一ノ瀬が帰ってきてすぐ
学校は夏休みに突入した
と言っても......
燈(__やることがねぇ。)
俺は部屋の真ん中で大の字になっている
イギリスに行くはずだったのが無くなり
目的も無くなり、時間を食いつぶしてる
燈(なにしよ。)
今まで常に休みみたいな生活を送ってた
だから、特別やりたいこともない
やるべきこともない
燈(......外、出てみるか。)
俺はそう思い立って、
ナキ達の飯を置いてから俺は家を出た
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基本的に外に出るのは好きじゃない
だが、ジッとしてるのも好きじゃない
だから、俺はよく散歩をする
燈(__暑いな。)
地面から熱気が伝わってくる
遠くに目を向ければ景色が歪んでる
こう言うのから夏だって感じるな
暑いことこの上ない
燈(......こことかいいかも。)
ボーっと歩いてると、川の近くに来てた
俺はそこで腰を下ろし
川をボケーッと眺めることにした
燈(魚いる。)
川はのんびり流れてて、
魚が泳いでたり、砂が流れたり
別にどうでもいいような事ばっかり起きてる
燈「......」
蘭「__何してんの?」
燈「!」
川辺でボケーッとしてると
呆れた顔をした美竹が現れ、話しかけて来た
こんな日も練習か......頑張ってるな
燈「ボーっとしてた。」
蘭「うん、だよね。それにしか見えなかったし。」
燈「美竹は練習帰りか。」
蘭「そうだよ。今日は朝から集まって練習だった。」
美竹はそう言いながら俺の横に座ってきた
なんで座るかはよく分からないが
別に気にする事もないしスルーした
蘭「佐渡は最近どう?」
燈「最近?」
蘭「なんか調子とか、何かあったかとか。」
燈「ふむ......」
最近か
ありすぎて何を話せばいいか分からんな
燈「色々、変わった。」
蘭「?」
俺は静かな声でそう言った
特に何かを考えたわけじゃないけど
何となくこれが浮かんできた
燈「俺も俺の周りも変わった。」
蘭「それは、いい意味で?」
燈「......さぁな。」
蘭「......」
”蘭”
佐渡がつらそうな顔をしてる
湊さんから聞いた
家族の猫が殺されて、拷問を受けたって
蘭(佐渡......)
初めて会った日より痩せた体
さらに白さを増した髪の毛
雰囲気はどこか静かになってて
もう、あの荒々しい感じは全くしない
蘭(何、この違和感......?)
燈「てか、お前は暇なのか?こんな所にいるが。」
蘭「え?あ、大丈夫。時間あるから。」
燈「そうか。」
佐渡はそれだけ言うとまた川を見た
本当に何を考えてるのか分からない
でも、なんだか悲しそうに見える気がする
燈、蘭「......ん?」
しばらく座ってると、
何かの水滴が鼻に落ちて来た
あたしと佐渡は空を見上げた
燈「これ、降って来るな。」
蘭「いや、もう降ってきてるし!ボーっとしてないで移動するよ!」
燈「あぁ、分かった。」
あたしは佐渡の手を引いて、
近くにある高架下に走って行った
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高架下まで走ってきて、
あたしは一息ついた
蘭「あーもう、ずぶ濡れ......最悪......」
急な大雨で服はずぶ濡れ
もう気持ち悪くて仕方ない
燈「すぐに止みそうだな。」
蘭「え、分かるの?」
燈「何となく、そんな感じがする。」
佐渡は空を見上げながらそう言った
適当なこと言ってる、とは思うんだけど
佐渡って野生っぽい感じあるし説得力がある
燈「おい、美竹。」
蘭「どうしたの?」
燈「下着、透けてるぞ。」
蘭「っ!?///」
燈「......?」
あたしは自分の体を隠した
そうだ、佐渡ってデリカシーとかないんだ
良くも悪くも中身は子供だから
蘭「あ、あんま見ないで......///」
燈「別に気にしない。」
蘭(あたしが気にするんだって!!///)
って、心の中で叫んでも意味はない
佐渡は本当に気にしてないみたいで
一切、態度が変わらない
なんだろ、それはそれでムカつく
蘭(まさか、女として意識されてない......?魅力なしって事......!?)
