艦こレーン ~オーブ鎮守府の異世界戦記~   作:しきん

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おはこんばんちわ、しきんです。
もうすぐ梅雨入りシーズン突入でございます・・・。
それでも夏は大好きなので、家でアイスクリームとかかき氷とか食べて過ごそうかと考えております。

これからも暑くなりそうですが、何卒宜しくお願い致します。


第2話 暁と優雅のファーストコンタクト 勇&赤城索敵2号機篇

「索敵機、発艦始め!」

 

勇の命令が下った直後、一航戦と呼ばれる日本最強の空母艦娘の1人である赤城は、艦上偵察機『彩雲』を空に放った。

彩雲とは、旧日本軍が開発・生産した艦上偵察機である。小型で高性能の誉エンジンを搭載し、直線的な胴体と大型のプロペラを有した、まさに傑作とも呼べる機体である。

ちなみにこの機体を見た赤城は、「アイスキャンディーっぽいですね」とよだれを垂らしながらそう言っていたとか。

 

今回の区域担当は以下のようになっていた。

 

・赤城&加賀 北方向担当

・蒼龍&飛龍 南西方向担当

・翔鶴&瑞鶴 南東方向担当

・隼鷹&飛鷹 東方向担当

・祥鳳&瑞鳳 南方向担当

・その他空母 待機

 

これに基づき、赤城の索敵2号機は北北東を担当する事となり、索敵線に沿って飛んでいた。だがしかし、飛んだはいいものの、辺りは一面蒼い海。それに加えて、どこか平和な感じもする。

 

「周囲なんて言われても、この辺りって西にはパプアニューギニア、南にはオーストラリア、それ以外は海ですよね?なんで、わざわざこんな辺りを索敵しないといけないんですか?」

 

偵察員を務める新米妖精が、操縦員のベテラン妖精にそう尋ねる。

 

「俺にも分からねえが・・・提督は言ってたろ?とてつもない事が起きたってな。だから、こうやって鎮守府の周りに異常がないかを確かめているんだ。わかるか?」

「は、はあ・・・」

 

そうは言ったが、操縦員妖精は、新米に分かるような話じゃなかったかな、と心の中でそう呟いた。

そのままただただ一直線に飛び続けること、実に27分程。

 

「・・・ん?」

 

操縦員があるものに気付く。そして、その正体に気付くと、

 

「おい、正面に陸だ!いくつかあるみたいだぞ!」

 

そう叫んだ。

よく見ると、確かに水平線の一部が黒く、そして低く盛り上がっている。だんだん近づくうちに、若干ではあるが、緑が見えてきた。

 

「ありゃ・・・ハワイか?おい、今の位置は?」

 

操縦員妖精が電信員妖精に問う。そして、電信員妖精はこう答えた。

 

「現在位置、オーブより1時の方向。距離178㎞と見られま・・・」

「「「・・・え?」」」

 

見事にトリオでハモった。

 

「いやいやいやいや、おかしいでしょ?オーブからハワイまでの距離って5858㎞もありますよね?なのにこの距離にあるなんて、絶対何かありますよ」

「だよな・・・。地図がおかしくなったのか、それとも俺達が幻覚か何かを見てんのか・・・・・・。とにかく、オーブに打電しろ!『我、ハワイに酷似した諸島見ゆ!オーブより1時の方向、距離約178㎞』とな!」

「了解!」

 

操縦員がそう言っている間に、諸島はどんどん近くなってきた。

モールス信号特有の甲高い電子音が機内に響く。電信員が打鍵機を叩いているのだ。

 

「海軍か何かの基地なのか、これは・・・?建設途中のがいくつかあるとすれば、まだ完成していないのか?」

 

操縦員が陸地を見ながらそう呟いていた、その時だった。

 

「前方、飛行物体発見!レシプロ機です!」

 

偵察員が声を上げた。

 

「ん・・・!?あれは・・・イギリスのシーファイアか!?」

 

操縦員もそれを見て驚きの声を上げる。

前方から、レシプロ機のような何かが接近してくる。しかも、今の彩雲の飛行高度である500mを飛んでいるのだ。操縦員と偵察員がそのレシプロ機を気にしていたその時である。

 

パシャリ

 

その機械音が機内に響いた。電文を撃ち終わった電信員が、支給されている高解度カメラで写真を撮ったのだ。

 

「地上にある建造物と軍艦を撮影しました。これはどう考えても、人間と同等のレベルにある知的生命体が社会生活を営んでいるとみて間違いありません!しかも技術レベルは第二次世界大戦真っ盛りだった1940年代前半です!」

 

