白と七人の歌姫   作:火の車

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過去語り

 ”香澄”

 

香澄「__あれ?」

 

 早朝、香澄は家のポストを見た

 

 するとそこには何らかの手紙が入れられていた

 

 そこには『戸山香澄様へ』と書かれており

 

 香澄は不思議に思いつつそれを手に取った

 

香澄「__!」

 

 中を見た瞬間、香澄の表情が変わった

 

 そして、真剣な顔で手紙を読み始めた

 

『佐渡燈には時間がない。

今、彼に近しい人物の1人であるあなたと話がしたい。

もし、応じてくれるなら下に書いてある場所に来てください』

香澄「時間がない......って、まさか!!」

 

 香澄は自分の指に光る指輪を見た

 

 これを嵌める時の燈は優しい笑顔だった

 

 香澄は恐ろしい事が頭を過った

 

香澄(まさか、燈君は......)

 

 手に持ってる手紙にシワが寄った

 

 そして、嫌な汗が流れて来た

 

香澄「い、行かないと!」

 

 香澄は家に入ってパジャマから着替え

 

 指定されていた場所に急いで向かった

__________________

 

 香澄は必死に走り、

 

 港の近くにある廃工場に来た

 

 人気が無く、不気味な雰囲気を醸し出してる

 

蘭「__香澄!!」

香澄「ら、蘭ちゃん!」

蘭「燈に時間がないってどういう事!?なんで!?」

香澄「わ、分からないよ!私だって!」

 

 蘭は血の気の引いた顔で捲し立てた

 

 表情から全く余裕を感じられない

 

ましろ「か、香澄さん!」

彩「手紙見て来たの!?」

こころ「燈はどうなるの!?」

友希那「そもそも、ここに呼んだのは誰!?」

 

 4人も息を切らしながら走ってきた

 

 ましろと友希那は目が血走っている

 

レイ「落ち着いてください。」

香澄「レイさん!」

レイ「どうやら、案内はしてくれるみたいです。」

オリビア「__皆様、いらっしゃいませ。」

 

 レイがそう言った瞬間、

 

 廃工場の扉が開き、オリビアが現れた

 

 そして、行儀よくお辞儀をした

 

オリビア「中で慎吾様がお待ちです。お入りください。」

香澄「は、はい。」

 

 ボーカル組はオリビアの後ろについて

 

 廃工場の中に入って行った

__________________

 

 廃工場の中は広い空間で、

 

 天井には無数の鉄骨が吊るされている

 

 そして、その真ん中には長身の男が立っている

 

慎吾「__やぁ、燈のお友達たち。」

彩「一ノ瀬さん......」

慎吾「本当なら綺麗な場所で話をしたかったんだけど、人が来ない場所がここしかなかったんだ。」

 

 慎吾は申し訳なさそうな声でそう言った

 

 それを意に返さず、余裕のない蘭が口を開いた

 

蘭「燈に時間がないってどういう事ですか!?」

慎吾「そのままの意味さ。だが、死ぬわけではない。」

レイ「感情が無くなる、と?」

慎吾「......あぁ。」

 

 慎吾は険しい顔で頷いた

 

 ボーカル組は同時に固唾を飲んだ

 

慎吾「燈自身、それを分かってる。その兆候は昨晩見えたはずだ。」

香澄「っ!!」

慎吾「だから、今だからこそ知ってほしい。燈の事を。」

ボーカル組「!」

 

 慎吾はそう言って少し息を整えた

 

 そして、ゆっくり口を開いた

 

慎吾「......僕の父親と燈の父親は同一人物だ。」

ましろ「え......?」

慎吾「だが、母親が違う。」

 

 慎吾は苦い顔でそう言った

 

 そして、続けて話した

 

慎吾「あの男はイギリス人の裕福な家庭の婿養子として入籍した。母親はイギリス人女性で価値観が合わない日があった。その時に出会ったのが燈の母親だ。彼女は当時、大学1年生だった。」

レイ「大学、1年生......!?」

慎吾「価値観が合わなく、あの男が憤りを感じていた時期、燈の母親は既婚者と知らないまま一晩限りの関係を持ってしまった。燈はその結果、生まれた。」

友希那「......それじゃあ、佐渡君が妾の子という事になるわ。」

慎吾「......僕も認めたくないが、その通りだ。」

友希那「......っ!」

 

 友希那は目を見開いた

 

 他のボーカル組も険しい表情を浮かべている

 

慎吾「あの男は焦った。このことがバレれば一族内での自分の立場が危うくなる。そこでまず、燈たちを遠方の地へ隠した。」

蘭「それでも、燈は狙われてた。という事は、つまり......」

慎吾「あぁ、あの男の不貞行為が明るみに出始めた。その時、奴は恐ろしい行動に移った。美竹ちゃんは、知ってるんじゃないかな。」

蘭「......母親を殺した。」

 

 蘭は地を這うような声でそう言った

 

 慎吾はそれを聞いて小さく頷いた

 

