白と七人の歌姫   作:火の車

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予兆

 ”蘭”

 

 電気を消した、

 

 カーテンの隙間から光が差す部屋

 

 今、あたしはベッドの上にいる

 

蘭「__佐渡......///」

 

 腕の中には佐渡のTシャツ

 

 あいつの匂いが濃く残ってて、

 

 段々と頭がボーっとして、

 

 夢を見てるような気がする

 

蘭「ごめんね佐渡......こんなの捨てられないよ......///」

 

 あたしはTシャツに顔をうずめて

 

 匂いを嗅いでる

 

 見た目の割に優しい匂いがして

 

 なんだか、息が荒くなってきた

 

 多分、かなりだらしない顔してる

 

蘭「はぁ......はぁ......///」

 

 少しの間、その行為を続け

 

 あたしはTシャツから顔を離した

 

 その瞬間、どっと気が重くなった

 

蘭「......何してんだろ、あたし。」

 

 最近、ずっとこんな事をしてる気がする

 

 佐渡を感じたくて、Tシャツを抱いて

 

 終わったら、自分に嫌悪感を感じる

 

蘭(佐渡......)

 

 佐渡の不幸を思うと悲しくなる

 

 お母さんを失って、感情を失って

 

 あんな人生、絶対に耐えられない

 

 生きる事すら辛くなる......

 

蘭「......嫌だ考えたくない。」

 

 もしかしたら、死んじゃうかも

 

 そんな事が頭によぎった

 

 佐渡が死ぬことなんて考えたくない

 

蘭「......好き、だよ。」

 

 あたしそう呟いた

 

 そして、Tシャツをぎゅっと抱きしめた

 

蘭「好き、好きだよ、燈。あたしがずっと一緒にいるから......あたしが何でもしてあげるから。」

 

 あたしはそう言いながら体を起こした

 

 そして、着替えを始めた

 

 何となく、佐渡の所に行かないといけない気がした

 

蘭「すぐに行くからね、燈。」

 

 着替えを終わらせてすぐ、

 

 あたしは部屋を飛び出し

 

 燈の家に行く色々な準備をした

__________________

 

 ”燈”

 

 ......なんか、寒気がするな

 

 今は夏で馬鹿みたいに暑いはずだ

 

 気のせいか?

 

ナキ「にゃー。」

燈「あぁ、飯の時間か。」

 

 時計を見ればもう昼の時間だ

 

 俺は棚からナキ達に飯を出して

 

 3匹の前に器を置いた

 

レナ、ルル「にゃー!」

燈「いい食べっぷりだな。」

 

 ナキ達は凄い勢いで飯を食べてる

 

 体もでかくなって食欲が増した

 

 元気でいい事だ

 

燈「さて、俺は寝るかな__」

 

 ピンポーン

 

 俺が寝ようとした瞬間、

 

 インターフォンが鳴り響いた

 

燈「......誰だ。」

 

 あの7人のうちの誰かか

 

 それとも、一ノ瀬かオリビアか

 

 俺はそんな事を考えながらドアを開けた

 

蘭「__おはよう、燈。」

燈「美竹か。何しに来た?」

蘭「燈、ご飯まだでしょ?」

燈「別に食うつもりなかった。」

 

 その日の気分によるが

 

 飯は一日1から2回くらいだ

 

 朝か昼は食べなかったりする

 

蘭「駄目。作って来たから食べて。」

燈「お前もか。まぁ、貰えるなら貰う。」

蘭「じゃあ、入るね。」

燈「あぁ、いいぞ。」

 

 俺はそう言って、美竹を上げ

 

 家のドアを閉めた

__________________

 

蘭「コンロ借りるね。」

燈「あぁ、勝手に使ってくれ。」

 

 美竹はコンロに鍋を置き、火をつけた

 

 何を作って来たんだろう

 

 別に嫌いなものはないんだが

 

蘭「少し待っててね、すぐに温まるから。」

燈「それはいいんだが、なんで今日来たんだ?」

蘭「え?」

 

 俺がそう尋ねると、

 

 美竹は不思議そうな顔で首を傾げた

 

蘭「燈に会いたかったからだけど、変?」

燈「変だろ。(てか、こいつの呼び方これだったか?)」

 

 こいつ、名字で呼んでなかったか?

