白と七人の歌姫   作:火の車

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無感情

 数日が過ぎて、学校ではテスト最終日

 

 香澄が頭を抱えてたのを覚えてる

 

 市ヶ谷も大変だなって思う

 

燈「......」

 

 俺は屋上で景色を眺めてる

 

 なんで眺めてるかは分からないが

 

 なんとなく、そんな気分だ

 

燈(あと、数日。)

 

 数日経てばイギリスに飛ぶ

 

 そして、俺は奴を殺すだろう

 

燈(奴を殺せば、俺は......)

 

 俺は自分の手を見た

 

 小指には銀色の指輪がはめられてる

 

 それを見て、少し胸が痛んだ

 

燈「すぐ、そっちに送る__っ!!」

 

 俺が呟いてると、

 

 どこからかナイフが飛んできた

 

 どこかで見たことがあるナイフだ

 

燈「ご挨拶だな、外国人。」

ジャック「__まさか、避けるとは。」

燈「ギリギリだ。だが、もう当たらない。」

ジャック「分かってるさ。」

 

 外国人は俺の方に歩いてくる

 

 一体、なにしに来やがった

 

 まさか、自殺志願者か?

 

ジャック「今日は少し、情報を提供しに来た。」

燈「......碌な事じゃなかったら殺すぞ。」

ジャック「わ、分かってるさ。」

 

 外国人はそう言いながら

 

 何かの写真を俺に渡して来た

 

ジャック「小住が何者かに殺された。」

燈「......!」

ジャック「理由は分からない。だが、別の不可解な何かが動いたのは間違いない。」

燈「......」

 

 奴は死んだのか

 

 ただ、それだけの感想しか浮かばない

 

 どうせ、俺が殺してた命

 

 今更なくなってもどうでもいい

 

燈「誰かは知らんが、感謝しておこう。」

ジャック「感謝だって?おいおい、君の獲物なんじゃないのかい?」

燈「別に、奴が死ねば何でもいい。」

 

 俺はそう言いながら外国人の方を見た

 

 奴は飄々とした顔をしてる

 

燈「それに、獲物は1人じゃない。」

ジャック「っ!!!」

 

 俺は外国人にも見えるように、

 

 ゆっくり蹴りを放った

 

 外国人は後ろに飛びのいた

 

燈「お前も獲物の一匹だ。」

ジャック「......まぁ、そうだよね。」

 

 外国人は懐からナイフを出した

 

 俺は極限まで集中力を高めた

 

 ”別視点”

 

ジャック「ほらっ!!!」

 

 ジャックは大量のナイフを投げた

 

 それは全て燈をとらえている

 

 だが......

 

燈「......」

ジャック「!?」

 

 燈はその場を動かないまま

 

 全てのナイフを止めた

 

 何かの壁に阻まれたようにナイフは地面に落ちた

 

ジャック「......やはり、飛び道具は通用しないか。」

燈「飛び道具も、だ。お前は何も通用しない。」

 

 燈はゆっくりメイソンの方に歩いた

 

 ジャックはその様子に戸惑った

 

ジャック(攻撃の気配がない......!?)

 

 ただ、歩いてるだけ

 

 何も特別な気配を感じない

 

 だが、ジャックは知っている

 

 これが、最も恐ろしいと

 

燈「3秒後。」

ジャック「?」

燈「3秒後、お前は俺を見失う。そして、壁に飛ばされてる。」

ジャック(何を......言ってるんだ?)

燈「......3。」

 

 燈はカウントダウンを始めた

 

 その瞬間、ジャックの心臓が跳ねた

 

ジャック(な、なんだ、この悪寒は......)

燈「......2。」

ジャック(ありえない、あいつはアウトレンジにいるんだ、見失うなんて......)

燈「......1。」

ジャック(そんな事、絶対にない!)

燈「......0。」

ジャック「__へ?」

 

 0カウントの瞬間

 

 ジャックから大量の汗が噴き出した

 

 そして、目がこれでもかと見開いた

 

ジャック(き、消えた!?)

 

 燈の姿がジャックの前から消えた

 

 普通に歩いてただけの燈が消えた

 

 ジャックはあり得ないと思いつつ、

 

 恐怖を感じていた

 

燈「__おいおい、目の前にいるじゃねぇか。」

ジャック「っ!ど、どこから現れた!?」

燈「ずっと横にいた。だが、気付いてないんだよ。」

ジャック「あ、ありえない!」

燈「ついでに言うが......お前、今、どこにいる?」

ジャック「は?__っ!?」

 

 ジャックは自分のいる位置を確認した

 

 一歩たりとも足を動かした記憶はない

 

 だから、自分の位置は変わっていない

 

 そう、思っていた

 

ジャック(なんで、俺は壁を背負っている......?)

燈「自分から下がってたぞ。そりゃもう怖そうに。」

ジャック「なん、だと......!?」

 

 ジャックの顔が青くなっていく

 

 自分の認識してない動きをしてる恐怖

 

 目の前にいる化け物への恐怖

 

 それらが混在してるのだ

 

ジャック(何だ、何が起きてる!?俺が知らない所で何が起きてる!?)

燈「次の予言をしてやる。」

ジャック「!!」

燈「3秒後、お前は死ぬ。」

 

 燈はそう言ってジャックの方に歩きだした

 

 そして、カウントダウンが始まった

 

燈「3。」

ジャック(き、危険だ!!逃げないと!!)

燈「2。」

ジャック(逃げるって、どこにだ?どこに逃げる!?)

燈「1。」

ジャック(逃げ場がない......この周辺一帯、全部が奴の攻撃範囲だ......あまりに、格が違い過ぎる......)