そう、操縦員と偵察員がレシプロ機に注意している間、電信員は地上に目を向けていたのだ。そして、港に軍艦らしきものがあるのに気が付き、しばらく観察してみたところ、第二次世界大戦のイギリスの軍艦とそっくりだという事に気付いて撮影したのだ。

 

「おい、あのレシプロ機も撮ってくれ」

「分かりました。偵察員に撮らせます」

 

電信員はすぐカメラを偵察員に渡し、今見たものをオーブ鎮守府に大急ぎで打電する。

 

『同諸島のうちのある島は、多少違いあれどオアフ島に酷似しており複数の建造物あり。建設中の建物や軍艦もあり海軍基地の可能性大』

 

この内容の文章はモールス信号に変換され、オーブ鎮守府で待機している軽巡艦娘の大淀に贈られるのだ。

 

「ん・・・!?お、おい!あれ、なんかヒヨコが乗ってないか!?」

 

突然、電子音を遮るように偵察員が大声を上げた。驚きのあまり、敬語を使う事さえ忘れてしまっているようだ。

 

「は?何言ってんだ?そんな事ある訳―――」

 

そう言いかけたまま、操縦員は絶句する。

丁度、そのレシプロ機・・・シーファイアと彩雲はすれ違うところだった。そして、彩雲のコックピットのすぐ左を行ったシーファイアのコックピットにヒヨコが乗っているのを、操縦員は確かに見た。偵察員も、カメラのフレーム越しでそのヒヨコを見た。

その時、操縦員はシーファイアに乗っているヒヨコと目が合った。

 

当然、「ウホッ、いい男・・・」みたいな事になる訳もなく・・・

 

「お、オーブに打電急げ!『我、航空機見ゆ!シーファイアと思われる機体が迎撃に上がった可能性有り!』!」

 

操縦員は怒鳴り声を上げた。

偵察員は大急ぎでシャッターを切り、電信員は返事代わりに高速で打鍵機を叩き始める。

一旦すれ違ったと思ったのもつかの間、シーファイアは反転して追いかけ、距離を縮めていく。

 

「こ、こっちに追いついてきます!」

「流石、スーパーマリンの最高傑作だ!速度の伸びが良い!」

 

シーファイアが近づいてくるのを確認した操縦員は、機体を左右に振り始める。

これはバンクというもので、太平洋戦争では味方である事を示す為に用いられた方法である。国連軍でもこの方法をとる事は度々あるとか。

 

「あちらさんには上がったところで悪いが、こちとら鎮守府周辺の索敵の為に飛んで来たんでな。偵察はここまで!ここらで帰投するぞ!」

 

この合図と共に、彩雲はそのボディを翻す。

 

「にしても・・・あれってどこかの国家に所属しているものだよな?」

「でしょうね。主翼にイギリス海軍の国籍マークらしきものもありましたし」

 

偵察員が操縦員に同意する。

 

「そして、それは多分、あの海軍基地を保有する国家でしょうね」

 

電信員が後を引き継いでそう言った。

 

「つまり・・・俺達はどこかの国の領空を侵犯しちまった訳だ」

 

操縦員はのこの結論に、2人とも異論を唱える事は無かった。

こうして赤城2号機は、元来た進路を辿って鎮守府に帰投した。

 

 

午前2時36分 オーブ鎮守府 執務室

 

それから2時間程経ち、勇は自分の執務室へと戻り、各索敵機のパイロット達の報告書を読んでいた。

 

「ふむ・・・来たを担当した赤城の索敵2号機はハワイに似た諸島の上を飛び、更に海軍基地らしきものを見つけた、か・・・・・・」

 

そして例の赤城2号機の報告も読んだ。

 

「恐らく、あんな諸島だけの小国じゃないと見た方がいいな。もしこれが正しければ、食糧確保も出来そうかもしれない。艦娘だけでなく、他の人間もここには大勢いるからな」

 

勇がそう呟いたその時、バタンッ!と大きな音が響き、ノックもなしに勢いよく扉が開かれた。

 

「て、提督!大変ですっ!!」

 

飛び込んできたのは、セーラー服を着た桃色の髪の工作艦娘の明石である。

 

「どうした?まさかこんな時にまた変なヤツ造って爆発したのか!?」

「ち、違うんです!パイプが・・・当鎮守府とアタカ油田を結ぶオイルパイプが切断されていました。原油が全く来てません!それどころか、アタカ油田とも交信が途絶えています!!」

「そっちか!?異世界転移という可能性を考えた時は、覚悟はしていたが・・・・・・!」

 