 

 よくは覚えてないが

 

燈「バンド仲間とかと遊べばいいだろ。」

蘭「それもいいけど、今は燈が大事だから。」

燈「そうか(?)」

蘭「あ、温まったよ。ちゃんと座ってて。」

燈「あぁ、分かった。」

 

 俺は美竹に言われるまま座った

 

 そして、すぐに飯が運ばれてきた

 

蘭「はい、カレーだよ。」

燈「カレー、か。」

蘭「あっ、嫌いだった......?」

燈「いや、生まれて初めて食べる。」

 

 一ノ瀬がカタログで見てるのを見たが

 

 実際に食べるのは初めてだ

 

 こんな匂いだったんだな

 

燈「いただきます。」

蘭「召し上がれ。」

 

 俺はスプーンでカレーをすくい、

 

 それを口に入れた

 

燈「......!」

 

 美味い

 

 どういえばいいか分からんが美味い

 

 和奏のから揚げと同じくらいうまい

 

蘭「どう?」

燈「美味い。」

蘭「そう。」

 

 美竹は笑みを浮かべながらそう言った

 

 俺は無心でカレーを食べた

 

 ”蘭”

 

 ......燈が、喜んでる

 

 あたしが作った物を食べてる

 

蘭(......ふふっ♪)

 

 その姿はまるで子供

 

 表情は相変わらず変わらないけど

 

 動きが少しだけ慌ただしくて、可愛い

 

燈「そう言えば、何で指に絆創膏が付いてるんだ?」

蘭「あー、ちょっと隠し味入れるのに苦労しちゃって。」

燈「隠し味?」

蘭「そう、とっておきのね。」

燈「??」

 

 燈は不思議そうに首をかしげてる

 

 相当、隠し味の事が気になってるみたい

 

蘭「いいから、食べて。」

燈「分かった。」

 

 隠し味

 

 これは、燈には言えないかな

 

 だって、恥ずかしすぎるんだもん

 

蘭(愛、なんて言ったら、重いよね......///)

 

 そのカレーには燈への愛をたっぷり込めてる

 

 ずっと、好きって思いながら作ってて、

 

 それで失敗して指切っちゃったんだけど

 

 それで、少しだけ血が入っちゃったんだよね

 

蘭(......あれ?)

 

 てことはだよ、

 

 今、佐渡の中にあたしの1部が入ってる?

 

 そうだよね?

 

蘭「~っ!///」

燈(何してんだ?)

 

 そう思うと途端に恥ずかしくなってきた

 

 いや、燈は気にしてないみたいだし

 

 衛生的にも問題ない......はず

 

燈(美味い。)

蘭(お、美味しそうに食べてる......///)

 

 なんだろう、このこみあげてくるもの

 

 胸がドキドキして、嬉しくなってくる

 

 まさか、燈の一部になれて喜んでる?

 

燈「ごちそうさま。」

蘭「!」

燈「美味かった。ありがと。」

蘭「う、うん、お粗末様......///」

 

 私が色々考えてる間に燈は食事終えて

 

 静かに手を合わせてた

 

 綺麗に食べてくれてる

 

 やば、嬉しい......

 

燈「美竹は料理上手いんだな。」

蘭「っ!!」

燈「?」

 

 今、燈が喋った時、変な感じがした

 

 なんだろ、むかついたって言うか

 

蘭「......なんで、美竹なの?」

燈「?」

蘭「あたしは、蘭だよ?」

燈「美竹蘭だろ?知ってるぞ。」

 

 なんで、こんなにむかついてるの?

 

 燈はちゃんと褒めてくれてたのに

 

 なんで、呼び方にムカついてるの?