燈「......0__」

ジャック「っ!!!」

 

 燈は死神の鎌のように右手を振った

 

 それは確かにジャックの顔をとらえ

 

 メイソンと同じように首が飛ぶはずだった

 

燈「......なんだ、来たのか。」

咲「はぁ......危ない。」

 

 ”燈”

 

 外国人を殺そうとしたら、

 

 咲が邪魔をしてきた

 

 流石にゆっくり動き過ぎたか

 

燈「何しに来た?」

咲「異質な気配があったらから、テスト終わってすぐに来たんだよ。そしたら、ストレス解消してる燈がいたから。」

燈「!」

咲「......また、殺す気だったの?」

燈「......」

 

 咲は静かな声でそう言った

 

 俺は手をポケットに突っ込んだ

 

咲「もう、燈は殺しをするべきじゃない。心が壊れる。」

燈「......ふん。」

 

 俺は小さい声でそう言って、

 

 いつも座ってる場所に座った

 

咲「もう、さっさと帰りなよ、外国人。今度こそ死ぬよ?」

ジャック「あ、あぁ......(た、助かった......?)」

燈「......」

 

 外国人はどこかへ逃げていった

 

 別にまだまだ追えるが、

 

 咲もいるし、もういい

 

 それに......

 

燈(もう、杭は打ち付けた。)

 

 あいつはもう2度と戦いの場に出ない

 

 そう言う風にゆっくり刷り込んだ

 

 奴は戦うたびに俺を思い出すことだろうな

 

燈「さてと、目的もなくなったし帰るか。」

咲「待ちなよ。なんで、さっきみたいな状況になったの?」

燈「知らん。勝手に向こうから来て、俺の獲物が死んだ。だから、あいつ狙いにした。」

咲「......燈、壊れてるね?」

燈「......?」

 

 咲は突然そんな事を言い出した

 

 壊れてるって、何の事だろう

 

 俺にはよく分からない

 

咲「段々、感情がなくなってるんじゃないの?」

燈「っ......!」

咲「いつから?あのもう1人の外国人を殺した日から?」

燈「......」

 

 咲は珍しく必死に問いかけてきてる

 

 そう言えば、心当たりがある

 

燈「......まず、喜びが消えた。」

咲「!」

燈「次に悲しみが消えた。咲との戦いの後に楽しさが消えた。」

 

 俺は自分の記憶をたどり、

 

 淡々とそう言った

 

 咲は苦い表情をしてる

 

燈「怒りと殺意も今消えた。」

咲(......もう、喜怒哀楽は何も残ってない。)

 

 俺はその場から立ち上がり

 

 咲の方に近づいた

 

燈「でも、これでいい。」

咲「......?」

燈「これなら、もう寂しくない。」

咲「__!」

 

 俺はそう言って先に背中を向け、

 

 屋上から出て行った

__________________

 

香澄「__燈くーん!」

 

 屋上を出て廊下を歩いてると

 

 香澄が後ろから走ってきた

 

燈「何か用か?」

香澄「これ見て!」

燈「これは、かき氷か?」

香澄「うん!」

 

 香澄はなぜかかき氷を持ってる

 

 心底疑問なんだが、

 

 まぁ、いいだろう

 

香澄「はい!あーん!」

燈「......?」

香澄「食べて食べて!」

燈「あーん。」

 

 俺は香澄が差し出してきたかき氷を食べた

 

 冷たい、甘い、普通に上手いかき氷だ

 

香澄「どう?」

燈「美味い。」

香澄「そっかー!よかった!」

 

 香澄は嬉しそうな顔をしてる

 

 何をそんなにすることがあるんだか

 

 俺はそんな事を考えながら香澄を見てる

 

燈「ありがとうな、香澄。」

香澄「うん!(......あれ?)」

燈「俺、帰るわ。じゃあな。」

香澄「う、うん。」

 

 俺は軽く手を振りながら

 

 下駄箱に向かって歩いて行った

 

 ”香澄”

 

 何か、違和感を感じた

 

 大きな、今までの燈君と違う

 

 何かが......

 

香澄(燈君、笑ってた。すごく優しそうに......え?)

 

 優しそうに笑ってた?

 

 燈君って、そんな笑い方しないよ?

 

 もっとギラギラした笑い方してて

 

 男の子らしいはず......

 

香澄「燈君が、変わった......?」

 

 よくよく考えれば、

 

 最近はおかしい事が多かった

 

 生徒会の皆にありがとうって言ったり

 

 すごく大人しくなってたり

 

香澄「何があったの、燈君......?」

 

 私はそう呟いた

 

 その時、すごく何か嫌な予感がしてた

__________________

 

 ”空港”

 

 燈たちの住む町の近くの空港

 

 そこに、2人の男女の影があった

 

慎吾「__帰って来たね。」

 

 慎吾は伸びをしつつ、そう言った

 

 その後ろからはオリビアがついて来てる

 

オリビア「慎吾様、たった今、報告が入りました。」

慎吾「?」

オリビア「ジャックが佐渡燈に接触。小住の情報を渡したと。」

慎吾「そうか......間に合わなかったか。」

 

 慎吾は眉間を抑えた

 

 そして、少しした後、手を離した

 

慎吾「取り合えず、燈の所に行こう。話はそれからだ。」

オリビア「かしこまりました。」

慎吾「......僕、殴られると思う?」

オリビア「彼の気性から考えて、十中八九。」

慎吾「だよね......」

 

 慎吾とオリビアはそんな会話をしながら

 

 空港の前の迎えの車に乗り込み、

 

 燈の住む町へ繰り出して行った

 

 

 

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