金色のガッシュ!! ~ゼオンの奮闘~   作:友希那

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 というわけで、ハイ! 新章開幕でございます!
 海水浴の話にするのは楽しそうだったんですが、ただの海水浴だと楽しくないかと思って、少し捻りを加えさせていただきました。
 前回の章はシリアス多めだったので、今回はギャグ多めでいけるといいなと思っております。

 では、よろしくお願いします(●︎´▽︎`●︎)


海底遺跡編
第7話 ~ゼオンの休暇~


 「嫌なのだー! ゼオンも来てくれなければ、私は楽しくないのだ!! お願いだから、一緒に来て欲しいのだっ!」

 

 王宮の、大広間にて。

 オレは現在、だだっ広い広間のど真ん中で、双子の弟であり魔界を統治する王でもあるガッシュに土下座されていた。

 

 理由なら簡単に説明できる。

 

 

 

 数日前……ガッシュが、ティオ、パティ、ウマゴン、キャンチョメと、海水浴に行く約束をしたらしい。

 しかも、余計なことにガッシュはその時、こう言ったらしいのだ。

 

 「ウヌ、ゼオンも絶対に連れてくるのだ! 待っているのだぞ、お主達!」

 

 普段のオレなら、こんな頼みは絶対に断っていただろう。だが、この前の学校での一件もあって、オレは断るに断れない状況にあった。

 くそ、あの時あんな風に気を緩めるんじゃなかった……と後悔しても遅いのは百も承知している。

 

 「……分かった。ただし、オレはお前らとは遊ばんからな。あくまで付き添いだ。分かったか?」

 「……! ありがとうなのだ!」

 

 ガッシュはふわりと太陽のような笑みを浮かべると、ドタバタと廊下に出ていった。恐らく、電話か何かでティオ達に連絡するのだろう。

 海か……。

 

 海、という言葉で浮かんでくるのは、人間界にいた時に見たイギリスの海だ。それは、魔界の図書館にあった文献で見たものとそっくり同じ、透き通って煌めく美しいものだった。海となると、人間界も魔界も大して変わらないのだろう。

 

 だが、オレは魔界の海を生で見たことがない。当たり前だ。今まで王宮にこもってひたすら戦闘訓練をしていたのだから。

 

 この機会に海を見られるのなら、いい機会かもしれない。それに――

 ……誰かと出かけるということも、オレにとっては初めての経験だ。

 

 『――で、でもでもっ!! 私はそんなに天然とか言われにゃ、ないです!』

 『あー、ミモザちゃん今噛んだでしょ?』

 『か、噛んでませんよぅ~! ふえ~ん!!』

 

 ふと耳に入った話し声に思わず顔を向けた先には、つい最近『人間界の文化を取り入れてみる』という試し企画の為に設置されたテレビがあった。わざわざこのためにテレビ局をつくり、タレントなども調達したらしいからご苦労様である。ちなみに、今やっている番組は、新人アイドルのトークショーという非常につまらないものだった。

 

 うるさかったのでリモコンを手に取ってチャンネルを変えると、ニュースをやっていた。

 

 『次のニュースです。最近、ハンターと呼ばれる盗賊が増加しています。ハンターは主に、遺跡を荒らして財宝を盗む、天然記念物に指定されている高価な魔鉱石を――……』

 

 やはりうるさいので、電源を切った。

 こんなもの、魔界には必要ないと思う。魔物は人間と違って、情報は自分で手に入れるからな。

 

                     ☆

 

 「海だ~っ! ガッシュ、海よー、海!」

 「私はまず海に潜ってブリを探すのだ!」

 「いいわねガッシュちゃん! 私も潜ろうかしら♡」

 「いや、あんた達バカ!? 何しに海に来たのよ!」

 「メルメルメ~!」

 「あ、ウマゴンが潜っちゃった! うえ~ん、僕泳げないよ~!」

 

 二日後――約束通り、オレ達は海にやって来ていた。

 しかし、この海は普通の海水浴場ではない。本来なら遊泳禁止の、流れの険しい海だ。

 だが、ガッシュは王であり、同伴している四名(オレを除いて)も十分な実力をもっていて、溺死することは無いとされ、特別にガッシュの王権限で使わせてもらえることとなったのだ。

 

 というわけで、やはり約束通り、オレは浜辺に大きめのパラソルを立て、シートを敷いて、鰹節の入ったビニール袋を置いて寝転がる。

 そう、オレはあくまで同伴者。決して遊ぼうとなどという幼稚な考えはもっていない――

 

 「アクル!」

 

 不意打ちだった。

 威力はほとんど無い、というか最早水遊びレベルで放たれた水流を正面から受け、オレは見事にびしょ濡れになった。

 

