昨日は本当に大変だった
水色2号に散々怒鳴り散らされ、
咲とタンクの修理をしてから家に帰った
燈「......」
それから一晩明けた今日も
俺は屋上でボーっとしてる
いつも以上にやる気が湧かない
香澄「__燈くーん!」
燈「......ん?」
寝ようと目を閉じてると、
騒がしい声が聞こえて来た
俺は片目を開け、姿を確認した
燈「なんだ。」
香澄「今日ね!お祭りがあるんだよ!」
燈「そうか。」
香澄「一緒に行こうよ!有咲たちも来るよ!」
燈「......やだ。」
香澄「えぇ!?」
俺はそう答えると、
香澄は驚いたような声を上げた
そして、俺の肩をゆすってきた
香澄「行こうよー!」
燈「嫌だ。」
香澄「うぅ......」
燈「......」
気配的に拗ねてるのが分かる
まるで、構わないときの__
燈「っ!」
香澄「わっ!」
俺は勢いよく立ち上がった
そして、屋上のドアの方に歩いた
香澄「あ、燈君?」
燈「......帰る。」
香澄「え?」
燈「......じゃあな。」
俺はそれだけ言い残し、
早足で学校を出て行った
”香澄”
なんだか、変な感じがした
すごく痛そうな顔をしてた
香澄(燈君って......)
まだ、あの事件の事を引きずってる
友希那先輩に話を聞いたけど、
聞きたくないくらいひどい内容だった
外から見てる私ですらこれなのに
実際に被害に遭った燈君は......
香澄「なんとかしないと!」
燈君をキラキラドキドキさせて、
元気になってもらわないと
香澄「そうと決まれば、こころんと彩先輩に相談しよっと!」
私はそう思い立って、
2人の所に走って行った
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”燈”
嫌でも思い出す、あの日の光景
寝ても覚めても、頭に浮かんでくる
血で染められた、家族の姿が
燈(......殺してやる。)
俺は拳を固く握りしめた
口の中で血の味がする
燈(自分勝手な人間のせいで、なぜ、俺がこんな思いしないといけない?)
ドス黒い感情が湧いてくる
これは、恨みなのか殺意なのか
グチャグチャ過ぎて何も分からない
燈(野郎の顔面に拳を捻じ込んで、首から上を脊髄ごと吹き飛ばしてやる......!!)
ましろ「__さ、佐渡さん......?」
燈「っ!......ましろか。」
ましろ「は、はい......」
後ろを振り向くと、
心配そうな顔をしてるましろがいた
燈「帰りか?」
ましろ「はい。佐渡さんは、どうしたんですか?」
燈「なんでもない。」
俺はそう言って少し息を吐いた
ちょっとだけ理性が飛びかけてた
ましろが来て助かったな
燈「俺は帰る。じゃあな。」
ましろ「あ、さ、佐渡さん!」
燈「?」
俺が歩きだそうとすると、
ましろは大声を出して俺を止めた
なんだ?
ましろ「あの、今夜のお祭り、よければ一緒に行きませんか......?」
燈「......悪い、祭りには行けん。」
ましろ「そうですか......」
燈「詫び、と言っちゃなんだが、これやるよ。」
ましろ「?」
俺はそう言って、
鞄に入れてある飴玉を渡した
水色の綺麗なやつだ
ましろ「わっ、綺麗......宝石みたい......!」
燈「ただの飴なんだがな。」
ましろ「ありがとうございます!」
燈「あぁ。」
こんなことで喜ぶのか
何と言うか、変な奴だ
燈「じゃあな、ましろ。」
ましろ「はい!佐渡さん!」
俺は軽く手を振りながら歩き
家に帰って行った
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家に帰ってから、俺は寝た
疲労があったのか分からないが
何故か熟睡してしまった
燈「__ふぁ~あ......」
俺はあくびをしながらナキ達に飯を出し
部屋の端に座ってボーっとしてる
燈(確か......もうすぐで夏休みだったか。)
その期間があれば、イギリスに行ける
そしたら、奴を確実に殺せる
燈(覚悟しろよ、くそ野郎が__)
ピンポーン、と
俺の部屋のベルが突然響いた
不思議に思いつつ、俺はドアを開けた
燈「__誰だ。」
レイ「あ、いたね、佐渡君。」
燈「和奏?」
ドアを開けるとそこには和奏が立っていた
手に中身が分からない何かを持ってる
燈「何しに来た?」
レイ「ご飯、持ってきたんだよ。」
燈「飯だと?」
俺は首をかしげながら和奏を見た
そう言えば、俺の食生活知ってるのか
別に今で充分なんだが
レイ「しっかり食べないとだよ?ほら、あがるよ。」
燈「おい__って、遠慮ねぇな。」
俺は溜息を付きながらドアを閉め、
さっき座ってた場所に座った
レイ「ほら、食べて。」
燈「......ん。」
俺は和奏から皿を受け取った
これは、からあげってやつか
一ノ瀬が好きだって言ってたな
レモンかけたらキレてたけど
レイ「からあげは嫌い?」
燈「別に。」
俺はそう言いながら唐揚げを口に入れた
作りたてなのか、まだ食感がいい
燈「美味い。」
レイ「そっか。もっと食べる?」
燈「食う。」
レイ「はい、どうぞ。」
燈「さんきゅ。」
俺はまた唐揚げを口に入れた
人の手料理なんて久しぶり食べた
それこそ、10年ぶりくらいか
レイ「佐渡君って身長体重どのくらいあるの?」
燈「ん?えーっと、どのくらいだろ?」
俺はそう言いながら、
箱に入れてるある紙を取り出した
これは、一ノ瀬に定期的に受けさせられる健康診断の結果だ
燈「こんなだ。」
レイ「こんなのあるんだ__って、え!?」
燈「?」
レイ(身長173㎝に対して、体重51.4㎏、体脂肪率5%!?)
