血界戦線〜GlaciesEdge〜   作:蒼穹の命

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氷血刃と不可視の人狼

 あの後、一緒にご飯を食べた後、チェインがシャワーを軽く浴びて汗を洗い流している間に食器洗いを済ませ、寝巻きに着替えて寝室へと向かった。一方シャワーから上がったチェインは既に寝室のベットの上で寝っ転がって夕夜を待っていた。

 寝室は明かりがついていないので薄暗くてよく見えないが、普段の仕事場に舞い込んでくる世界を揺るがすトラブル解決の為、夜の町中を駆け巡る事も多々あったので、多少は夜目が利くようになっていたのと、窓から漏れている街の夜景と月の二つの光で僅かながらに明るかった。

 そんな人工と自然がミックスした光に照らされている中にいたチェインは黒いネグリジェを着ていた。見たところだいぶ丈が長そうであるが、長身の彼女とはベストマッチな組み合わせであったため、仰向けになると、ネグリジェがぴったりと美しい肌に吸い付いて身体のラインがハッキリと見えてしまっていた。しかも下着をつけていないので意識してしまうと色々見えそうで、先程のYシャツ1枚とはまた違った色気に魅せられてしまった夕夜の中にある収まりかけていた本能がまた唸りを上げ始めてしまい、再び理性が危うくなっていた。

 そんな彼の中の本能と理性の葛藤にはチェインは気づかずに上半身だけ身体を起こしながら、夕夜をベッドに来るよう手招きしながら呼んでくる。

 

 

「ほら、早く一緒に寝よ?」

 

「あ、うん……」

 

「なーに顔赤くしてるのさ。別に一緒に寝るのはこれが初めてって訳じゃないんだから」

 

「それでも慣れないっての! しかもそんな格好してさ!!」 

 

「あれーもしかして恥ずかしいの?」

 

 

 ニヤニヤと笑いながらからかってくる彼女にカチンと来た夕夜はお返しとばかりに反撃する。

 

 

「そっちこそ人の事言えるのかー? さっき抱きしめた時に顔がトマトみたいに真っ赤になって恥ずかしがってたのは誰かなー?」

 

「なっ!? そ、それはそっちが何も言わずに急に抱きしめてきたからでしょ!? あんなのいきなりやられたら恥ずかしくなるに決まってるじゃん!!」

 

「今の俺もそれと同じだっての。そんな恰好で一緒にベッドで寝よって誘われたら恥ずかしくなるに決まってるだろ? それに……」

 

「それに、なに……? ってキャア!?」

 

 急に黙り込んだ夕夜は、不思議がって自分に何を言おうとしていたのか聞いてくるチェインに向かって走り出しそのまま勢いで彼女の両肩をつかんでベッドに押し倒した。

 

 

「なっ、なななななにを!?」

 

「ベッドに押し倒した」

 

「そんなのは見れば分かってるって! 私が聞きたいのはなんで押し倒したのかってこと!!」

 

 さっきから何度やっているんだと言いたくなるくらいまた赤面しながら叫ぶように聞いてくる彼女に顔を近づけて、耳元で囁いた。

 

「さっきからお前が俺のこと誘ってくるからだろうが……俺にだって欲求あるんだ……洗面所の時も抑えきれなかったらあそこでお前の事確実に襲ってたぞ……例えばこんな風に」

 

「え、ちょ、なにをすつもりひゃんッ!?」

 

 

 ほぼゼロ距離まで近づかれてからの耳元で囁かれたせいなのか、興奮して息が少し荒くなってきてる彼女を見て更に情欲が湧いてまった夕夜は、遂にチェインの身体をまさぐりはじめた。

 夕夜の手に触られて狼狽た声を出しかけたチェインは、何とか口を閉じて年下の彼氏の方に視線を向けると、そこには目の前の食事に涎を垂らしている獣のごとく目がぎらつかせている夕夜が映った。

 それを見たチェインは、最近お互い忙しくてご無沙汰だったから仕方ないし、自分も夕夜とそういうことしたくないと言ったら嘘になるので、このままいくところまで行っても構わないと彼に伝えようとしたその時、肢体をいやらしく触っていた手の動きが急に止まり、そのまま夕夜は体を起こしてチェインから離れた。

 さっきまで顔を見せていた夕夜の中にある男の本能が嘘のように静まり、今は怒りと罪悪感が混ざったかのような表情を浮かべていた。

 

 

「ごめん、断りもせずにお前の身体触っちゃって……今日は別々に寝よ? そっちも飲みに行く前は泊まり込みの諜報活動の任務してたんだし疲れてるでしょ? だからまた落ち着いた時にってうわっ!?」

 

 

 本能に負けて、疲れている筈の彼女に手を出して無理矢理情事を仕掛けかけようとしていた自分に憤り、罪悪感が生まれた夕夜は、押し倒してしまった彼女に謝罪して今夜は別々の場所で寝ようと提案したその時、急に彼女が上半身だけ身体を起こして夕夜の腕を掴んだ。