 「ウヌゥ、大丈夫かのぅ……?」

 「だいじょーぶでしょ、海は濡れるために来る場所よ? アイツにも濡れる覚悟くらいはあるはずよ」

 「ヒィィィ、ゼオンに術を……!? ぱ、パパパパティ、大丈夫なのかい!?」

 「メルメル……!」

 「大丈夫、これは愛のアクルよ♡ 攻撃の為に撃ったわけじゃないし、ガッシュちゃんのお兄ちゃんのゼオンなら大丈夫よ!」

 

 ……。

 

 刹那の時間思案して、決意する。

 

 「そうよねゼオ――きゃあああ!?」

 

 その場から一歩も動かずに、マントを操作してパティを海に突き落とした。

 と言っても、そこは浅瀬なので精々砂に足が取られて半身びしょ濡れになる程度だがな。フン。

 

 「や、やったわね……ガッシュちゃんのお兄ちゃんだからと言って、手加減はしないわよ……! オルダ・アクロン!」

 

 パティは砂を吐き出しながら立ち上がると、水遊びに使えそうな程度の威力の水の鞭を出現させた。

 ならばこちらも遠慮はするまい、とオレはすかさず呪文を唱える。

 

 「レードディラス・ザケルガ!」

 

 全力でやるとシャレにならないので、一割程度の力で雷のヨーヨーを召喚し、パティのオルダ・アクロンを薙ぎ払うようにして消滅させた。

 

 「流石ね、ゼオン……なら、私も混ぜてもらおうかしら! サイス!」

 「なっ……!?」

 

 次に術を放ったのはティオだったが、なんとティオはサイスをオレには当てずに、オレの足元の砂にぶつけた。

 その結果、砂が巻き上げられてオレの顔にかかる。

 

 「……」

 

 「あ、ああ……ヒイイイ……ティオ、こ、これでいいのかい……?」

 「いいのよ、キャンチョメ。どうせゼオンも――」

 

 「やってくれるな、ティオ。お前にこれ程の度胸があるとは思っていなかったぞ……!」

 

 ティオが余計なことを言う前に、ティオの目の前に瞬間移動し、足元で波打つ海の水を軽くすくってその顔に思いっ切りかけた。

 

 「ふふふ……やるじゃないの! こうなったら、全員でゼオンをびしょ濡れにする作戦よー!」

 「メル!?」

 「い、いいのかい……?」

 「フフフ、遠慮はしないのだ……!」

 「それじゃあみんな――かかりなさいっ!」

 

 ティオの一言から始まった"オレをびしょ濡れにする作戦"は、パティの合図で一斉に始まった。

 先程まではあんなに怯えていたウマゴンとキャンチョメが、今は笑いながらオレに水をかけている。

 パティも、ティオも、ガッシュは……言うまでもないが。

 

 こんな景色は、今までのオレの生き方なら絶対に見られないものだった。

 

 

 ……これが、楽しいという感情なのかもしれない。

 

 生まれて初めて味わったその感情を噛み締めるように、消えないように、――オレはガッシュ達に水をかけ返した。

 

                    ★

 

 「ん……」

 

 目が覚めると、そこは海ではなかった。

 明らかに異質な、……一言で言うなら、どこかの遺跡という感じ。

 ――そこまで考えて、漸く完全に意識が覚醒した。

 

 そうだ――私は。

 

 「やっと……やっと! ここまで来れたのね……!」

 

 長年夢見ていた、幻の場所。

 ここを探し求めて、恐らく五年は経っただろう。

 

 「フフ……待ってて、私のカワイイお宝達……!」

 

 私は独り静かにほくそ笑むと、パステルカラーの可愛らしい衣装を翻して遺跡の探索を開始した。

 

                    ★

 

 「はあっ、はあっ……」

 

 激しい訓練でもないのに息が切れたオレは、思わず砂浜にバタンと倒れ込んでしまった。時折ひいてくる波を身体で受けるのがこんなに心地いいものだったとは……。

 

 「ゼーオンッ♪」

 「……! ガッシュ……」

 

 弾むような声と共にオレの隣に倒れ込んだのは、オレと同じように――否、それ以上に息が切れているガッシュだった。

 

 「楽しかったかのう?」

 「……当たり前だ」

 「それならよかったのだ!」

 

 ガッシュは気持ちよさそうに目を細めると、不意にオレの方を向いてニッコリと微笑む。

 

 「こんな楽しい時間が、いつまでも続けばいいのう……」

 「……そうだな」

 

 そう……オレは変わった。オレ自身が自覚しているくらいの変化を遂げた。

 成長と言っても、退化と言ってもおかしくない変化を。

 

 だが――悪くない変化だと、オレは思う。

 

 「このまま……こんな時間が、続くといいな……」

 

 

 

 ――その時、海水面が怪しげに揺らめき始めたことに、オレ達は全く気が付かなかった。

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