とある病院の一室
そこで眠る白髪の少年を見守る、
10人の影があった
慎吾「__完全に誤算だった......!」
慎吾が怒りを含んだ声でそう言った
それを見て、オリビアはゆっくり口を開いた
オリビア「......超越者の天才とは、天に嫌われる才能です。絶大な力の代償とも言うべきでしょうか、領域に至った者は決まって死の危険に見舞われます。」
慎吾「あぁ、知ってた。知っていて、気を抜いてしまった......」
オリビア「傷自体は彼なら即座に治癒します。ですが、あまりに無理をし過ぎました。」
咲「......私達3人と戦って、大量に血をながした。普通ならもう死んでもおかしくない。」
燈の出血は致死量に達しつつある
今も体中から垂れ流してる状態で、
最もひどいのは鉄鋼骨に貫かれた腹だ
そこだけは未だ塞がり切っていない
咲「それに、問題もある......」
ボーカル組「......」
咲はボーカル6人の方に目を向けた
全員が暗い顔をしていて、
目には生気がない
彩「......ごめんなさい......」
彩は小さな声でそう言った
それを聞いて、蘭は立ち上がった
蘭「......謝ったって、仕方ないですよ。」
彩「っ!」
蘭「謝ったって、燈は帰ってこないんですよ......!
レイ「美竹さん!」
蘭は彩の胸倉を掴みあげた
レイは慌てて、2人の間に割って入り
蘭と彩の距離を離した
ましろ(嘘だ嘘だ嘘だ......佐渡さんは死なない死なない死なない死なない死なない)
オリビア(不幸中の幸いか、彼の再生機能なら命の危険はほぼないでしょう。ただ、体力を使いすぎました。起きられるか。)
香澄「......」
病室内は重苦しい空気が漂っている
なにも知らない人間が入って来れば、
精神に何らかの異常をきたすほどの雰囲気だ
咲「......香澄?」
香澄「え?ど、どうしたの?」
咲「そろそろ、面会時間が終わる。今日は帰ろう。」
香澄「あ、うん......」
慎吾「皆も今日はすまなかった。燈はどんなことをしてても治すよ。」
蘭「......はい。」
慎吾がそう言った後、
ぞろぞろと全員、病室から出て行った
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レイ「__あっ。」
病室を出てすぐ、
レイは小さく声を上げた
オリビア「どうかしましたか?」
レイ「すみません、忘れ物しました。」
オリビア「なら、取りに行かれてください。慎吾様には私から言っておきます。」
レイ「ありがとうございます。」
レイはそう言って
小走りで病室に戻った
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”レイ”
病室に戻ってきた
佐渡君は相変わらず寝てる
でも、分かってる
佐渡君はこのくらいじゃ死なないことは
レイ「......成長したね。」
私は佐渡君の頭を撫でた
彼への第一印象は子供っぽい
それと、小さな犬だった
なんだか妙に純粋さがあって
感情が分かりやすかった
レイ(いい意味でも悪い意味でも自分勝手だったのに、今は人を助けるようになったね。偉いよ。)
子供から少し大人へ
この成長を見守る親ってこんな気分なのかな
心配になるけど、嬉しくて
大きくなった姿を見ると感動する
レイ「今は休んでればいいよ。」
私はそう言いながら、
ベッドの横の台にチケット置いた
夏休み終盤にするライブの
レイ「どうせすぐ起きそうだし、元気になったらおいで。」
私は意識のない佐渡君に手を振り、
静かに病室を出て行った
?(......)
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”彩”
佐渡君が大きな傷を負った
私があそこで転ばなかったら、
佐渡君はどこも怪我をしないで
今頃、皆と一緒に......
彩(ごめんなさいごめんなさいごめんなさい)
どこからか、
『お前が死ね』って聞こえてくる
彩(転んでごめんなさいノロマでごめんなさい存在してごめんなさい......)
佐渡君がいなくなるのが怖い
そうなったら、どうにかなっちゃう
怖い怖い怖い怖い怖い
彩「ごめんなさいごめんなさい、佐渡君、ごめんなさい!!!」
私はのどがかれるのを気にしないで
部屋で一人そう叫び続けた
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”病室”
暗くなった病室
窓からは月明かりが差し込み、
機械の音だけが響き渡っている
香澄「__燈君......?」
その中でベッドの上に2つの影があった
1つは燈、もう1つは香澄
香澄は眠っている燈の上に跨り
虚ろな目で顔を覗き込んでる
香澄「起きて?ねぇ、起きてよ?」
燈「......」
香澄「起きて起きて起きて起きて??」
香澄はブツブツとそう喋っている
もちろん、燈は反応せず
香澄は段々と涙目になって行った
香澄「燈君、私に指輪くれたよね?ずっとつけてるよ?ほら、綺麗だよ?」
香澄は燈の顔の前に指輪を出した
月に照らされ、青白い光を放っている
香澄「私考えたんだ、指輪貰ったから燈君に何かしたいって。だから、今、するね?」
そう言って取り出したのは、小さいナイフだ
濡れたように光る刃は切れ味のよさを予感させる
香澄はそれを自分の口の中に入れた
香澄「~っ!!!(い、痛い......!!!)」
香澄は悶絶した
自分の口内を切ったのだ
口からは赤い血が止めどなく溢れ
少しだけ外に垂れて来た
香澄「燈君......///」
燈「......っ。」
香澄「キス、するね?///」
香澄はそう言って、
血で濡れた唇を燈の唇と合わせた
香澄「んっ......ちゅ......///」
口内から溢れる血が燈に入って行く
香澄は舌と舌を絡め、
血と唾液の音が病室内に響く
10秒ほどして、香澄は唇離した
香澄「......私が嬉しくなっちゃった///これじゃ、ダメだね......///」
燈「......んっ。」
香澄「燈君!?」
”燈”
なんだ、ここはどこだ
なんかすごい白が多いし
なんか、体中に針刺さってるし
なんか口の中が血の味するし
香澄「燈君!?」
燈「あ......?香澄......?」
香澄「怪我大丈夫!?何か気持ち悪いとか無い!?」
燈「大丈夫......って、抱き着くな。」
香澄は俺に抱き着いてきた
強すぎて体ぶっ潰されそうだけど
まぁ、別にいいや
香澄「よかった、よかった......!」
燈「俺、勝手に怪我治るし。一発で殺されない限りは死なねぇよ。」
香澄「......」
香澄が無言のまま抱きつく力を強くしてる
何してんだ、こいつ
てか、マジで何の血の味だこれ
燈「離れろ。」
香澄「嫌。」
燈「なんでだよ!?」
香澄(燈君だ燈君だ燈君だ燈君だ!)