 急なことで一瞬思考が止まった夕夜はそのまま勢いよくひっぱられてしまい、お互いの顔の距離はどんどん縮まっていき、そしてゼロ距離となって互いの唇が重ねられた。恋人からの突然の接吻に夕夜は困惑し一旦離れようとしたが、掴んでいる腕の力が強まっていた為に離れることは出来ず、困惑は唇の柔らかい感触によってかき消された。

 荒々しく押し付けてきた唇は何度も短いキスをし、されるたびに夕夜から酸素と思考が奪われ、次第にキスに抗おうとする力と気力がなくなり口元が緩んできたところをすかさず彼女の舌が彼の口の中を侵略し、口の中を這いまわしてゆく。頭の芯がじんと痺れ、彼女にされるがまま浅く深いキスが続いてゆく。約1、2分程たって漸く、逃げられないために掴んでいた手と重ねられていた唇が離れた。

 キスから解放された夕夜は、奪われた分の酸素を肺に取り入れようと何度も深呼吸をするが、そうしている間に今度は頭部を胸元に抱き寄せられてしまい、彼女の大きな胸部に顔をうずめる格好になってしまった。

 夕夜は慌てて胸から顔を上げようとするが、チェインに頭を更にギュッと抱きしめられてしまい、深く彼女の胸の谷間へ顔が埋まり、左右からくる双丘の柔らかさと鼻孔に流れ込んでくる甘い香りによって思考が麻痺していき、意識はも覚束なくなっていた。

 そんな夕夜の頭を胸元で抱きしめていたチェインは、赤子をあやすかのように愛しい彼氏の頭を優しく撫でながら囁いた。

 

 

「ここまで手を出して置いて生殺し? それこそ、なしでしょ。でも、貴方のそうゆう気遣いと優しさは好きだし嬉しかったよ、ありがと。だから、今夜はもう無理して抑えなくていいんだよ夕夜……私のこと、あなたの好きにして……いいよ……」

 

 

 彼女の甘美な誘いの言葉を聞き、おぼろげな意識の中で言葉の意味を理解し瞬間、夕夜の理性はじけ飛んだ。

 おぼろげだった意識は覚醒し、怒りと後悔の念によって消えかけていた情欲が蘇った。夕夜は再びチェインを押し倒し、息を整えたのちに、復活した欲望に従い、本能の獣を躊躇いなく解き放った。そして──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後は己の獣性を爆発させ、容赦なく年上で愛しい彼女の身体を貪り、チェインはそれを全て受け入れた。夜が明けるまでお互いほとんど眠らないまま。

 朝になった時には疲弊しながらも抱きしめながら互いの多幸感を感じながら暫し眠りについた。

 次に目を覚ました時は時刻は午前11時過ぎ。既に昼近くの時間になっていた。

 

 

「……もうこんな時間か。まああれだけやっちゃったらこんな時間になるよなぁ……お腹すいたな……」

 

 

 ほぼ休まずに飛ばしたのと、数時間前に彼女と一緒に食べた夜食はそんなに量があった訳ではないので、腹の虫が盛大に唸っていた。

 熟睡している彼女の頬を優しく撫でてからベッドから起き上がり、部屋の設置されている棚から衣服を適当に見繕って着替え、そのまま部屋から出ていく。

 洗面所で顔洗いと歯磨きを終わらせた後はキッチンへと向かい、食事の準備をする。

 もうお昼時なのと朝ごはんは済ましていないの事を考えると、昼食にだす量は多めでいいかなと考えていると、廊下から足音が聞こえてきた。

 

「おはよう夕夜……」

 

 深夜で激しくしてしまい腰が痛いせいかふらふらとした足取りでこちらに向かって歩き、そのまま覆い被さるかのように倒れながら夕夜の背中を抱きしめる。

 

 

「うん、おはようチェイン。今ご飯作るから座って待ってて」

 

「……わかった」

 

 

 名残惜しそうにしながらチェインは夕夜から離れてゆっくりとリビングへ向かっていった。リビングに向かったのを確認した夕夜は彼女を長く待たせないように手早く食事の準備に取り掛かった。

 

 メニューはチャーハン、中華スープ、サラダの三品。チャーハンとサラダの二品は前から再現したかったものなので、うまく作れた夕夜は鼻歌まじりで彼女が待っている食事をお盆に載せてリビングへと持っていく。お腹がすいているのか、もしくはまだ疲れが残っているのは定かではないが元気がなさそうな雰囲気でチェインはテーブルに突っ伏していた。

 こちらに気が付いたのか、チェインは顔を上げて不機嫌な表情をしていた。

 

「遅い」

 

「ごめん、ごめん。だけどご飯中々いい感じにできたからそれで許してよ」

 

