金色のガッシュ!! ~ゼオンの奮闘~   作:友希那

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第6話 ~ゼオンの想い~

 復讐、と言うには、そいつの攻撃は真っ直ぐすぎた。

 

 「――ギガノ・ファノン!」

 

 エリカの掌から巨大かつ強大な威圧感を秘めた獅子の形をしたエネルギーが放たれた。威力は、さっきのゴウファノンより上のようだが――

 

 「ザケル」

 

 それでも、オレの初級呪文にすら及ばない。

 オレの掌から放たれた青銀色の雷と、エリカの掌から放たれた獅子がぶつかり、刹那の間せめぎ合ったが、すぐにオレのザケルに押し負けて獅子が煙と化して消えていく。

 

 「くっ……、アーガス・ファノン!」

 

 しかし、獅子を突き破ったザケルを、エリカは地中から現れた獅子の盾で何とか防いだ。ホウ、中々やるな。だが、

 

 「術を防いでいる暇などあるのか!? 余裕だな!」

 「えっ、」

 「ザケル!」

 「きゃあああぁぁぁ!?」

 

 気が緩んだエリカの背後に瞬時に回り(瞬間移動を使ったわけではない、自力でだ)、すぐさまその油断した身体にザケルを浴びせかけた。普通の初級呪文ならただ怯ませる役割しか持たないだろうが、オレの術を並の魔物のそれと比べてもらっては困る。

 

 その一発で戦闘不能になったエリカを冷たく見下ろし、こう言い放った。

 

 「弱いな。その程度でオレに復讐? 笑わせるな、ゴミが」

 「あ……あたしが、この程度で、終わるわけ……」

 「そうだな、なら立ち上がってみろ」

 

 そう言いながら、倒れたエリカの頭をわざと足で踏みつける。

 

 「な……ば、バカにするんじゃないわよ!」

 「威勢がいい割に力は弱いな。喋ってる暇があるなら、少しは立ち上がることに心血を注いだらどうだ?」

 「うっ……舐めんじゃ……ないわよっ……」

 

 面倒だな。もう強い呪文でカタをつけるか?

 興醒めしたオレがエリカの身体に手をかざして呪文を唱えようとしたその瞬間、エリカの足を踏みつけていたオレの足が何者かによって払われた。

 

 「もう――もうやめてよ、ゼオン!!」

 「ティオ……」

 

 ティオは泣きそうな顔で――というか半分涙目になりながら、必死にオレの瞳を睨む。

 

 「この前あんた言ってたじゃないの!! ファウードの時のことは許されないって。ならどうして……そう思ってるならどうして、今、あの時と同じようなことができるのよ!?」

 「誤解だな。オレはあの時とは違い、正々堂々とこの女……エリカの同意を得て、死亡まで視野に入れた上で戦闘を行っている。そのことに対して口出しをするのはお門違いじゃないのか?」

 「そんなの……それ本気で言ってんなら、アンタはあの時と何も変わってないッ!!」

 

 ――切れた。

 

 「黙れ……」

 「えっ?」

 「お前に――お前にっ、オレの!! 一体、オレの何がわかるんだ!?」

 

 目の前が真っ赤に染まり、何も考えられなくなって――

 

 「テオザケル!」

 「マ・セシルド!!」

 

 怒りに任せて放った術は、ティオの防御呪文によって妨害された。だが、中級の盾に消されるほど弱くはないので、術は生きたまま盾に妨害されるという珍しい状況になっていた。

 

 「ゼオン、アンタは結局自分のことしか考えてない!!」

 「なっ……」

 

 しかし、オレの反論は続くティオの言葉によって強制的にかき消されてしまう。

 

 「私が、みんなはファウードの時のこと許してるよって言っても、ゼオンは『許されることじゃない』って、自分の殻に閉じこもっちゃうし! ホントは……私、寂しかった……」

