これからも遅れることがあるかもしれませんが、できる限り早く投稿するので、読み続けてくださるとうれしいです!
というわけで、まずは状況の整理だ。
現在ココにいるメンバーは、オレ、ガッシュ、ウマゴン、キャンチョメ、ティオ、パティ――ここまでは海で遊んでいた面子で、あと一人はミモザ。自称・『アイドルグループ"フローラ★エナジー"のボーカル』らしいが、たった今出会ったばかりなので、アイドルらしいパステルカラーの無駄にヒラヒラした衣装を着ていて、桃色の髪をツインテールにしているということ以外は何も分かっていない。目は黒色だ。
そして、ココは海底にあるらしい幻の遺跡……と思われる。確証が無いので何とも言えないが、ココにこんな遺跡があるということ自体聞いたことがないので、パティの言う『幻の遺跡説』というのは本当なのではないかと思い始めているところだ。
ついさっきこの遺跡の大広間に辿り着いてミモザと出会い、自己紹介をしてもらった。
また、この大広間の奥には、十二本の道が伸びている……。
「――これぐらいか?」
「ありがとう、見ず知らずの私を仲間に入れてくれて……君たちまだ幼いけど、私のこと怖かったりしないの?」
自称ボーカルなだけあって、ミモザの声は天然水のような透明感をもっていた。前言撤回、恐らくコイツの職歴はホンモノだ。
しかし、なぜかオレ達に対して上から目線な上に、オレとガッシュのことを知らないというのが腑に落ちない。魔界の王と、その双子の兄を知らないなんてあるのか?
「怖くなんてないわよ! ところであなた、何歳なの?」
「私? 私は、十六歳だよ」
「へえ、じゃあ恵と同い年じゃない!」
「メグミ? だあれ?」
「ティオのパートナーなのだ! とても強くて優しいのだぞ!」
「パートナー……って、魔界の王を決める戦いに参加してたの!?」
「「「「うん!!」」」」「メル!」
……と、ここまで話したにも関わらず、ミモザはオレとガッシュの正体(という程でもないのだが……)に気づかず、「すごーい!」とはしゃぎ声をあげている。分かった、コイツは馬鹿なんだ。
このままだとどれだけ話しても埒が明かなくなりそうだったので、オレは思い切って楽しげに話している六人の輪に割り込んだ。
「一旦話をやめろ。今はこの遺跡から一刻も早く脱出する方法を考えるんだ」
「あ、そのことなんだけど――」
声をあげたのは、さっき十二本の道の内の一本から出てきたミモザだった。
「私が行った部屋はね、行き止まりだったんだけど、財宝がいっぱいあったの。でも、私が部屋に着いた時には、あの男達が財宝を漁ってて――あ、最近テレビで聞いたんだけど、ここ数週間で、遺跡とかの宝を勝手に盗んで売り捌く『ハンター』って人達が増えてるらしいよ。私にはよく分からないけど」
「財宝……ハンター……」
自然に考えれば、その男達がハンターだと考える人物が大多数だろう。だが、オレは……。
その時、ふとキャンチョメがこう言い放った。
「証言を集めるより、あの道の手前とか壁とか……とにかく部屋中を観察してみたらどうだい? 何か見つかるかもしれないよ!」
「それもそうだのう……なら、みんなで手分けして、この大広間の中から何らかの証拠を見つけ出すのだ!」
ガッシュのかけ声で、みんなが一斉に散って大広間を探索しだした。
……はあ。やりたいことは別にあるが、ガッシュの頼みなら仕方がない。
思わずついた溜息を隠そうともせずに、そばにあったひび割れた壺を覗き込む。
「――何してるの?」
「ゎ、」
突然声をかけられて油断したオレは、大声を出しかけて慌てて自分の口を塞いだ。
なんなんだお前は、と怒りの形相で振り向こうとして――やめる。
「ミモザ……?」
「ん、そうだよ! キミの名前は?」
「……ゼオンだ」
「ゼオンくんかあ! よろしくね!」
「『くん』は要らん、呼び捨てにしろ」
「うん、じゃーよろしくね、ゼオン!」
オレがどれだけ邪険に扱っても、ミモザはその明るさと透明感のある声と態度で接してくる。
……変なヤツだ、と、ただそれだけ思った。