燈「......?」
香澄からも蘭とかと同じ感じがするな
妙に気配が歪んでると言うか、
ドロドロしてると言うか
香澄(好き好き好き好き好き♡)
燈(うーん、なんなんだこれ?)
香澄(絶対に離さない絶対に離さない絶対に離さない......!!!)
燈「てか、彩はどうしてる?」
香澄「え......?」
燈「?」
俺がそう尋ねると、
香澄の温度が一気に下がった気がした
なんだなんだ?
香澄「なんで、彩先輩なの......?ねぇ、なんでなんでなんで??」
燈「いや、なんか泣いたりしてないかなって。彩ってそう言うとこあるし。」
香澄「そっかぁ......私といるのに、彩先輩を......」
燈「?」
なんか、ブツブツなんか言ってる
歪んだ気配が強くなったし
なんか、怒ってるっぽいな
燈「なぁ、香澄。」
香澄「なに......?」
燈「改めて?思うんだけどさ。」
香澄「うん......?」
燈「お前って、可愛かったんだな。」
香澄「え......っ?///」
燈(?)
なんか、香澄の気配が緩んだ
なんなんだ?
香澄「え、え?ど、どういう事......?///」
燈「いや、普通に可愛いなって。何となくだけど。」
香澄「あ、あぁ......///(う、嬉しい......っ///)
燈「お前、可愛いな。」
香澄「~!///」
燈「!?」
俺が喋ってると、
香澄が突然、倒れた
俺は困惑しつつ香澄の顔を見た
燈(あ、ねてる。)
香澄は幸せそうな顔で寝てる
すごい急だな
眠かったのか?(※違います)
燈(まぁ、いいや。寝かしとこ。)
俺は香澄をベッドに寝かせ、
取り合えず部屋の外に出た
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”彩”
あれから何時間経ったんだろ
夜なのに眠れないし、
ずっと、何かの声が聞こえてくる
彩(__もう、嫌だ......)
そう考えてると、
横に置いてある携帯が鳴った
知らない番号からの電話
彩「誰、だろう......?」
私は少し怖かったけど、
その電話に出ることにした
彩「も、もしもし......?」
燈『__おい、彩。』
彩「え......?」
私は自分の耳を疑った
だって、これ、佐渡君の......
いや、でも......
彩「さ、佐渡君......?」
燈『俺以外の声に聞こえるか?まぁ、いいや。』
佐渡君は呆れたような声でそう言った
私はそれを聞いて涙があふれて来た
夢じゃない、佐渡君は生きてたから
彩「な、なんで、佐渡君が?」
燈『さっき起きた。それで、お前のことが気になったんだ。』
彩「!///」
燈『お前、俺がケガしたのを自分の責任とか思うんじゃねぇぞ?』
彩「っ!!」
佐渡君は怒ったような声でそう言った
私は図星を突かれ、少し背中が跳ねた
燈『あれは俺が勝手にしたことだし、もう怪我治ったし。何も気にすることなんて無い。』
彩「そ、そうなの......!?」
かなりひどい怪我だったのに
もう治ってるの!?
そう言えば、咲ちゃんの怪我もすぐ治ってたし
不思議ではないのかな(?)
燈『明日会った時。』
彩「え?(明日?)」
燈『泣いた後とかあったらすごい怒るからな!絶対に笑ってきやがれ!お前が可愛くないと落ち着かん!』
彩「え、あの、佐渡く__切れちゃった......?」
佐渡君は言いたいことを言ったのか、
すぐに電話を切った
なんだか、色んなこと言われたけど
『お前が可愛くないと落ち着かん!』
彩「えへへ......///」
久しぶりに可愛いって言ってくれた
それに、私を気にしてくれた
本当に佐渡君は優しい
彩(好き、佐渡君、だーい好き♡)
そうだ、折角、佐渡君が起きたんだし
一番かわいい私を見せてあげたい
佐渡君、どんな服が好きかな?
どんな髪型が好きかな?
どんな匂いが好きかな?
彩(私、佐渡君が言えば、なんだってするよ......佐渡君がなってほしい私になる......!///)
私は佐渡君のものになる
そう心にから誓った
それからはさっきまでの怖さも無くなって
すごくゆっくり眠ることが出来た