 

蘭「......香澄と彩さん、ましろ、こころは名前で呼んでるよね?」

燈「あぁ、そうだな(?)」

蘭「じゃあ、なんで、あたしは美竹なの?」

燈「え?」

蘭「ねぇ、なんでなんでなんで??」

 

 ドス黒い感情が渦巻いてる

 

 燈が困っちゃってる

 

 でも、止まらない

 

燈「なんだ、お前も名前で呼ばれたいのか。」

蘭「!」

燈「別にそんな悲しい顔すんなよ。言えば呼ぶ。」

蘭(あ、燈......!///)

 

 なんだか、黒い雲が晴れた気がした

 

 燈ってほんとに優しくてかっこいい

 

 名前で呼んでくれる......!

 

燈「なぁ、蘭。」

蘭「!!///」

 

 ”燈”

 

 名前を呼んだら蘭が固まった

 

 今日のこいつは虚ろな目になったり

 

 なんか顔を赤くしたり、忙しいな

 

燈「こっちの方がいいな。呼びやすい。」

蘭「そ、そう......///」

 

 ピンポーン

 

燈、蘭「?」

 

 俺と蘭が話してるとインターフォンが鳴った

 

 なんか、最近、仕事が増えたな

 

 2か月くらいはそんなにならなかったんだが

 

燈「出て来る。」

蘭「うん。(もう、誰......)」

 

 俺は家のドアを開けて、

 

 外の様子を確認した

 

ましろ「__あ、こ、こんにちは。」

燈「ましろ?」

 

 家の前にいたのはましろだった

 

 なんか紙袋を持っている

 

ましろ「折角のお休みなので、遊びに来ちゃいました。」

燈「そうか。今、美竹がいるが、いいか?」

ましろ「......はい、いいですよ。」

燈「じゃあ、入れ。(なんだ、今の間。)」

 

 俺は多少、疑問を感じつつ

 

 ましろを家に招き入れた

__________________

 

ましろ「__おじゃまします。」

蘭「あ、ましろ。」

 

 ましろは入ってすぐ蘭に頭を下げた

 

 これが所謂、上下関係って奴か

 

 めんどくさそうだな

 

ましろ「来てたんですね、蘭さん。」

蘭「うん。どうせ、ご飯食べてないだろうから。」

ましろ「燈さん、ご飯食べませんもんね。」

蘭「!」

燈(ましろってその呼びかただっけ?)

 

 最近の俺の記憶は曖昧なのか?

 

 どいつがどう呼んでたかよく覚えてない

 

 まぁ、別に何でもいいんだが

 

蘭「......ましろは何しに来たの?」

ましろ「私は遊びに来ました。そのついでにこれを持ってきました。」

燈「それは?」

ましろ「お人形です。」

燈「......?」

蘭「!?」

 

 ましろが紙袋から出したのは人形

 

 なんだが、これがまた衝撃的なやつだ

 

蘭「ま、ましろ、それ......」

ましろ「はい。私の人形ですが?」

蘭(いや、ですがって......)

燈「良く出来てるな。」

蘭(え、そこ......?)

 

 持ってみると割と重量がある

 

 てか、なんか質?がすごいな

 

 人間の髪そっくりだ

 

燈「って、なんか、ましろの髪短くなってないか?」

ましろ「あ、気付きましたか?この間切ったんです。どうですか?」

燈「普通に似合う。」

ましろ「そうですか、えへへ......///」

 

 初めて会った時から結構髪伸びてたし、

 

 夏になったから切ったって感じだろ(多分)

 

ましろ「あ、これは燈さんに貰ってほしいです。」

燈「まぁ、貰えるものは貰っとく。良く出来てるし。」

ましろ「ありがとうございます......♪」

燈(それにしても良く出来てるな。)

 

 ましろの特徴をかなりとらえてる

 

 人形集めの趣味はないが

 

 割と嫌いじゃない

 

ましろ「燈さん燈さん。」

燈「どうした?」

ましろ「それ、私だと思って、大切にしてくださいネ......?///」

燈「うん?分かった?(最後のね、おかしくないか?)

蘭(ま、ましろも......負けない、燈は、あたしのもの......!)

 

 俺達はここからしばらく遊んでたが

 

 なんか、蘭とましろの気配がおかしかった

 

 だが、別に敵意とかじゃないし

 

 気にしなくてもいいか

 

 

 

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