 「!?」

 「ガッシュと仲直りできたんだから、私達とも仲良くしてくれたっていいじゃないの!! なのに、私達が遊びに行ったら絶対に私達のこと避けるし! ……邪魔なプライドなんか捨てなさいよ!!」

 「……」

 

 気づけば、ティオの盾も、オレのザケルも消えていて。

 残ったのは、妙に冷たい空気と――

 

 「ゼオン、それは前から私も思っていたのだ」

 「ガッシュ……?」

 

 恐らく今ここは、――本音を言うべき空間だ。

 オレはそれまでの流れで何となくそう悟った。 

 

 「ゼオンは、私が魔界に帰ってきてから、前とは違い、凄く優しくしてくれるようになった。……『お兄ちゃん』になってくれたのだ。そのことは本当に嬉しいし、これからもそうしてほしい。だが……ゼオンは、絶対に私に甘えてくれぬ。私だけではない、他の誰にも甘えようとする素振りすら見せないのだ」

 「それは……」

 「どうしてなのだ!! 私は、ゼオンの弟で、頼りないかもしれぬ。弱いかもしれぬ。だが……双子の弟なのだ。少しくらい、相談してくれても良いではないか……」

 「……」

 

 オレがますます何も言えなくなった所に、今度はキャンチョメとウマゴン、パティがやって来て、

 

 「ぜ、ゼゼゼゼオン!」

 「キャンチョメ、足が震えてるじゃないの。大丈夫?」

 「だ、ダダダ大丈夫だよパティ! 決して、ゼオンが怖いとかでは……ね、ウマゴン!」

 「め、メルメルメルルルル……」

 「何が怖いのよ。ガッシュちゃんの、麗しいガッシュちゃんの、麗しいお兄様よ? 何が怖いのよ」

 

 お前が特殊なんだろ、とは言えずに黙り込んでいると、キャンチョメとウマゴンが勇気を出したように一歩前に出て、話し始めた。

 

 「ぼ……僕はずっと弱かった。みんなと一緒に戦っていても、中々役に立てなくて……ううん、寧ろ足を引っ張っちゃってた。そのせいで魔界に帰っちゃった友達もいた。でも、ファウードの戦いが終わって、クリアに向けて特訓するとなった時、キミのパートナーのデュフォーが協力してくれたんだよ」

 「え……?」

 「うん。そしてそのお陰で、僕は強くなれた。……なりすぎた。それで調子に乗って、暴走したんだ。その後は、フォルゴレのお陰で目が覚めたけど……」

 「……強くなった割には、随分とオレに怯えてるな」

 「そうだよ。だって僕、強い術は使わないって決めたから!」

 「はぁ!?」

 

 そんなの無茶苦茶だろ、いくら何でも……。

 呆れてため息をついたオレに、しかしキャンチョメは真剣な表情で語り続ける。

 

 「知ったんだ。……強くなると、失ってしまう物もあるって。要するに、弱い人の立場に立って考えられなくなっちゃうんだ。僕は、元々ゼオンみたいな努力はしてなくて強くなったから、失った物を取り戻すのにそう時間はかからなかったけど、ゼオンは違うよ。ゼオンは、小さい頃から特訓してきたんだよね」

 「……やめろ」

 「だから、僕はゼオンを責めない。寧ろ、友達になって、失いかけた物を取り戻す手伝いをしたいんだ」

 「黙れッ!! 同情はウンザリだ。友達ごっこならよそでやってこい」

 

 どうして、コイツらは。

 ――突き放しても突き放しても、そこまでオレにこだわろうとするんだ。

 

 「ゼオン。強がりはやめたら?」

 

 その時ようやく初めてオレに言葉を発したのは、この前色々と腹を割って(?)話し合った魔物、パティだった。

 パティはオレの目の前に立ち、うっすらと笑みを浮かべている。

 