和奏が目を見開いてこっちを見てる
何かおかしい所でもあったのか?
レイ「佐渡君って、今まで喧嘩とかしてきたんだよね?」
燈「あぁ。」
レイ「......佐渡君の体って、どうなってるの?」
燈「??」
何を焦ってやがるんだ?
俺の体はいたって健康だし
何もおかしい事はない
レイ(確か、体脂肪率って低すぎると筋力低下するんじゃ......)
燈(美味い美味い。)
俺は考え事をしてる和奏の横で、
無心でから揚げを食べ続けた
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しばらく時間が経ち、
今の時間は9時になった
レイ「__じゃあ、そろそろ帰るよ。」
燈「あ、和奏。」
レイ「どうしたの?」
俺は帰ろうとする和奏を呼び止めた
和奏は俺の方を向いた
燈「夏休み、時間あるか?」
レイ「え?あるけど?」
燈「なら、少し頼みを聞いてくれないか?」
レイ「頼み?(珍しい。)」
燈「夏休み、少しの間、ナキ達を預かってほしいんだ。」
俺は和奏に向かってそう言った
和奏は首をかしげている
レイ「え?どうして?」
燈「夏休み、イギリスに行く。」
レイ「!」
俺は静かな声でそう言った
その瞬間、和奏の表情が曇った気がした
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”イギリス”
とあるイギリスの豪邸
その一室で汚い叫び声が響いた
小住「__な、何故なんだ!?なぜ、メイソンと連絡が付かない!?」
??「十中八九、殺されたんだろうね。メイソンはきっちりした性格だし。」
小住「バカな!!だとしたら、やったのは誰だ!?まさか、あのイレギュラーか!!!」
??「......」
小住は分かりやすく取り乱している
小住の手ごまの中で、メイソンは切り札級
殺される事なんて一切、想定してなかった
??「彼は生まれついての天才だ。成長すれば、このくらいはする。幼いうちに殺しておくことだったね。」
小住「クソ!!ゴミの分際で天才だと!?図に乗りやがってぇ!!!」
??「......」
小住は机を殴った
そして、??の方を見た
小住「お前なら出来るんじゃないのか!?キングと言われたお前なら!!」
??「......さぁね。」
小住「命令だ!あれを殺せ!殺してくれ!」
??「......」
小住「__っ!」
??は騒ぐ小住に拳銃を向けた
そして、静かに口を開いた
小住「な、何の真似だ!?」
??「さっきから、彼をイレギュラーだのゴミだの、筋違いな事を言いすぎだ。」
??は小住を睨みつけてる
そして、ゆっくり引き金に指をかけた
??「燈はあなたの不貞行為で生まれ、自分の身分を守るために、罪を隠すためにあなたに母親を殺され、メイソンに苦痛と恥辱を与えられ続けた。」
小住「し、知らん!そんな事は知らん__ぐふっ!!!」
??「......」
??は小住の胸を打ち抜いた
そして、倒れた体を蹴り飛ばした
??「だから、死ぬのはあなただ。燈じゃない。」
小住「し、慎吾、き、貴様......!」
慎吾「......」
小住「裏切......った、な......!」
慎吾は虫の息の小住を見下ろしている
そして、再度、拳銃を向けた
慎吾「裏切り?いつから、僕はあなたの味方になった?」
小住「......!」
慎吾「僕は最初から燈の味方さ。燈を成長させるためにあなたを利用させてもらったよ。ただ、あそこまで心に傷を負わせるのは想定外だったけど。」
慎吾は冷たい目をしてる
そのまま、引き金に指をかけた
慎吾「心底、不幸に思うよ。あなたのようなクズの息子だと言う事を。」
小住「!!!」
慎吾は小住の脳天を貫いた
小住は糸を切られた操り人形のように力がなくなった
?「__終わりましたか?」
慎吾「あぁ、終わったよ。オリビア。」
小住が死亡した瞬間、
背後から色白の美しい女性が現れた
碧眼のその目には温度がない
オリビア「それにしても、薄汚い死体ですね。」
慎吾「全く持ってその通りだね。埋葬する価値もない。」
慎吾はそう言って、小住の死体を蹴り
そして、オリビアの方を向いた
慎吾「これで、ここにもう用はない。」
オリビア「それでは、日本にお戻りになられるのですね。」
慎吾「勿論。まだ、計画は半分しか終わっていないからね。」
オリビア「私はどこへでもお供いたします。」
慎吾「あぁ、ありがとう。」
慎吾はそう言って窓の外を見た
外はもう夜で、綺麗な月が浮かんでいる
慎吾(すぐに戻るよ、燈。)
オリビア「......」
慎吾「行こう、オリビア。無駄な時間は過ごせない。」
オリビア「かしこまりました、慎吾様。」
そうして、慎吾とオリビアは部屋を出た
部屋には大きな赤い水たまりと、
死臭を放つ小住の死体が残されていた