金色のガッシュ!! ~ゼオンの奮闘~   作:友希那

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 初投稿です!
 あらすじにも書いた通り、数話でひとつのトラブル? 事件? を描きたいと思っておりますので、この出来事は数話で完結し、その後また次の出来事……という感じで書いていく予定です!

 よろしくお願いします(*^^*)


学校潜入編
プロローグ ~ゼオンの始動~


 その日はとにかく暇だった。

 

 「なまむぎなまごめ……なま、まま……ごめ……クソっ!」

 

 あまりにも暇なので、この前我が弟ガッシュが言っていた『言葉遊び』――早口言葉とやらを実践してみるも、存外上手くできずに思わず悪態をつく。

 

 ゼオン。本名、ゼオン・ベル。魔界の前王の双子の息子の片割れにして、一部では"雷帝"と謳われ恐れられる程の戦闘能力をもつ人型魔物。

 そして、魔界の現王――ガッシュ・ベルの、双子の兄でもある。

 

 ……と言えばオレのことは大体分かるだろう。説明終わり。

 

 ちなみに、オレは現在王宮の自室にて、ベッドの上に寝転がっていた。

 普段はこんなガキじみた真似など絶対にしないのだが、何せ現在はすることがない。あまりにもない。

 

 特訓は、王を決める戦いが決着してからはし過ぎないようにしている。というかさせられている。現王――ガッシュにそう命じられてしまったのだ。

 

 『ゼオンは特訓の時間が長すぎるのだ! 少しは息抜きしないと身体に毒なのだぞ!』

 

 そして、翌日からオレの戦闘訓練に費やしていい時間は一日六時間までと決められた。とんだ迷惑だが、ガッシュの頼みは断りづらくて敵わない。断ろうとすると、その大きな瞳いっぱいに涙をためて『お願いなのだ~!!』と懇願されてしまう。こうして結局オレはガッシュに逆らえないまま、ズルズルと暇な時間を潰す羽目になってしまったのだった。

 

 「……それにしても暇だな」

 

 窓の外を見ると、綺麗な快晴。ガッシュは今頃、学校で友達とはしゃいでいる頃だろう。

 学校か……。

 

 その単語で思い浮かぶのは、『授業』『休み時間』『魔物』『遊び』といった、断片的な情報ばかり。

 それもそうだ、オレは生まれてこの方学校に行ったことなどないのだから。

 

 物心ついた時には、既に厳しい戦闘訓練が始まっていて。弱音を吐けば訓練が厳しくなり、オレはただ父親――当時の王の望むまま、戦闘訓練に集中するしかなかった。

 結果、王を決める戦いに出場する切符を手にし、実際の戦いでも苦労はしなかったのだが……それでもオレはあの日々を思い出したくないし、戻りたくもない。ガッシュへの怒りと憎しみで心が満たされていたというのも理由の一つに挙げられる。

 

 その時ふと、オレは思った。

 

 学校とは、どんな場所なのだろう?

 王立図書館の図鑑や本から得た情報だけでは、リアルさに欠ける。やはり、気になった事象はこの目で、この体で確かめたいところだ。

 

 だが、それにはいくつか問題がある。どうやって学校に行くか、例え行けたとしてもオレは恐れられるだけでは無いのか……。

 

 「――ん? 誰かいるのか……?」

 「! ……アースか……」

 「おお、ゼオン殿。丁度良かった」

 

 ノックも無しにオレの部屋に入ってきたのは、王であるガッシュに法律のイロハを教えている魔物・アースだった。コイツの一族は法律を何よりも大事にしているらしく、ガッシュもその節では世話になっているのでノックをしなかった無礼には多少目を瞑ってやろう。

 

 「某から少し頼みがあるのですが……」

 「なんだ、お前がオレと話すこと自体珍しいのに、頼み事か?」

 「はい。実はつい最近、王宮にある情報が入ってきまして」

 「情報だと?」

 

 なんの情報だ。王宮に入ってきただけでは飽き足らず、アースからオレに直接伝えられる程大きな問題なのか?

 

 「そうでござる!! って、なんか口調がおかしい……それはともかく、その情報のことですが。――王様が通う民間の学校に、王様の命を狙う不届き者が紛れ込んでいるらしいのです」

 「なんだと……!?」

 

 ガッシュの命を狙う魔物!?

 一瞬驚いたが、直ぐに気を取り直す。

 

 「……フン、上等だな。アース、そいつを直ぐに潰せ。この世から跡形もなく消すんだ」

 「ええと……某もそうしたい所なのですが……」

 

 アースの様子が何かおかしい。青い顔でモジモジして、まるでこれから自分のやらかした過ちを告白するかのような態度だ。

 

 「何か問題でもあるのか?」

 「それが、王様の通う学校は普通の学校なので、王宮の者が忍び込むとなるとかなり学校の雰囲気を壊しますし、一般の魔物の子達が怯えるでしょう。故に、潰すことは不可能――」

 

 「……本気で言っているのか、アース?」

 

 「……ッ!!」

 

 オレの身体から徐々に溢れ出す殺気に、アースはビクリと震えてその場に跪いた。

 

 「申し訳ございませんッ!!」

 「……その程度の理由で、ガッシュに楯突く魔物すら消せないとは……王宮も腐ったもんだな」

 「しかし、このことを前王様に話したところ、条件付きでお許しを頂きました」

 「何!?」

 

