら

 

 泣きながら笑う彼を目の当たりにした

__________________

 

 ”咲”

 

咲「__すごい気配を感じて来てみたけど。」

 

 まさか、こんなに早く仕掛けてくるなんて

 

 燈をつけてる人物は見つけてた

 

 その上で仕掛けてくることはない

 

 私はそう思って燈を鍛えてた

 

咲(少し、早すぎるかも。)

 

 燈はまだ、自分を制御できない

 

 あと1週間、それくらいは必要だった

 

 でも、間に合わなかった

 

 今の燈は確実に......

 

咲「......野生に、支配されてる。」

 

 このままじゃ、燈は人間じゃなくなる

 

 そうじゃなくなったら、

 

 倒せるのは、ほぼ私だけ

 

 流石にそれは少し面倒くさい

 

咲(でも、チャンスかも。)

 

 もしも、これを逆手に取れば

 

 燈が自分を制御するキッカケになる

 

 本当にギリギリの賭けになる

 

咲(不安点は......)

 

 自分の家族ともいえる猫を殺されて

 

 燈があの状態から正気に戻って、

 

 尚且つ、あの溢れる才能を制御できるか

 

 それが、今回の賭けのターニングポイント

 

咲「......精々、犠牲になってもらうよ。拷問屋さん。」

 

 私は燈に悟られる前にその場を離れ

 

 燈を付けまわしてる気配を追った

 

 

 

 

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