金色のガッシュ!! ~ゼオンの奮闘~   作:友希那

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第2話 ~ゼオンの変化~

 その後は一悶着あった。

 

 ティオが女子魔物数人を相手に戦ったり、そこにガッシュ達がやってきて女子魔物達がオレにしようとした悪行(?)がたちまちクラスメイトの知る所となったり――そうした過程を踏んだ結果、オレはどうやら"守られるべき立場"になってしまったらしい。

 

 「カエデ、大丈夫だった? アイツら、クラスでも無駄に威張ってるのよね……自分達が偉いと思ってるのか、ぎゃあぎゃあ騒いでうるさいし、やるべきことは真面目にやらずに、先生の前ではいい子ぶってるの。でも、カエデのお陰で、アイツらの悪行が公になったわ! ありがとう!」

 

 と、ティオには明るい笑みと共に盛大な感謝の言葉を貰い、

 

 「ヌウ、カエデ、今回の件、お主は全く悪くない。悪いのはあの者達なのだ。しかし、カエデは自分で自分を護る術を身につけた方が良い。これから先、今回のようなことがないとも限らないからの。良ければ、私が特訓に付き合うぞ?」

 

 ガッシュからは主に心配の声をかけられた。まあ、そんなことをするわけにもいかないので、当然適当な理由をつけて断ったのだが。

 

 ――とまぁ、こんな感じで学校潜入生活一日目が終了したのだった。

 

 

 

 

 「はぁ……」

 「――ただいまなのだー! ウヌ、ゼオン。随分疲れているようだのう。何かあったのか?」

 

 ガッシュ達に「一緒に帰ろう」と誘われたが、オレが帰るのはガッシュと同じ屋根の下なので、「私、家遠いんだ」という王道の理由をつけて誘いを断わり、魔物がいない路地裏まで逃げた後、瞬間移動で王宮まで帰ってきた。

 しかし、瞬間移動の精度がいつもより落ちていたらしく、いつもよりも少し時間がかかってしまった。慣れないことをするとこうも自由が効かなくなるのか、とひとつ新たな学を得る。

 

 「ああ、まあ……ちょっとな」

 「ウヌウ、そんな風にはぐらかされると余計気になるのだあ! 何かあったのか?」

 

 大広間でぐでっとソファに寝そべっていると、丁度その時帰宅してきたガッシュに声をかけられたので、こちらもやはり適当にはぐらかす。しかしガッシュは納得がいかなかったようだ。

 

 「ゼーオーンー! 何があったのだー!?」

 「……何もない。あったとしても、ガッシュには関係ない」

 「薄情なのだ! 教えるのだ!」

 

 オレがどう口を閉ざしても、ガッシュはどうにかオレから情報を掴もうとして、ソファに寝そべるオレの体をユサユサと揺さぶり始めた。

 

 「ちょ、ガッシュ……」

 「おーしーえーるーのーだー!」

 

 ええいうるさい、今は疲れてるんだよ!! ……なんて言えるワケもなく、オレはただ為されるがままになっていた。

 誰か、この状況を打破してくれる者は――

 

 「ガッシュー、遊びに来たわよ!」

 「うわああ、広いやぁ! ガッシュ、こんな所に住んでるのか……」

 「メルメルメ~! メルメル~!」

 「こ、ココがガッシュちゃんのおうち……? スケールがまるで違う……」

 

 大広間のドアが突然空いたと思ったら、今日さっきまで散々聞いていた騒がしい声と共に四人の魔物が現れた。

 ティオ、キャンチョメ、ウマゴン、パティ。さっきまでのオレ――"カエデ"なら、「みんな、こんにちは。来てくれてありがとう」みたいな気の利いた挨拶が出来たのだろう。だが今のオレはゼオンであってカエデではないので、

 

 「ガッシュ、あまり部屋を荒らすなよ。父上と母上とオレから説教を食らいたくなければな」

 

 そう捨て台詞のように言い捨てるやソファから立ち上がり、オレの体を緩く拘束しているガッシュの手を振りほどくと、四人の魔物と入れ違いになるように大広間を後にした。

 