こんな時にまさかのアクシデントである。

艦娘は、艤装を纏った状態で海に出て、作戦行動をする時は、燃料と弾薬を消費する。しかし、それらを簡単に補給する事は難しいのもまた事実。

オーブ鎮守府は国連軍主導で建設された事もあって、アタカ油田という後ろ盾を有する事となったのだが、異世界転移という事態のせいで、その後ろ盾もパイプ途絶という形で無に還ってしまったのだ。

 

「ソロモン諸島攻略作戦の為に用意された大量の石油があるが、このままではジリ貧だ・・・!だが、これでまずすべき事は決まった。食糧、水、そして原油の供給先の確保。これを最優先だ」

 

勇は冷静さを取り戻すと、素早く判断した。

 

「オーブ鎮守府全体で見れば、食糧の消費量は嗜好品を含めて年間で30万t以上と予想されます。もし転移が事実だとすれば、現在のオーブ鎮守府には食糧を入手する手段がありません。魚の生態系すら変わっている可能性もありますし、仮に獲っても食べられる保証はありません。どこかの国から手に入れられるかどうかを検討するほうが賢明と思われます」

 

大淀も賛成する。

 

「石油に関しては、手に入る見込みが立つまで備蓄で何とかしないとな。あと、国交開設の準備を頼む。今日、赤城の索敵隊の連中に簡単なものでいいから地図を描くよう伝えてくれ。明日、俺がすさのおに乗艦して、直接交渉に行く。特に赤城2号機が見つけた海軍基地・・・あれは当てになる筈だ。夜明けの始めぐらいにオーブを出れば、向こうの行政機関が本格的に動き始めた頃には付ける筈だ。大淀、頼んだ」

「了解しました、提督」

 

斯くして、方針は決まった。

 

 

午前8時26分 ハワイ近海

 

艦娘母艦『すさのお』で4時間もかけて、赤城2号機が発見した海軍基地・・・アズールレーン・ハワイ基地の近海に何とか辿り着いた勇は、ロイヤルと名乗る国の戦艦--プリンス・オブ・ウェールズから臨検を受ける事となり、そこで勇は、以下の内容を伝えた。

 

・自分は、国連軍オーブ鎮守府の総司令官、三河勇という。国連の特使だと思っていただけるとありがたい。

・我々は、どうやら元居た世界から転移してしまったようで、国連軍総司令部であるアラスカを含め、各国との通信が一切途切れてしまった。そこで、周囲の状況を確認すべく航空機を飛ばし、周囲を哨戒していた。

・その際、誤って貴国の領空を侵犯してしまった事について、深くお詫び申し上げる。

・ここに来た目的は、貴国との国交を開設する事にある。

・国交開設の手続きは、可能であればお早めにお願いしたい。

 

この後、ユニオンなる国の海上の騎士と名乗る女性から重桜がどうのこうのと詰め寄ってきたが、プリンス・オブ・ウェールズが落ち着かせたので大きな騒ぎにはならなかったのでこれに関しては割愛する。

 

 

30分後 アズールレーン・ハワイ基地 司令室

 

勇はこの基地の指揮官の代理を務めているプリンス・オブ・ウェールズとまるで羊を擬人化したようなつば広帽子を被った白髪の女性に連れられた。国交開設の申請書や食糧・石油等の物資支援の要請書類については、オーブ鎮守府で特に秘書官としても優秀な艦娘である大淀と大和の2人によって既に作られていた。勇はすさのおの艦長を務めている戸高二佐、補給主任参謀のウィリアム・ムハンマド少佐、情報参謀のアンドリュー・マックスウェル大尉の3人を引き連れ、交渉に臨んだ。

 

数時間に渡って続いた交渉は、最終的に勇がほぼ望んでいた形で成立した。

具体的な内容としては、

 

・ロイヤルとオーブ鎮守府は国交を締結し、以下の条約を結ぶものとする。

・双方は互いの法に基づき、互いの国民の生命と財産、人権を保障するものである。

・オーブ鎮守府はアズールレーンに加盟する。ただし、オーブ鎮守府の部隊とロイヤルとは、装備も戦術思想も多少なりとも異なっているので、アズールレーンにおいてのオーブ鎮守府の全戦力は事実上の独立遊撃部隊となる。

・オーブ鎮守府はハワイ基地に対して技術供与及び軍事支援を行う。なお、軍事支援の内容は、海軍に対する装備の提供と訓練指導である。

・その見返りとしてロイヤルはオーブ鎮守府に対し、食糧・石油の支援を行う。

 

というものである。

これに勇は物資の入手先の確保という一番優先すべき問題を解決した事に安堵した。

 