燈「......」
そう考えると悲しくなってきた
いや、全くないことはない......と思う
蘭(......あれ?)
佐渡の周りにいる女子って皆レベル高くない?
香澄、彩さん、湊さん、こころ、ましろ、レイヤさん
全員美人だし、胸とかあるし......湊さん以外
蘭(ズーン......)
燈(1人で何してんだ?)
もうやだ......
考えれば考えるほどネガティブになる
もう少し可愛気があればとか、
色気があればとか考えちゃう
燈「......おい。」
蘭「え......何......?」
燈「さっきから1人で何してんだ。ころころ表情変えやがって。」
佐渡は呆れたようにそう言ってきた
あんたのこと考えてるんだよ
とか、そんな事は恥ずかしくて言えない
蘭「佐渡ってさ、好きなことかいるの......?」
燈「あ?好き?」
蘭「佐渡の周りって、女子が結構いるじゃん......」
あたしの質問に佐渡は首をかしげてる
珍しく頭を使って考えてるみたい
燈「いない。」
蘭「あ、うん、そうなんだ......」
佐渡はあっさりそう答えた
肩透かしを食らった気分になった
予想通りって言えばそうなんだけど
蘭「じゃあ、女の子に興味ある?」
燈「ない。」
蘭「!?」
燈「男にも興味はない。」
いや、それはなくてよかった
でも、女の子に興味もないんだ
意外でもないのかな
燈「仮に俺が女に興味があって、好きになったとしても、俺は絶対にそれを伝える事はない。」
蘭「!」
燈「だが、今の俺にそんな事はあり得ない。」
佐渡は淡々と言葉を並べる
まるで感情が無くなった機械みたい
蘭「なんで、そう言えるの?」
燈「......折角だし、美竹には教えてやる。」
蘭「教える?」
あたしは首を傾げた
佐渡は何も表情を変えないまま
次の言葉を放った
燈「今の俺にはほとんどの感情がない。」
蘭「え......?」
燈「だから、女にドキドキする事も欲情することもない。」
蘭(え、ど、どういう事?)
いや、違う、分かってたんだ
さっき感じた違和感の正体
そう、感情の起伏がないんだ
だから、静かに感じるし荒々しくもない
蘭「い、いつから......?」
燈「......分からん。でも、もしかしたら、ずっと前から消えてたのかもしれない。」
蘭「ずっと、前......」
ずっと前って、どこまでを表すんだろう
高校に入ってから、それよりもっと前?
もしかして、お母さんを失ったとき......?
燈「それだけだ。」
あたしが色々考えてると
佐渡はゆっくり腰を上げた
そして、あたしに背中を向けた
燈「もう、雨が止む。さっさと帰るぞ。」
蘭「ち、ちょっと待ってよ!」
燈「......?」
あたしはどこかへ行こうとする佐渡に抱き着いた
なんで、こんな事をしたんだろう
自分でも全く分からないけど
こうするべきだって思っちゃった
燈「美竹__」
蘭「これでも、何も感じないの......?」」
燈「......」
蘭「本当に感情を失ってるの......?」
あたしは恐る恐るそう問いかけた
でも、この問いは全く必要がない
だって、密着して分かってるから
佐渡の心音は......変わってない
燈「......悪い。」
蘭「......っ。」
燈「何も感じない。」
佐渡はそう言ってあたしの腕を外し
ゆっくり歩き始めた
燈「......その服、返さなくていい。捨てるなり勝手にしろ。」
蘭「......うん。」
歩いて去って行く佐渡にあたしはそう答える事しか出来なかった
それから、地面にへたり込んで膝をついた
蘭「なんで、なんで、なんで......」
佐渡の何がいけないって言うの?
なんで、あんなに不幸になるの?
あたしはそんな事ばかり考え、
涙を流し続けた......