 「ゼオンはもう、昔とは違う。『王にならないと価値がない』王子じゃなくて、私達にとってはそのままで十分価値があるただの魔物なのよ」

 「ただの……魔物……」

 

 昔……訓練漬けの日々の中で、何度も何度も思ったこと。

 ――オレが、普通の家庭に生まれた普通の魔物だったら、こんな思いは――……。

 

 「……何も、言わなくていいから」

 

 穏やかな声音で発されたその一言と共に、オレの身体が暖かい何かに包まれ、数秒経ってから自分がパティに抱き締められているのだと気づき、思わず殴ろうとして――

 

 「お願いだから……昔の私と同じ失敗は、繰り返さないで……」

 

 ……やめた。

 

 

 やはりオレは、少し甘くなってしまったのだろうか?

 昔から絶対に、抱き締められるなどという愚行はおかさない。抱き締められる前にかわしたハズだ。

 それに、実行されたとしても殴り飛ばす自信があったのに……このザマだ。

 

 それとも、これが本当の自分なのか――本当のことは分からない。

 ただ。

 

 今だけは、こうしていたい――この上なく恥ずかしいこの体勢で、オレは静かに目を閉じた。

 

                 ☆

 

 「ん……?」

 

 目が覚めると、王宮にある自室のベッドの上にいた。

 身体を起こそうとして、枕元に紙切れが置いてあることに気づく。

 

 『ゼオンへ

    あの後、アースや父上から詳しいことを聞いたのだ。元々は、私の命を狙う輩がいないかどうかを探る為に密かに学校に侵入していたのだな? ありがとうなのだ! しかし、私も一筋縄ではやられぬ。昔とは違うのだぞ!

   ところで、パティ達が今度ゼオンと遊びたいと言っておったのだが……もう約束をしてしまったから、逃げられないのだぞ♪

 

 ゆっくり休んで遊びに備えて欲しいのだ      ガッシュ』

 

 「……」

 

 どうやら少し面倒なことになってしまったらしい。

 それにしても、遊びか……一体何をすると言うんだ。オレにろくな遊び経験は無いぞ。あるとすれば精々戦闘ごっことか……いや、これ以上は言わないでおく。

 

 ……だが、ひとつ確実に言えることがある。それは、

 

 「……ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 ☆オマケ☆ ~エリカのその後~

 

 「……なんかいい雰囲気になっちゃったわね……」

 

 ゼオンやその仲間達が話をし始めたタイミングで、エリカはこっそりとその場を抜け出した。

 向かう先は、自分の家だ。

 

 「……ん? エリカ、学校はどうしたんだ?」

 

 今日は珍しく病院にかかる必要が無いらしいリオウが、読書の手を止めてエリカの方を向き、穏やかに微笑む。それこそ、ファウード内では見せたことの無いような優しい笑みだった。

 

 「あのね、お兄ちゃん。ゼオンの事なんだけど……」

 「……ッ!?」

 

 が、ゼオンの名前を聞いた瞬間、たちまち表情が強ばり、笑顔どころではなくなってしまう。そこにエリカが慌てて弁解を重ねた。

 

 「あ、安心して。呼ぶとか、そういうのじゃなくて……お兄ちゃんに、聞いてほしいんだ。……案外弟思いで、辛い過去があった雷帝の話」

 

 こうして、エリカは話し始めた――雷帝の、本当の姿を。




 ……ということで、学校潜入編、完結です!
 どうでしたか? 少し強引な終わり方でしたか? よかったらご意見を聞かせてください(*^^*)

 
 そして、次の章に移りたいのですが、次の章のテーマを読者の皆様に投票で決めていただくため、現在アンケートを実施しています。
 このアンケートを、明日(6月16日火曜日)の午後9時30分で締め切り、その時点で一番票が多かったテーマを元に次の章を書いていきたいと思うので、『このテーマで書いてほしい!』という方は、その時間までに是非アンケートにご参加ください。

 どのテーマになるかな~(*´ ꒳ `*)
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