 状況打破を望んだが、アイツらの存在は望んでなどいない。アイツらと"友達ごっこ"をするのは、学校だけで充分だ。

 ……しかし、運の神はどうしてもオレを見放したいらしい。

 

 「――ちょっと、待ちなさいよ!」

 

 パシン、小気味よい音が響き、オレの腕が何者かに掴まれる。それが誰かなんて、オレの腕を掴む度胸と、今日散々聞いた声音で簡単に判別がついた。だから、敢えて振り向かず、振りほどかずに語りかける。

 

 「……離せ。お前には関係ない」

 「関係ないことないわ。気づかないとでも思ったの?」

 

 この女、勘だけはいいのか、オレが学校で"カエデ"に成りすましていることに気づいて――?

 

 「――アンタが、王を決める戦いが終わって以来、私達を避け続けてること」

 「なんだそっちか」

 「? 何の話?」

 「いやいい、こっちの都合だ」

 

 まあ良くはないが、そのことが気づかれなかっただけいいということにしておこう。

 心の中で一瞬安堵し、直ぐにまた気を引き締める。

 ……言われていることが図星であることに変わりはないのだから。

 

 「……まあいいわ。ねえ、ゼオン。そんなに気になるなら、一度私達に謝ったらいいじゃない」

 「……」

 「私はそんなに気にしてないけど……性格のせいもあるのかしらね。ただ、そんなに気になるなら、キャンチョメとウマゴンには謝った方がいいわ。アイツら、ゼオンのこと怒ってるわけじゃないけど、ちょっと怖がってるみたいだから」

 「……オレは、」

 「何よ」

 

 一息ついて――早まった自分の心臓の鼓動を抑えるように、真珠色のマントの裾を握りしめ、漸く声を絞り出すことができた。

 

 「オレは、あれを、そのていどでゆるしてもらえるなど、おもっていない」

 「……!」

 

 例え――お前が許していたとしても。

 

 「オレは、赦されないことをした。罪が消えることも無いんだよ」

 「ちょ、ゼオン――」

 

 今度は追ってこられないよう、敢えて瞬間移動で王宮の庭園にワープする。オレにしては珍しく、狙いを外したらしい。瞬間移動した先は、無駄に歳を食って堅くなった葉が茂る低木の中だった。

 

                    ☆

 

 翌日も、オレはガッシュよりも遅く家を出て、"カエデ"として学校に向かった。

 昨日は色々と遊んでしまっ……ンンっ、気を緩めてしまったが、今日から本格的に捜査をしていこうと思う。

 

 まず、魔力探知から始めた。オレ程鍛えれば、魔力探知のレベルも上がり、体内を巡る魔力の流れで、その魔物の大まかな感情すら読み取ることができてしまう。

 敵意をもっている魔力は――今のところないようだ。

 まだ登校していないという可能性もあるが……。

 

 その後もオレは朝のホームルームが始まるまでの間、魔力探知を続けた。しかしめぼしい情報は入ってこなかった。

 おかしいな……まさかアースの奴、オレに嘘を? イヤ、それは有り得ん。父上ぐるみでそんなくだらないデマ情報を流す意味が無い。

 

 「おっはよー! ふうー、危なかったあ!」

 「ヒイ……し、死ぬかと思った……」

 「メル~……」

 

 そんな時、間抜けな声を響かせて教室に入ってきたのは、ティオ、ウマゴン、キャンチョメの、今オレが最も会いたくない魔物ランキングトップスリーだった。

 どうやらここに来る途中で教師に叱られたらしく、自分の席に向かいながらもブツブツと文句を言っている。

 

 「元はと言えばウマゴンのせいなんだからね! どうして先生に石投げたりなんてしたのよ……」

 「メルメルメ~!」

 「何言ってるか分かんないよ~!」

 「メルメルメ~!!!!」

 「うわああ、か、噛まないでよーーー!! 助けて、フォルゴレーーー!!」

 「いるわけないでしょ!?」

 

 ……ただ、思った。

 

 遠い。

 

 オレ達とコイツらでは、立っている土俵が違うのだと、今更ながらに思い知らされた。

 いや、本当は昨日の時点で気づいていたハズだ。オレは、『コイツらみたいには』なれない。絶対に。

 