 そう謝りながら夕夜は、お昼ご飯を彼女の前へと差し出す。

 昼ご飯から漂っている美味しそうな香りが彼女に食欲を刺激したのか、少し機嫌がよくなってるのが見えたて、内心ちょっと嬉しくなった夕夜は彼女と対面になるように座った。

 

「「いただきます」」

 

 そうして一緒に食べ始める。美味しそうに口元に作った料理を運んでいる彼女を見られるのを幸せだなと感じながら自分もどんどん食べていく。

 

 

「ねえ、この料理、前に一緒に見た日本の映画に出た奴と似てない?」

 

 チャーハンの真ん中に落としてある卵の黄身を潰し、豆苗とポテチが混ざったご飯と一緒に口に入れながらチェインが聞いてきた。

 

「お、よく気が付いたね。正確に言うと似てるより再現の方が正しいかな。前にネットで映画の公式サイト見てた時に再現レシピと動画見つけてさ、前から作ってみたかったんだよねー」

 

「へー、確かにチャーハンにポテトチップス、サラダにはインスタントラーメンの麺使ってるね」

 

「最初はまさかポテチとインスタント麺をあんな風に使うとは思わなかったし、食べてるとこ見た時は美味しそうに見えたけど、こうして実際に作って食べたら予想以上の出来と美味しさでちょっと感動してる。作ってよかった……」

 

 

 以前とある用事で日本へ里帰りしていた時に皆へのお土産を買うときに見つけた映像作品のディスクを何本か購入し、薄暗くした部屋で肩を寄せ合って二人だけの映画鑑賞会で視聴してたうちの一つに美味しそうな料理を見て、気になってネットにある公式サイトを調べたらまさかレシピと動画があるとは思わなかったからよく覚えていた。とはいえレシピと参考映像があっても料理を作るのが特別上手いわけではないので一回で上手く作れるわけではなく、何度か失敗したが、その積み重ねがあってこそ今こうして恋人と一緒に食べれてるので

 表には出していないが内心ちょっとどころではなく心から感動していた。

 

 

「チャーハンの豆苗とサラダのミニトマトは前に温室で作ってるって言ってた?」

 

「うん、クラウスさんに許可貰って温室の一角でやってる家庭菜園から採ってきた。騒動に巻き込まれて面倒見れなかったり枯れそうになったりとか色々あったけど、ギルベルトさんが手伝ってくれたおかげでうまく育ってたから昨日収穫してきたんだ」

 

 そんな他愛のない話をしながら楽しい食事のひと時を過ごしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼食を終えて一緒に後片付けをしている中、夕夜はチェインに今日の予定を聞いた。

 

 

「そっちは午後に新しくライブラに入る人迎えに行くんだっけ?」

 

「そ、ジョニーランディス。来て早々殺されてなければいいけど」

 

「そういうの物騒なのが普段から起こるからなあ……新参者には容赦ないよなあこの街……」

 

 

 洗い終わった食器を水切りにカゴ入れながら改めて自分たちがいるこの街の異常さを再認識した。

 

 

「この街でライブラ設立した時からいる貴方が今更それを言う? そっちこそこの後どうするの?」

 

「うーん、冷蔵庫の中身が心許ない感じだから買い出ししてからオフィスにいくつもり」

 

「ならまたあとで、だね」

 

「ん、またあとで、だな」

 

 後片付けを終わらせた2人は、手早く身支度を整えて家から出ようとした時。

 

「夕夜、ちょっとこっち来て」

 

「ん、何ってうわ!?」

 

 

 手招きしてくるチェインの元に行った夕夜は目にもとまらぬ速さで彼女に抱きしめられた。

 

 

「ちょっ、ちょっとなにすんのさ!!」

 

「さっきはあんまり抱きしめれなかったからこうして今してるの。ああ、やっぱり抱き心地いい……」

 

「はあ、仕方ないな……」

 

 

 玄関なので誰も見てないからすこしくらい構わないかと思いながら抱きしめ返す。数分たって満足したのかいい顔をしながら夕夜を解放した。

 

 

「ふう、満足した……それじゃあまたね」

 

「ああ、またあとで」

 

 

 そうしてチェインは笑顔で一足先に外へと出て行った。

 

 

「それじゃあさっさと買い出し終わらせてオフィスに行きますかね」

 

 

 続いて夕夜も家を出て、人と異界人と正体不明の者たちが混ざりあった見慣れた景色の中へと入って消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この後、稀代の怪人が起こしたゲームでひと騒動が起き、その混乱の最中でライブラに入った新人を先輩と呼び慕う事になるのは夕夜はまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ハロー、今後も余裕あって続く限りは週一更新目標に執筆する予定の命(ミコト)です。最初は前半チェインとイチャイチャ、後半戦闘ぶち込む予定だったんですが、終始チェインとのイチャイチャしながらの日常回になってしまった……しかも前半ギリギリ感がががが
次回こそ戦闘回と夕夜君の簡単なプロフィールぶち込みます。他のライブラメンバーも出していきますんで、予定通りいけば来週辺りにまたよろしくお願いします~
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