白と七人の歌姫   作:火の車

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指輪

 また1つ何かが消えた

 

 そう感じたのは昼下がりの事だ

 

 段々と俺が俺じゃなくなっていってる

 

 でも、その事に抱く恐怖も消えてる

 

燈「......」

 

 ボーっとしてるうちにもう夜

 

 ナキ達も寝静まった

 

燈「......どこに行ったんだ?俺。」

 

 あと、何が俺に残ってるんだろう

 

 消えすぎて何が残ってるか分からない

 

 あと、どの位持つのかも分からない

 

燈(......おい、落ち着け。まだ出て来るな。)

 

 俺は胸を抑えた

 

 何かがずっと暴れてやがる

 

 そして内側から俺を噛みちぎってきてる

 

香澄『__燈くーん!』

燈「あ?香澄?」

 

 少し考え事をしてると、

 

 ドアの向こうから香澄の声が聞こえて来た

 

 この時間に大声出すなと言いたい

 

燈「なんだ?」

香澄「あ、いた!」

燈「声がデカい。近所迷惑だ。」

 

 俺は溜息を付きながらそう言った

 

 香澄は口元を抑え、

 

 笑いながらこう言ってきた

 

香澄「一緒に星見ようよ!」

燈(こいつ一切わかってないな。)

香澄「今日はよく星が見えるよ!」

燈「......星か。まぁ、別にいいぞ。」

香澄「やった!」

 

 香澄は嬉しそうに笑ってる

 

 何がそんなに嬉しいんだか

 

 と、俺は少しだけ呆れてる

 

燈「こっち来い、香澄。」

香澄「どうしたの?」

燈「星見るなら特等席に案内してやる。」

香澄「え?__きゃ!///」

 

 俺は香澄を抱え、窓の外に顔を出した

 

 そして、足に力を入れ上に飛んだ

__________________

 

 俺達はアパートの屋根に飛び乗った

 

 ここなら空が良く見えるし、特等席だろ

 

香澄「わー!すごい!」

燈「香澄は星に詳しいのか?」

香澄「ううん!全然!」

 

 香澄は自信満々でそう言った

 

 いや、なんでそれで見ようと思ったんだ

 

香澄「でも、知らなくても楽しいよ!」

燈「そう言うもんか。」

香澄「うん!」

 

 俺は空の方に目を向けた

 

 すごい数の星があってよく分からん

 

香澄「あれとあれを繋げたらギターみたい!」

燈「あ?どれだよ。」

香澄「あれとあれ!」

燈(分からん。)

 

 香澄は星を指さしながら、

 

 どんどん新しい星座を作ってる

 

 白ご飯とかフライドポテトとか、

 

 大体が訳の分からん星座だったが

 

 まぁ、理解してる事にしといた

 

燈(......そう言えば。)

 

 そんな中、俺は昔の事を思い出した

 

 あれはサマンサといた奴隷時代

 

燈(2人で星の話もしたな。確か、天国からの窓とか言ってたな。)

 

 2人で見る夜空

 

 そんなのを夢見た時もあった

 

 でも、それは叶う事なく

 

 一瞬で霧のように消えていった

 

燈(でも、今、俺の隣には一緒に星を見る奴がいる。そいつはどうしようもうるさくて__)

香澄「どうしたの?燈君?」

燈「......なんでもない。」

 

 ちょっと見すぎたのか、

 

 香澄は首をかしげながらこっちを見てる

 

 俺は避けるように目をそらした

 

香澄「えー!気になるよー!」

燈「じゃあ、考えればいだろ。」

香澄「え?うーん......」

 

 ムムムと言った表情で香澄は考え込んでる

 

 そんなに気になるもんなのかね

 

 人の考えてる事なんて

 

香澄「あ、分かった!私と仲良くなったなーとかだ!」

燈「はずれ。」

香澄「えー!?」

燈「でも、よく考えたらそうだな。」

 

 最初は微塵も興味がなかった

 

 けど、今は割と喋れる相手になってる

 

 人生何が起きるか分からないもんだな

 

燈「......楽しかったよ。」

香澄「うん?」

燈「お前らと喋るのも、市ヶ谷とか水色に怒鳴られるのも、今までになくて。」

 

 俺はふとそんな事を口走った

 

 そんなに時間は経ってないが

 

 なんか、色々あった気がする

 

香澄「そっかー!じゃあ、これからはもっと楽しいね!」

燈「?」

香澄「だって、これからは文化祭に修学旅行、ライブだっていっぱいするもん!燈君はまだまだ楽しめる!」

燈「......そうか。」

 

 まだまだ、か

 

 言われてみれば、まだ色々あるな

 

 忙しい連中だ

 

燈「なぁ、香澄。」

香澄「どうしたの?」

燈「......」

 

 俺は自分の小指についてる指輪を外した

 

 そして、香澄の手を掴んだ

 