 アースの言う『条件』とは――

 

 「ゼオン様が、王宮の一流スタイリストの手を借りて変装し、絶対に自分がゼオン様だとバレないようにするのなら、ガッシュ様の学校に忍び込んで不届き者を探し出し、潰しても良いと……」

 

 無駄な部分が多く、ヤケに長ったらしいそのセリフが意味するのは――つまり、

 

 「オレに、変装してガッシュの学校に忍び込み、その魔物を見つけ出せと……そう言っているんだな?」

 「そうでございまする!!」

 

 お返事は如何に、とアースは恐る恐るオレに上目遣いで呟いた。

 

 「……クク……」

 「……? ゼオン殿、」

 「ハハハハハ!! 願ってもないチャンスだな。いいだろう。その勝負、受けてやる」

 「はぁ……あの、勝負では無いのですが――」

 「細かいことはどうでもいい!! とにかく、その変装のスタイリストとやらを呼べ。今すぐ変装する」

 

 こうして、オレはガッシュの学校に忍び込む権利を得たのだった。

 

                   ☆

 

 ――数十分後、王宮一の実力を誇るスタイリストの手によって、オレは別人へと変化していた。

 

 「出来ましたよゼオン様! とてもよく似合っています! 」

 「……っ」

 

 そう……どこからどう見ても、今のオレは人型魔物の"少女"にしか見えない。

 

 「どういう事だ!! オレは変装がしたいのであって、女装がしたいワケじゃ……っ」

 「ゼオン様、性別によって警戒度はかなり変わってくるんです。"女"という性別は、最早ステータスなんですよ? 女は男よりも比較的身体能力が劣る……たったそれだけで、女は警戒対象から外れるんです」

 「……確かに……」

 

 スタイリストの言うことももっともだ、とオレが思い直そうとした瞬間、「まあゼオン様は肌が白いから、こういう格好似合うと思ったんですよねえ!!」というスタイリストの一言で思わずザケルをぶつけてしまった。

 

 「くそっ……」

 

 今のオレは――完全に、俗に言う"清楚系"の少女にしか見えないのだ。

 

 腰まで伸びたサラサラの黒髪は、このスタイリストが術で創り出したウィッグ。カラーコンタクトで変えた、透き通るような蒼い瞳。この目的の為だけに父上が用意してくださったらしい、ブルーのワンピースに見せかけた特殊なマント。ちなみにこのマント、胸元に前とは違う型ではあるがブローチが付いている所から性能まで、前のマントと全く同じである。

 

 「こ……この格好で、本当にこの格好で学校に忍び込めと言うのか!?」

 「大丈夫ですよゼオン様。声色を軽く変えて、女の子の演技をすれば、貴方のことをゼオン様だと思う者はまずいないでしょう。あ、勿論、術は使わないでくださいね? 魔力の解放もしないように。ゼオン様の実力は、王様と同じかそれ以上かもしれないんですから」

 「……」

 

 いつの間にかオレの術から回復したスタイリストは、相変わらずニコニコ笑っている始末。

 

 ……はあ。

 コイツの心に邪が混じっているとはいえ、オレのことを思って準備してくれたのは本当なのだろう。

 

 「……礼を言う」

 「……へ? え、嘘っ!? ぜ、ゼオン様が、ゼオン様がお礼を……!?」

 

 狼狽えているスタイリストをその場に残し、オレは変装を解かないまま父上の部屋へと向かった。

 

                   ★

                   

 「……フム。いいんじゃないか、ゼオン。それでお前がゼオンだと気づく魔物は居ないだろうな」

 「はい、父上。お褒めにあずかり光栄です」

 

 前王――父上との会話で気を許したことは一度もない。王を決める戦いが終わってからも、何となく気まずいまま今に至る。

 オレとしても、出来ることなら肩の力を抜いてリラックスして話したいところだ。だが、父上を見るとどうしても……昔の記憶が脳裏に蘇り、そこから来る強い恐怖心がオレの身体を蝕んで離れてくれない。

 

 それは仕方ないことなのかもしれない、と最近は開き直っているが。だからこそ、ガッシュのあの素直な性格が羨ましくなる。

 

 「ではゼオン、明日から早速ガッシュの学校に通ってもらう。ただ、ガッシュにバレると色々と厄介だろうから、ガッシュにはバレないように登校のタイミングをずらすのと、その他演技などもしてもらいたい」 

 「承知しました」

 「そして、名前も考えねばな。……何か思いつくか?」

 「名前……ですか……」

 

 魔物の名前か……。

 今まで関わってきた魔物が少ないせいか、名前を考えろと言われても何も思いつかない。

 

 「――なら、私が考えてあげようか?」

 「……え?」

 

 父上……?

 父上の口調と声音が、突然別人のように優しく、穏やかになった。

 

 そう。それはまるで――"普通の"父親が、"普通の"息子に接する時のような……。

 

 「ゼオン……今はあえて何も言わないでおく。だが、これだけは覚えておいてほしい。今更かもしれないが……私の、私達の息子は、ガッシュだけではないということを」

 「父上……」

 

 思わず顔を上げて父上の顔を凝視する。

 ……どこまでも、穏やかな表情だった。

 

 「では、ゼオン。明日から、学校でのお前の名前は――」

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