慎吾「その時、燈はおつかいに出かけていて家にいなかった。だから、命は助かった。でも、燈は見てしまったんだ......自分の母親の死体を。だが、苦しみはこれで終らなかった......オリビア。」

オリビア「はい。皆様、これをご覧ください。」

こころ「これは、女の子の写真かしら?」

 

 オリビアが渡したのは、

 

 小さな女の子に見える子供の写真だ

 

 7人とも、首をかしげている

 

慎吾「......それは、燈だよ。」

彩「えぇ!?」

ましろ「か、髪が黒......?」

慎吾「母親を失ってすぐ、見た目が美しい燈は奴隷としてオークションにかけられた。そこで出会ったのが、メイソンだ。」

友希那「っ!!!」

慎吾「燈は小学校に通うはずの6年間を女奴隷としていき、メイソンに屈辱と恥辱を与えられ続けた......その苦しみは計り知れない。」

レイ「佐渡君が、女奴隷......?そんな、まさか......」

 

 ボーカル組は困惑している

 

 今までの燈のイメージとかけ離れた過去

 

 しかも、昔は女として生きていた

 

 その事実だけで頭のキャパをオーバーした

 

ましろ「そんな......」

香澄「ま、ましろちゃん?」

ましろ(そんなそんなそんなそんなそんなそんな!!)

香澄「どうしたの!?」

 

 ましろは突然頭を抱え

 

 その場に蹲ってしまった

 

 香澄はましろの横にしゃがみ、

 

 心配そうに顔を覗き込んでる

 

慎吾「......君たちには言っておきたい。」

 

 慎吾はその様子を無視し話を続けた

 

 その表情は少し焦ってるように見える

 

慎吾「燈とは、僕が名付けた名前だと言う事を。」

蘭「一ノ瀬さんが、名付けた......?」

慎吾「彼の本当の名前は__」

 

 ドン!!!

 

 慎吾が次の言葉を口にしようとした瞬間、

 

 廃工場のドアが何者かからの攻撃を受けた

 

 ドアは一撃で大きくへこみ、

 

 ゆっくり、地面に倒れて行った

 

燈「__おい、待ち合わせに他の奴を呼ぶな。」

彩「さ、佐渡君!?」

慎吾「......もう、来てしまったか。」

 

 慎吾はそう呟き、

 

 ゆっくり目を閉じた

 

 ”慎吾”

 

 ......僕は退屈だった

 

 どの世界に行っても、ライバルが現れず

 

 意識の低い人間ばかり

 

 退屈を通り越し、憤りを感じたこともあった

 

慎吾(......)

 

 そんな中、7度目の防衛戦を終え、

 

 僕は初めて、父親の不貞行為を知り

 

 とあるパーティーに参加した時

 

 初めて、彼の姿を見た

 

燈「......何を考えてやがる。」

慎吾「少し、昔の事をね。」

 

 その時、僕は驚愕した

 

 やせ細った、少女のような男の子

 

 だが、確かに感じた

 

 他の追随を許さない眩いばかりの才能

 

 そして確信した

 

 この子に僕は人生をかけるべきなんだと

 

燈「相変わらず、胡散臭いやつだな。」

慎吾「あはは、手厳しいな。」

 

 僕はそう言いながら、

 

 後ろに隠した手でオリビアに合図を出した

 

慎吾(多分、戸山咲ちゃんも来る。そっちの相手を頼む。)

オリビア「かしこまりました。」

燈「!」

 

 オリビアは一瞬で燈の横を通り過ぎ

 

 壊されたドアから出て行った

 

 燈はあえて見逃したように見えるね

 

燈「どうせ、咲の足止めだろ。だが、そう簡単に行くか?」

慎吾「さぁ、どちらも実力者だから。」

燈「にしては、随分余裕だな。」

 

 流石にオリビアが負けるとは考えずらい

 

 しかも、今回は勝つ必要もない

 

 戦況的に見れば、余裕はあるかな

 

燈「まぁ、いいや。今日は4月の借りを返しに来ただけだし。」

慎吾「そうだったね。でも、そう簡単にはいかないよ?」

燈「自信があるみたいだな。」

慎吾「あはは、無いよそんなの。」

 

 オリビアも同種の強さだけど

 

 彼がどんなものかは分からない

 

 でも、間違いなく強い

 

慎吾「そう言えば、あの指輪、あげたんだね。」

燈「あぁ。もう、俺が持つべきものじゃない。」

慎吾「......そっか。」

燈「時間がない。始めるぞ。」

 

 彼はそう言って、

 

 独特なノーガードの構えになった

 

 これが、今の彼の姿なのか

 

慎吾(出来る事なら。)

燈「行くぞ。」

慎吾(君の苦しみも悲しみも恨みも。全て僕にぶつけて、殺してくれ。)

 

 僕はゆっくりファイティングポーズを取り

 

 燈の待つ領域へ赴いて行った

 

 

 

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