香澄「!?///」

燈「誰に渡そうか迷ったけど、これ、古いけど貰ってくれ。」

香澄「い、いいの?大切な物なんじゃ......///」

燈「だから、貰ってほしいんだ。」

 

 俺はそう言って、

 

 小指に指輪をはめようとした

 

 だが、指が細くてちゃんとはめられない

 

燈(ここにしとくか。)

香澄「燈君っ!?///」

 

 俺は小指を諦めて薬指にはめた

 

 うん、ちょうどはまってる

 

香澄(こ、ここって駄目な指じゃ......///)

燈(......これでいいんだよな、母さん。)

 

 俺は香澄の手を持ったまま目を瞑った

 

 これで、願いは繋がった

 

 母さんがそう言ってたから

 

燈「そろそろ帰れ。もう遅い。」

香澄「う、うん......ありがとう///」

燈「別に、気にするな。」

 

 俺はそう言ってまた香澄を抱え

 

 パートの屋根から飛び降りた

__________________

 

香澄「__じゃあね、燈君!」

燈「あぁ。」

 

 部屋に戻ってすぐ、

 

 香澄は家から出て行った

 

 楽しそうに手を振って走って行って

 

 危なっかしいことこの上ない

 

燈「......おい、隠れてないで出て来いよ。」

オリビア「__バレていましたか。」

 

 俺が押入れに向かってそう言うと、

 

 オリビアがそこからゆっくり出て来た

 

オリビア「随分、ロマンチックな会話をしてらしたので出るに出られませんでした。」

燈「盗み聞きとは、いい趣味してやがるな。」

 

 俺はオリビアを睨みながらそう言った

 

 相変わらず、表情に変化がない

 

 まるで、感情がないみたいだ

 

オリビア「燈さんは彼女が好きなのですか?」

燈「......それはない。」

オリビア「あら、左手薬指に指輪をはめておいて。」

燈「あの指輪に込められてるのは、そいつが幸せであってほしいと言う願いだけだ。」

オリビア「!」

燈「俺の母さんはずっと、そう言ってた。」

 

 俺は何もない自分の小指を見た

 

 なんか、寂しく感じるな

 

 何年もつけ続けてたものが無くなったからか

 

オリビア「なら、良かったのですか?そんな大事なものを渡しても。」

燈「もう、俺には必要ない物だからな。」

オリビア「えぇ、分かっていますよ。」

燈「!」

オリビア「分かってて、あえて尋ねました。」

 

 オリビアは淡々とそう言った

 

 待てよ、こいつのこの感じ、おかしい

 

 異常な気配にこの無表情......

 

燈「......まさか、お前も。」

オリビア「ご明察です、燈さん。私はあなたと同じ。」

燈「......」

 

 オリビアはそう言いながら俺に近づき

 

 頬に手を添えて来た

 

 妙に冷えてて、背中がぞわっとする

 

オリビア「私達は心に化け物を飼っている、超越者です。」

燈「......超越者?」

オリビア「あなたにも時間は残されていません。このままではあなたの感情は食いつくされます。」

燈「俺は、どうなる。」

オリビア「......」

 

 俺がそう尋ねると、

 

 オリビアは少し顔を濁らせた

 

 珍しく顔が変わった

 

オリビア「私は救われて今の状態でいられます。だから、一概には言えません。」

燈「......」

オリビア「ですが、恐らく......自我を失い、他のナニかになるでしょう。」

燈「......そうか。」

 

 別に驚きはしない

 

 なんとなく、そんな予感はしてた

 

 そして、どうなるかも大体わかる

 

オリビア「怖くはないですか?自分が自分じゃなくなるのは?」

燈「別に怖くない。自分じゃないのには慣れてる。」

オリビア(......奴隷時代のことでしょう。)

燈「お前は一ノ瀬の所にいるんだったな。」

オリビア「えぇ。」

 

 オリビアはゆっくり頷いた

 

 それを見て、俺は少し口角を上げ

 

 こういった

 

燈「なら、帰ったら一ノ瀬に言っといてくれ。」

オリビア「なんでしょうか。」

燈「4月の事、思い出したから殴りに行くって。」

オリビア「!」

 

 オリビアは驚いた顔をした

 

 意外と表情変わるんだな

 

 無表情はただの演技だな

 

 なんで、してるかは分からんが

 

オリビア「ふふっ、そんな事言えるなら、まだ大丈夫ですね。分かりました、伝えておきます。」

燈「あぁ、頼む。」

オリビア「それでは、失礼しますね。」

 

 オリビアはそう言うと、

 

 窓から飛び降りて行って、

 

 その後すぐに気配が消えた

 

燈「......食われねぇぞ、馬鹿野郎。」

 

 俺は自分の胸を押さえながらそう言った

 

 抵抗できるだけ抵抗する

 

 その先に何があったとしても

 

 

 

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