 幼い頃からガッシュを憎み、その為に力を鍛えてきた。王を決める戦いなど、それで十分。周りの平和ボケした魔物共など、幼い頃から文字通り血の滲むような訓練をしてきたオレにとってはゴミ同然だった。

 ――なのに、ガッシュには勝てなかった。

 

 あの――ファウードの中で、最後に撃たれた"バオウ"も、僅かな望みではあるが、オレ達が最後の最後まで全力でジガティラスに意識を費やしていれば、勝てたかもしれない戦いだった。

 しかし、――オレ達はあのバオウに、「勝てない」と悟った。悟らざるを得なかった。

 

 強大な力を持ちながらも、たった独りで、憎しみを糧に生きてきたオレ達。

 元々特別強いわけでもないのに、オレに記憶を奪われ、たった独りだったにも関わらず、たくさんの仲間と共に戦いを生き抜いてきたガッシュ。

 昔なら、そんなのは甘えだと切り捨てていたかもしれない。でも、今は分かる。どちらが強いかなんて――、

 

 「――あ、カエデ! おはよう! 昨日は大変だったわねえ」

 「……! てぃ、お……お、おはよう!」

 

 考え事に水を差したのはティオだった。桃色の髪を揺らして微笑みかけてくるソイツに、オレもとりあえずぎこちないながらも笑みと挨拶を返す。

 

 「まあアイツらが手ェ出してきたら、私がぶっ飛ばしてあげるから! 安心しなさい!」

 「あはは……」

 

 守る術が主体じゃないのか、お前は。ド正論のツッコミをなんとか呑み込んだ。

 ティオはオレがそんなことを考えているとは少しも知らず、涼しい顔で持ってきた物の整理をしていたが、ふと手を止めてこう言った。

 

 「――もしも、」

 

 桃色の髪が、俯いたソイツの顔を覆い隠して表情が読めなくなる。

 

 「誰かと喧嘩して、でもその後それがほとんど誤解だったことが分かって、仲直り出来る状況になったら――カエデはどうする?」

 

 一瞬でわかった。

 オレのことか。

 

 さり気なく身構え、できるだけ適当なことを言わず、かつ的を得た発言をしないように気をつけながら慎重に言葉を選ぶ。

 

 「そうだなぁ、相手にもよるかなあ。相手も納得してるなら仲直りすればいいし、相手が仲直りしたくないならしなくていいと思う」

 「そっか、カエデはそう思うんだね」

 

 次の瞬間、ティオが勢いよく顔をあげた。

 その瞳には、強い決意の光が宿っていて――オレは思わず息を呑む。

 

 「ありがとう。私、自分の気持ちがよく分かったわ」

 「……」

 

 なんとなく何も言えなくなって黙り込んだ。

 

 

 

 一時間目からは大体昨日と同じように過ごしたが、今日は女子魔物数人から何も仕掛けられなかった。

 昨日あれだけやり返した(?)んだし、今日何もしないのも当たり前か――と思っていたオレがバカだったようだ。

 

 

 『今日の放課後、校舎裏のスポールトールの木の傍にて待つ。

              エリカ』

 

 靴箱に果たし状らしき物が入っていた。それを発見したのは放課後だった。

 ――恐らく、『エリカ』とやらは、オレが昼休み時間に校庭に出ると踏んで靴箱にこの手紙を入れたのだろう。しかし、オレは今日の昼休みは書庫に行っていた。王宮に置いていない本があるかどうか確かめるためだ。勿論、そんな本は児童書くらいのものだった。

 

 それはともかく、この手紙によると、オレは今すぐ校舎裏のスポールトールの木の傍に行かなければならないらしい。

 

 「……ったく、言うなら口ですればいいものを……」

 

 不満を漏らしても無駄だと思うので、オレは大人しく校舎裏に向かうことにした。




 「スポールトールの木」は、完全に架空の植物です。そのハズです。もしもそういう名前の木があっても、私はそれを参考にした訳ではありません。自分で適当に考えました。

 魔界の植物は人間界のものとは違うんだろうなーと思ったので。
 ちなみに、それなのになぜ前王がカエデを知っていたかと言うと(第1話参照)、王を決める戦いで人間界に行った時知ったから……ということにしておいて下さい( ˙-˙ )
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