国交を開設し、少しだけでもこの世界についての情報が知りたいなと思った勇は、プリンス・オブ・ウェールズにこの世界の事について聞いてみた。

なんでもこの世界は、1901年にセイレーンなる存在が登場し、なんと人類の91%が死に絶えたのだ。それに対抗する為アズールレーンが結成され、それとほぼ同じ時期に人類の切り札として造られたのが、ウェールズ達KAN-SENなのだとか。KAN-SENはメンタルキューブからなっており、そのメンタルキューブは人類のイメージを投影し、具現化する代物で、これだけでKAN-SENを建造できてしまうので資源をあまり食わない。これは艦娘にはないメリットと言えるだろう。

そんなこんなでセイレーンを撃退する事に成功したアズールレーンであったが、おかしなことにその後の方針を巡って「人類の力のみで脅威に立ち向かっていく」か「毒を以て毒を制す」かで内ゲバが起こり、鉄血がアズールレーンから離反してレッドアクシズを結成し、世界大戦が勃発するに至ったのだそうだ。この世界は、この大戦が勃発するまで、元居た世界であったような世界大戦どころか、近代的な戦争を経験は無かった事から、日露戦争が勃発しなかった時点でこの世界の歴史は分岐したのだろう。そして、重桜がアズールレーンからレッドアクシズへと鞍替えするのも時間の問題と言われている。

この中で勇が特に疑問に思ったのが内ゲバに関する事だった。

 

(国連軍の方は紆余曲折こそあるが、深海棲艦が出現して以降は人類同士で争ったことなど全くない。それどころか、一致団結して立ち向かっていた。なのに今聞いたアズールレーンの有様は何なんだ?確かにかつての国際連盟は、全会一致制を原則としていた事や国連軍のような軍事組織が無かった事が第二次世界大戦の勃発を止められなかった原因となって、この教訓が今の国際連合に活かされているが、意見対立だけで世界大戦が勃発するなんて、資本主義と共産主義でもないのに有り得るのか?)

 

勇は声には出さなかったが、意見対立以外にもあるだろうと断定し、ついでに四大陣営についても聞いてみた。

ウェールズが所属するロイヤルは四大陣営の中で最も造船技術に秀でた王政国家で、かの国の海軍であるロイヤルネイビーは優雅を重んじる習慣があり、実力も半端ではないと本人は誇らしげに言っていた。イギリスでもこういう者達が多そうだ。ユニオンは科学と自由を重んじる連邦国家・・・言わばアメリカと瓜二つの国で、主に航空技術を中心に発展しているそうだ。ハワイ基地も元々ユニオンの領土なのだが、重桜との戦争において、ここを前線基地とする為に絶賛建設中だったらしく、その最中に襲撃を受けた時に備えてウェールズ達が先行してこの基地に配属されたのだとか。鉄血は強大な軍事力とそれによる高度な科学技術を有し、「戦場で散った者達の魂はヴァルハラへ赴く」というなんか仏教関連のものに似てなくもないような教えが慣習化している、どこか第二帝国時代のドイツを思わせる国で、この世界で初めてセイレーンの技術を軍事転用したとか。ちなみに勇は鉄血についての話を聞いている間、過去に会ったドイツ人のお嬢様の事を思い出したのだが、これはまた別の話である。そして重桜・・・この国に似ている国は島国という地理的特徴からしても数百年間鎖国をしていたという歴史からしても勇の祖国である日本しかない。これは真珠湾攻撃への対策が出来るのではと勇は考えた。

 

(いずれにせよ、消去法で選べばロイヤルとコンタクトを取ったのはベストだっただろうな。ユニオンは恐らく自分達のいた世界でいう反日思想が蔓延っている可能性がある。これは良くない方向へ向かうのは間違いなかっただろう。鉄血だと、距離で考えて論外だ。重桜は・・・この国がかつての大日本帝国に似たものだとすれば、ユニオンのように出来る人の大半が人種差別をするようなヤツで占めているなんて事はないと思うが・・・それでも、交渉で戦争に参加するよう要請されるかもしれないと思うとな・・・・・・)

 

そう考えると勇は、自分達は物凄く運が良かったなと実感するのだった。

 

こうして、オーブ鎮守府は転移してから約1週間という疾風の如きスピードで食糧と資源という二大問題を一気に解決する事が出来たのだった。




作者の(周りからすればどうでもよさそうな)自問自答

Q:かき氷にかけるヤツで一番好きな味は?
A:イ チ ゴ で す

次回予告

どうにかファーストコンタクトを果たした勇達。では、ロイヤルないしアズールレーンの方に視点を変えると、この邂逅は一体どのようなものだったのだろうか。

次回『暁と優雅のファーストコンタクト ロイヤル篇』
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