「そういえばだけど、あの男の子……ガッシュと似てるよね。双子か何か?」
「ああ、あいつが弟でオレが兄になる」
「双子……家族……」
刹那、ミモザの瞳がスっと細められたのをオレは見逃さなかった。
しかし、ミモザはそれをオレが問いただすより早く、ニッコリと笑みをつくり、
「いいね、双子! ……とりあえず、壺の中を覗いてみない?」
「――紙だ」
ミモザの勧めで壺を覗いたオレは、壺の中に紙が落ちているのを見つけた。
『壺を割れ』
「ザケル!」
「ってええええええ、何してるの!?」
「この紙に従ったまでだ」
勿論、オレの術に耐えられる壺など存在しない。ひび割れた壺は、ヒビ割れどころではなく、粉々に砕けてしまった。
ミモザはオレの術の威力に驚き、その騒ぎを聞きつけたガッシュ達がすぐさまオレの周りに集まってきた。
「ゼオン、何をしておるのだ……」
「イヤ、壺を割れという指示があったから割ったまでで……決してオレが悪いわけでは……」
「言い訳してんじゃないわよ! 罠だったらどうすんのよ!?」
「メルメルメル……」
「ヒイイイ、ぜ、ゼゼゼオン、なんてことしてくれたんだよー!」
「ガッシュちゃん、逃げましょう! 早く、ここから愛の逃避行を――!!」
「――どいつもこいつもやかましいんだよ!! 文句があるならかかってこい!!」
大体、これに関してはオレは少しも悪くない(ハズ)! ヒントの通りにしただけだ!
そんな気持ちでオレが怒鳴った瞬間、
――ガラガラガラ……
「「「「え?」」」」
音がしたのは、奥の道からだった。全員が一斉に十二本の道に注目して、――絶句する。
十二本の道の内、ミモザが来た道以外の道十一本が、――落下して瓦礫と化した天井に塞がれ、二度と通れなくなっていたのだ。
「ゼーオーンー……?」
過去最高に優しげなティオの笑みが迫ってきて、オレの鼻先でそれは鬼の形相に変化した。
「なんてことしてくれてんのよーーーーーーッ!!」
「待て、あの道が正解かもしれん!」
「違ったらどうすんのよ!?」
「……」
「何とか言いなさいよーーーーー!! もう怒ったわ、サイス!」
「あの道が正解という可能性があるだろう、ザケル!!」
エネルギーの刃はオレのザケルに簡単に敗れ、消滅した。しかし、
「ワアアアアア!!」
「はぁ!?」
目が飛び出し、口をだらしなく開いた化け物の形相を維持したまま、ティオはオレのザケルに瓦礫をぶつけて打ち消した。
「クソ、むちゃくちゃな……!」
「ゼオンもティオも、くだらないコントやってる場合じゃないわよ! ティオ、ゼオンの言う通り。壺の中に支持する紙があったんなら、その通りにして、道が一本だけ残ったことには意味があるハズ。落ち着きなさいよ」
その時、パティが間に割り込んでティオを宥めてくれる。
「……。それもそうね。そういえば……ミモザ、あの道は、貴女が出てきた道だったわよね?」
「えっと……ティオ、だっけ? そうだよ、私はあの道から出てきたの。最初にココに来て、適当にあの道に入ったら男達がいたから……」
「ミモザ、その部屋には何があったんだい?」
「よくは見えなかったけど……財宝とか何とか、男達が言ってたのを耳にしたよ」
財宝……か……。
ミモザのその言葉に、オレは暫しの間逡巡し、ミモザに向かってこう問うた。
「おい、ミモザ。あの男達が『ハンター』なのか?」
「……多分、そうだと思う。"財宝なんてなかった"のに、財宝がどうのこうの言ってたから」
「……」
ミモザのその言葉で、オレは理解した。
「……よし。おい、仕方がないからあの残った道を進むぞ。罠は各自適当にかわせ」
「てっ、適当にって……ゼオン、元はと言えばアンタのせいでしょ!?」
怒鳴るティオが可愛く思えるくらい、……今のオレには恐いものがある。
なぜ自分から言わないのか。
犯罪すれすれだからか?
今までも、そうやって誤魔化せたのだろうか……しかし、誤魔化し方が下手すぎる。言葉に矛盾があるのだ。
とにかく、全てはあの部屋でケリをつける。
僅かな緊張を胸に、オレは全員の先頭に立って歩き出す――